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一章 はじめての暗殺編
2話 職業なし、つまりは無職
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-チュートリアルクエスト-
『職業訓練所へ行ってみよう』が破棄されました。
唐突なお知らせを受けて俺は原因にもなった可能性のあるクエスト『老執事の探し物』をとりあえずは頑張ると決めた矢先にその老執事のセバスチャンから連絡が入った。
「申し訳ありません。人形を落としたというのはお嬢様の勘違いだったようで、馬車の中にあったようでございます」
「そうですか……」
「ご迷惑をお掛けしてしまったのでお詫びがしたいとお嬢様が仰っております。お手隙であれば明日以降に指定の場所まで来ていただけますか」
指定の場所がマップで送られてきた。
明日以降か、どうしたものかな。
人も少なくなったことだし職業訓練所に行ってみるか。
チュートリアルが破棄されたといっても、なんとかなるだろ。
そう思ってた自分はどうやら甘かったようだ。
「悪いがここは初心者専用なんでな、あんたは見たところ初心者って訳じゃなさそうだし、転職ならギルドへ行ってくれよ」
職業訓練所へ入ろうとすると衛兵に止められ門前払いされてしまった。
機械的に定型文で断られればそうでもないが、本当に普通の人間が喋っているようにしか見えず、ただただダメ出しをくらっている気分になってほんの少しだけ肩を落とす。
衛兵に言われた通りまずは冒険者ギルドへ行ってみるが、「あなたが転職できる職業はありません」とまたもや門前払い。
商業ギルドも同じだった。
この二つのギルドは国が運営している国営ギルドで今はまだ解放されていないがその内、来訪者もギルドを作ることができるようなシステムが用意されているらしい。
楽しみだなー……ってそんな先のことはよくて今をどうするかなんだよ。
冷静に考えてこれは困った。
俺は情報を集めるため一旦ログアウトした。
職業は実績やクエストなどで解放されギルドで転職できるとまとめサイトには書いてあった。
どれも始めたての自分にはどうすることもできないし、そもそもの前提が職業についていなければいけない。
後は転職クエストというものがあるらしく、βテスト時の情報なので変更があったのかもしれないがそれらはきちんと転職クエストと表示が出るらしい。
俺の受けた『老執事の探し物』にはそんな表示はなく普通のクエストだったと思われる。
そもそもサービス初日では正確な情報が少なすぎた。
俺はログインしてパーティを探すことにした。
パーティを探しつつプレイヤーから情報が貰えるかもしれないからだ。
もしかしたら、俺と同じような境遇のプレイヤーがいるかもしれない。
ただ、情報を話してくれるかが問題だな。
情報はお金になったりするし、配信者やブロガーはPV数を稼ぐために秘密にすることだってあるはず。
そして今の俺は一文無し……
やはり世の中はそんなに甘くなかった。
「治療魔法が使える方、募集してます」
「戦士職Lv10以上募集」
「魔法使い募集」
噴水を中心にした広場では多数のプレイヤーが行き交い、パーティの募集やアイテムのトレード、売買を行なっている。
そして情報の売買も行われている。
初日なのに大混雑だ。
一度ダメ元で情報屋を名乗る男性のところへ行って話を聞こうとしたが「こっちも商売だからなぁ、悪いけど他をあたってくれよ」と断られた。
まぁ、そうですよね。
やはり運営からの返信を待つか、同じような状況の人の情報開示を待つしかないのか。
「おーい、そこの人」
情報屋以外の人にも話を聞くも全てダメでとぼとぼと歩いていると女性に声をかけられる。
「俺ですか?」
「そうそう、ちょっとだけ話をしてるのが聞こえたんだけど、もしかしたら力になれるかもしれない」
ローブを庇っている女性は俺が怪しんでいるのに気づいたのかローブを取って顔を露わにしてくれた。
整った顔立ちに綺麗に纏められた黒髪。
まさか、この後で怖いお兄さんが登場するとかないよな。
「俺はお金がないし、アイテムもなんもないですよ」
「それだったら、そのクエストの詳細とかでも大丈夫だよ」
「それならこちらとしては全然大丈夫ですけど……」
そんなことで解決できるのならこちらとしても願ったり叶ったりだ。
後は怖いお兄ちゃんが登場しなければ……
「私はフーラ、職業は隠者」
「俺の名前はクロツキ、職業は……無職です」
フーラはいくつかの質問をしてきて、俺はクエストの発生した時間や場所、セバスチャンの特徴など覚えている限りを伝える。
そして一つの結論にたどり着いた。
バグでないならば、これは転職クエストへのチェインクエストの可能性が高いとフーラは結論づけた。
転職クエストは言葉のままでクエストをクリアすることで新たな職業になれるもの。
チェインクエストは一つのクエストをクリアすると次のクエストへと導かれるクエストのこと。
フーラの話ではチュートリアルクエストも実は転職クエストへのチェインクエストらしく、いくつかのチュートリアルを終えれば転職クエストが出現するらしい。
そのためクエストが上書きされたのではないかと判断したようだ。
俺としても納得できるし、むしろ珍しい職業になれる可能性が高いのでありがたい。
希望は持てたがチェインクエストというのは可能性の話で、もしもバグだった場合、俺は無職のままになってしまう。
Lvとは職業Lvの合計なので、即ちこのまま無職ではずっとLv0ということになる。
流石にこのレベルのバグがずっとということはないと思うが、どれだけの時間がかかるかも分からない。
俺はログアウト後にまとめサイトをひたすらに読み込んだ。
もしかしたら、一日経って新たな情報が更新されていると期待したからだ。
しかし、どこにもチュートリアルクエスト破棄については書かれていなかった。
時間経過で破棄はないとフーラに聞いてはいたが、やはりとある記事で「あまりの凄さに一日中、街の探索してしまいました。今からチュートリアルやってきます」という書き込みもあったので時間経過で破棄ということはないみたい。
そしてもう一つただのクエストでも破棄はされないだろうと言われた通りで、チュートリアルクエストと同時に他のクエストを進めても破棄はされないなどの書き込みもあった。
徹夜は社畜時代の生活で慣れているがこれ以上は調べても何も出てこないだろう。
フーラの説が正しいと願って今日は眠りにつくことにしよう。
§
【LFO】総合スレ
『ルキファナス・オンライン』について総合的に語るスレです。
基本的にどんな話題でもOKですが、パーティ募集、愚痴、アンチ、晒しなどは専用スレでお願いします。
次スレは自動で立ちます。
1:名無しの戦士
これから始める人いるなら職業は戦士か魔法使いがおすすめ
2:名無しの魔法使い
でも魔法使いは火力高くてレベリング楽だけど、MP回復ポーションが不味いし、金かかる
3:火の魔法使い
>2に同意だが、金に関してはクエストを上手く回せばそれほど困らない
4:名無しの弓使い
弓使いもおすすめだお
5:名無しの戦士
>4弓使いはやめとけ
6:名無しの弓使い
弓使いおすすめだお
7:名無しの魔法使い
βテストから不遇だったし改善されたってことじゃない
8:名無しの魔法使い
>6どうしておすすめか知りたい
9:名無しの弓使い
とにかくおすすめだお
10:名無しの鍛治師
釣りだろ
11:名無しの弓使い
だって知らなかったんだもん
金はかかるし、威力は弱いし
12:名無しの名無し
不遇職まとめあるから確認しとけ乙
13:名無しの戦士
基本一次職
戦士◎
射手×
神官○
魔法使い◎
テイマー△
文化人?
生産者?
無法者○
隠者×
個人的にはこんな感じ
14:名無しの弓使い
優し過ぎかよ
できれば二次職行く前に見たかった
転職できるまで我慢するしかない
15:名無しの魔法使い
誰もパーティ組んでくれないに一票
16:名無しの戦士
一票
17:名無しの鍛治師
一票
18:名無しの弓使い
既にその結末を迎えている
オワタ
19:名無しの戦士
パーティ組んでくれないでいえば、今日パーティ募集してたらチュートリアルクエスト破棄されたって人がいた
20:名無しの魔法使い
無職が話しかけてきたからチュートリアル終わらせてから来いって門前払いしちゃった
21:名無しの戦士
多分同一人物だと思う
チュートリアルクエスト破棄なんてあるの?
22:名無しの弓使い
さぁ?
転職クエストの上書きじゃないかな
23:名無しの戦士
初日のあんな短時間で転職クエスト発生?
バグの方が確率高いでしょ
24:名無しの魔法使い
やっぱ、リリース初日で負荷凄かったんじゃね
職業訓練所への行列やばかったもん
そういうことでしょ
25:名無しの鍛治師
そういえば、荒らし専門のプロゲーマー集団が参入するらしい
26:名無しの戦士
イヴィルターズとかいうクソ集団だろ
27:名無しの魔法使い
運営が有能で被害が出る前に垢削除求む
28:名無しの戦士
こんだけのゲーム作ってんだから大丈夫だろ
29:名無しの名無し
愚痴、晒しは専用スレでどうぞ
30:名無しの戦士
まぁ、ルキファナス・オンラインを楽しみましょう
『職業訓練所へ行ってみよう』が破棄されました。
唐突なお知らせを受けて俺は原因にもなった可能性のあるクエスト『老執事の探し物』をとりあえずは頑張ると決めた矢先にその老執事のセバスチャンから連絡が入った。
「申し訳ありません。人形を落としたというのはお嬢様の勘違いだったようで、馬車の中にあったようでございます」
「そうですか……」
「ご迷惑をお掛けしてしまったのでお詫びがしたいとお嬢様が仰っております。お手隙であれば明日以降に指定の場所まで来ていただけますか」
指定の場所がマップで送られてきた。
明日以降か、どうしたものかな。
人も少なくなったことだし職業訓練所に行ってみるか。
チュートリアルが破棄されたといっても、なんとかなるだろ。
そう思ってた自分はどうやら甘かったようだ。
「悪いがここは初心者専用なんでな、あんたは見たところ初心者って訳じゃなさそうだし、転職ならギルドへ行ってくれよ」
職業訓練所へ入ろうとすると衛兵に止められ門前払いされてしまった。
機械的に定型文で断られればそうでもないが、本当に普通の人間が喋っているようにしか見えず、ただただダメ出しをくらっている気分になってほんの少しだけ肩を落とす。
衛兵に言われた通りまずは冒険者ギルドへ行ってみるが、「あなたが転職できる職業はありません」とまたもや門前払い。
商業ギルドも同じだった。
この二つのギルドは国が運営している国営ギルドで今はまだ解放されていないがその内、来訪者もギルドを作ることができるようなシステムが用意されているらしい。
楽しみだなー……ってそんな先のことはよくて今をどうするかなんだよ。
冷静に考えてこれは困った。
俺は情報を集めるため一旦ログアウトした。
職業は実績やクエストなどで解放されギルドで転職できるとまとめサイトには書いてあった。
どれも始めたての自分にはどうすることもできないし、そもそもの前提が職業についていなければいけない。
後は転職クエストというものがあるらしく、βテスト時の情報なので変更があったのかもしれないがそれらはきちんと転職クエストと表示が出るらしい。
俺の受けた『老執事の探し物』にはそんな表示はなく普通のクエストだったと思われる。
そもそもサービス初日では正確な情報が少なすぎた。
俺はログインしてパーティを探すことにした。
パーティを探しつつプレイヤーから情報が貰えるかもしれないからだ。
もしかしたら、俺と同じような境遇のプレイヤーがいるかもしれない。
ただ、情報を話してくれるかが問題だな。
情報はお金になったりするし、配信者やブロガーはPV数を稼ぐために秘密にすることだってあるはず。
そして今の俺は一文無し……
やはり世の中はそんなに甘くなかった。
「治療魔法が使える方、募集してます」
「戦士職Lv10以上募集」
「魔法使い募集」
噴水を中心にした広場では多数のプレイヤーが行き交い、パーティの募集やアイテムのトレード、売買を行なっている。
そして情報の売買も行われている。
初日なのに大混雑だ。
一度ダメ元で情報屋を名乗る男性のところへ行って話を聞こうとしたが「こっちも商売だからなぁ、悪いけど他をあたってくれよ」と断られた。
まぁ、そうですよね。
やはり運営からの返信を待つか、同じような状況の人の情報開示を待つしかないのか。
「おーい、そこの人」
情報屋以外の人にも話を聞くも全てダメでとぼとぼと歩いていると女性に声をかけられる。
「俺ですか?」
「そうそう、ちょっとだけ話をしてるのが聞こえたんだけど、もしかしたら力になれるかもしれない」
ローブを庇っている女性は俺が怪しんでいるのに気づいたのかローブを取って顔を露わにしてくれた。
整った顔立ちに綺麗に纏められた黒髪。
まさか、この後で怖いお兄さんが登場するとかないよな。
「俺はお金がないし、アイテムもなんもないですよ」
「それだったら、そのクエストの詳細とかでも大丈夫だよ」
「それならこちらとしては全然大丈夫ですけど……」
そんなことで解決できるのならこちらとしても願ったり叶ったりだ。
後は怖いお兄ちゃんが登場しなければ……
「私はフーラ、職業は隠者」
「俺の名前はクロツキ、職業は……無職です」
フーラはいくつかの質問をしてきて、俺はクエストの発生した時間や場所、セバスチャンの特徴など覚えている限りを伝える。
そして一つの結論にたどり着いた。
バグでないならば、これは転職クエストへのチェインクエストの可能性が高いとフーラは結論づけた。
転職クエストは言葉のままでクエストをクリアすることで新たな職業になれるもの。
チェインクエストは一つのクエストをクリアすると次のクエストへと導かれるクエストのこと。
フーラの話ではチュートリアルクエストも実は転職クエストへのチェインクエストらしく、いくつかのチュートリアルを終えれば転職クエストが出現するらしい。
そのためクエストが上書きされたのではないかと判断したようだ。
俺としても納得できるし、むしろ珍しい職業になれる可能性が高いのでありがたい。
希望は持てたがチェインクエストというのは可能性の話で、もしもバグだった場合、俺は無職のままになってしまう。
Lvとは職業Lvの合計なので、即ちこのまま無職ではずっとLv0ということになる。
流石にこのレベルのバグがずっとということはないと思うが、どれだけの時間がかかるかも分からない。
俺はログアウト後にまとめサイトをひたすらに読み込んだ。
もしかしたら、一日経って新たな情報が更新されていると期待したからだ。
しかし、どこにもチュートリアルクエスト破棄については書かれていなかった。
時間経過で破棄はないとフーラに聞いてはいたが、やはりとある記事で「あまりの凄さに一日中、街の探索してしまいました。今からチュートリアルやってきます」という書き込みもあったので時間経過で破棄ということはないみたい。
そしてもう一つただのクエストでも破棄はされないだろうと言われた通りで、チュートリアルクエストと同時に他のクエストを進めても破棄はされないなどの書き込みもあった。
徹夜は社畜時代の生活で慣れているがこれ以上は調べても何も出てこないだろう。
フーラの説が正しいと願って今日は眠りにつくことにしよう。
§
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『ルキファナス・オンライン』について総合的に語るスレです。
基本的にどんな話題でもOKですが、パーティ募集、愚痴、アンチ、晒しなどは専用スレでお願いします。
次スレは自動で立ちます。
1:名無しの戦士
これから始める人いるなら職業は戦士か魔法使いがおすすめ
2:名無しの魔法使い
でも魔法使いは火力高くてレベリング楽だけど、MP回復ポーションが不味いし、金かかる
3:火の魔法使い
>2に同意だが、金に関してはクエストを上手く回せばそれほど困らない
4:名無しの弓使い
弓使いもおすすめだお
5:名無しの戦士
>4弓使いはやめとけ
6:名無しの弓使い
弓使いおすすめだお
7:名無しの魔法使い
βテストから不遇だったし改善されたってことじゃない
8:名無しの魔法使い
>6どうしておすすめか知りたい
9:名無しの弓使い
とにかくおすすめだお
10:名無しの鍛治師
釣りだろ
11:名無しの弓使い
だって知らなかったんだもん
金はかかるし、威力は弱いし
12:名無しの名無し
不遇職まとめあるから確認しとけ乙
13:名無しの戦士
基本一次職
戦士◎
射手×
神官○
魔法使い◎
テイマー△
文化人?
生産者?
無法者○
隠者×
個人的にはこんな感じ
14:名無しの弓使い
優し過ぎかよ
できれば二次職行く前に見たかった
転職できるまで我慢するしかない
15:名無しの魔法使い
誰もパーティ組んでくれないに一票
16:名無しの戦士
一票
17:名無しの鍛治師
一票
18:名無しの弓使い
既にその結末を迎えている
オワタ
19:名無しの戦士
パーティ組んでくれないでいえば、今日パーティ募集してたらチュートリアルクエスト破棄されたって人がいた
20:名無しの魔法使い
無職が話しかけてきたからチュートリアル終わらせてから来いって門前払いしちゃった
21:名無しの戦士
多分同一人物だと思う
チュートリアルクエスト破棄なんてあるの?
22:名無しの弓使い
さぁ?
転職クエストの上書きじゃないかな
23:名無しの戦士
初日のあんな短時間で転職クエスト発生?
バグの方が確率高いでしょ
24:名無しの魔法使い
やっぱ、リリース初日で負荷凄かったんじゃね
職業訓練所への行列やばかったもん
そういうことでしょ
25:名無しの鍛治師
そういえば、荒らし専門のプロゲーマー集団が参入するらしい
26:名無しの戦士
イヴィルターズとかいうクソ集団だろ
27:名無しの魔法使い
運営が有能で被害が出る前に垢削除求む
28:名無しの戦士
こんだけのゲーム作ってんだから大丈夫だろ
29:名無しの名無し
愚痴、晒しは専用スレでどうぞ
30:名無しの戦士
まぁ、ルキファナス・オンラインを楽しみましょう
応援ありがとうございます!
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