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十一章 死神誕生
106話 裏切りの騎士
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明かりもついていない部屋でクロツキはレイド戦の様子をプレイヤーの生配信で見ていた。
本当はギルドメンバーと参加をしたかったが、自分のせいでそれは叶わなかった。
いろいろな思いが脳裏をよぎる。
どうするのが正解だったのか。
デスペナルティの強制ログアウト時間は残り1時間弱。
画面ではレイド戦に勝利をして歓喜の雄叫びを上げる王都の様子が映っていた。
完全に間に合わなかった。
間に合ったとしてもステータスダウンしていては役に立たない。
未だにアンチコメントが送られてくる。
このままルキファナスの世界に戻らずにフェードアウトすればどうなるんだろうか。
自分がいなくなって何か変わるのか。
戻ったとしても再び叩かれれば迷惑をかけてしまうだけなんじゃないか。
ジャンヌ、セバスさん、ストルフやサンドラ、他にもシュバルツ家の人たちには随分とお世話になった。
ルティ、リオン、オウカ、ジャック、バーバラ、ギルドメンバーにも助けてもらってばかりだった。
みんなは俺が悪くないと言ってくれる。
それが逆に重くのしかかってくる。
「ハァ……」
イヤホンを外して目を閉じる。背もたれに深くもたれかかって、大きなため息を一つつくと静かな部屋によく響く。
§
「きゃあああああああ」
「早く避難するんだ」
「騎士団はどこにいる?」
王都は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
モンスターという脅威から助かったと思った矢先の王都襲撃に恐怖は伝染していく。
恐怖が広がるほどにイーブルの纏う力はより大きく、より強大になっていく。
唯一の救いは王都に騎士団のほとんどが揃っていたこと。
元々警護に入っていた騎士団に加えて、戦場で死んだ騎士は王都に蘇っている。
戦力にはならなくても避難誘導はできるし、民衆の精神の安定に繋がる。
5番隊隊長ブラウィンは部下の騎士と共に民を守るべく王都襲撃者と対峙していた。
後ろには守るべき民がいて負けは許されない。
何よりも貴族として騎士として敗北は誇りが許さない。
ブラウィンはその見た目に反して実力は本物。
貴族で権力があるとはいえ騎士団の隊長を任せられるということは簡単なことではない。
襲撃者10人以上の攻撃を受けてもびくともしない光の壁は民衆を安心させる。
「おい、貴様らは市民を連れて避難所へ向かえ。ここは私たちが止める」
ブラウィンは平民の騎士に市民の避難、貴族の騎士に敵の足止めを指示する。
襲撃者たちにイーブルから伝えられた言葉は出来る限り人は殺さずに恐怖を、絶望を与えろだった。
それに騎士団の存在は邪魔であり、排除しなければいけない。
「隊長!!」
5番隊副隊長のスクアロがブラウィンに声をかける。
「なんだ? ガッ……」
振り向いたブラウィンの腹部に刃が深く突き刺さる。
膝から落ちて光の壁が消えていく。
それを見た他の騎士は一瞬何が起こっているのか分からず困惑するが、裏切りだと気づきスクアロに剣を向ける。
だが、裏切りはスクアロだけではなかった。
貴族の数人が隣の騎士を攻撃して一気に形勢は逆転する。
襲撃者とスクアロ含める裏切りの騎士になす術もなく騎士と市民は捕らえられた。
捕らえられたものは王都の広場に集められる。
騎士の裏切りに、捕らえられた者の数の多さに、地面を引きずられる多くの騎士に恐怖が募る。
イーブルは前に立ち王城に向かって宣言する。
「今日この日に王国は落ちる。そして俺が代わりに王になってやろう」
「はぁ、ふざけんじゃねぇよ。これでクエストが失敗したらどうすんだ」
1人のプレイヤーが叫ぶ。
クエストクリアの表示は誰にも出ていない。
つまりまだレイド戦の途中ということ。
「失敗のペナルティをしらないの?」
「そっ、そうだっ、公国のプレイヤーがどうなったか知らないのか」
至る所からクエスト失敗のペナルティの話が出る。
ペナルティがどれほど重いかをプレイヤーたちは知っていた。
なぜなら前例として早々に公国が失敗してペナルティについて書かれていたから。
まず国がなくなるということは領地がその国のものではなくなる。
つまり、購入した拠点が使えなくなる。
さらにそこに保管していたアイテムも全ロストしてしまう。
その可能性を考慮していたプレイヤーがアイテムを他国に移していたのは先見の明があったのだろう。
だが多くのプレイヤーは違うし、そもそもどこがクエストを成功するか失敗するかも分からない状態では移す意味がない。
公国は失敗の可能性が非常に高かったが、王国はそんなことはなかった。
今からアイテムを移すのは間に合わない。
さらに王都に高額を支払ってギルド拠点を作ったプレイヤーはそんなこと許容できるはずもなかった。
ペナルティはこれだけではない。
ステータスダウンの期間が1ヶ月も続き、称号がマイナス効果のある亡国の来訪者という称号に強制的に変えられる。
これも1ヶ月外れないらしい。
まともに1ヶ月間戦闘ができなくなってしまう。
運営からもペナルティが重いとは出ていた。
そのために多くのプレイヤーが参加してクエスト成功を目的に動いていたのだ。
それをこんなところでイーブルに邪魔をされては最悪すぎる。
本当はギルドメンバーと参加をしたかったが、自分のせいでそれは叶わなかった。
いろいろな思いが脳裏をよぎる。
どうするのが正解だったのか。
デスペナルティの強制ログアウト時間は残り1時間弱。
画面ではレイド戦に勝利をして歓喜の雄叫びを上げる王都の様子が映っていた。
完全に間に合わなかった。
間に合ったとしてもステータスダウンしていては役に立たない。
未だにアンチコメントが送られてくる。
このままルキファナスの世界に戻らずにフェードアウトすればどうなるんだろうか。
自分がいなくなって何か変わるのか。
戻ったとしても再び叩かれれば迷惑をかけてしまうだけなんじゃないか。
ジャンヌ、セバスさん、ストルフやサンドラ、他にもシュバルツ家の人たちには随分とお世話になった。
ルティ、リオン、オウカ、ジャック、バーバラ、ギルドメンバーにも助けてもらってばかりだった。
みんなは俺が悪くないと言ってくれる。
それが逆に重くのしかかってくる。
「ハァ……」
イヤホンを外して目を閉じる。背もたれに深くもたれかかって、大きなため息を一つつくと静かな部屋によく響く。
§
「きゃあああああああ」
「早く避難するんだ」
「騎士団はどこにいる?」
王都は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
モンスターという脅威から助かったと思った矢先の王都襲撃に恐怖は伝染していく。
恐怖が広がるほどにイーブルの纏う力はより大きく、より強大になっていく。
唯一の救いは王都に騎士団のほとんどが揃っていたこと。
元々警護に入っていた騎士団に加えて、戦場で死んだ騎士は王都に蘇っている。
戦力にはならなくても避難誘導はできるし、民衆の精神の安定に繋がる。
5番隊隊長ブラウィンは部下の騎士と共に民を守るべく王都襲撃者と対峙していた。
後ろには守るべき民がいて負けは許されない。
何よりも貴族として騎士として敗北は誇りが許さない。
ブラウィンはその見た目に反して実力は本物。
貴族で権力があるとはいえ騎士団の隊長を任せられるということは簡単なことではない。
襲撃者10人以上の攻撃を受けてもびくともしない光の壁は民衆を安心させる。
「おい、貴様らは市民を連れて避難所へ向かえ。ここは私たちが止める」
ブラウィンは平民の騎士に市民の避難、貴族の騎士に敵の足止めを指示する。
襲撃者たちにイーブルから伝えられた言葉は出来る限り人は殺さずに恐怖を、絶望を与えろだった。
それに騎士団の存在は邪魔であり、排除しなければいけない。
「隊長!!」
5番隊副隊長のスクアロがブラウィンに声をかける。
「なんだ? ガッ……」
振り向いたブラウィンの腹部に刃が深く突き刺さる。
膝から落ちて光の壁が消えていく。
それを見た他の騎士は一瞬何が起こっているのか分からず困惑するが、裏切りだと気づきスクアロに剣を向ける。
だが、裏切りはスクアロだけではなかった。
貴族の数人が隣の騎士を攻撃して一気に形勢は逆転する。
襲撃者とスクアロ含める裏切りの騎士になす術もなく騎士と市民は捕らえられた。
捕らえられたものは王都の広場に集められる。
騎士の裏切りに、捕らえられた者の数の多さに、地面を引きずられる多くの騎士に恐怖が募る。
イーブルは前に立ち王城に向かって宣言する。
「今日この日に王国は落ちる。そして俺が代わりに王になってやろう」
「はぁ、ふざけんじゃねぇよ。これでクエストが失敗したらどうすんだ」
1人のプレイヤーが叫ぶ。
クエストクリアの表示は誰にも出ていない。
つまりまだレイド戦の途中ということ。
「失敗のペナルティをしらないの?」
「そっ、そうだっ、公国のプレイヤーがどうなったか知らないのか」
至る所からクエスト失敗のペナルティの話が出る。
ペナルティがどれほど重いかをプレイヤーたちは知っていた。
なぜなら前例として早々に公国が失敗してペナルティについて書かれていたから。
まず国がなくなるということは領地がその国のものではなくなる。
つまり、購入した拠点が使えなくなる。
さらにそこに保管していたアイテムも全ロストしてしまう。
その可能性を考慮していたプレイヤーがアイテムを他国に移していたのは先見の明があったのだろう。
だが多くのプレイヤーは違うし、そもそもどこがクエストを成功するか失敗するかも分からない状態では移す意味がない。
公国は失敗の可能性が非常に高かったが、王国はそんなことはなかった。
今からアイテムを移すのは間に合わない。
さらに王都に高額を支払ってギルド拠点を作ったプレイヤーはそんなこと許容できるはずもなかった。
ペナルティはこれだけではない。
ステータスダウンの期間が1ヶ月も続き、称号がマイナス効果のある亡国の来訪者という称号に強制的に変えられる。
これも1ヶ月外れないらしい。
まともに1ヶ月間戦闘ができなくなってしまう。
運営からもペナルティが重いとは出ていた。
そのために多くのプレイヤーが参加してクエスト成功を目的に動いていたのだ。
それをこんなところでイーブルに邪魔をされては最悪すぎる。
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