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十一章 死神誕生
114話 罪の数を数えろ
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天高くから迸る雷が止み、黒い影が一つ地上に落下していく。
どちらが落ちたのかは定かではなく戦闘を見守っていた全ての人が固唾を飲んでゆっくりと降りてくるもう一つの影に目を凝らす。
ぴょんぴょんと階段を降りるように地上へ帰還する。
それはクロツキが勝利をしてイーブルが地に落ちた何よりの証拠であった。
人々から拍手喝采と歓声が鳴り止まない。
興奮した何人かが先行してクロツキの元へと駆け寄っていく。
そこから決壊したダムの如く人波がクロツキとイーブルを囲う。
戦闘を見ていた距離よりも近づいたとはいえ、それでもそこそこ離れているのはまだイーブルに動きがあったからだ。
「くそがっ!! まだ終わってないぞぉぉ」
イーブルの全身から黒雷が迸るも勢いはなく、黒い靄も明らかに減ってきている。
クロツキが削った分もあるがそれよりも人々がイーブルに対して恐れを抱かなくなったのが原因だった。
負の感情を力に変えるイーブルにとって希望を持った人々が多くなることは強化がそれだけ小さくなる。
戦闘の動画は拡散されて王国中の誰もが見ていた。
「イーブル、もう終わりだ」
「まだだ」
一筋の黒雷がクロツキを襲うが力のない攻撃など当たるはずもなく、イーブルはクロツキの姿を見失う。
背後から気配を感じ振り向いて拳を振るもそこにあるのは黒の残像のみ。
気づけば首元が斬られていた。
首と心臓部分の鎧は重点的に力を入れていたおかげで致命傷にはなっていない。
が、その他の部位はハリボテだと悟られてしまった。
無数の斬撃がイーブルを襲う。
丸まって攻撃を防ぐが黒の鎧は削られていく。
「心が折れたのか」
「そっ、そんなわけがないだろ。麒麟、俺にもっと力を寄越せ」
イーブルの声に麒麟が反応することはなかった。
贖罪の刃というスキルがある。
相手の戦意が喪失している場合に発動することができる。
黒い靄が刃を一本形作り、クロツキの後ろに浮く。
また刃が一本形作られる。
一本、一本と多種多様の刃が無数に宙を浮く。
周りで見ていたものもその異様な光景に声が出なかった。
新たな刃が生み出されなくなったところでクロツキはイーブルを見下ろして口を開いた。
「贖罪の刃は罪の数。罪の数を数えて贖うがいい」
無数の刃がイーブルに刺さっては消えていく。
ダメージはもちろん受けているが、HPが1で止まって死ぬことはない。
その代わりにHPの横のマイナスの値が増え続けていく。
刃が刺さるごとにステータスは減少し、スキルも魔法も称号もグレーアウトする。
そしてHPの横のマイナスの値は普通には回復することのないHP。
それが表示されている限り、ステータスは減少したままで、スキルも魔法も称号も使用できない。
全身を痛みが走り、悶えるも身動きが取れない。
痛みのあまり声も出ない。
ただただ刃が刺さり続けて終わるのを待つしかない。
イーブルはなんとか顔を上げるが、その刃の数に絶望することになる。
まだ終わらない。
1秒が長く、永遠に続くんではないだろうと思うほどに長い。
悠久の果てにようやく最後の一本が体を貫く。
イーブルの精神は擦り切れ、土下座をするような形で顔を地面に伏せている。
クロツキはゆっくりとイーブルに近づいていく。
黒い靄がまた別のものを作り出す。
それは大鎌。
クロツキには使うことのできない武器種ではあるが、スキルなので関係がない。
断罪の大鎌を首に押し当てて、動くことのないイーブルに鎌を振り下ろす。
それはまさに死神が死を運んだ瞬間だった。
イーブルは黒の粒子へと変わる。
監獄へと送還される演出だ。
しかし、今までの監獄生活とは勝手が変わるだろう。
なぜならLv1にも勝てないほどにステータスが減少している。
最弱の存在での監獄生活は地獄のはず。
クロツキの纏っていた黒い靄が晴れていくのと同時に王国を覆っていた黒雲も晴れて光が差し込む。
終わったのを確信してクロツキはその場にある瓦礫に腰かけて大きく息をついた。
「キュイキュイ」
落ち着いたと思ったらディーが何やら興奮している。
影に潜っていったが、少し待っていると何かを口に加えて戻ってきた。
「我は高貴な存在である麒麟だぞ。貴様如きが口に加えるなど、どういうつもりだ」
どうやら麒麟はこそこそと逃げようとしていたところをディーに見つかり捕まったらしい。
「キュイキュイ」
「貴様が我を喰おうものなら、あの人間のように内側から逆に喰らい尽くしてやるわ」
「ディー、危ないから……」
危険なのは分かっているがここで放されても困るし、どうしたものか」
「キュイキュイ」
「あっ……」
考えているとディーが麒麟を飲み込んだ。
ディーから禍々しいオーラが溢れてくる。
これは本格的にやばいかも……
……?
オーラが消えていってディーの力が溢れてくる?
ディーがうずくまって一気に体を開くと翼が一対増えた。
何が起きているのか全く分からないが、ディーは元気そうだし、大丈夫って事でいいのかな。
いそいそと影の中に帰って行ってしまった。
もう頭が回らないよ。
疲れすぎた。
「クロツキさーん、大丈夫ですか」
ギルドメンバーが駆け寄ってきてくれる。
全員がボロボロだ。
「クロツキ、よくやったぜ」
「……やると信じて……いた」
「さすがだね、マスター」
「あの、お疲れ様です」
「みんな、迷惑かけてごめん」
あぁ、笑って迎えてくれる仲間がいる。
ルキファナス・オンラインに戻ってきてよかった。
どちらが落ちたのかは定かではなく戦闘を見守っていた全ての人が固唾を飲んでゆっくりと降りてくるもう一つの影に目を凝らす。
ぴょんぴょんと階段を降りるように地上へ帰還する。
それはクロツキが勝利をしてイーブルが地に落ちた何よりの証拠であった。
人々から拍手喝采と歓声が鳴り止まない。
興奮した何人かが先行してクロツキの元へと駆け寄っていく。
そこから決壊したダムの如く人波がクロツキとイーブルを囲う。
戦闘を見ていた距離よりも近づいたとはいえ、それでもそこそこ離れているのはまだイーブルに動きがあったからだ。
「くそがっ!! まだ終わってないぞぉぉ」
イーブルの全身から黒雷が迸るも勢いはなく、黒い靄も明らかに減ってきている。
クロツキが削った分もあるがそれよりも人々がイーブルに対して恐れを抱かなくなったのが原因だった。
負の感情を力に変えるイーブルにとって希望を持った人々が多くなることは強化がそれだけ小さくなる。
戦闘の動画は拡散されて王国中の誰もが見ていた。
「イーブル、もう終わりだ」
「まだだ」
一筋の黒雷がクロツキを襲うが力のない攻撃など当たるはずもなく、イーブルはクロツキの姿を見失う。
背後から気配を感じ振り向いて拳を振るもそこにあるのは黒の残像のみ。
気づけば首元が斬られていた。
首と心臓部分の鎧は重点的に力を入れていたおかげで致命傷にはなっていない。
が、その他の部位はハリボテだと悟られてしまった。
無数の斬撃がイーブルを襲う。
丸まって攻撃を防ぐが黒の鎧は削られていく。
「心が折れたのか」
「そっ、そんなわけがないだろ。麒麟、俺にもっと力を寄越せ」
イーブルの声に麒麟が反応することはなかった。
贖罪の刃というスキルがある。
相手の戦意が喪失している場合に発動することができる。
黒い靄が刃を一本形作り、クロツキの後ろに浮く。
また刃が一本形作られる。
一本、一本と多種多様の刃が無数に宙を浮く。
周りで見ていたものもその異様な光景に声が出なかった。
新たな刃が生み出されなくなったところでクロツキはイーブルを見下ろして口を開いた。
「贖罪の刃は罪の数。罪の数を数えて贖うがいい」
無数の刃がイーブルに刺さっては消えていく。
ダメージはもちろん受けているが、HPが1で止まって死ぬことはない。
その代わりにHPの横のマイナスの値が増え続けていく。
刃が刺さるごとにステータスは減少し、スキルも魔法も称号もグレーアウトする。
そしてHPの横のマイナスの値は普通には回復することのないHP。
それが表示されている限り、ステータスは減少したままで、スキルも魔法も称号も使用できない。
全身を痛みが走り、悶えるも身動きが取れない。
痛みのあまり声も出ない。
ただただ刃が刺さり続けて終わるのを待つしかない。
イーブルはなんとか顔を上げるが、その刃の数に絶望することになる。
まだ終わらない。
1秒が長く、永遠に続くんではないだろうと思うほどに長い。
悠久の果てにようやく最後の一本が体を貫く。
イーブルの精神は擦り切れ、土下座をするような形で顔を地面に伏せている。
クロツキはゆっくりとイーブルに近づいていく。
黒い靄がまた別のものを作り出す。
それは大鎌。
クロツキには使うことのできない武器種ではあるが、スキルなので関係がない。
断罪の大鎌を首に押し当てて、動くことのないイーブルに鎌を振り下ろす。
それはまさに死神が死を運んだ瞬間だった。
イーブルは黒の粒子へと変わる。
監獄へと送還される演出だ。
しかし、今までの監獄生活とは勝手が変わるだろう。
なぜならLv1にも勝てないほどにステータスが減少している。
最弱の存在での監獄生活は地獄のはず。
クロツキの纏っていた黒い靄が晴れていくのと同時に王国を覆っていた黒雲も晴れて光が差し込む。
終わったのを確信してクロツキはその場にある瓦礫に腰かけて大きく息をついた。
「キュイキュイ」
落ち着いたと思ったらディーが何やら興奮している。
影に潜っていったが、少し待っていると何かを口に加えて戻ってきた。
「我は高貴な存在である麒麟だぞ。貴様如きが口に加えるなど、どういうつもりだ」
どうやら麒麟はこそこそと逃げようとしていたところをディーに見つかり捕まったらしい。
「キュイキュイ」
「貴様が我を喰おうものなら、あの人間のように内側から逆に喰らい尽くしてやるわ」
「ディー、危ないから……」
危険なのは分かっているがここで放されても困るし、どうしたものか」
「キュイキュイ」
「あっ……」
考えているとディーが麒麟を飲み込んだ。
ディーから禍々しいオーラが溢れてくる。
これは本格的にやばいかも……
……?
オーラが消えていってディーの力が溢れてくる?
ディーがうずくまって一気に体を開くと翼が一対増えた。
何が起きているのか全く分からないが、ディーは元気そうだし、大丈夫って事でいいのかな。
いそいそと影の中に帰って行ってしまった。
もう頭が回らないよ。
疲れすぎた。
「クロツキさーん、大丈夫ですか」
ギルドメンバーが駆け寄ってきてくれる。
全員がボロボロだ。
「クロツキ、よくやったぜ」
「……やると信じて……いた」
「さすがだね、マスター」
「あの、お疲れ様です」
「みんな、迷惑かけてごめん」
あぁ、笑って迎えてくれる仲間がいる。
ルキファナス・オンラインに戻ってきてよかった。
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