魔族の嫁になった僕

たなぱ

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魔族と人国と僕ら

2.王子の夢

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Side オアシス



私だけが他と違う意志を持っている、国と教会に対しての疑念は募るばかりだ…
平静を装う日々がこんなにも辛いなんて思わなかった、贄の日で傷ついた身体は未だに癒えない…やはり高熱を出し、3日間苦しみ続けた…
以前の私であればこの痛みこそ女神様へ捧げた証拠と喜んで居たはずなのに

医務官に助けを求めたり、回復薬を飲むことは洗脳思わしきこの意志が解けているとバレてしまうかもしれない…改めて心まで洗脳されることは避けたい…恐ろしい
幸い身体は未だに洗脳状態にある…心に反して女神様のために国のためにと働きかける哀れな身体


やはり、この国は異常だ…
今日は魔族へ送り出す兵士の腹に呪印を刻むのだと言う…人間爆弾…以前にも行っていた、この国が好きな戦法だ
人の命の価値を何だと思っているのだろう…豊穣と慈愛の女神様を崇める国の筈なのに、国民へ対する愛は無いのだろうか…



恐らく正常である心が辛い…何故か一度解けた洗脳は、未だに戻る気配はない
国の方針がわからない…教会の方針が理解できない…再び洗脳される可能性が何より怖い…異常を正常と認識したくないのだ




……………


今日も平静を装う時間が終わった…
第二王子である私には国政の執務は回ってこない、軍部の統括がメインだが、それでも異常な行為を正常と思い込む現場を見させられるのは心が折れそうになる
この国を出たい、そう考えてしまうこともある…しかし、洗脳され受け入れていればいいがそうでない国民がいるかもしれない、それを見捨てられない…
洗脳自体どうにか出来たら、この国が滅べば…など考える時間が増えてきている…守りたいはずの祖国なのに…



入浴を済ませ、ベッドへ横になる
明日までの眠る時間が好きだ…私だけの時間
夢の中だけは私の味方、夢の中で暮らせればいいのに、そう考えてしまう

ベッドに身体を横たえると直ぐに寝入ってしまう…夢の中でだけ…私は彼に会えるんだ











『おかえり』


地面に着くほどの長い薄紫の髪、少し猫背なのに私よりも頭2つほど大きな彼は夢の中で私を待っていてくれる

彼に会ったのは贄の儀を終えて、その夜…高熱を出した日だ…死神かと一瞬思ったが違った
彼はゲランという名前らしい、夢の中で他の人と出会うことなどあるのだろうか?わからない
夢の中でも下半身に残る傷は同じ痛みにうなされる私を、彼は看病してくれたのだ


現実には傷は治らない、しかし夢の中では痛みは消えしっかりと眠ることができた
その日から夢の中でだけ彼に会う
私の心の拠り所になっていた



『ゲラン…私は怖いんだ…私だけが皆と見える世界が違う…でも同じ世界を見たくはない…
異常な世界で平静を装う自分が怖いんだ…
守りたい祖国なのに滅べと思う自分がいる、正常とは?私が異常なのだろうか…』


ゲランは私の話を聞き、そして抱き締めてくれる





夢の中ではなんでも自由に出せるのだろうか?大きなベッドに2人で横たわり、頭を撫でられ、ゲランの腕に包まれて眠る…心が穏やかに満たされる気持ちになる…夢の中で眠るなど不思議なことだが本当に幸せな気持ちになる…
夢の中だけの私の救世主だ


『オアシス、あの国を出たい…?そう強く願うならおれは、それを叶えてやれるよ』


ゲランはそんな夢のような事をいう
嘘でも嬉しい…これは夢なのだから
でも、、本当に逃げることが出来たら…
洗脳された国民を捨てて自分だけ逃げていいのだろうか?………………いや、駄目だ
これでも第二王子…王家や教会に疑念があっても、もしかしたら私と同じ洗脳が解けてしまった者がいるかもしれない…もしかしたら救えるかもしれない、何度も考えただろう…私だけ逃げる訳にはいかないんだ



だから夢の中だけの幸福で満足しよう




『ゲランの気持ちは嬉しい、しかし私は王族…困っているかもしれない国民を放置して自分だけ逃げられない…私を気にかけてくれて…ありがとう

……………本当は何もかも捨ててゲランと一緒に行きたいよ』


夢の中だけでも本心を曝け出す自分がみっともない…少し涙が浮かんでしまった
そんな私を、ゲランは強く抱き締めてくれる…大きな胸板が私を包む…なぜだろう、夢の中なのに温かい…


『偉いんだな…オアシスは…
助けが必要な時、必ずおれの名を呼んで?
一人で抱え込むことなんてねぇんだよ…

おれはオアシスの味方だ…忘れるな』



忘れない、忘れられる訳が無い…ゲランが夢の中で私に会ってくれる…それだけで私は心が壊れずにいるんだ
















Side ゲラン

宰相様に頼まれてオーランシア国の夢の中へ偵察に入り直ぐ、洗脳が解けかけている奴を見つけた
他にもいるかと思ったが、この1人のみ
解けそうな兆候があるやつ2人といった所か

この国の国民の数を考えるとかなり少ない、洗脳に本気を出しすぎているどう見ても

兆候2人はまず話を聞いてくれないから今回は却下、解けかけている1人に絞るか…と、夢の中へお邪魔した
夢の主は王子みたいな奴だった
実際王子だったけど



夢の中なのに、ベッドに眠る王子みたいな奴の下半身から血が滲んでいるのが見えてまさかと中を見る
ペニスと尻から出血していた
夢の傷は現実にあるもの、ズタズタにされた痛々しい下半身は現実…一体何故…?何があったんだ…

現実世界では相当痛いだろう傷とうなされ眠る姿が可哀想になり、思わず抱き締めてせめて夢の中だけでも痛みが無いようにと暗示をかける

夢の中で覚醒した彼がオアシスいう名前、第二王子ということを知った、女神のための贄の儀というのも説明を受け、魔族のおれがゾッとした…黒魔術の何かでしかない儀式としか思えない…一体何を祀っているんだ!?
オアシスは震えながら言う、繰り返し、洗脳を利用した下劣な行為をその身に受けていたと

宰相様やその嫁が言っていたあの国は狂っている…それは、本当だった



毎日、おれはオアシスの夢に彼を迎えに行く
当初の目的もあるが、別の目的が本題だ

夢の相性が夢魔にはわかる、オアシスはおれと近い波長があると直ぐにわかった
2日目にして一緒に寝ることを受け入れ、3日目にして心の内を話してくれる

夢の相性が最高な証拠だ
早く帝魔国に連れて帰ってあげたい、そのために毎日夢で彼の警戒心を解き、おれとともに来ることを望むように語りかけ、抱きしめる
が、オアシスは責任感が強かった、他に洗脳が解けているやつはいないとおれが説明しても納得はしないだろう


だから、おれはオアシスに暗示をかける
あの国にいれば碌なことにならない
助けが必要な時、おれの名前を呼べと…



そうすれば無理矢理にでもあの国から連れ出してやれる、早く呼んでくれオアシス…
お前がおれ達にあの国を破滅させろと言ったら魔王様に頼んでやるのもありだと思ってるんだ











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