悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

文字の大きさ
65 / 88

学園祭 後編

しおりを挟む




ゲームの世界で悪役令息という存在はヒロイン♂を適度に邪魔して報復を受けるのが仕事だ、それは現実の悪役令息役であるおれにも反映している


先程教室に戻っては来たが、ヒロイン♂で疲弊したおれはもうクラスの出し物をする気にはなれなかった…なんかもう息抜きしたい、学園祭を楽しみたいと、クラス委員に抜けることを伝えてそっと居なくなってみる…普通だと店番は?と呼び止められるがそれがない

おれという存在はかなり曖昧、それはモブであるエアも一緒
ヒロイン♂に関わる場面以外は、普段いても居なくてもいい存在なのだ、この学園では
レヴィル様は相当疲れたのか、ラドラ様を連れて即座に姿をくらましたからおれよりもすごいと思うが…


昨年は何も楽しくなかった学園祭、それがエアと回れるなら何よりも楽しい
たとえそれがエアの強い希望でメイド服のままだったとしても…


「神々しい可愛らしさがやばいですっ…!!あ、違った!リナルド様、ヒロイン♂から異物混入クッキー回収ほんとお疲れ様でした!」

これどうぞ!出し物回る前に少し休憩してから行きましょう!」


とりあえず校庭の休憩広場まで来たが、少しベンチで座っててくださいと言って、離れたエアが可愛い笑顔で飲み物を持って帰ってきた…
気遣いが可愛すぎる…は?とんでもなく可愛すぎないか?

エアが購入してきたのは、レモネードの様な見た目のドリンクに、雷の魔法が掛けられた蓋の付いた綺麗なグラスがセットになった商品
魔法効学部…とかいう部の出し物は去年も七色に変化するかき氷とかを開発していた気がする…今年は雷で何を?と思っていると、受け取ったグラスの蓋から小さな雷が発生し、グラスの中で反射して幻想的な美しさを見せてくれた


「リナルド様がレヴィル様と作戦に行ってた時にクラスメイトから教えてもらったんです
綺麗ですよね…これ、口の中でパチパチして気分がスッキリするらしいです!」


「ありがとうエア…すごいな、ホントきれいだ…
グラスまで感電しないのは使用者の魔力を吸って陣に使用しているから…か?」


本当に一口飲んでみると感電と言うよりもかすかにピリピリと舌先を楽しませる冷たい刺激が心地良い、普段学食でも飲めない学生の知恵を感じる

身体に害のない雷魔法…精神的に疲れたおれには、エアにそれをどう反映させるか…良からぬことを考えてしまう…それほどあの空間は地獄と言えたんだ…学園祭終わったらちょっと無理させるかも…ごめんなエア?



ベンチで座りエアと暫く休憩し、おれたちはその後色々な出し物を回った
去年まで一応情報は知っていたが、既視感の世界では全く興味が持てず何を楽しむんだと思っていた学園祭が楽しい、エアと演劇部の劇を見たり…校庭に広く出される出店で庶民風料理を堪能したり、魔法絵画の展示や噴水を使用した氷のアートを見にも行った

「リナルド様、これもおいしいですよ!半分食べてみてください!」

「今の劇…感動して涙が出ちゃいました…うっうう………ずみばぜん…感情移入しちゃっで…」


色々な表情を見せてくれるエアが可愛い…色のある世界で笑うエアが、感動で涙を流すエアが…本当に可愛くて愛おしい

終始変わらずメイド服だったが、それすらも気にならならないほど楽しい…エアと見る全てのものが新鮮で本当に楽しかった




氷の噴水アートを見ながらクレープを食べてるエアがあまりにも可愛くて、口の端に付いたクリームを舐め取ってしまったのは普通に無意識だ
咄嗟のことに瞬時に真っ赤になり慌てる愛おしい存在を見て自然に笑みがこぼれる、そんなおれを見てエアもつられて笑ってくれる

この学園いる者も、周囲もまだ知らない、おれは既に王太子殿下の婚約者では無いことを…
だが、おれがモブヴィール辺境伯子息と共に居ることを強く認識している人もいない、話せば返事が返って来るがしっかりと視界に入っていないようなそんな状況

だからこそ、本当に婚約者なんだし、学園祭で手を繋ぐくらいは許されるだろう
そう思い隣りにいるエアの手を握る…少し驚いた反応をするが握り返してくれることが嬉しかった


これ以上はしない、愛おしさが爆発して人前で舌を絡めるキスなんて公然の前でしたらヒロイン♂と一緒になってしまう、それは部屋に帰ってからだ


「エア、学園祭楽しいか?」

「はい、リナルド様と一緒に過ごせて楽しいです」


悩むことなくそう言ってくれるエアが好きだ…本当に何よりも、誰よりも…大好きだと溢れてしょうがない



「おれもエアがいたから楽しい…ほんとに出会ってくれて、おれを推して?くれてありがとう」



メイド服な事も忘れてエアのおでこにキスをする
ヒロイン♂からクッキーを回収する苦痛なんて吹っ飛ぶ程最高の日になった

こんなにも学園祭は楽しいものだったんだな…知らなかった…









まさかメイド服で歩き回っていたことが何をしているか分からないがうちのクラスの宣伝に一役買ってたと知るのは全てが終わってからだ




しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

処理中です...