18 / 174
幼少期編
見習いを得る
しおりを挟む人狼化魔法とか言ってたが、苦痛な叫びと鈍い光でヘルリは本当に人狼………いや犬耳の生えた可愛い少年に変化した
変化する事が辛いのか息を荒げ涙を零すヘルリを抱き締め直し、大丈夫かと心配するおれの目にはピコピコと動く犬耳しか見えない…
狼なんだろうけど犬耳に見える…うん、何だこれかわいいなおい
シャルティも同じ気持ちなのか目をキラキラさせながらヘルリの頭から生えた犬耳を見てわんちゃん可愛いと呟いている
「ぅ゙ぐっ……はぁ………はぁ………ううっ…我慢できなかった…やだ…こんなからだ嫌なのに………
ごめんなさい…ごめんなさい……ボクは化け物なんです…人狼になれない…なり損ないの化け物……気持ちわるい姿でごめんなさい……」
震えながら怯え、泣くヘルリは自分の姿を嫌悪しているのかもしれない
だが、おれたちから見ると普通に可愛い…逃げようと悶えるのを抱き締めて逃がしたくないくらいに可愛い…
「ヘルリ、身体が痛むの?大丈夫…?
怯えないで、君は気持ち悪くなんてないよ…?ごめんね…ぼくもシャルティも君の犬耳見て可愛いって思ってる…できたら触ってもいい…?」
「…………え………?ボク、きもちわるくない……の?人狼化魔法の失敗作だって…父さんはこの姿見るとね…人じゃない、きもちわるいって叩くんだよ…?
なのに………なのに………2人はそんなボクを触れるの…?」
シャルティと同時に頷き、それぞれ不安そうに揺れる犬耳に手を伸ばす…ふわふわの毛に包まれた耳は本当に血が通っているのか温かい…
そう、まるで生前可愛がっていた近所のポチ太郎の耳のように触り心地抜群なのだ…これが気持ち悪い?可愛いの間違いじゃなくて??
「ヘルリくん…かわいいね?わんちゃんの耳すごい…!ふわふわでかわいい…いいこだねー」
「本当に可愛いね、触らせてくれてありがとう…
ほら、ヘルリは気持ち悪くないだろ?おれもシャルティもずっと触っていたくなるくらい夢中だ…
手もすごくもふもふで可愛いいよ」
肘から先が犬のように変化したヘルリの腕も撫でたりもふもふしたりと堪能する
いいじゃないか生前以降犬に触れてないんだ飢えてる、それもあって可愛さが爆発している
なでなで、スリスリ…もふもふ…
おれたち義兄妹はヘルリの人狼化魔法が一時的に消えるまで堪能しまくったのだ
その結果、ヘルリはとてもとても懐いた
あの可愛い姿を本当に気持ち悪いと言われていたらしく、ソレを気に入ったおれたちに心を開きまくったのだ
最終的に撫でながら抱き締めてたら腕の中で寝るほどに懐いた、これはおれの計画は成功したと言ってもいいだろう…
こんなおれたちを食べるなんて出来ないよな?
…………………
…………
……
「まさか私達が出かけている間にそんな事が…それでその子が保護したというヘルリくん…だね?
そう怯えなくていい、私はサングイス公爵…ルディヴィスとシャルティの父だ」
「私はペトラ、二人の母です
ヘルリくん…大変だったのね…気の毒に…」
領地の視察から帰った父様、母様は事前に執事からある程度の情報は入っているらしかった
帰宅後直にヘルリを含めリビングに呼ばれたおれたちに事情が聞きたいと言ってきた
シャルティと目配せをし今日我が家で起きた出来事について正直に話す
ヘルリが話してくれた事も含め包み隠さずに…だ
基本とても優しい両親はヘルリが受けてきた実質の虐待に深く心を痛めているのがわかる
おれとシャルティの陰に隠れるように怯えるヘルリ、痩せた身体と儚い様子からも事実で有ることがわかるだろう
「父様…ぼくは…ヘルリをこのまま返しては駄目だと思います…酷い仕打ちを受ける場所に彼を返したく無いです…」
「ルティも……私も、おにいさまと同じ気持ちです…ヘルリくん…かわいそうで守ってあげたいです」
父様はおれたちの言葉を否定せず聞いてくれる
現状、これは拉致でも誘拐でもない…虐待を受けた子を保護している状況だと思う
乙女ゲームの世界で悪役令嬢はどう両親を丸め込んだかは知らないが、おれたちの前にいる両親ならきっと最善を考えてくれるはず…
「二人の気持ちはよくわかった、私も最善を尽くそう…子はこの国の宝だ…安全を確認できない場所に送り返すことはしないよ、君のお父さんの件はこちらでも調べよう、任せなさい
ヘルリくん、君の気持ちを知りたい…国運営の孤児院に引き取って貰い、姿を変え事態が解決するまで隠れ住む事もできる、たが…君は私の子供達に随分と懐いているようだ…もしもここに居たいと言うなら客人としてずっと居ることが出来ないのはわかっているね?
この屋敷で従者見習いとして過ごす…それも1つの選択肢だ、君はどうしたい?」
やはり父様はいい人だと思う…
おれたちの事もしっかりと見てくれる素敵な父様だ
ヘルリは父様の言葉に、怯えていた表情を引き締め、前へ進み父様の方へ向かった
姿勢を正し、父様を見て礼をする…先程まで泣いていた少年と同じとは思えないほどキレイな所作で
「サングイス公爵様、どうか…どうかボクをこの屋敷に従者見習いとして置いてください…ボクはルディヴィス様の従者になりたい…!シャルティお嬢様を守れる番犬になりたい…!
この屋敷に認めていただけるように精いっぱいがんばります」
深く頭を下げヘルリが言った言葉を聞いて父様も母様も嬉しそうに頷いた
こうして悪役令嬢の犬だった乙女ゲームの攻略対象は悪役令嬢の兄の従者見習いになったのだ…
………………え、シャルティの従者見習いじゃないの!?なんでおれ?!?番犬って何!?
そんなツッコミを心の中でしつつ、嬉しそうに笑うヘルリとポチ太郎が重なりそれでもいいかなと受け入れてしまったのだ…
4,931
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる