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たなぱ

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幼少期編

閑話 闇の光

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『お祖父様を超える素晴らしい大司教にお前ならなれる』



父様は私をそう言ってとても褒めてくる
それは私が白い髪に赤い目だから
エースメイス家に時々生まれるという女神様に愛された愛し子、天使…それが私
これまでこの見た目で生まれた子はこれまで強力な光属性を持ち大司教や聖女になる事が約束された素晴らしい存在なのだそうだ

私は男だったから聖女にはなれない、だから現在大司教を務めるお祖父様の後をつぎお祖父様を超える大司教になる事が決まってると何度も何度も教えてくれた

エースメイス家は昔から国に認められた国教を正しく国民へ伝え、導く存在…
それについて誰も文句を言わないのはお祖父様含めこれまで大司教を務めてこられた方が本当に素晴らしい人達だったからなのだろう…



10歳の誕生日、私への期待をひしひしと感じて迎えたあの日…魔力適正を調べて頂いた瞬間から…
幸せから一気に地獄へ突き落とされたようなそんな日が始まってしまった



「何故私の息子が!!女神様の愛し子の見た目をしていて闇属性なのだ!間違いだ!何かの間違いだ!!!光属以外に価値がないのたぞ!?」


「なんて事なの…わたくしが闇属性を生んだの?そんな…そんな………いや、いやぁーーーー!!!」



昨日まで優しかった父様と母様は私の目を見ようともしなくなった…光属性じゃなかったから…私が闇属性だったから…
期待に応えられなかったから…
みんなが冷たく昨日まであったはずの私の居場所はどこにも無くてとても悲しくて、辛くて…なんでこんな見た目に生まれたんだろうって…なんで光属性を宿せてなかったんだろうって…毎日泣いてた

泣いても解決しないのに…でも、泣くことしか出来なくて…冷たくあしらわれる父様達といたくなくてお祖父様の元に隠れるのは仕方のない事だった
お祖父様だけ、お祖父様は私を冷たく突き放さなかったから…


「マイズ、落ち着くまで教会で過ごせばいい
本来魔力は個々にそれぞれ備わるものだが…どうしても遺伝や系統に左右されてしまうのだね…
お前の父も母も…周囲も動揺しているだけだ…少し考える時間が必要なんだよ?」


そう言ってお祖父様は私の頭を優しく撫でてくれる…けれど、私は闇属性…闇しかないんだ…
動揺?考える時間?嘘だ…時間が経っても変わることのない両親の対応に、心が段々と痩せて行くのを感じている


お祖父様の使う魔法はとても綺麗…強い光、輝く光が…私がどんなに求めても手に入らないお祖父様の光属性が羨ましてくて眩しかった


教会で預かってもらっている間ひたすらに本を読んだ…私の属性を変えたかった、ただそれだけの為に難しい本にも手を出して、ひたすらに読み漁った…教会の人達も哀れな子を見る目で私を見てくるのが辛かったから…
どんなに探しても探しても…過去には光の聖女様がいた、教会関係者には光属性が多く生まれる
光、光、光…………どこを読んでも光を求められる
属性の変え方なんて、違う属性の大司教なんていなくて強い光こそ神の御使いの証と書いてあることが悲しかった



もう、嫌だ…私という存在が嫌だ…
好きで大司教の孫に生まれてきた訳じゃない、好きで白い髪に赤い目をしてるわけじゃない…好きで闇属性になんてなってない…
ボロボロと涙が溢れ心臓が張り裂けそうなほど苦しかった…蹲って泣き続けてることが惨めだった…そんな時、私は出会ったんだ…彼に


泣いててもわかる人の気配に怯え、教会の関係者にこんな姿を見られたくないと振り向くと、知らない赤い髪と目の男の子が立っていた、その護衛と思える人と一緒に



「だ、だれ…?」


「ごめんね、泣き声が聞こえてたから…心配になって…大丈夫?どこか怪我でもしたの…?」



誰と聞いたのは自然な流れだと思う…私の声を心配して来てくれたの…?見ず知らずの人が…
本当は来ないでと言いたかったけど、私をみる目が優しくて…隣に座って話を聞いてくれそうで… 
知らない内にここ数日溜め込んでいた気持ちを吐き出してしまっていた
私だけのけ者なのだと、期待されていた属性じゃないのだと…お祖父様に顔向け出来ない自分が嫌いすぎて溢れる涙が止まらなかった


話を聞いてくれる彼は見た目からサングイス公爵家の人だとわかる…恐らく素晴らしい火属性を持ってる、そんなあなたに私の気持ちの何がわかるんだと投げやりになっていた所もあった…けど、彼は火属性じゃなかった…私と同じのけ者だったんだ…


サングイス家特有の赤い髪に似つかわしくない水と土、そして闇属性を持ってるのだと言う
さぞ家族に悲しい顔をされて落ち込んでここに来たのかと思ったけど彼は笑顔でこう言ったんだ
自分だけが家族と違う、のけ者なのにすごく笑って…



「全然嫌じゃない、むしろ嬉しいんだ…そう思えたぼくの経験談教えてあげるね
人には個性って言葉があるでしょ?
魔力属性もそうじゃないかなってぼくは思う、ぼくの家族は昔から火属性が多いんだって…でもぼくは水と土とほんの少し闇の属性だった…それはぼくの個性だからだ
これを家族と違うと悲しむのか、家族に無い属性だからこそ協力し合う事が出来ると思うか…その違いで気持ちって変わるんだよ?………………」



その言葉に衝撃を受けた
個性…これは個性…悲しむんじゃなくて家族を私の属性が助けられるかもしれない…?
嬉しそうに笑いながらそう話す彼の笑顔は本物で、泣きじゃくる私を抱き締めて父様でもしてくれない頭を撫でる…その手の優しさも確かに本物で…この言葉も本物としか思えなかった…

その後、彼の秘密の夢も教えてくれた、魔法で土の釜を作ってピザって食べ物を焼くのだと…私は何言ってるんだろうこの人って顔絶対してた
魔法も魔術も基本はそんなおかしな使い方をしない…生活魔法と戦闘魔法に分けられて仕事に応じて使う用途が決まっているから…
公爵子息が土いじって釜を作るの?公爵子息が…??そしたら余った闇属性は焼き加減に使うと言い出して思わず笑ってしまった

どう考えたら闇属性を焼き加減に使う人がいるんだろう…色んな本を読んだけどそんな人いなかった
誇らしげに笑って個性が輝いてると私に教えてくれる彼の言葉のどこにも嘘が無くて悲しんでた自分が馬鹿みたいと思えてくる



お祖父様の言ってたことが理解できた気がした
個々に魔力、属性が宿る…でもそれが系統や遺伝に左右されてしまう…この家ならこの属性が生まれる…そんな凝り固まった思考があるのだろう
でも、本来魔力は個性の塊なんだ…私の闇属性も輝けるかもしれない…胸の中に光が灯った気がした

そんな私に、最後に彼は闇属性でパンに焦げ絵を描こうと誘ってくれたんだ
私の闇属性が輝ける場所をこんなにも簡単にくれるんだ…でも、貴族がパンに焦げ絵して遊ぶのはあまりにまおかしすぎるよ?
色んな気持ちが爆発して今までで一番笑った気がするし、胸が張り裂けそうなほど辛かった闇属性という事実が誇らしくてたまらなかった

私は私の個性で家族を、お祖父様を助ける、私の個性を愛してあげれる…闇属性は私の個性なんだ…!




彼の名前はルディヴィス…
私の個性を受け入れ、光を灯してくれた恩人だ
自己紹介してお友達になって、こんなにも嬉しい気持ちが溢れて…私はもう悩まないと誓えた

ルディヴィスと別れてお祖父様の元に戻った時、きっと清々しい顔をしていたのかもしれない
良い出会いでもあったのかな?とお祖父様に言われて内緒と答えられるくらいには心に余裕が生まれてたから











貴族らしくない内緒のお茶会が楽しみで仕方ない
近い内にまた会おうねルディヴィス、あなたは私の闇の光だ


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