54 / 174
乙女ゲーム編
謝罪と聖女
しおりを挟むヘルリが学園で人狼化する事件から数日後、ラッジ先生と保険医の先生の協力もあり、人狼化した従者の件は大きな生徒間でトラブルとならずに鎮静化し、ヘルリも従者として復帰した
シャルティもヘルリを無意識に巻き込んでしまったと一時落ち込んだが、シャルティは悪くないと、ヘルリが子犬になって甘えて解決した
更に同じ頃、学園長経由でサングイス公爵家にヘルリへの外的な魔力負荷に関する調査結果が届く
結果として、ヘルリに掛けられた負荷の魔力残滓は聖光魔法…つまり聖女から人狼化する程の負荷を掛けられた事が判明してしまう…
おれには乙女ゲームの知識が曖昧だがある…だから予想していたとはいえ、その報告はある意味ショックだった
本来のあのイベントの流れは悪役令嬢に酷使されて図書館で多量の本運べと命令され、一人きりになった時、疲れから人狼化し暴走してしまう…だが聖女と出会い傷付いた身体を治癒魔法で癒されて…その力が人狼化の暴走化までも安定させるそんな分岐があるストーリーだったような気がする
その日からこっそり聖女と時々会って話をする度、心が癒されて自分が犬として飼われることは間違いだと気付く…たしかそんな流れだったはず
今回の件も概ね聖女の行動はシナリオに沿っている、しかし乙女ゲームでは酷使されているヘルリはいない…たがらこそ、シャルティの異常な行動があったとしても、ヘルリは自然と暴走するなんて事にはならない…
強制力で暴走してしまったとしても聖女が救ってくれる展開もあったかもしれないのに…だからこそ、暴走もしてない状況が魔力痕からわかるため、聖女がヘルリに対して何かしらの魔力の負荷を掛け暴走させた事はあまりにも受け入れ難い
それに悪役令嬢に無理矢理付けられてた重金属の隷属の首輪と、現在ヘルリが望んで付けている本革とプラチナで作られたチョーカーを一緒にしないで欲しかった…
どう見ても大切にしていると分かるものをあえて壊さず、話を聞くなどで心を救う事は出来なかったのだろうか?
おれはまだ聖女と会ってないし、むしろ乙女ゲームの流れを汲むなら会う筈のない上級生…悪役令嬢の兄だとしてもゲームでは聖女に会った描写なんてない本気のモブだ…そう考えると会わないほうがいいのかもしれない…
今、応接室にレルム伯爵と聖女ルチア様がヘルリに対する謝罪に来ている
父様と母様が対応し、被害に会ったヘルリは何故か絶対に会いたくないとおれの部屋にいる
シャルティも何処か不安な顔をしてマイケルと共におれの部屋で4人で待機している状態だ
貴族としての決まりや礼儀などを聖女に教える立場であり、聖女を保護したレルム伯爵が同伴し謝罪に来るのは当然の事
だが、マイケルとおれ付きのメイドの話では屋敷に入ってすぐ父様達に謝罪した瞬間、聖女はヘルリに会わせてと泣き出したのだらしい…
「本人が会いたくないと言ってる、泣けば解決することじゃない、身を弁えなさい今日は謝罪に来ているんだぞ」
と、影でシャルティへの噂話をしてるらしいレルム伯爵とは思えない台詞が出て驚いたと言っていた
屋敷中に謝りながらヘルリに会わせてと聖女の声が響き、怯える子犬の様にヘルリがおれにしがみついてしまったのは仕方ないと思う
父様と母様が任せなさいと応接室で現在も対応してくれているが、入学式の時、少し顔と転んだ後ろ姿を見ただけの聖女様は乙女ゲームで見た穏やかで優しい存在とは少し違う気がしてならなかった
「今、話し合いが終わったよ…食堂に来なさい、話し合いの結果を教えてあげよう」
父様がそう、おれの部屋に呼びに来た
皆で食堂に移動すると少し疲れた顔の母様が席に座っていて、メイドが紅茶を準備してくれていた
全員、席に着くよう父様に言われ座ると、一度ため息を付いた父様が今日あった事を教えてくれる
「父様、話し合いはどうなりましたか…?」
「しっかりと今回の状況を確認し、こちら側からの抗議はしっかりと行ったよ、レルム伯爵があそこまで萎縮する姿は初めてみる位にはね…
本題だが、ヘルリへの聖女様からの接触については、冷遇されたヘルリが気の毒に見えてしまい可哀想で助けたい気持ちから行った事だと何度も泣きながら話していた
どの辺りに冷遇を感じたのか聞いても、あんな酷い目に会って可哀想で…と、過去のヘルリを知っているのか分からないが泣いていて話しにならない…
例え過去を知っていたとしても他人に魔力の負荷を掛ける行為は例え聖光魔法を使える聖女だとしても許す事は出来ないとちゃんと伝えたから安心しなさい」
3時間程話し合いで、何度も謝罪しレルム伯爵は帰っていった…しかし最後まで聖女様は可哀想で、こんな筈じゃ無かったと泣いていたと言う…
従者はその家の財産とも言える貴重な人材だ、その財産に対しての今回の行為、例え聖女でもある意味の罪となる
詳しい賠償等については今後話し合うがとりあえずヘルリに対しての接触禁止の制約をさせて今日は帰ったということだった
こんなはずじゃ無かったのに…それはおれが言いたい台詞だ…何故か異様に聖女を怖がるヘルリ…
その聖女からヘルリに対する接触は今後無い…それだけでも救いと言えるのだろうか…
4,182
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる