【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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現実編

何処までがゲームなのか

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聖女の悪役令嬢?に足を掛けられて転びましたって件が初回不発に終わり、第二王子殿下に抱き抱えられて回収されるという出来事から数日
おれがある程度何かを対策している、それを踏まえて初回で失敗したんだからやめるのかと思いきや、そのまま続け様におれの前で見計らったように何度か転ぶ事が起きている…



こちらが罪を捏造しようとされているって警戒してる事を理解して諦めればいいのに…
諦めてくれさえすれば悪役令嬢とか断罪とか…何も心配しないでみんなと普通に過ごせるのに

自分には目的がある、諦めるなんてそんな事絶対ない…そんな事を言いたそうな顔をしておれの前で転ぶんだ…
もちろん聖女の目的の為に断罪される気はおれにだってない、レオンハルト殿下含め一緒に移動している人の半歩後ろの位置をキープし、聖女が転んだらすかさず手を差し伸べてる対応を続ける



その聖女の目的がよくわからないから困っている…更に変化する行動にも…
どうしてもおれを悪役令嬢?にしたいのか分からないが、転ぶ手段にも変化が見られ、声をかけて手を差し伸べる前に最近は驚きの速さで逃げるのだ
転んでから涙ぐんで起き上がり足を庇いながら走り出すまでが物凄く速い…庇ってる足でそんなに早く走れるの??って驚くほど速い

それも人気が少ない場所におれがいる時のみを狙ってやってくる傾向にあると最近気付いた
まさかとは思ったが、この聖女の行動による思惑は成功していたのだ
どこかで転んだかのようなボロボロの姿…それをクラスで見せつけ「自分が奇跡の乙女だからよく思われてないの…」とか言ってるんだろう

1年生周辺から流れてくる噂話のあれこれ…そこには確かに聖女が転んで怪我をしている、遠目で見たけどおれの前で聖女様が転んでいた…そして必死に逃げていた
そんな少しの目撃情報で原因はおれが足を掛けて転ばせていること、そんな雰囲気を作り出しているようだった



確実に違う、そう撤回したいがまだ時期じゃない…王家の影を含めこちらには確実に聖女に足を掛けてない証拠がいくらでもある
だが、乙女ゲームのヒロインである聖女が何を求めてどこへ向かうのか…それが不透明な内はリスクが大きい

乙女ゲームの結末だとしてもどのルートを突き進もうとしているのかで終着点が変わってくる…その事もあり、目的が全くわからない段階でこちらから仕掛けるのは不味いと思う
せめておれが覚えている乙女ゲームのルートだと嬉しいな…目的がそれが分からないとこちらも撒き餌になっている意味がない



この世界は光の聖女に愛を灯す…だが既にメイン攻略対象であるレオンハルト殿下、マイズ、イグニス、ヘルリは虚言を繰り返す聖女を疑っている…
光を灯すどころか消えかかっている
しかし隠し攻略対象のジェイス第二王子は聖女の味方…この隠し要素の第二王子がどの程度乙女ゲームで影響があったかわからない

それにシャルティに一度起きた強制力と思われる不思議な出来事と、まるで悪役令嬢のような記憶の断片についてもまだわからないことが多い



聖女へ対するメイン攻略対象者の反応が酷いこの時点で乙女ゲームの半分くらい破綻してそうだが…
それでもここは乙女ゲームの世界、強制力や決められたエンディングが起こり得る世界だと思っていた方がいい…
現状、シャルティを悪役令嬢に仕立て上げて断罪へ持っていく…その状況は回避出来ている…それだけで十分だ




おれはこの乙女ゲームを壊してでもシャルティが断罪されず、みんなが幸せに暮らせる未来を守りたい
でも何処までがゲームの世界なのかわからない事が怖い、おれがここは現実だと思っていても違うかもしれないから…
明日突然みんなが、まるでゲームの攻略対象の台詞を言い始めて…おれの知ってるみんなじゃなくなる可能性もあるかもしれない


…それが怖いんだ…




「ルディヴィス…また難しい事考えてるだろ…?
一人で悩むな、ちゃんと俺に相談しろ、それから悩めばいいだろ?…………な?」


最近忙しいのかマイズとイグニスは何処かに出かけ、シャルティはヘルリとマイケルと一緒に今日は先に帰宅している
おれはレオンハルト殿下と婚約者としての交流会…その為
サロンに向かう途中、難しい顔をしていたらしい…
レオンハルト殿下に悩むなら正しく悩めって
これが婚約者の距離感だと、抱き寄せられて頭を撫でられる…絶対違うと思う悩み方だけど…いいか
一人で悩むな…その言葉が嬉しい

そうだ、そうだよな…おれはもう一人で悩まなくていいんだ…



「ここが乙女ゲームっていうゲームの世界だって前に言っただろう?その事を考えてた…
おれが現実だといくら願っても乙女ゲームの強制力っていうのが…決められた流れに沿って進む力が働いたらどうしようって、何より聖女が何したいか分からなくて怖い
明日起きたら、みんながおれの知らない性格になったりしてたらって思うと怖いんだ…」


おれがそこまで言うと、レオンハルト殿下の腕の力が強くなり、ぎゅうぎゅうって若干苦しいくらい抱きしめられた
どうしようなんか嬉しい…すごくあったかい…


「俺にはまた乙女ゲームとかあのやばい女が聖女でヒロインだとか…本音を言うとよくわかっていない…
でも、ルディヴィスが俺たちのために必死にこれまで色々考えてくれてた事と、お前たちだけは信じられるって気持ちだけは本物だって胸を張って言える
だからそんなに不安がるなルディヴィス

それでも不安なら…そうだな…もしも、あのやばい女に洗脳でもされたらそれこそキスでもして起こしてくれ!どんな禁術レベルの洗脳でも瞬く間に解いてやるよ!」

「…………ふふっ、ははっ!…っ、なんだよそれ…
レオンハルト殿下がキスしたいだけじゃないの?」



バレたかって笑うレオンハルト殿下はまさに王子様って見た目でかっこいい
王子のキスで姫が目覚めるのは聞いたことあるけど、悪役令嬢の兄のキスで王子が目覚めるっていうのはちょっと字面的に無いと思う
それでも、そういってくれることが嬉しい…キスは………うん、昔から言ってるけど恥ずかしいんだ本気で

生前もクソ妹の介入で彼女と長続きした事も無ければエッチな事も…キスさえもまともに経験ないんだよおれ…色々未経験なんだって
だから婚約者としては、大人になるまで気長に待っててくれって思う









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