悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです! こっちに来ないでください

たなぱ

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現実編

炎と水

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シャルティの叫び声とレオンハルト殿下の訴えかける声が演習場に響く…
お兄ちゃん目線で完璧な淑女であるシャルティが叫ぶなんてこと、これまで一度も無かった
何が起きた!?一体何が起きたっていうんだよ!?!焦りだけが溢れて、たぶん手に持ってた紅茶のカップすら投げ捨てた気がする


そんなに離れて居なかったはずなのに、やや人混みになりかけてる他チームの間を縫って必死にシャルティの声がする方へ向かう
おれがレオンハルト殿下の婚約者になったからシャルティは悪役令嬢となる位置関係に居ない、もう乙女ゲームから解放されてもいいはずなのに何が…!?

合同魔法演習が始まった頃に見た白昼夢のような光景が目に浮かぶ…でも、あれは意図的に悪役令嬢が聖女に向かって嫌がらせをするストーリーの現場だ…
ヘルリの時のような違和感のある行動があったらレオンハルト殿下がもっと早く教えてくれる…だとしたらこの叫びはなんなんだ…?




早く、早くと必死に向かった先で見たもの
それは炎に包まれるように自らの魔力を抑え込み、泣き叫ぶシャルティと…熱源となっているシャルティに近付けてないレオンハルト殿下、チームメイト…

そして
聖女様がシャルティの目の前にいる
潤んだ瞳で…まるで怯えるように座り込んでいた








またこの女が何かしたのか…?
どれだけシャルティを悪役にしたいんだ?






状況を飲み込んだ訳じゃない
なのに見ただけで感じる気味の悪い感情は本物で…
ざわりとおれの中に嫌な感情が芽生える、生まれてはいけない感情…この乙女ゲームのヒロインである聖女を排除したいと思う感情…

シャルティに何をした?
なんでシャルティの前に座り込んでいるんだ?
シャルティを暴走させたのはお前なのか?
……お前は…………一体何が目的なんだ!!!!
シャルティの為に聖女を消さないと、排除しないと
…邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔………………





「…………っうぁ…………あぁあぁぁぁぁぁっ!!!いや、いやぁ…!!…逃げて、っ…そこからどいて…!!お願い…!!!!」






「っ、ルディヴィス!ルディヴィス!!!助けてくれ!俺達じゃどうしようも無いんだ!!」


シャルティの悲痛な声と、レオンハルト殿下に肩を揺さぶられた衝撃で頭がクリアになる…
今、おれは何を考えてた?何か恐ろしい事を…いや、それよりも今はシャルティだ…!シャルティを助けないと…!!


「わかってる、おれが止める…レオンハルト殿下は怪我人が出ないようにしてくれ、後早く先生を…!」

「…………っ、わかった!!頼む…ルディヴィス…!」

「…もちろんだ」



レオンハルト殿下が周囲に指示を出し、シャルティから遠ざける
授業終わりの待機時間…、先生達はリーダーをしていた生徒から課題の提出を受けているはず…校舎からここまでの距離なら、早く連れてきてくれるだろう
だが、その前にシャルティを助ける

なんでそこにゲームのヒロインが居るんだよって疑問は直に解決した、怯えて泣いている聖女の表情…それが一瞬歪んだのが見えたから
笑ったな?今…………
シャルティが暴走する何かをしたのか?わからない、だが確信した、原因は明らかにあの女だ…



そこまでシナリオ通りにしたいのか?そう言うことなのか?既に手順が違うのに、怪我をする筈のモブ生徒も居ないのに…どうやってあのメインストーリーを成立させるんだよ………?
馬鹿なのかなんなのか知らない、だが…現状あの場面を再現しようとしてるのが何故かわかる
けどな…おれが、乙女ゲームを成立なんかさせてやらない
軽く深呼吸をして、近くにいたイグニスにある頼み事をする…そしてシャルティの前に向かった





「………シャルティ、遅くなってごめん」

「……………!?………お、…………ぅっ、…………お義兄様っ…!早く聖女様を、逃げて…もう…………ぁぁぁっやだ、やだぁ………」



ブワリとシャルティから魔力が漏れ出す
ジリジリと地面の草木が焦げているのを見るに、火炎魔法を身に纏っているようなそんな状況…
使用者本人が火傷をする事は無い、しかし抑えきれなくなった炎が弾け、周囲まで広がるのは時間の問題…まるで魔法を使い慣れていない子供のような状態だ

こんな事今まで無かったのに…
そんなシャルティの目の前に座り込む聖女、あれが早く逃げてくれないから、シャルティもどうしていいかわからないんだろう
本来、魔力が暴走した時の対処として安定するまで放出するっていうのがある…シャルティはそれをしたいが自分が動いた衝撃で弾けてしまうかもしれない…でも聖女が近すぎてその場でも放出出来ず、体内に魔力を留めて苦しんでる…なるほど?そういう事か


元々魔法のセンスがあり威力も高く、サングイス家特有の強い火炎魔法の前に、その熱さで皆怯えて聖女を助け出したくても誰も出来ない
その聖女をよく見ると自らに聖光魔法を纏って火傷とかを防ぎそこにいるみたいだ
なんでこんなにも冷静になってるのか、まるでゲームの画面でも見ながら自分を操作しているような感覚…けど、今の状況では都合がよかった



「シャルティ、大丈夫…大丈夫だから」
自分の全身を水魔法で包み込みながらシャルティに近付く、聖女がなんで近づいてくるのって顔してるが知らねぇ
おれは聖女が何をしたかわからないが、シャルティが人を傷つけたくないって苦しんでる心を救いたいんだ



おれまで焼けてしまうって怯えるシャルティに焼けないって笑いながら伝えて炎ごとシャルティを抱きしめる
身体に纏った水がジュウウウって音を立て、勢いよく沸騰しそうになるが水を循環させ闇魔法で冷やしながらシャルティの魔力を吸い上げ、おれの体内に溜め込む

火元に直接水をかけたら消火はできるが、シャルティが生み出した炎では火元は体内だ、そこに水を掛けることは出来ない
おれに出来るのは、同じサングイスの血が流れてるから…いとこって部分で繋がってるからこそできる、子供が魔力暴走した時の親の対応を自分でする事

その為に直接シャルティに触れてしまった手のひらと頬がやけに熱いが気にしてる場合じゃない
絶え間なく水を循環させ冷やし、皮膚経由で魔力を吸い上げていく
それを繰り返すと徐々に徐々に、全体の熱が引いていくのがわかった
後ろでなんか聖女がブツブツ言ってるのが気にしない



「お……お義兄様……私…、私………」

「大丈夫って言っただろ?なんの為におれが水とか土魔法でよかったって幼い頃から喜んでると思う?こういう時にルティを救えるからだよ
何があったのかわからないけど、大丈夫…落ち着いて…な?」

「………っ、つっう……お義兄様ぁ………!!」




そのままシャルティが泣きながら気を失った
鎮火で濡れた地面に触れぬよう、しっかり抱き締め直す
先生達がここに到着する前に鎮火できてよかったと思いつつ…これからなんて説明しよう…おれはその事を考えていた






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