58 / 152
現実編
炎と水
しおりを挟むシャルティの叫び声とレオンハルト殿下の訴えかける声が演習場に響く…
お兄ちゃん目線で完璧な淑女であるシャルティが叫ぶなんてこと、これまで一度も無かった
何が起きた!?一体何が起きたっていうんだよ!?!焦りだけが溢れて、たぶん手に持ってた紅茶のカップすら投げ捨てた気がする
そんなに離れて居なかったはずなのに、やや人混みになりかけてる他チームの間を縫って必死にシャルティの声がする方へ向かう
おれがレオンハルト殿下の婚約者になったからシャルティは悪役令嬢となる位置関係に居ない、もう乙女ゲームから解放されてもいいはずなのに何が…!?
合同魔法演習が始まった頃に見た白昼夢のような光景が目に浮かぶ…でも、あれは意図的に悪役令嬢が聖女に向かって嫌がらせをするストーリーの現場だ…
ヘルリの時のような違和感のある行動があったらレオンハルト殿下がもっと早く教えてくれる…だとしたらこの叫びはなんなんだ…?
早く、早くと必死に向かった先で見たもの
それは炎に包まれるように自らの魔力を抑え込み、泣き叫ぶシャルティと…熱源となっているシャルティに近付けてないレオンハルト殿下、チームメイト…
そして
聖女様がシャルティの目の前にいる
潤んだ瞳で…まるで怯えるように座り込んでいた
またこの女が何かしたのか…?
どれだけシャルティを悪役にしたいんだ?
状況を飲み込んだ訳じゃない
なのに見ただけで感じる気味の悪い感情は本物で…
ざわりとおれの中に嫌な感情が芽生える、生まれてはいけない感情…この乙女ゲームのヒロインである聖女を排除したいと思う感情…
シャルティに何をした?
なんでシャルティの前に座り込んでいるんだ?
シャルティを暴走させたのはお前なのか?
……お前は…………一体何が目的なんだ!!!!
シャルティの為に聖女を消さないと、排除しないと
…邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔………………
「…………っうぁ…………あぁあぁぁぁぁぁっ!!!いや、いやぁ…!!…逃げて、っ…そこからどいて…!!お願い…!!!!」
「っ、ルディヴィス!ルディヴィス!!!助けてくれ!俺達じゃどうしようも無いんだ!!」
シャルティの悲痛な声と、レオンハルト殿下に肩を揺さぶられた衝撃で頭がクリアになる…
今、おれは何を考えてた?何か恐ろしい事を…いや、それよりも今はシャルティだ…!シャルティを助けないと…!!
「わかってる、おれが止める…レオンハルト殿下は怪我人が出ないようにしてくれ、後早く先生を…!」
「…………っ、わかった!!頼む…ルディヴィス…!」
「…もちろんだ」
レオンハルト殿下が周囲に指示を出し、シャルティから遠ざける
授業終わりの待機時間…、先生達はリーダーをしていた生徒から課題の提出を受けているはず…校舎からここまでの距離なら、早く連れてきてくれるだろう
だが、その前にシャルティを助ける
なんでそこにゲームのヒロインが居るんだよって疑問は直に解決した、怯えて泣いている聖女の表情…それが一瞬歪んだのが見えたから
笑ったな?今…………
シャルティが暴走する何かをしたのか?わからない、だが確信した、原因は明らかにあの女だ…
そこまでシナリオ通りにしたいのか?そう言うことなのか?既に手順が違うのに、怪我をする筈のモブ生徒も居ないのに…どうやってあのメインストーリーを成立させるんだよ………?
馬鹿なのかなんなのか知らない、だが…現状あの場面を再現しようとしてるのが何故かわかる
けどな…おれが、乙女ゲームを成立なんかさせてやらない
軽く深呼吸をして、近くにいたイグニスにある頼み事をする…そしてシャルティの前に向かった
「………シャルティ、遅くなってごめん」
「……………!?………お、…………ぅっ、…………お義兄様っ…!早く聖女様を、逃げて…もう…………ぁぁぁっやだ、やだぁ………」
ブワリとシャルティから魔力が漏れ出す
ジリジリと地面の草木が焦げているのを見るに、火炎魔法を身に纏っているようなそんな状況…
使用者本人が火傷をする事は無い、しかし抑えきれなくなった炎が弾け、周囲まで広がるのは時間の問題…まるで魔法を使い慣れていない子供のような状態だ
こんな事今まで無かったのに…
そんなシャルティの目の前に座り込む聖女、あれが早く逃げてくれないから、シャルティもどうしていいかわからないんだろう
本来、魔力が暴走した時の対処として安定するまで放出するっていうのがある…シャルティはそれをしたいが自分が動いた衝撃で弾けてしまうかもしれない…でも聖女が近すぎてその場でも放出出来ず、体内に魔力を留めて苦しんでる…なるほど?そういう事か
元々魔法のセンスがあり威力も高く、サングイス家特有の強い火炎魔法の前に、その熱さで皆怯えて聖女を助け出したくても誰も出来ない
その聖女をよく見ると自らに聖光魔法を纏って火傷とかを防ぎそこにいるみたいだ
なんでこんなにも冷静になってるのか、まるでゲームの画面でも見ながら自分を操作しているような感覚…けど、今の状況では都合がよかった
「シャルティ、大丈夫…大丈夫だから」
自分の全身を水魔法で包み込みながらシャルティに近付く、聖女がなんで近づいてくるのって顔してるが知らねぇ
おれは聖女が何をしたかわからないが、シャルティが人を傷つけたくないって苦しんでる心を救いたいんだ
おれまで焼けてしまうって怯えるシャルティに焼けないって笑いながら伝えて炎ごとシャルティを抱きしめる
身体に纏った水がジュウウウって音を立て、勢いよく沸騰しそうになるが水を循環させ闇魔法で冷やしながらシャルティの魔力を吸い上げ、おれの体内に溜め込む
火元に直接水をかけたら消火はできるが、シャルティが生み出した炎では火元は体内だ、そこに水を掛けることは出来ない
おれに出来るのは、同じサングイスの血が流れてるから…いとこって部分で繋がってるからこそできる、子供が魔力暴走した時の親の対応を自分でする事
その為に直接シャルティに触れてしまった手のひらと頬がやけに熱いが気にしてる場合じゃない
絶え間なく水を循環させ冷やし、皮膚経由で魔力を吸い上げていく
それを繰り返すと徐々に徐々に、全体の熱が引いていくのがわかった
後ろでなんか聖女がブツブツ言ってるのが気にしない
「お……お義兄様……私…、私………」
「大丈夫って言っただろ?なんの為におれが水とか土魔法でよかったって幼い頃から喜んでると思う?こういう時にルティを救えるからだよ
何があったのかわからないけど、大丈夫…落ち着いて…な?」
「………っ、つっう……お義兄様ぁ………!!」
そのままシャルティが泣きながら気を失った
鎮火で濡れた地面に触れぬよう、しっかり抱き締め直す
先生達がここに到着する前に鎮火できてよかったと思いつつ…これからなんて説明しよう…おれはその事を考えていた
3,520
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。