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現実編
信じたくない
しおりを挟むどうしたらいいんだ、それだけをひたすら考えながら共用エリアの保健室に入ると、話し声が聴こえる
その声から察するに、既にシャルティは目覚めており、マイズ達と何か会話をしているようだった
少しだけほっとする…まさか気絶して目覚めないなんて最悪の事態にならなくてよかったと…
「…………っ、あっ…………お義兄様…………!」
保健室に入ってくるおれを見て、シャルティが涙ぐみながらベットから降りようとしてマイズと保険医の先生に止められていた
動きから怪我はしていない様子だけど何処か焦ったような…そんな感じがする
急いでシャルティのいるベットへ向かうと、よかったって安堵の表情と、どこにも行かないでと言うように焦る表情で必死におれにしがみついてきた
急なことに少し動揺しつつシャルティを強く抱きしめると、肩に顔を埋めて嗚咽を漏らしながら泣いているようだ…
「怪我は無い?シャルティ?おれは何ともなかったよ何処にも行かないから、大丈夫だから…ね?」
「っ、ううっ……お、お義兄様っ…よがっだですわ……怪我、してない…っ……私、私がお義兄様を傷付けたんじゃないがっで………こわくて、ごわぐで………ごめんなざい…お義、兄様っ………!」
おれを傷付けた…それはあの魔力暴走した時に怪我をした火傷の事だろう…完治させといて良かったと思う程、やはりシャルティにとってはおれに怪我をさせたって事実が恐怖だったみたいだ
マイズに感謝しないと…物凄く感謝しないと…
そう思いながら泣きじゃくる可愛い義妹をしっかりと抱きしながらあやす…
その姿をレオンハルト殿下達も良かったって言う感じに、マイケルはやっぱり兄妹愛っていいなとか言いながら涙ぐんで見ていた
「シャルティ、目覚めたようで何よりだが…その感じじゃ直ぐには話せない…な?
まぁ、後は下校だけの時間だ…落ち着いてからでいいから後でシャルティから話を聞かせてくれ
先生、ちょっとしたトラブルがありまして、俺はここで待機しますんで」
ラッジ先生は共用エリアの保険医の先生と話をしてシャルティが泣き止むのを待ってくれる
明らかにシャルティの反応は聖女と真逆だ…その涙一つでさえ本物だと言えるのは確実にこちらといえるだろう
それはラッジ先生にもまだ話を聞いていない段階で伝わっているようだった
泣き止むのを待つ間、保険医の先生からここに気絶して運び込まれた時の状況を説明してもらった
軽い検査の結果、シャルティは外傷は無いが、魔力暴走を起こした際に魔力を体内に限界以上留めていた為、その影響で暫く魔力が落ち着かない日が続く可能性があると教えてくれた
そして、保険医の先生の所見では今回の暴走の仕方は内的要因ではなく、外的なものの可能性が高いと…まるで魔力の流れを外に誘発されたような…そんな溢れ出し方をしているらしい…
おれは、泣きじゃくるシャルティを抱きしめながら保険医の先生の話を聞いていた…誘発ってなんだよと思いつつも、話から明らかにシャルティが望んで聖女へ攻撃を仕掛けたわけじゃないのがわかって嬉しかった
今後、魔力が安定しない可能性がある…その対処法として、保険医の先生は魔力を安定させるハーブティーを用意してくれるという…
安静にしていれば大丈夫と言われ、シャルティの背中を擦りながら、その言葉に甘える事にした
保険医の先生がハーブティーを用意するために部屋から出ていく…そのタイミングで泣いていたシャルティはようやく顔を上げる
せっかくの可愛い顔が…いや、泣いてても可愛い…とかとか思えるほどの美しい涙を零しながらシャルティは話をしてくれた
「……………っ、お義兄様ごめんなさい…取り乱しました、何度見ても奇跡としか言いようがないです…私の炎がお義兄様にとんでもない傷を、作らなくてよかった………ご無事で本当によかった……
あの…大切なお話があるんです…あの時、私が魔力暴走する直前の事をお話したくって…」
ガタリとラッジ先生が待っている間、座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がる
レオンハルト殿下やイグニス達もまさか聞く前にシャルティが話を始めようとするとは思わなかった、という反応でこちらを見てきた
おれの目をじっと見つめ、何かを考えながらシャルティは言葉を紡ぐ
「あの時、私が炎を暴走させる直前…記憶は断片的で曖昧ではあるんです…けれど、確実に私は聖女様から話があると囁かれて…
こう言われたんです…
『何故、邪魔をするの?悪悪役令嬢のくせに!あんたがあのモブ兄を動かしてるの?』
『あのモブ、邪魔の仕方がまるであたしのお兄ちゃんみたいで本当に腹が立つ!…ほんとムカつく!………ここのシーンではあんたはあたしを攻撃するのが仕事なのに!』
確かそんな事を…言われました…その直後どうしようもなく身体が熱くなって…気が付いたら炎を纏っていて…
自分でもどうしようも無く熱くて悲しくて…でも、目の前の聖女様を怪我させらたらすべてが終わる…そんな恐怖があって…怖かった…」
そこまでシャルティは説明すると口を噤み、再度おれをじっとみつめ、おれの表情を見て、涙を流した
今、おれはひどい顔をしていると思う
まさかとは思っていたけど…嘘だろ…?シャルティに言った聖女の言葉が嘘であって欲しい…嘘だったらいいのに…
『邪魔の仕方が…まるでお兄ちゃんみたいで腹が立つ…ほんと、ムカつく』
そのフレーズに近い言葉をおれは何度も言われている記憶がある事を信じたくなかった
『お兄ちゃん、あたしの話聞いてる?ほんとムカつく!可愛い妹が喋ってんのに寝ないでよお兄ちゃん!!』
脳裏でクソ妹が話す言葉と聖女が重なった
あってほしくなかった事実、聖女はおれの生前の妹だ………
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