【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

文字の大きさ
87 / 174
現実編

信じたくない

しおりを挟む





どうしたらいいんだ、それだけをひたすら考えながら共用エリアの保健室に入ると、話し声が聴こえる
その声から察するに、既にシャルティは目覚めており、マイズ達と何か会話をしているようだった

少しだけほっとする…まさか気絶して目覚めないなんて最悪の事態にならなくてよかったと…


「…………っ、あっ…………お義兄様…………!」


保健室に入ってくるおれを見て、シャルティが涙ぐみながらベットから降りようとしてマイズと保険医の先生に止められていた
動きから怪我はしていない様子だけど何処か焦ったような…そんな感じがする

急いでシャルティのいるベットへ向かうと、よかったって安堵の表情と、どこにも行かないでと言うように焦る表情で必死におれにしがみついてきた
急なことに少し動揺しつつシャルティを強く抱きしめると、肩に顔を埋めて嗚咽を漏らしながら泣いているようだ…


「怪我は無い?シャルティ?おれは何ともなかったよ何処にも行かないから、大丈夫だから…ね?」

「っ、ううっ……お、お義兄様っ…よがっだですわ……怪我、してない…っ……私、私がお義兄様を傷付けたんじゃないがっで………こわくて、ごわぐで………ごめんなざい…お義、兄様っ………!」


おれを傷付けた…それはあの魔力暴走した時に怪我をした火傷の事だろう…完治させといて良かったと思う程、やはりシャルティにとってはおれに怪我をさせたって事実が恐怖だったみたいだ
マイズに感謝しないと…物凄く感謝しないと…
そう思いながら泣きじゃくる可愛い義妹をしっかりと抱きしながらあやす…

その姿をレオンハルト殿下達も良かったって言う感じに、マイケルはやっぱり兄妹愛っていいなとか言いながら涙ぐんで見ていた


「シャルティ、目覚めたようで何よりだが…その感じじゃ直ぐには話せない…な?
まぁ、後は下校だけの時間だ…落ち着いてからでいいから後でシャルティから話を聞かせてくれ

先生、ちょっとしたトラブルがありまして、俺はここで待機しますんで」


ラッジ先生は共用エリアの保険医の先生と話をしてシャルティが泣き止むのを待ってくれる
明らかにシャルティの反応は聖女と真逆だ…その涙一つでさえ本物だと言えるのは確実にこちらといえるだろう
それはラッジ先生にもまだ話を聞いていない段階で伝わっているようだった



泣き止むのを待つ間、保険医の先生からここに気絶して運び込まれた時の状況を説明してもらった
軽い検査の結果、シャルティは外傷は無いが、魔力暴走を起こした際に魔力を体内に限界以上留めていた為、その影響で暫く魔力が落ち着かない日が続く可能性があると教えてくれた

そして、保険医の先生の所見では今回の暴走の仕方は内的要因ではなく、外的なものの可能性が高いと…まるで魔力の流れを外に誘発されたような…そんな溢れ出し方をしているらしい…


おれは、泣きじゃくるシャルティを抱きしめながら保険医の先生の話を聞いていた…誘発ってなんだよと思いつつも、話から明らかにシャルティが望んで聖女へ攻撃を仕掛けたわけじゃないのがわかって嬉しかった

今後、魔力が安定しない可能性がある…その対処法として、保険医の先生は魔力を安定させるハーブティーを用意してくれるという…
安静にしていれば大丈夫と言われ、シャルティの背中を擦りながら、その言葉に甘える事にした



保険医の先生がハーブティーを用意するために部屋から出ていく…そのタイミングで泣いていたシャルティはようやく顔を上げる

せっかくの可愛い顔が…いや、泣いてても可愛い…とかとか思えるほどの美しい涙を零しながらシャルティは話をしてくれた


「……………っ、お義兄様ごめんなさい…取り乱しました、何度見ても奇跡としか言いようがないです…私の炎がお義兄様にとんでもない傷を、作らなくてよかった………ご無事で本当によかった……

あの…大切なお話があるんです…あの時、私が魔力暴走する直前の事をお話したくって…」


ガタリとラッジ先生が待っている間、座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がる
レオンハルト殿下やイグニス達もまさか聞く前にシャルティが話を始めようとするとは思わなかった、という反応でこちらを見てきた

おれの目をじっと見つめ、何かを考えながらシャルティは言葉を紡ぐ


「あの時、私が炎を暴走させる直前…記憶は断片的で曖昧ではあるんです…けれど、確実に私は聖女様から話があると囁かれて…
こう言われたんです…

『何故、邪魔をするの?悪悪役令嬢のくせに!あんたがあのモブ兄を動かしてるの?』
『あのモブ、邪魔の仕方がまるであたしのお兄ちゃんみたいで本当に腹が立つ!…ほんとムカつく!………ここのシーンではあんたはあたしを攻撃するのが仕事なのに!』

確かそんな事を…言われました…その直後どうしようもなく身体が熱くなって…気が付いたら炎を纏っていて…

自分でもどうしようも無く熱くて悲しくて…でも、目の前の聖女様を怪我させらたらすべてが終わる…そんな恐怖があって…怖かった…」


そこまでシャルティは説明すると口を噤み、再度おれをじっとみつめ、おれの表情を見て、涙を流した



今、おれはひどい顔をしていると思う
まさかとは思っていたけど…嘘だろ…?シャルティに言った聖女の言葉が嘘であって欲しい…嘘だったらいいのに…


『邪魔の仕方が…まるでお兄ちゃんみたいで腹が立つ…ほんと、ムカつく』


そのフレーズに近い言葉をおれは何度も言われている記憶がある事を信じたくなかった

『お兄ちゃん、あたしの話聞いてる?ほんとムカつく!可愛い妹が喋ってんのに寝ないでよお兄ちゃん!!』


脳裏でクソ妹が話す言葉と聖女が重なった
あってほしくなかった事実、聖女はおれの生前の妹だ………













しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...