悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

文字の大きさ
上 下
118 / 173
陽動編

歓迎会 後編

しおりを挟む





聖女にとってパーティーとは余程楽しい物なのかもしれない…もっと攻略対象であるみんなに接触するのかと思えば、普通にパーティーを楽しんでいる感じもある…
とりあえずおれには近づきたくないのか、隣にいるレオンハルト殿下の所にも挨拶以降来ず、マイケル達への接触で留まっているみたいだった
ケーキを食べ、料理を食べ、まるで自分が主人公の様に振る舞う聖女…その後をゆったりと追う第二王子がいる


特に問題もなく歓迎会は滞りなく進んでいたが、聖女がルイ王子に歓迎の挨拶を行う時間が近づいた頃…ある違和感に気付く

終始、聖女を優しく見つめ微笑む第二王子が時々おれの方を見ている?気がする
特に目が合うとか話しかけられてる訳じゃない…睨まれてるわけでもない…でも、聖女を遠目に観察するおれを何故か見ている気が…
気のせいかもしれない、でも何故か違和感を感じる…よく考えると、聖女以上に何を考えてるかわからないレオンハルト殿下の腹違いの弟である第二王子ジェイス殿下…


「レオ、ジェイス殿下って…」

「ん?どうしたルディ…?っ!、そろそろ聖女の番みたいだぞ!」


違和感についてレオンハルト殿下に確認したかった、けどその時間は無いようで…ついに聖女の番が回って来たようだ
ジェイス第二王子に連れられ、制服がドレスコードの会場でただ1人夜会の様なドレスを身に纏い、堂々とルイ王子の前へ歩み出るその姿にはどう見ても自信に満ち溢れているようにしか見えなかった


「ルイ.ベラニード殿下、我が国へようこそ
僕はジェイス、歓迎会を主催するレオンハルトの義理の弟です
今回は我が国の聖女と共にご挨拶を…
さぁルチア、おいで?」

「あ、はい!ようこそ!ルイ王子!あたしは聖女のルチア♡ずっとあなたにお会いしたかったんです…!
あの、あの!せっかくお会いできたんです、あたしの事はルチアって呼んでください♡あ、もしよかったら街をあたしが案内とかしますよ!あたし、元々庶民でお友達少なくて…ルイ王子と仲良くなりたいなって…」


………………え、今なんて言った?
初対面で言う台詞ではない歓迎の言葉が聞こえた気がしたが、まだあの場には行けない
あまりおれ自身が聖女に近づいては計画の意味が無いから…
けどレオンハルト殿下と共に少し離れた位置から主催側の立ち位置で観察をしているが不安になってくる…陽動作戦だからある程度の失礼はルイ王子だって許してくれる…けど…ルイ王子の中身は可愛い女大っきらいな人間…このまま見てて大丈夫かな…?



「………………っ、ご挨拶ありがとうございます
僕はルイ、この度ラピスチアーノ魔法学園に留学出来た事をとても嬉しく思います
ジェイス殿下、聖女殿、在籍中にまた会うこともあるかもしれません…その際はまたお話出来るといいですね?」


おおっと!?ルイ王子、凄い…!素晴らしい王子スマイルで聖女の発言をまるっと無かった事にして、無難な返答してる!
また会うかもしれませんって会わないですと言ってるようなものだ…きっと内心は今にでも逃げたい気持ちで溢れてるのかもしれない…

よく見ると、ガルロ先輩が腰を擦り、マイズがルイ王子の手を握ってる…隣にいるよって励ましているんだろうか?苦手だと言っていた女を目の前にして逃亡しようとしてるのを阻止してるのか?


「ふふ、恥ずかしがり屋さんなんですね?ルイ王子!大丈夫です、ルチアが側にいますから!
人見知りなんてすぐ克服できますよ!
あ!一緒にカフェとかどうですか?おすすめの所があるんです♡ルイ王子と一緒にお茶したいなって!」

「ハハハ、既に先約が永久的に決まっておりまして…お気持ちだけで大丈夫ですよ…お気持ちだけで、ね?」


永久的に聖女とカフェとか行きたくないって言ってる…?言ってるよな…
隣から小さくルイ王子必死過ぎて笑いそうってレオンハルト殿下の声がする…笑ったら可哀想だから耐えよう!必死に聖女の誘いを断ってるんだから!
………それにしても…初対面だよな?相手は隣国の王子だ…その対応は明らかに良くない
礼儀すらも分からないのか…それとも…
おれの中で見たことがあるルイ王子とのエピソードに当てはまらない為、これが乙女ゲームのヒロインの言動として正しいのかわからなかった


数分、聖女は同じ様な会話を繰り返しルイ王子に迫る、台詞一つ一つは失礼過ぎて予想外だけど…話の通じない女である事はみんなからの情報で分かってたし、ある意味想定の範囲内だ



その時間を利用し舞台を整える
ルイ王子を目の前にした聖女、その付近にいるマイズ、ガルロ先輩…少し離れた位置にはおれとレオンハルト殿下、イグニス、マイケル

そして、聖女が行う歓迎の挨拶に不安を募らせる参加者が道を開け登場する存在を迎え入れ、今日の目的を果たすんだ


「あら、庶民がルイ王子を困らせていいと思っていますの?迷惑、その言葉の意味も知らないなんて哀れでなりませんわ…ねぇ、ヘルリ?あなたはどう思う?」

「………………シャルティ様のおっしゃる通りです」



真っ赤な髪を靡かせ、従者である青年に赤い首輪とリードを付け従わせるようにルイ王子と聖女の元へ歩みを進める…
つり目でキツい表情だが、恐ろしい程美しく、血に染まったような真紅の口紅が妖艶さを醸し出す…存在
この乙女ゲームでいる筈なのにいなかった存在、ヒロインである聖女が無理矢理にでも作り上げたかった宿敵


悪役令嬢、シャルティ.サングイスが聖女の目の前に現れた
乙女ゲームと同じ鞭を持ち、怪しげに笑うその首元には攻略対象者が身に着けているネックレスと同じ物が輝いている



「な、何で…なんで悪役令嬢がいるのよ……!!!??」



なんでって、歓迎会が終了だからだよ?聖女様?













しおりを挟む
感想 190

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...