【書籍化進行中】悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ

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反撃編

自覚する

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Side レオンハルト





ルディヴィスが抱えていた葛藤や不安…それを吐き出させることに成功した
なんでもっと早く気付いてやれなかったんだって気持ちもある…でも、俺はルディヴィスにある程度信頼されてるって思ってたし…何より信じたいって気持ちが強くあったから…俺自身心の何処かでいつか話してくれると思ってたのかもしれない

だからこそ、想像以上に重く考え込んでいたのに気付いてあげれなかった、動くのが遅くなってしまった…
その事は反省しないといけない…まさか自らの命を賭して俺たちを守ろうとしていたなんて…



俺たちに足りなかった事、それは相手に頼ることだ
自分で全てを抱え込んで解決しようとせず…ちゃんと相談する事…

今日は色々な事があった…ルディの事だけじゃない、マイズの話もシャルティの実父の話も…この世界についての仮説も…
他者が聞いたら真相など誰にもわからない夢物語のような話
元々ここが乙女ゲームの世界なんだとルディヴィスが言っていたことも踏まえると、俺たちにとっては夢物語が真相に近付いたって言えるだろう


世界の謎についても気になるが、先ずは目先の計画だ
ルディヴィスの前世の妹、この国の聖女を引きずり落とす為の計画…これを完遂しない事にはルディヴィスの心に平穏なんて訪れない、それに…




「ルディ、今日は放課後ルディと二人きりで過ごしたい…夜までには俺の馬車で送るから…一緒に来てくれるか?」

「え、うん…いいけど…その前にちょっとマイズと話してから合流するよ」



ルディヴィスを放課後誘い俺は馬車で待機する
あの思い詰めてしまう性格、それは明らかに前世の記憶と体験を引きずっているからだ…
他者の為にならまだいいが自分の事になると、自分だけで他人に迷惑を掛けないようにしよう…そういう気持ちがあるように見える
俺を皆を頼れって言うだけじゃ足りない、もっと俺に頼る事を教えていかないと、ルディヴィスは前世の悲しい記憶に囚われたままだ


だからこそ、俺を意識してくれたこのタイミングで俺にある程度依存させる…抱え込む事を無意識に出来ないようにしてやる…!


そんな気持ちでルディヴィスを待つ
下心とか全く無いと言えば確実に嘘になるが、依存は偉大だと父上も言っていたし、頼るきっかけとして間違いじゃないはず
俺は本気でルディヴィスを愛してる…そろそろちゃんと理解させたい




………………
…………
……





マイズと話したりしてたら少し時間がかかってしまった…
レオンハルト殿下と二人きりで過ごすって言葉になぜかちょっと緊張しつつ馬車まで急ぐと、馬車の中で本を読む殿下がおれを待っている…



「ごめん、待ったか?マイズとちゃんと話…してきたんだ…後、シャルティ達に先に帰っていいとか伝えてたら少し時間かかったから…待たせてごめん」

「ん………全然待ってない、ルディが律儀な奴ってわかってるから大丈夫だ…とりあえず早く乗って、行きたいところがある」


自然と手を引かれ、エスコートされるように馬車のボックス席に腰掛ける…いつもなら向かい合わせなのに今日は隣同士…密着する程の距離感…なんで!?

いや、なんでじゃないのはわかるんだけども…一応婚約者同士だし…それにおれの事を本気で好きって思ってくれてるし…
だから全く距離感的には問題無い…けど、隣に座ってるだけなのに心臓がバクバクする!!
それに…さっきみんなに見られてて途中になったおれからレオンハルト殿下にキ、キスしようとしてたよなーって思い出すと変な汗も出てくる…やばい


恋愛とか邪魔されて前世でもほぼ未経験なんだよおれ…レオの事、どう思ってるか…混乱しててよくわからない自分がいるんだ、だから変な距離感も男同士とか関係なく緊張するもんはするんだよ!


レオンハルト殿下がなんか話してたけど緊張て何一つ耳に入ってこなかった…心臓がドキドキバクバク暴れ回ってうるさ過ぎでなんも聞こえない…そんな中、馬車で向かった先は王都の外れにある湖だった


驚くほど美しい透き通った湖…何処かで見たことがある…湖…そうだ、ここはレオンハルト殿下ルートでヒロインが告白される場所…じゃないか?


「ルディ…たぶんその顔だと、この場所にゲームの俺はヒロインを連れてきたりするんだろうな…?
だとしたら知ってると思うけど、ここは女神ラピス様が降り立ったとされる女神の泉、精霊の泉って呼ばれる場所だ
…永遠に共に居たいと願う大切な人が出来た時、女神様へ二人の愛を誓うと祝福して貰えるって話も知ってるか?」

「………………うん、知ってる…ここは聖女に対してレオが必ず君を守るよ、だから自分と共に居て欲しいって告白してた場所だから」


もうすぐ夕焼けが迫る時刻、太陽の光が赤く、より濃くなる時間
目の前の湖は乙女ゲームだと夜に内緒で来てたっけ?月明かりに照らされてるスチルがあった気がする…
悪役令嬢に虐められて、それでもめげずに皆を救おうとするヒロインに恋をしたレオンハルト殿下が想いを告げる場所

そこにおれを連れて来る意味って…



「なら、ここに来た意味分かるよな?
さっきも何度も言ったけどさ…俺はルディが好きだ、どうしようもないくらい…幼い頃からお前だけを愛してる…これからもずっと愛してるんだ
もっと甘えてきて欲しいし、甘やかしてドロドロに溶かしたい…そう女神様に誓う程、俺はお前がいないと生きていけない…
なぁ、ルディ…俺と同じ気持ちがルディの中にもあるって思っていいか?さっき、俺にキスしようとしたルディの気持ちは何だった?」


女神様の泉の前でレオンハルト殿下に少し抱き寄せられ頬を優しく撫でられる…本来ヒロインが告白されるこの場所で、全く違うシーンで答えを求められる
…おれの気持ち、さっき想いを伝えあって気付いた気持ち…それは…


「……………………おれは………………あの、……おれも…おれもレオを好きかもって気持ち…あるから…
レオからのキスが気持ちよくて温かくて…もっと深いキスをしたら、この気持ちが確かめられるかなって思ってた…」


キラキラと光る泉と沈みかける太陽に照らされてレオンハルト殿下はすごく優しい顔で、乙女ゲームのスチル以上にかっこいい
ここなら誰もいない…そう思うと、自分の気持ちの答えが欲しくて…おれは自分からゆっくりと顔を近づけ、レオにキスをしていた

ちゅ、ちゅ…って唇が触れるだけのキス
それだけなのに、やっぱり心が満たされるほど気持ちよくて…温かくて…幸せな気持ちになる
確かめたかった気持ち、おれもレオの事が好きなんだって全身が叫んでいるような幸福感が溢れてくる



「んっ……ちゅ♡、レオ…レオ……」

「ちゅ…、っ…可愛い…ルディ愛してる…んっ…♡」



ぬるりとレオの舌がおれの中に入ってきて、優しく口内を愛撫される…どうしようもなく、嬉しくて幸せな気持ちがどんどん溢れてきて…それに応えるようにおれも自然と舌を絡めて、もっと…もっとって求めてしまった
抱き締められる腕の中の体温が心地良い
体液越しにレオの魔力に触れるのが気持ちいいんだ…
家族以外でも、魔力には相性があるって聞いたことがあるけど…この気持ちよさはそれなのか…?

身体を、頭を抱き寄せられ…レオに可愛いって言われるのが嬉しくて…この温もりを手放したくなくて…ああ、こんな気持ちになるの、一つしかない…
ちゃんと認めよう…おれはレオが好き、レオの事を愛してるんだ



「っん…っ、♡ぁ……っ、好きっ♡、おれ…レオの事が好き、愛してるっ♡」

「んっ…っ………俺も、狂おしいほど愛してるよ…ルディ♡」



日が沈むまで、おれはレオとキスをして、抱き締めあって…女神様に誓うというか見せつける?みたいな状況になっていたと思う
「結婚したらエッチな事もしよう」って言われるのもなぜか嬉しいとか好きって自覚やばいんだけど…
帰りの馬車でもレオにもっと甘えて欲しいって言われて、キスしつつ膝抱きにされる初体験まで終えておれはその日、帰宅した




「今日は楽しかった…おやすみ、ルディ…またデートしような?愛してる」

「おれも幸せだった……また…で、デート…します…うん…おやすみ、レオ」


馬車でサングイス公爵家まで送られ、別れる直前までレオはおれを優しく抱き締めて、キスしまくって帰っていった…
どうしよう…幸せだ…


よく考えたら、こう言うキスとかハグとか…恋人に愛されるって事に対して免疫が無いんだよ?おれ…
どこまでが恋人の距離感なんだ?そう言うのも知らない
なんか…生前足したら中年な事実も相まってレオにのめり込んでしまいそうで怖いとも思う…

シャルティや父様達に何があったか聞かれながら………ずっとぽわぽわした謎の気持ちのまま、その日、眠りについた





今日の事がレオの作戦だって気付くのはもっとずっと先の未来…………












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