不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

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プロローグ

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人はどうして生きているのだろう
人はどうして簡単に死んでしまうのだろう…
なんで、僕はあの日…母様に置いていかれてしまったのだろう…





今でも時々夢に見る
あの日の生々しい匂いと感触…
あの日始めて感じた感覚…



僕、アレン.サージェスはローレスキア国にあるサージェス伯爵家に生まれ、愛情深い母様と仕事熱心な父様と共に平和に暮らしていたごく普通の子供だった
一人息子として将来は伯爵家を継いで欲しいと母様から言われて大切に育てられてきたごく普通の伯爵子息としての人生を歩むはずだった男…


しかし7歳の頃、その後の人生を大きく変える事件に遭遇する
それは、僕と母様を乗せた馬車が野盗に襲われて…目の前で母様は僕を庇って殺されてしまった事件、永遠に忘れることなど出来ない悲しい事件…




あまりにも突然に、あまりにも残酷にその日は突然僕と母様を、襲った

確か、父様のご実家でガーデンパーティが開かれるため僕と母様は馬車に乗って…普通にパーティに参加して…その帰り道、突然変な声と音が聞こえて、馬車が止まったんだ

「お逃げ下さい」と、母様の従者が扉を開けてくれた瞬間従者の頭が無くなって…
何が起きたかわからなくて、母様が凄く叫んでいた気がする…それに、知らない複数の男達が罵声と下品な言葉を話していたと思う…
それから…護衛だったみんなの、御者だったおじいちゃんの身体から真っ赤な血が飛び交う中で、元々優しいピンクのドレスを真っ赤に染めた母様に手を引かれて必死に走った記憶がある

でも、簡単に逃げれる訳は無くて…母様が必死に何かを叫びながら斬られて、馬車まで引き戻されて…鉄臭い嫌な匂いのする馬車の中で僕は庇われるように母様に抱き締められた事を今でも鮮明に覚えてる

悲鳴と血しぶき…
全身、何度も斬られた母様は最後、僕に何かを伝えようとして、首を斬られて血を吐き、崩れ落ちて、僕の腕の中で息絶えた事もちゃんと覚えているんだ…




「どうして僕を置いていくの?」「母様、目を開けてよ」そう叫んだ事もちゃんと覚えてる、涙が枯れるほど泣き叫んだ事もちゃんと…






母様が冷たくなって、もう二度と喋らなくなってしまってからの記憶は曖昧で…後に聞いた話では、生きてる人の既に居ない血と泥で汚れたぐちゃぐちゃの馬車の中で丸二日ほど、僕は母様の屍に抱き締められた状態で意識を失っていたとか

僕と母様の屍を発見してくれたのは近くを通った僕の家よりも格の高い爵位のお方だったとか…
そのまま僕は高熱を出して生死を彷徨ったとか…色々あったらしい


これは、事件の後…無事に再会を果たした父様が教えてくれた事だ
どれくらいの時間が経過したのか分かっていない、目覚めたばかりの僕を抱き締めて、「心配していたんだぞ」って話す父様はどんな顔をしていただろう…泣いていただろうか?わからない
でも、言葉では心配してくれては居た…心配してくれているのは痛いほど感じたと思う…
でも、何かが引っかかった気がする…その理由はわからないけど

数日後、その違和感に気付いて、僕は聞きたかった、どうして僕だけ生きてるの?どうして僕と母様を探しには来てくれなかったの?あの時、父様は何をしていたの?って…でも…
そう、心に浮かんだ疑問だけは何故か聞くことが出来なかった…聞いてしまったら僕は父様ともさよならしないといけないって思ってしまったんだ







それが全ての始まり
僕の世界が壊れ始めた日の出来事だ








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