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事件と身代わり
サージェス伯爵家は突然崩壊の危機に晒される
ある日、屋根裏部屋まで響くマイトの泣き声と父様の怒号、母様のヒステリックな叫びが聞こえた
何か良くないことが起きたんだと、内容を知らないけどただならぬ雰囲気からそう感じたが、僕にはどうでもいい事だ
事業に失敗したのか、マイトが何かをやらかしたのか、義母が破産するほど買い物でもしたのか…色々想像は出来るけど、屋根裏部屋にいる事を強要される僕には知る権利が無いと思う
今日は屋根裏部屋から出ないほうが平和かもしれない、そう考えて使用人がくれた古い本を読んで普通に過ごして居たが、暫く騒ぎの声が聞こえた後、急に屋根裏部屋の扉が強く叩かれ…開いて…怒りに満ちた顔の父様が入ってきた
「………………父様…どうかされましたか?」
「……………つ!!、何をそんな呑気な顔でぼーっとしているんだ!!!来い!アレン!!!ゴミのように不要な役立たずのお前が役に立つ時が来た!!!」
理由も話さず、僕の腕を強く掴んで立ち上がらせる父様の顔は正直怖い
役立たずって言うけど、病気で何もさせてもらえないんじゃ無かったんだっけ?呑気な顔と言われてもそんなに焦ってる理由を僕は知らないのに…
ズルズルと引きずられるように父様にリビングまで連れて行かれる…苛立ちをぶつけるように、あまりにも強く握られてる手首はたぶん、痣になると思う程痛い
こういう時、「やめてください」とか「離してください」って抵抗するのが普通無のだろうか?…………分からないや…
理由も分からないまま、リビングに到着すると可愛らしい顔を歪め泣きじゃくるマイトと、持ってる扇を割りそうなほど握りしめ怒りの表情を浮かべる義母がソファに腰掛け…そして青褪めた顔の使用人達が壁際に立っている
一体どんな問題が起きたらこんな顔になるのだろうか?説明を求めてもいい場面なのか分からないまま立っていると、父様が舌打ちしてから僕を空いているソファに座らせ机の上に紙を出してきた
見ろって事なのか?と思い、軽く紙に目を通すと…そこには想像以上に大変な事が書かれている…
内容はマイトが先日行われたガーデンパーティである招待客に暴言と暴力を働き宝飾品を破壊した
その招待客がこの国を裏から牛耳るベゼル.ツヴァイ侯爵の連れだった為、事が大きくなり損害賠償と慰謝料の請求をされているという物…
その賠償金額はたぶん伯爵家の年間予算すら大きく超えているような…見たこともない金額が書かれている…しかも支払い猶予期間は殆ど無い…
よく見ると、全額一括での支払いが出来ない場合は己の肉体と爵位で精算をしてもらう、又は事件の賠償としてサージェス伯爵家の子を人食いの化け物公爵と呼ばれている、ルドレッド公爵家に嫁がせる事で精算でも良いと書かれていた
ツヴァイ侯爵、ルドレッド公爵…なんでそんな大物を相手にしているんだろう…
家から出してもらえない僕でも知ってるこの国の高位貴族だ…魔法と魔獣が存在するこの国には真実かどうか分からないけど人外…化け物が隠れ住んでいるって噂がある
その根も葉もない…噂が掛けられているのが裏社会を牛耳ていると囁かれるツヴァイ侯爵…そして戦場で敵国の人間全てを喰らい尽くした戦神という化け物…ルドレッド公爵だ
何故その様な噂があるのか、実際に見たものがいるのかも定かではない…けどツヴァイ侯爵もルドレッド公爵も噂に対して否定も肯定もしない為、真実は闇の中…
しかし、どちらもこの国に無くてはならないかなりの力を持った由緒正しい家系の為、触らぬ神に祟りなしと言った感じに触れない…それがこの国の常識だと何かの本に書いてあった気がする
けど、この国から人外を排除しなければ国が乗っ取られると、裏で暗躍するガレッド公爵とその傘下もいるらしいが…現実はどうなのか知る由もない
マイトはそんな触れてはいけない存在の連れに大変な事をしたと言うんだろうか…?
「ぼくはっ…ぼくは悪くないもん…あの使用人みたいな男がぼくを馬鹿にしてきて…使用人だと思ったから…叱っただけなのに………ぼ、暴力なんてやってない…っ!!ょ………たぶん…………
うううっ………ま、まさかツヴァイ侯爵様の連れだなんて…っうう…………母様ぁ……ぼくどうしたらいいのっ…………」
「ああ…可哀想にマイト…貴方は心優しい子ですもの、暴力だなんてそんな事する訳がありません!これは何かの間違いです! ねぇ貴方、何とかして下さい!サージェス伯爵家にこんな大金も無ければ、化け物にマイトを嫁がせる気もありませんわ!馬鹿げてる!!」
「分かってる!しかし、相手が悪すぎるんだ…!!!事故だったにしろ故意でなかったとしてもマイトが壊してしまった宝飾品は本当に高価なものだったのだ…この賠償通知も王家が確認した本物だ…
賠償金を帳消しにすると言うルドレッド公爵へ嫁ぐ事を条件に出されているのも、どう考えたって生贄…確実に酷い目に遭う!!!そんな場所に可愛い可愛いマイトを行かせるなど…手放す等考えられない…!!
…………………だからこそ…分かるなアレン…………」
3人で何か話していたと思ったら…全員が僕をじっと見ているのが分かる
どう考えても僕は無関係なのに、どうして僕をそんな顔で見るのか…不思議に思いたいが、何となくこの先の展開も想像出来てしまう
サージェス伯爵家に賠償金を払う余裕は無い、しかし父様と母様に取って可愛い可愛いマイトを人外の化け物に嫁がせ失う事もしたくない…
なら、どうする?そうだ、ここにただ居るだけで何もしない不要な前妻の子が居るじゃないか…これは有効活用しないと…!!
たぶんそんな感じ…
マイトの変わりに犠牲になれと…そう言いたいんだろう
僕の気持ちが投影されるかの様に3人の目がニヤニヤとした嫌な感じに変わる瞬間を見て、僕の考えは間違ってないと確信した
聞いたことも無いような優しい声で、諭すように都合のいい事を言うんだから気味が悪い
アレンは優しいお兄ちゃんでしょう?義弟が可哀想だと思うでしょう?幸い、賠償としてサージェス伯爵家の子をと書かれてマイトの事を直接示している訳じゃない、マイトを…サージェス伯爵家を救えるのはあなたしか居ないのよ…!
そう、まるで母のような顔でピルメ様は僕に語りかける
義兄様ごめんなさい!ぼくのせいでこんな事になってごめんなさい!でも、でも、ぼくはデオン様が好きなんだ…!だから化け物公爵家になんて嫁ぎたくない…!助けて、ねぇ義兄様!
この家にいたって義兄様は何もしないじゃないか、こんな時くらい助けてよ
そう、気味の悪い猫なで声でマイトは僕に訴えかける
アレン、お前は心の病だ…サージェス伯爵家は継げない…ならサージェス伯爵家を、マイトを救う事に協力してはくれないか?一生をこの家の屋根裏部屋で過ごすよりも合法的に外の世界を見る機会にもなるだろう…!お前だって不要と呼ばれるのも辛いだろう?頼む!父を助けてくれ…!
そう、都合のいい事を押し付けてくる父様は僕に自ら選べと圧を掛ける
使用人の反応も様々だ…母様に仕えてた皆はまさかそんなって酷く動揺した顔をしないように必死に耐えている
母様の変わりに僕を影から守る為には心を殺す…そんな感じ…でも、そうじゃない使用人の皆はニヤニヤと笑うのを堪えてるみたいな感じだった
僕が自主的にマイトを救う美談にしたい思惑を感じる…
この家の屋敷でお荷物として一生を過ごすか、人外公爵に嫁いで喰われるか…どちらか選べと言われたらどちらが幸せなのだろう…?
少しだけ考えて…ふと、母様に会えるのは?って考えたら後者だって事に気付いた
そうだ、早く喰われれば母様にまた会うことができる…それに夢で見る知らない世界…あの場所にも食われたら行けるかもしれない…
「僕は…………サージェス伯爵家の子として……ルドレッド公爵家に嫁ぎたいと思います…」
久々に喋った肯定の言葉を聞いて、3人の顔が嬉しそうに歪んだのが見えた
この家のお荷物でしかない僕の決断、マイトが起こした事件の身代わりとして嫁ぐ、それでどんな扱いを受けるかなんてどうでもいい…たぶんこれ以上僕は何も感じないのだから…
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