不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

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状況が掴めない

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なんでこんな事になってるんだろう…?


先程、ボロボロの馬車でルドレッド公爵家に到着して…雨で濡れた服がやっぱり乾いてないから申し訳無いと思いつつ、屋敷の入り口へ進むと何故か懐かしい感じのする男前な男性とメイドらしき人が僕を待っていた
たぶんこの方がルドレッド公爵だ…そう思い僕のできる限り最大の礼を尽くして、その大柄な男性にご挨拶したら、返事が返ってくる訳じゃなく、なんか軽々抱っこされてしまったのだ


急な事に驚いて…どうされましたか?って聞く余裕もなく…そのまま屋敷の奥に連れて行かれて…
何故か服を脱がされた
結局、僕は今…ルドレッド公爵に抱き抱えられるみたいにして大きな湯船に浸かっている
服を脱がされた時、有無を言わせず食われるのかと覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じて受け入れたのに…


これはどういう事態なんだろう…?………ぼくにはわからない
マイトが起こした事件の賠償金の変わりに生贄として嫁いで来たのに、なんでお風呂?しかも公爵らしい人と一緒に入るって…どうして?
結婚したら初夜があるって聞いたことはあったけどお風呂に入れられるは聞いたことが無い
普通は身体を磨かれてベッドで待機しているものでは無いのだろうか?


もしかして、ルドレッド公爵家では嫁ぐとお風呂に一緒に入るのが普通の習わしなのかな…?
…………分からない…分からないけど…暖かくて気持ちいい…



ちゃぷりと時々湯をかき混ぜてくれる音が心地良い
冷えきった身体が温まるのを感じる
………そういえば、暖かい湯船に入るのなんていつぶりだろう…?ここ数年は入っていない気がするから…凄く懐かしい気がするのか

僕にとって、お風呂は身体の汚れを落とす為だけの場所だから…湯になんて入ってたらいつマイト達が来るか分からないって恐怖があったから…必死に身体だけ洗って直に逃げていた
…………脱いで置いておいた服まで奪われたら僕は、全裸で屋敷の中を移動しないといけないし…使用人の皆が分けてくれた服をマイトに奪われて捨てられるとか無駄にしたくなかったから…



「アレン…湯加減はどうだ?傷にしみないか?」

「………あ、はい…大丈夫です…すごく暖かくて気持ちいいです」



何故か男らしいのに優しい声でルドレッド公爵は話しかけてくれる…
甘い花の様な匂いのする湯、ルドレッド公爵は薬湯と言っていたけど嫌な匂いはしないし、全然しみたりしない
何となく母様が好きだったあの薄いオレンジ色の花に似た匂いがする気がして…状況が読み込めないのに気持ちが穏やかになるような…そんな感じがする


湯が暖かいだけじゃないのは分かる、僕の2倍ほど太く逞しいルドレッド公爵の腕に抱き寄せられて裸で密着しているんだから…ルドレッド公爵の体温も暖かいんだ
身動きが全く出来ないけど、本当に暖かくて気持ちいい


時々、ルドレッド公爵は僕の身体に残るマイトとか義母に突き飛ばされたり折檻された時の傷に薬湯を刷り込むように優しく撫でたり、肋が浮いた胸から腹を撫でてくれるのは何故だろう…?状況を理解したくて色々な事を考える

あ、もしかしたら…やっぱりあまりにも貧弱過ぎて骨と皮じゃ食べる場所が無いと確認しているのかもしれない?ついでに僕は気にしてなかったけど、傷だらけの身体が汚くてカビが生えてそうで?食べる気が失せてしまっているのかも?

……………確実にそうだ、普通に考えたら酷い見た目で美味しくなさそうな食材を食べたいとは思わない…
僕がルドレッド公爵様の立場なら太らせてから食べようって…そう思う
改めて自分の身体を見ると、それくらい酷い見た目の身体をしているって理解した


「風呂から上がったら身体にある怪我を手当てして、食事にしよう…アレンは食べたい物や好きなものはあるか?」

「…………お手数お掛けします…酷い見た目で…すいません…早く怪我が治るよう努力します…
あ、…えっと…食事は特に好きな食べ物とか無いので…パンとスープを可能であれば頂きたいです…」



正直な気持ちを答えると、背後からため息が聞こえる
…………また僕は間違った返答をしてしまったのか…?
好きな食べ物はあるかって質問は…もしかして、お前は生贄なんだから太る為に沢山食べろという意味だったんだろうか…?それとも食事のメニューを指定した事が不味かったのか…?どうしよう…なんでため息をつかれたのかわからない
このままじゃいけない…ルドレッド公爵の求める通りに動かなければ…餌として贄として早く食べて貰うためにも返答は注意しないと…


役立たずの僕でも出来ることを考えて行動を…………………





……………………
………………
…………




熱い何かに舌を掬われて、冷たい何かが口の中を冷やしてくれる…

甘くてとろりとしていて…すごく美味しい何かが口の中にある?おいしい…こんなおいしいの僕知らない…
熱い何かが飲んでいいって口の中をくすぐるから、コクリと飲み干したら胸が暖かくなった…

そんな不思議な感覚…………
不思議な夢………?そうか…これは夢だ…



………………夢なら寝ている場合じゃないのに…ルドレッド公爵様を前にして僕は何度失態を犯せば気が済むのだろう…
起きなければ、そう思い目を開けると、ルドレッド公爵様が心配そうな顔をして?僕を覗き込んでいた


「大丈夫か?アレン
お前は風呂で意識を失ったんだ…気分が悪いとか無いか?」

「…え?あ………夢じゃ………はい、大丈夫です…すいません…ご迷惑をお掛けしました…」

「そうか…ならいい
……………このまま食事にしよう」




夢じゃなかった…今の…たぶん、何か甘い水分を飲ませてもらってたんだ…今も口の中に美味しさが残ってる…
少しだけ怠い身体の感じから、先程ぐるぐると頭の中で早く食べてもらう為の贄の在り方について色々な事を考えていた時、知らないうちに気絶したんだろうと想像がついた


手を煩わせてしまって申し訳無いと、ルドレッド公爵から離れようとしたがやっぱり動けない
何故かお風呂と似たような格好でベッドのある部屋でルドレッド公爵に横抱きにされているからだ

こんなに密着しなくても逃げないんだけどな…と、思いつつ、生贄として連れてこられたのに役目を果たさず死んだら意味ないから心配してくれてると考えると、申し訳なくなってくる…


メイドみたいな人が部屋に入ってきてこの場に食事の準備をするのを見ていると、やっぱり僕はガリガリで食べる所が無いのかな…?1人にしたら食事をを捨てて逃げると思われてるのかな?と、そう考えられてるのだろう



とりあえずルドレッド公爵を怒らせてしまわないように食べられる瞬間まで過ごそう
食べられるにしても、なるべく痛くないほうがいい…母様にあった時痛みで泣いていたら心配を掛けてしまうから…










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