不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

文字の大きさ
35 / 64

勘違い

しおりを挟む





フレイズ様の話をしようという言葉に僕は何度も頷き、同意を示す
僕も確認したいことが沢山ある、それに自分が考えていた色々な事を話したいと思ったからだ

本当に大きな勘違いをしているのかも知れない…そう思うと同時に、夢の中で感じた感情も思い出す
フレイズ様ともしかしたら一緒にこれからも暮らせるんじゃないかなって淡い期待がこみ上げてしまうから…



「この姿勢のままではちゃんと話ができないな…」


そう、呟いたフレイズ様は上手く身体を動かせない僕を抱き上げて、支え直し、向かい合う様にフレイズ様の太ももの上に座らせてくれた

ちゃんと目と目がしっかりと合って話やすい格好…ついでに違和感のあるお尻を労ってくれてるのか、クッションまで用意してくれるんだからその優しさが嬉しいと心が温かくなってしまう


「…………まずは何処から話そうか…
そうだな…アレン、お前がここに来た理由から話そう
お前は確かに、ベゼルの賠償として嫁ぐよう指示されていたが、決して俺への生贄ではない…
ある計画でここに嫁いで来たんだ…

確か8年前…アレンは覚えていないかもしれないが…俺とお前は一度会っている…いや、会ってると言えるか分からない状況ではあったが…
その日から、俺はお前が忘れられなかった…それがきっかけと言ったら伝わるだろうか…」

「8年前……………?8年前…………それって………」



僕はフレイズ様への生贄ではなかったんだ…
その一言だけでも初めから大きな勘違いをしていたと分かる…
けど、8年前と聞いてそっちの方が驚いた
8年前…それは僕が母様と離れ離れになった日、全てを失った日だ…


8年前にフレイズ様と僕はお会いした事がある?
いつ?どこで…?母様が生きてた頃もまだ幼いからって近しい家の人や母様の友人?の人くらいしか他の人と会ったことは無い
ついでにあの日の事件を境に家から出してもらえていない僕は本当に他者との接触…ましてや高位貴族であるフレイズ様と会うことなんて無い筈

なのにフレイズ様は僕と会ってるという…
その状況が当てはまるのは父様から聞いた僕を助けてくれた高位貴族の男性しか居ない…んじゃないの?
僕はあの日の事、全部覚えている訳じゃなないけど…確かに温かい何かに包まれたのは覚えてる…優しい甘い匂いのする何かに…


あれは抱き抱えられていた温かさだった?それがフレイズ様だったの…?


「あの日の事件で…僕を、あの馬車から救い出してくださったのが…フレイズ様なんですか…?」

「…………ああ、そうだ
死体が転がり、血で染まった馬車でたった一人…母親と思しき女性に守られていた子を確かに救った…

あの絶望に染まった状況でも…心が崩壊せず、瞳に僅かに残る光を見て…心を動かされてしまった男が俺なんだ
あの時の俺はアレンを無事に実父へ届けられてよかったと安心し、家族の下でしっかりと療養して心を癒し、母を失った悲しみを乗り越え社交に戻って来ると思っていた…
もう一度会ったら、俺が力になってやろうと…思っていたんだ…だが」



そうはならなかったとフレイズ様は語る
僕を救い出し、父様へ預けた後、国王陛下の命で隣国に行くことになり、ずっと仕事で隣国におられたと…
この国の情報を集める余裕も無く、僕がちゃんと療養生活を送り、いずれサージェス伯爵家を継ぐことになったら陰ながら力になろうと隣国でも考えていたという

けど、実際は仕事が終わるまで何年も掛かってしまい、国に帰って来たらツヴァイ侯爵様からマイトが起こした事件の件を知らされたと

その時、サージェス伯爵家からの賠償をどうするか調査する上で僕が家に閉じ込められていると初めて知ったらしい
父様が僕を閉じ込めている展開なんて想像も出来なかった…けど、僕をそのままにしておけばきっと病等を理由に殺されるかもしれない…

そう思い、事件の賠償を上手く利用して救い出そうと動かれた結果が、今回のルドレッド公爵家へ嫁ぐ賠償に繋がったというのだ


フレイズ様の話を聞いて確かにの思う
今でこそ健康な身体に戻して頂けた…今と前の身体を見比べても、酷い差だ…僕はサージェス伯爵家にずっといたら絶対長生きはできなかっただろう…



「僕を何度も助けて下さってありがとうございます…けど、どうして婚姻の時、何も教えて下さらなかったのですか…?」


「…………その場では言えない理由があったんだ
アレンを救う、その目的の為に書面上妻として受け入れても、俺は噂通り人外公爵だ…
ある程度の信頼関係を経て人外である事を受け入れ、尚且つ秘密を共に保持できる存在となるまでは教える事が出来なかった

それに、俺に嫁いで来た時のアレンは、母を失った頃よりも酷い状態…身体も心も殆ど壊れていたんだぞ?…本当に小さな、僅かな光を灯してなんとか生きている状況…そんなお前に人外の屋敷へようこそなどと真実を告げる事なんて出来ないだろ?

事前にベゼルから情報は少し得ていたが…正気を失う程壊れていたら俺の所有物として囲い、快楽で埋め尽くし余生を幸せに過ごさせようとも思ったくらいだ」



……………ちょっと怖いことも言っていたような気がするけど、フレイズ様が色々考えて出会ったその瞬間から僕の為に色々動いて下さったのがわかった

国全体で噂される人食い人外公爵だと、当日自己紹介されても絶対に困っていたと思う…鶏ガラみたいな身体ですが食べてくださいと謎な事を言ってしまっていたかも?

というか僕も勇気を出して聞けばよかった…ボロボロの僕を受け取り、今は心と身体を守ろうと対応して下さった結果を僕は飼育されていると受け取っていたんだ…違和感を感じる場面は合ったのに…家畜が勝手に喋っちゃ駄目と思い込んでた
フレイズ様は一度も僕に向かって家畜とも飼育しているとも言ってなかったのに…



身体に酷い怪我をしてたのも相まってフレイズ様は僕の体調を第一に考え、いずれ妻となる大切な客人として接するよう指示を出してくれていたらしい

ちゃんと怪我を直し、嫁いできた妻としての準備が整ったら…僕がフレイズ様の全てを受け入れるようになったら真実を話してあげようと、結婚式もやろうと心に決めて居たのだと言う
そんな事も知らずに僕は家畜としていい子でいようとか…美味しく育とうとか…そんなことばっかり考えていたのか…どうしよう、すごく申し訳ない…










しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...