不要な僕と化け物公爵様

たなぱ

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運命の夜会 終演






ツヴァイ侯爵様に連れて行かれたマイトの叫び声が聞こえなくなり、サージェス伯爵家を含む害虫の駆除が終わった舞踏会会場には暫く沈黙が流れていた

食人花族とその存在を知る王家以外にとっては舞踏会は中止になってもおかしくない程のある意味大きな事件…

僕は事前に害虫を駆除するとフレイズ様から教えて貰っていたからいい…けど、国の高位貴族がこんなにも多く捕らえられてしまう状況を本当に関係のない人達はどう受け取っていいか分からない…そんな雰囲気が漂っていた

その沈黙を破って下さったのは国王陛下だ



「………………ルドレッド公爵、そしてこの場には居ないがツヴァイ侯爵、二人ともよくやった
よくぞこの国の膿を出す汚れ役を買って出てくれた…

今、目の前で起きたことについて驚いた者も多いだろう…だが、この日を選び国に国民に対して不利益を被る者を全て捕らえなければ次の被害者はお前達がだったかもしれない
皆のもの、特にこれから社交に出る子供達よ、自ら私腹を肥やす為の陰謀が如何に愚かで馬鹿らしい事か実際に見てどう感じた?

今日の事は、過ちを犯す愚かな者が生まれれば国は腐る、大切な家族すらも失うきっかけとなる、その事を心に刻む機会となった

さて、このまま夜会を中止にも出来るが、それは民の血税を無駄にすることと同義、ここからは本来の舞踏会としての時間としよう…!!!」



国王陛下の言葉の後、壇上を降りると共に、演奏隊が美しい音色を奏で、会場のシャンデリア含め全ての照明に魔力が強く流されたのか会場一面が一際明るく輝く
まるで一からやり直すように、今日という日を祝うみたいに…

国王陛下のお言葉は正しい、この夜会を行う為に招待状や準備された軽食、人手全てに国民からの税が使われている
それを無駄にするのは今、害虫駆除された人達と同じ、愚かな行為をする事だと僕も思う…他の人達もそう思っているんだろう



だから、気持ちを切り替えてこの舞踏会を楽しもう…そんな雰囲気が立ち込め、会場の中央を向いていた人達は1人…また1人と目を合わせ、頷き合い、美しい会場で踊り始めた



「……………アレン、不安や不快な事が続いただろうが…計画通り全て終わった…もうお前を苦しめる者は表の世界には出てこない
さぁ、俺たちも踊ろうか?今日の日の為にヤジェと練習を繰り返したんだろう?」

「………………っ!はい、踊りたいです…!」



色とりどりのドレスが美しく舞う…そんな素敵な光景を見ていると、フレイズ様が僕の手を取り微笑んでダンスを誘って下さる
その誘いを断る理由なんて僕には無い、大きなフレイズ様の手をしっかりと握り、僕は初めてフレイズ様と外の世界…舞踏会という大きな舞台で踊った




練習ではヤジェから完璧ですと言われてたけど、実際に踊るって事はすごく緊張する訳で…
けど、フレイズ様が優しくリードして下さって、上手だと褒めて下さるから段々と嬉しくなってきて…知らず知らずに足取りも軽くなる


やっぱり踊るのは楽しい…フレイズ様と一緒に過ごす時間が何よりも幸せだ
まるで二人きりのように感じる…そんな、楽しい楽しい時間をフレイズ様と過ごした







……………………
………………
…………





「ルドレッド公爵!そして夫人、少し宜しいですかな?
この度は大変な任務に就いていたそうで…我が国の防衛だけでなく汚れ役まで…本当に感謝します
あの場の光景を見ていて恐ろしくなりました…人が一番怖いのだと、生前父が言っていたのを思い出すほどに…
実は私も噂だけで貴殿を誤解してしまっていた…その事、この場で謝罪させて頂きたい…!」

「人離れした魔力と戦術を使う貴方は化け物だと部下にも言われているのは事実だ、気にしなくていい
それよりも今後は妻であるアレンに色々外の世界を見せたい…その手助けをして頂けると助かる」

「もちろんですとも!それにしてもルドレッド公爵夫人は本当にお美しい…ああ!私の知り合いに素晴らしい技術を持った絵師がおります
婚姻の記念に絵画など如何ですかな?」

「ああ!ルドレッド公爵!こちらにおられたか!……………」



フレイズ様と暫くの間楽しく踊り、休憩を挟みつつ軽食を食べていると、数多くの貴族の方がご挨拶に来られた
今回の件を、受けてしっかりと噂を信じて化け物だと思っていた事も謝っておこう…ついでに国の防衛の要であるフレイズ様にお近づきになっておこう…そんな意図が見え隠れする会話の数々…


その会話一つ一つを丁寧に対応し、ついでに僕の事もしっかりと紹介して下さるフレイズ様に合わせるように僕も礼儀作法を維持できる会話を挟まない必要最低限の挨拶をする


ずっと閉じ込められ、虐待を受けていた哀れな子…そう思われても仕方ないけど、それがフレイズ様の足枷にならないように…
美しい立ち姿を維持し、立派に妻として役目を果たそう…!そんな気持ちで接する僕をフレイズ様は凄く優しい顔で見つめ…腰を抱いてずっと側に居てくれた



日付を越えるまで、この舞踏会は続き…
僕は沢山フレイズ様と踊って、楽しい時間を過ごした
害虫の駆除と収穫以外、特にトラブルは無く無事に舞踏会は終わり…


会場にいる人との殆どが口には出さないけど、貴族牢へ連れて行かれた人達がどうなっているか…心の何処かで気にしつつ…けど、誰もそれは口に出さず、行方を追うこと無く終演を迎える





国を守り人を餌とする食人花を知らない者達へ少しの疑問、少しの疑惑を残す
それが次の化け物を排除しようと要らない正義を掲げる害虫を上手く生み出す卵になるらしい…

次の収穫まで、その卵はゆっくりと育つのだと…








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