61 / 64
復讐の代わり
害虫が見事駆除され平穏が戻った
その一言で全ては解決しないのかもしれない…そう、気付いてしまったのは僕の心が色々な意味で少し成長しているからだと思う
あの運命の夜会で悪事が公表され、貴族牢に捕らえられた元父様や母様、ガレット公爵様達は国からの発表とは少し違い秘密裏にツヴァイ侯爵が引き取り、餌として暮らしている…
そして、我が家の地下室ではルドレッド公爵家に侵入した害虫の尋問が進められているらしい
そんな大まかな話をフレイズ様は教えてくれるが、その言葉にどこか違和感を感じた
僕に復讐をするかどうか聞いたあの日、僕は復讐を望んではいないと本心を答えた時……あの時の少しの間を思い出してしまったから…フレイズ様に抱き締められる幸せな時間の中に僅かに違和感を感じてしまったから
一度感じた違和感は日に日に強くなる
これから結婚式をやり直す準備期間に入る…だから苗床部屋のある地下室の手伝いは暫く行わなくていい、ルドレッド公爵夫人としての勉強を頑張って欲しいと言われたこともそう、理由を付けて入室を禁じているのと同じ…本当に嬉しい言葉なのに僕を捕らえた者達がいる地下室から遠ざけていると感じてしまう
そして本当に地下室にいく余裕も無いほど毎日、フレイズ様から夜沢山愛して貰える時間が増えた…
昼まで起きれない程、可愛がって貰える日々…これまで足りなかった分とフレイズ様は言うけど…たぶん違う…嬉しいのに、やっぱり何処か違和感があるんだ…………
隠し事は誰にでもあるし、言いたくないことを無理に言う必要は無い…けど、僕は人外であるフレイズ様の妻として食人花についての秘密についてはちゃんと知っておきたいし、隠し事をして欲しくはない
僕はどんな真実でも受け入れる…フレイズ様を疑う事なんて無いのだから…隠さないで欲しい
違和感を感じ初め、2週間程過ぎた頃だろうか?フレイズ様が同じ食人花族であるツヴァイ侯爵の元へ外出した日…僕は遠ざけられていた地下室に入ることを選んだ
たぶん、普通に聞いても答えてくれない…そんな気がしたから…フレイズ様は優しいから僕が傷付く事を何よりも恐れて下さる方だと分かっているから…
昨晩も激しく可愛がって頂いた影響で本当はまだ寝ている時間…アデリナ達も僕の身体を気遣って入って来ない時間、使用人の皆が忙しい時間に気配を消す魔法を自らに掛け、誰にもバレないように地下室へ向う
自分の目でこの日々感じる違和感について知れたらそれが一番いい…
フレイズ様が教えたくないと言うなら無理に聞くのも少し違う…けど僕は知りたい…分かち合いたい…
もし、誰かにバレたら素直に違和感の話をしてみよう…それで誤魔化されたりしたら本当に何かを隠してると問い詰めるきっかけにしよう…少しだけでも教えてくれるかもしれない
そんな気持ちで、地下室に着き、苗床として可愛がられている隣国からの捕虜さん達がいる場所を通り抜け…ルドレッド公爵家に侵入してきた者達が囚えられている尋問室の扉を少しだけ開け、中を確認した
「うぎぃィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ーー!!!ん゙ん゙ーー!!ん゙ん゙ーーー!!!!」
「ぎゃぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーー!!!ひぎぃィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!!!やめろ!やめでぐれぇ!!!くそっ!くぞっ!!化け物が!死ね!しねぇ!!ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーー!!!」
目の前に広がる光景に、声に息を呑む
そこではスパイのおじさんが尋問を施されていた時のような甘い匂いなんて無い
広がるのは、飛び越しでは聞こえなかった絶叫と、何かを袋を抱き込むように拘束され、背中を何かで切り裂かれて、木の根で殴られる男達…そして床に広がるおびただしい血と尿の嫌な匂いだった
まるであの馬車で見たような…母様が死を迎えた時のような
僕の記憶にある光景を模したような惨状が広がっていた
機械的にただただ痛めつける事を目的とした行為、何かを分からせるように…後悔させるように…ひたすらに惨劇を繰り返されているのだと分かる場面…
それを見て、僕は感じていた違和感の正体に気付いてしまった
これは復讐だ…
僕は復讐を望んでいない、母様もきっと望んではいない…けど、フレイズ様は…食人花族の皆はそれじゃ許せなかったんだ…………
スパイのおじさん相手にも救いのある行為しかしない、優しい食人花族しか知らなかった僕には光景はあまりにも想像を超えている…でも………
震える手で扉を開け、室内に入ろうとすると後ろから逞しい腕に抱き寄せられ目を塞がれた
「……………フレイズ様」
「…………アレン…見るな…こんな光景は見なくていい…見なくていいんだ…
くそっ…………出来ることなら心優しいお前には見せなくなかった…」
僕を強く抱き締めながら目を塞ぐフレイズ様の腕は震えている
本当に見られたくなかった、秘密にしたかった…見ないで欲しかったと言うのかが、その震えからも伝わってくる…僕に嫌われるかもしれないという怯えさえも…けど
「…………フレイズ様、大丈夫です…大丈夫ですから、ちゃんと見せて下さい…
僕は復讐を望まなかった…けど、フレイズ様はそれじゃ許せなかったんですよね…?
僕の事を傷付けた相手が何の苦しみも無く苗床っていう幸せな存在になるの…いくら収穫した相手でも…許せなかった…とか、そんな気持ちなのですよね?…………だったら嬉しいです」
「………………………っ!!」
僕の言葉にフレイズ様が息を呑むのがわかった
目の前で痛めつけられている男達が母様の命を奪った人達だって…見ただけで分かってしまうけど、そんなのどうでもいいくらい嬉しい…
本当は怖がる場面なのでしょうか?こんな事望んでいないと泣き縋る場面なのでしょうか?
………………ごめんなさいフレイズ様…僕の心は本当に壊れてしまっているから…壊れたまま成長しているから…復讐しなくていいと言っていたのに、フレイズ様が代わりに怒って下さってる…その事実が嬉しい…
そんな気持ちしか湧いてこない…
「話して下さい…フレイズ様
僕に隠してる事、全部…食人花族の怖い面についても知りたいんです」
きっと、これからもフレイズ様の妻である僕は優しい食人花族に同じ様に隠し事をされるかもしれない…けど、それは嫌だ、僕は全部知って受け入れたいんだ
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。