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噛み痕
しおりを挟む国王陛下様の印が押された、ノイシュ様と正式に婚約を結ぶことを認める書状が我が家に届いた
この国では婚姻への多様性に伴い、貴族同士の婚姻に対して王家の許可が必要となっている
3代前の陛下が獣人の妃を迎えた時に発案されたもの、人以外と結ばれることを穢れと思う派閥や何か当時、問題が色々起きたらしい
現在も人と獣人等他種族が結ばれる際にそれを良く思わない者も一定数また存在する、王家も認める婚姻であると書面に残し、周囲へ伝えることでトラブルを防ぐという事らしい
自室でノイシュ様と書状を確認する
見ると、書状と共に今回の婚約破棄騒動について、断罪の調査結果も合わせて送られてきいた
全くの事実無根、僕が異世界の客人に害を与えた事も反逆の意思もないことが書かれていた
よかった…胸をなでおろす、身の潔白が証明されたことが何より嬉しい、ノイシュ様と今後婚姻するにも、罪を起こした可能性があると思われているのは困るから
「僕、何も悪いことしていないと証明されました…疑われたままだったら…ノイシュ様にご迷惑かける前に事実がわかってよかったです」
「まさか!迷惑だなんて事はないよ?この国がリジェを冤罪で捨てるなら私が直ぐにでも連れて帰って婚約期間無しに婚姻してたかもしれないね?リジェは何も悪くない、何も不安に考えなくていい」
人の姿のノイシュ様に抱き締められる…
冤罪で国外追放とかになっていても僕を連れて行ってくれてたんだ…嬉しい
幸せをだと擦り寄るとぎゅっと強く抱きしめてくれる、服越しでも大蛇の獣人である彼は僕より体温が低く少しひんやりした腕の中が心地良かった
婚約を認められて幸せな僕達がいる部屋へ、バレベナ公爵家から遣いが来ていたと父様が伝えに来たのはもうすぐ正午になる頃だった
コンコン、部屋がノックされ父様が部屋に入ってくる
「ノイシュ王弟殿下、リジェ、すまない少しいいかな?先程バレベナ公爵がこの屋敷に来た
婚約が成されていてよかった…ノイシュ王弟殿下の予感が当っていましたよ…」
先触れもなくバレベナ公爵と公爵夫人が訪問してきたそうだ、要件はガラド様と僕の婚約について
バレベナ公爵曰く、ガラド様は僕が魔獣討伐に行っていたことが悲しく、不貞をされていると誤解してしまい、公爵家で保護している異世界の客人から不貞をしたことを咎めれば婚約を続けたいと泣いて縋ってくれるだろうと、そんな確証の無い知識のまま実行してしまった結果があの断罪劇だと訴えて来たのだという
僕の婚姻を先方は待ち望んでいる、2人の子供を早く見たい、ガラド様も反省していると強く訴えてきたようだ
ガラド様自身も僕と婚約破棄をするつもりはなく、酷く悲しんでいると、僕にも会いたいと希望されたが、会わせるわけにはいかない、ノイシュ王弟殿下と婚約し現在は2人で出掛けていると嘘をついたと父様は教えてくれた
ガラド様が僕を好きだなんてことは絶対にありえない、公爵夫妻の言い分に鳥肌が立つ…
夫妻はこうも続けた、ノイシュ様と婚約を結んだが、ガラド様との婚約破棄は正式な物ではないため無効とできると、悲しむガラド様を救うためにも僕の意思があればノイシュ様との婚約を解消し予定通りガラド様と結婚しろ…そういう事らしい
父様は怒りを抑え冷静を装いノイシュ王弟殿下との婚約は国王陛下も認めることと強く伝え、公爵夫妻には帰ってもらったと
自国の優秀な魔力保持者を他国に渡していいのかと不服そうな公爵夫妻はまだ諦めてはいないそうだ…
「リジェ、ノイシュ王弟殿下と婚姻するまであまり一人にはなっていけない、お前を孕み腹としか思っていない連中だ…既成事実があればなど恐ろしい事を考えるかもしれない…!抵抗したいがあの側妃がまた介入するやも…とにかく油断は駄目だ、自衛しなさい」
深く頷く、そんな恐ろしい事を…
考えるだけでゾッとする
「カーヴァイン辺境伯、リジェが狙われる可能性があるのに私は離れるなどしたくはありません、可能であれば我が国で保護することもできます」
「僕もできるだけ外出はしないようにする…幸い学園は単位もう取れているから卒業式だけ参加するよ…一応僕も攻撃魔法や自衛はできるから…自衛するよ」
話し合いの結果、ノイシュ様は僕を守るためにこの屋敷に滞在してくれることになった
相手の出方を見て獣国へ避難、僕の経歴の為にも、せめて学園を卒業するまではなるべくこの国にいることで話は纏まった
父様が部屋を後にし部屋に二人きりになる
落ち着いて冷静に考えてみても、バレベナ公爵夫妻の言っていることが信じられない…ガラド様が僕の好きだなんて事はありえない、嘘で塗り固めてまでなぜ僕との子を望むのだろう?孕み腹と父様は言っていた…孕む立場に向かって言ってるのとは違う意味があるのだろうか…?
「ノイシュ様、孕み腹の意味は知っていますか…?バレベナ公爵家が僕をそう見てるのはわかったんですが、そこまでして僕と既成事実を持ちたいものなんですかね?」
「魔力の概念に囚われた貴族の思考をリジェは知らないんだね…教えてあげてもいいよ、でもあまり聞いて気持ちがいいものじゃない、大丈夫?」
そんなに嫌な話なんだろうか…でも知らないより知っていたほうがいい、僕は頷いて答えを求めた
「私も、辺境伯から聞いたから全てを知ってるわけじゃないけど…この国では、かなり昔から男女問わず、魔力が高い母体を孕み腹って呼ぶ貴族が一定数いるんだ、魔力が高い子孫を多しこの国を繁栄させていると自附する者達
彼らの思想では数多く子孫を残すことを誇りに思うと同時に子に商品価値を見出す」
「商品価値…ですか?」
「そう、魔力の多い優秀な子を貴族や商人に嫁がせ、変わりに覆ることのない地位と後ろ盾を得るための、多く子孫を残すこれだけ聞いたらそんな悪いことではないように聞こえる…けど実際は優秀な母体を婚姻という鎖で繋いで、ひたすらに孕ませる為に飼うんだ…」
ノイシュ様が何を言っているのが理解できなかった…婚姻の鎖…?孕み腹を望む貴族…?人を飼うって………?
「昔は上位の貴族が下位の貴族から無理矢理魔力の多い母体を婚約、婚姻させ家に取り込むことも少なくなかったらしい…
飼われた母体は監禁され、間を置かずひたすらにただ孕み、産むための腹として囚われる、出産がどれだけ大変か…それが望まぬ形で永遠に課せられるとしたら…多くは正気では居れず早死した、そんな悪しき風習を善とする者が孕み腹という言葉を好んで使うんだ
でも、3代前の国王が我が国の姫と結ばれたことでこの風習は風化した、妻を家畜のように扱う風習に獣人の姫は激怒し、夫の国王と共に悪しき風習を撲滅したって話を聞いたんだ…
貴族の婚姻に国王陛下の印が必要な理由も、もしかしたらこの件にも絡んでいるんだろうね
孕み腹という言葉自体、現在は若い子には伝えないんだと、もし自分もその可能があったらと要らぬ不安と動揺を生むからね
けど悪しき風習を捨てきれない者もまだいるってことだ……」
ノイシュ様から話を聞き、自分の置かれている立ち位置に眩暈がする
「っ………撲は…撲はガラド様と万が一結ばれていたら…飼われ孕まされ続けることになっていたのでしょうか…今回のことがあっても諦めないのは僕を飼う思惑がまだやっぱり…」
声が震える、抵抗する両親に対しあの婚姻を無理矢理成立させたのは、現国王陛下の側妃…バレベナ公爵家とも交流がある由緒正しい魔力を多く持つ者を排出する名家の出だ…
あの日、ノイシュ様と出会わなければ…僕はそのまま好意を持てる相手でもない男に抱かれ続けて…産むための道具にされて…いや現在も狙われているかもしれない…
眼の前が霞んで見えない、目頭が熱い
寒くないのに身体が震えてしまう…
怖い、恐ろしい…そんな思想のある人達が僕を諦めていない…どうしよう、どうしたら…
目の前にノイシュ様がいるのにこれは夢ではないかとさえ思えてくる…
「リジェ、…私の声は聞こえてる?」
震える僕を抱きしめる力強い腕、包み込む優しい匂い、背中を大きな手が撫でてくれる…僕の好きな、愛しい声、優しい声…
自分が孕み腹と呼ばれる価値があることがいやだ…彼以外に狙われている可能性がいやだ…
無理だ、涙が溢れる、万が一の可能性が怖い、ノイシュ様以外に暴かれる可能性が怖い…怖い…
「怖い話聞かせてごめんね…怖かったね…
大丈夫、リジェは私が守るよ…怖くない、怖くない…可愛い目が腫れてしまう、泣かないで?」
ノイシュ様の手が、優しく背中を撫で抱きしめてくれる、優しい声が僕の心を救ってくれる…満たしてくれる
早くノイシュ様以外に触れられない身体が欲しい…僕は泣きながら無意識に彼の唇へ触れていた
「んっ……お願い…ノイシュ様…抱いて、下さい…僕はノイシュ様だけの僕でいたい………既成事実でもいい、万が一の可能性を消して下さい…」
彼の下唇を舐め、求める
肉体関係からの婚姻はかなり世間体が悪い…けど
でも、ノイシュ様にしか感じない身体になりたい…
静かに涙を流し求める僕を抱きしめるノイシュ様が
ゴクリと息を呑む音が聞こえ、抱きしめる腕に力が入る
「だめだ…こんな悲しい気持ちで、私はリジェと初夜をしたくない、幸せにしたい、言っただろう?
」
知性的な人とは違う赤い瞳が僕を見る
悲しい初夜…そうだ…でも、そうだとしても…
「初夜はちゃんと婚姻を結んでから、それまで互いに我慢すると両親に誓った、だろう?こんな悲しい日ではなく、私と結ばれ、リジェが幸せ過ぎて嬉しさで泣いてしまう日にしよう
不安な゙気持ちはよくわかる、…………だから変わりに獣国の番契を交わさないかい?」
少し悩みノイシュ様は知らない言葉を伝えてきた
「番の契…?」
「好き合う者が魂と魔力で互いを縛る番の契
夫となる者は妻の項を、妻となる者は夫の右手の薬指を互いに噛み、噛み合った同士でしかわからない魔力の繋がりをつくる儀式
獣人は魔力を上手く扱えないがこの儀式だけは互いの愛を確かめ合う誓いとして使える、魔力の相性が良ければ番う相手にのみ反応するようにもなるんだ
リジェ、私と番の契を交わそう
恐らく魔力の相性は疑いようもないほどだ、番ば最後、私以外の魔力を不快に感じてしまうかもしれない」
それでも契を交わしてくれるかい?
どうしてそんな素敵なことを言うんだろう…
ノイシュ様以外を不快に感じる身体に…、互いの魔力を縛るなんてそんな…拒否する理由がない!
「交わしたい、ノイシュ様だけの僕になりたい…噛んで下さい、僕に噛ませてください」
嬉しそうにノイシュ様が微笑んだ
「ふっ…♡んむ…んんっ♡ちゅ……れろ…♡」
ノイシュ様が僕を後ろから抱き込み、かきあげるように髪に隠れた項を晒し何度も何度も舌を這わせキスをしてくる
僕の口にはノイシュ様の右手の薬指
喉奥まで届きそうなほど長く節の整った彼の指を舐め、しゃぶる
「いい子、上手だね」
褒められるのが嬉しい、互いの魔力を練り高めることに興奮してしまう
魔力を乗せた舌で噛む場所を何度も舐める、
段々とその場所は熱を持ち、徐々に変化が現れ皮膚に魔力の印が現れる
おそらく僕の首にも同じものができているんだろう…これが番の契…
印の部分が熱い、ジリジリと熱を持つ
ノイシュ様の動きが止まり軽く歯を項に立てられるだけでゾクゾクしてしまう
「準備はいい?リジェ、魔力の印がみえるようになってるだろう?その部分を互いに噛むんだ…私と番になろうね」
「んっ♡…ふぁい♡」
項の皮膚を食い破るようにノイシュ様のヘビのような牙がメリメリと、少しずつ侵入してくる
それに合わせるように僕も薬指の付け根に歯を立てる、印の部分が熱い、燃えるように熱い
噛まれている部分が恐ろしく気持ちいい…
ノイシュ様の牙が、牙が僕を抉る、印を中心に全身を駆け巡る快楽、これが…
「ン゙っ、んんっ…♡ン゙ん゙ーーーーー♡」
「…ぐっ…………っ……リジェ…!!」
どびゅっ………
ズボンの中を生ぬるい感触が埋める、ノイシュ様も息を整えてる…うそ、互いに噛み合う行為で射精してしまうなんて…
「ふぅ、ふぅ…良かったやっぱり一番深く成功したみたいだ、見て?これが番の契だ」
ノイシュ様の右手の薬指付け根にある僕の歯型と水色の魔力紋、見えないけど僕の項にはノイシュ様の歯型黒の魔力紋があるらしい
緻密で繊細な造形美深い魔力紋…魂が深く繋がった証拠…
息を整え嬉しそうにノイシュ様は言う
相性がよく深く繋がるとこうなるんだよと、彼が項にキスや舌を這わせる度、絶頂するほどの快楽が僕を襲った
嬉しい、ノイシュ様の一部になれたようで…番という響きが嬉しい…
嬉しさのあまりキスを強請ると直ぐに答えてくれるノイシュ様、彼とのキスは番の契がなされた後だからかまるで果実のように甘く感じた
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