1 / 10
1,ものがたりの始まり
しおりを挟む
大きな大陸にいくつもの国々が割拠し、精霊や魔物が溢れ、人類と精霊と魔物は互いを牽制しつつその地で共にいきていた。言葉で契を交わしたわけではないが、不可侵が当たり前となった時代である。
そんな混沌とした世界のとある一つの国、ガージフェクトは魔物も精霊もいない人類独有国であった。周辺諸国も人類が統治を統べる国しかなく、魔物討伐よりも周辺諸国や内部国政の政での争いの方が多いほどの平和な国である。国としての外交問題もあるため、魔物討伐の遠征部隊を組み国の軍事力を内外に示す形式的なものは行っている。しかし、その程度の小国にすぎない。
主な財政は観光業にある。周辺諸国が人類国しかない国は自国しかなく、この国に滞在する間だけは魔物の侵入や妖精の悪戯も少ないということから、人気の避暑地となっている。観光業が栄えたことで、人の行き来が多く情報も入りやすいため、政においてもガージフェクト国は周辺諸国より一歩先を歩いていた。
しかし、商業が国の主な財政の為、時流の波に揉まれることが多く、国庫の財政は安定したものではなかった。そのため、国は大国になるほどの力はなく、軍事力を補強しつつ周辺諸外国に取り込まれないよう小国の形を保っている程度であった。
国境は大きな壁に囲まれ、四方に国への出入り口となる
門がそびえ立っている。北の入り口だけは吊橋となっているが、北の方角には国を一つ越えた向こうに魔物の大国であるジェルファイド国があった。
戦争に興味がない穏健派の魔物が国を統べる為、その国の魔物はよっぽどのことがない限り他国に出てくることがない。危険度の低い国になったのは現在の国の主が国主に立った頃からと言われている。そのため、ここ百年は平和な時代が続いているらしい。
噂話だが、ジェルファイド国が穏健派に至ったのはガージフェクトの隣国であるネスクディーテ国から歳の取った人属の男を娶ったからだと言われている。真偽の程は分からない。
外交で国主を他国で見ることはあれど、その正室である娶った男を誰も見たことがないからだ。公の場で正室が出てくることは一切なく、また国主に正室の正体について尋ねることはあまりに失礼なことで、いくら穏健派といえど外交問題に発展しないように、誰もが同じように口をつぐんでいる。
当たり障りない程度に、「正室の体調はいかがですか」「体調が良ければ、我が国の誇る湖にご招待したかったです」などと言ってゴマをするのだが、その度に国主は目を細めてうっすらと笑うので、その表情を測りかねるばかりだ。
実を言うと、正室については俺の知り合いの男であるので、国主と仲睦まじくやっていることは知っている。だが、それについては公言すべきことではないので、いつか話す機会があればと思う。なかなか感じの良い男で、ちょっと抜けているのが良いところだろう。まあ、そんな良いところに付け込まれたのだから、運はなかったかもしれないが……。まあ、彼の話はまた今度。
さて、そんなことより。今回の話はガージフェクト国の騎士である俺の、とんでもなくどうしようもない恋愛話だ。
お気に召してくれたら嬉しいな。
そんな混沌とした世界のとある一つの国、ガージフェクトは魔物も精霊もいない人類独有国であった。周辺諸国も人類が統治を統べる国しかなく、魔物討伐よりも周辺諸国や内部国政の政での争いの方が多いほどの平和な国である。国としての外交問題もあるため、魔物討伐の遠征部隊を組み国の軍事力を内外に示す形式的なものは行っている。しかし、その程度の小国にすぎない。
主な財政は観光業にある。周辺諸国が人類国しかない国は自国しかなく、この国に滞在する間だけは魔物の侵入や妖精の悪戯も少ないということから、人気の避暑地となっている。観光業が栄えたことで、人の行き来が多く情報も入りやすいため、政においてもガージフェクト国は周辺諸国より一歩先を歩いていた。
しかし、商業が国の主な財政の為、時流の波に揉まれることが多く、国庫の財政は安定したものではなかった。そのため、国は大国になるほどの力はなく、軍事力を補強しつつ周辺諸外国に取り込まれないよう小国の形を保っている程度であった。
国境は大きな壁に囲まれ、四方に国への出入り口となる
門がそびえ立っている。北の入り口だけは吊橋となっているが、北の方角には国を一つ越えた向こうに魔物の大国であるジェルファイド国があった。
戦争に興味がない穏健派の魔物が国を統べる為、その国の魔物はよっぽどのことがない限り他国に出てくることがない。危険度の低い国になったのは現在の国の主が国主に立った頃からと言われている。そのため、ここ百年は平和な時代が続いているらしい。
噂話だが、ジェルファイド国が穏健派に至ったのはガージフェクトの隣国であるネスクディーテ国から歳の取った人属の男を娶ったからだと言われている。真偽の程は分からない。
外交で国主を他国で見ることはあれど、その正室である娶った男を誰も見たことがないからだ。公の場で正室が出てくることは一切なく、また国主に正室の正体について尋ねることはあまりに失礼なことで、いくら穏健派といえど外交問題に発展しないように、誰もが同じように口をつぐんでいる。
当たり障りない程度に、「正室の体調はいかがですか」「体調が良ければ、我が国の誇る湖にご招待したかったです」などと言ってゴマをするのだが、その度に国主は目を細めてうっすらと笑うので、その表情を測りかねるばかりだ。
実を言うと、正室については俺の知り合いの男であるので、国主と仲睦まじくやっていることは知っている。だが、それについては公言すべきことではないので、いつか話す機会があればと思う。なかなか感じの良い男で、ちょっと抜けているのが良いところだろう。まあ、そんな良いところに付け込まれたのだから、運はなかったかもしれないが……。まあ、彼の話はまた今度。
さて、そんなことより。今回の話はガージフェクト国の騎士である俺の、とんでもなくどうしようもない恋愛話だ。
お気に召してくれたら嬉しいな。
0
あなたにおすすめの小説
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
隣のエリートが可愛すぎる件について。
伏梛
BL
割と顔が良いと自覚のある学生・翔太は、高校の近いアパートに一人暮らしをしている。ある日、アパートの前で眠り込む社会人を家にあげてしまうが、その日から限界エリートの彼と親交を持つようになる。
「じゃあ僕は行くから、翔太くん、また。」
「みんなの期待がおもくて、こたえなきゃってがんばると疲れるし、でもがんばんなきゃって……もーやだよ……!」
酔っている時はつらつらと愚痴をこぼすくせ、翌日にはけろりとしていてそっけない。そんなギャップに翔太はどんどんと惹かれていって……?
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる