不本意ですが筋肉ダルマに恋をしてしまいました(仮)

12猿

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1,ものがたりの始まり

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 大きな大陸にいくつもの国々が割拠し、精霊や魔物が溢れ、人類と精霊と魔物は互いを牽制しつつその地で共にいきていた。言葉で契を交わしたわけではないが、不可侵が当たり前となった時代である。
 そんな混沌とした世界のとある一つの国、ガージフェクトは魔物も精霊もいない人類独有国であった。周辺諸国も人類が統治を統べる国しかなく、魔物討伐よりも周辺諸国や内部国政の政での争いの方が多いほどの平和な国である。国としての外交問題もあるため、魔物討伐の遠征部隊を組み国の軍事力を内外に示す形式的なものは行っている。しかし、その程度の小国にすぎない。

 主な財政は観光業にある。周辺諸国が人類国しかない国は自国しかなく、この国に滞在する間だけは魔物の侵入や妖精の悪戯も少ないということから、人気の避暑地となっている。観光業が栄えたことで、人の行き来が多く情報も入りやすいため、政においてもガージフェクト国は周辺諸国より一歩先を歩いていた。
 しかし、商業が国の主な財政の為、時流の波に揉まれることが多く、国庫の財政は安定したものではなかった。そのため、国は大国になるほどの力はなく、軍事力を補強しつつ周辺諸外国に取り込まれないよう小国の形を保っている程度であった。

 国境は大きな壁に囲まれ、四方に国への出入り口となる
門がそびえ立っている。北の入り口だけは吊橋となっているが、北の方角には国を一つ越えた向こうに魔物の大国であるジェルファイド国があった。
 戦争に興味がない穏健派の魔物が国を統べる為、その国の魔物はよっぽどのことがない限り他国に出てくることがない。危険度の低い国になったのは現在の国の主が国主に立った頃からと言われている。そのため、ここ百年は平和な時代が続いているらしい。
 噂話だが、ジェルファイド国が穏健派に至ったのはガージフェクトの隣国であるネスクディーテ国から歳の取った人属の男を娶ったからだと言われている。真偽の程は分からない。
 外交で国主を他国で見ることはあれど、その正室である娶った男を誰も見たことがないからだ。公の場で正室が出てくることは一切なく、また国主に正室の正体について尋ねることはあまりに失礼なことで、いくら穏健派といえど外交問題に発展しないように、誰もが同じように口をつぐんでいる。
 当たり障りない程度に、「正室の体調はいかがですか」「体調が良ければ、我が国の誇る湖にご招待したかったです」などと言ってゴマをするのだが、その度に国主は目を細めてうっすらと笑うので、その表情を測りかねるばかりだ。

 実を言うと、正室については俺の知り合いの男であるので、国主と仲睦まじくやっていることは知っている。だが、それについては公言すべきことではないので、いつか話す機会があればと思う。なかなか感じの良い男で、ちょっと抜けているのが良いところだろう。まあ、そんな良いところに付け込まれたのだから、運はなかったかもしれないが……。まあ、彼の話はまた今度。


 さて、そんなことより。今回の話はガージフェクト国の騎士である俺の、とんでもなくどうしようもない恋愛話だ。
 お気に召してくれたら嬉しいな。
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