ショートショート集「どうしてこうなった高校」

食べ物の気持ち

　学校の地下には「気持ち部屋」があった。
　コンクリート一面の部屋で、竹崎洋太郎は正座をさせられている。左足は鉄の輪をかけられ、鎖で壁際の留め具につながれていた。
　彼の目の前で、人間のような形の影が浮かび上がってきた。
「ハロー、コンビニのアイスケースに入り込んで多額の被害を出したのは君かね？」
　影が洋太郎にいきなり話しかける。洋太郎は後ろにのけぞりながら「すみません、反省してます」とか細い声で答えた。
「本来なら退学だけど、ウチの学校は一度だけ僕から罰ゲームを受ければ停学程度で許してもらえる。それは粗末にした食べ物の気持ちを知ることだよ。僕はそのためにこの部屋を何にでも作り替える。早速やります」 
　影が素早く地面に沈むと、部屋が冷凍庫に様変わりした。洋太郎は寒さのあまりに逃げ出そうとするが、鎖につながれてどうにもならない。彼はひたすら耐えるしかなく、最後には凍った涙を流しながら泣いていた。