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コトバイカ

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 こんな不思議な海を泳ぐのか。海面から色とりどりのさまざまな言葉が浮かび上がっている。「気温33.1℃ 湿度67%」という黄色い文字や、「遠泳がんばってね」という青い文字など。
「この海にはコトバイカがたくさんいます。イカが吐いた墨は言葉となって、海をすり抜けて宙に浮かびます」
 海岸に集まった僕たちに、先生はそう語りかけた。
 そうして迎えた遠泳中に、僕は海中で急にめまいを覚え、浮き上がれずにもがき苦しんだ。

 気がついたら船の上で僕は水を吐いていた。うっすらとした視界に、強烈な日差しが飛び込んでくる。
「よかったな、須山」
 先生が震える声で言った。
「海から『この人おぼれてる」って赤い文字が浮かんできたから」
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