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異世界へ
がきんちょの行方
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白無垢に荒唐無稽な事を言われて、混乱する頭を整理しよう。
ここが、幽世で、俺がいたという場所が現世?
そして、どういうわけか、がきんちょは現地点の幽世におらず、現世にいる。
真実かわからないが、現にがきんちょの楽し気な声がしなくなっている。
幽世うんぬん、のファンタジーは横に置いておいて。
現実に即して行動するなら、がきんちょの捜索が常道。
懸念は不意に日が陰ったこと。
時間通りに太陽がうごいておらず、
季節を無視した極寒と降雪のなか、日が沈んでいく。
捜索はする時間も僅かばかり。がきんちょの安否確認は急務。
竹林内を捜索するにも、霧雪や降雪で行動に制限が掛かる。
白無垢も俺も地理にうとい。
方向を誤れば山林に足を踏み込むことになってしまう。
あとは、白無垢という存在。
冬着を着込む俺と対照的に、息も白くならず、凍えもしない。暫定的に人間?
いたって平然と俺の前にたたずんでいる。
こんなところだろうか?
「……理解が追いついて無いんですが、とりあえず日が沈むようです。白無垢さんの言葉を信用するにも情報がすくないですね……。一応心配なので二人を探してみようと思います。白無垢さんは玄関でまっていてください。縁側よりましでしょうからっ」
「おおきにありがとうどす。お前様は相変わらずのお心延えやすなぁ。うちの正体を訝しんではりますのにあの子達になんやあればいかんと心根がおくすぐられるんやっしゃろ?」
きょとんと、したあとそう言った白無垢は、くすくすと笑い始めた。
「ほんにお人好しやし難儀なお人どす」
馬鹿にされている? のではないようだ。
不快ではない。不快ではないのだが、なんだかこそばゆい。
「は、はぁ……では探してきますんで」
とりあえず、ライトを取り出すか。
アウトドア用のランタン型のライトがあったはず。
夜釣りでお世話になっている便利アイテム。
さっそく段ボールの山に向き直り、軽く積もった雪を払ってやる。
段ボールの山をせっせと崩し見覚えのある「俺」と書かれた段ボールを取りそろえていく。
これだけでけっこうな重労働だ。幾分、体が暖まる。
たしか…この箱だ。かじかむ指先で無理やりガムテープを引っぺがし、中を漁るとすぐに見つけられた。
問題なく点灯するし、灯台代わりになるだろう。
習慣でスマフォを確認する。
午前15時半を過ぎるくらいだった。
期待していたわけじゃないが、スマホのアンテナがまったく立っていない。
電波を探して電気消費するので、機内モードにして電源を切っておく。
充電できない以上、すぐ使えなくなるだろうけど……。
うーん。
どうみても、日が陰ってるんだけどなぁ。おまけに、しんしんと粉雪が舞いおりてくる。
霧雪も立ち込めて視界は絶不調。いつも通りなら、正門の先は石畳の林道が続いてる。それすら見えない。
白無垢の言葉を加味しても、無理な行軍は怪我のもと、はたまた異界で二重遭難になる。
信じているわけではないが、白無垢の言葉も無視できない不安がある。
垣を周回しながら、がきんちょどもに呼びかければ、霧雪で迷っていても声を頼りに戻ってこれるだろう。
二人とも動けない状態でも、声を上げられるはず。
がきんちょ達が外に出ていったとしても、この霧雪の中。
そう遠くにはいってないはずだ。異変からそう時間はたっていない。
呼びかけに答えてくれればいいんだけどなぁ……。
捜索範囲を限定したのは先の二重遭難を回避する意味があっての事。
けっして、俺がビビッているわけだはない。そこは協調しておく。
そして、ふと、何気なく家屋が当たり前にある事に気づく。
白無垢曰く、違う異界に居るのに……?
考えてもわからない無いことが一度に頻発しすぎだ。
その辺りの事も白無垢に聞くしか無いようだ。
電波発言の白無垢に頼らざる得ないとは、心配でならない。
信じて行動したら、全部妄想でした。なんて事態もありうるのだ。
てか、白無垢の妄想が現実に……?
いやいや。妄想が飛躍しすぎだ。荒唐無稽だし。
落ちつけ。落ち着けぇ……。
よし!憂うより、まず、がきんちょだ。
「では…行ってきます。そう遠くへいってない、でしょうから…呼びかければこ、ここまで来れるでしょう」
「ほな、正門までお送りしやす」
声を震わせながら白無垢にいう。
「おきぃつけよしやす」そういって頭を下げ、俺を送り出す。
相変わらず平然としている白無垢。かくいう、俺はガクブルだというのに。
もう下顎が上顎を打って仕方ないのだ
正門から敷地外へ踏み出す。
ズボッ!
ん?
踏み出した足が足首より上くらいまで沈み込む。
こんなに積もってたかな?
正門へ振り返り、敷地内をのぞきこむと、薄く雪化粧が見える。
敷地の外と内で、積もった嵩がちがう。
粉雪がここまでふり積もるのに大分かかるよな?
降り始めてしばらくして、敷地内にも雪がふり始めた。
そういうことなんだろか?
黒漆喰りの垣沿いを確かめるように進み、幾分過ぎてから振り返る。ニコニコ白無垢が微笑んでいた。
気まずくなって頭を下げる。捜索に専念しよう。
雪を踏みしめながらがきんちょを呼ぼうと叫ぶ。
「……」
…、そういえば、名前聞きおそびれたな。
会って間もないうえに、さっきのことだ。
俺の声くらい覚えているだろう。
仕方ないので、そのままんま呼ぼう。
「お~い、がきんちょぉ~」
霧雪に向かって呼びかける。
ランタン型のライトを掲る。
周囲を見回すが駆け寄ってくるがきんちょの人影は確認できない。
てか、がきんちょ以外が来たらどうしよ……。
来たところでどうしよもないけど。
霧のおくに余計な影など捉えたくない。
ちょう怖い。怖いけどがきんちょを放置できない。
呼びかける事に集中、集中。
「ここだぞぉ、がきんちょや~い」
返答もなし。
いちいち魑魅魍魎の類がいるんじゃないかとびびってしまう。
疑心暗鬼ってやつだろう。
猜疑心から注意深くなった俺は一つ気づいた。
この家屋は外から見た限り周囲を竹林に囲まれている。
垣沿いに歩いているとはいえ、霧雪越しに竹の一本、枝葉の影の一つでも見えるはずだ。
それがない。どゆこと?
霧雪で先を見とおせない。
故にさきに何があるのか気なってしまう。
こういう、人の好奇心をくすぐって誘うきか?このやろう。
とくに変化もなくの角を曲がる。
静寂ほど心をざわつかせるものはないな。
自分の足音に集中しながら歩く。
自分以外の足音を聞くためだ。
聞きたくないが、がきんちょかもしれないし。
ジレンマにさいなまれながら歩き続ける。
どうしても人間は何もないと情報を欲しがるのか、
些細なことがきにさわるらしい。
ほんの数分で人間神秘を学びとりながら、ふと思う。
いわく、気配するよね?
そっと、疑惑のするほうへランタンを掲げる。
垣の屋根部分を照らすがとくになし。
積もった雪が崩れたりもしていないし。逆に怖い。
白無垢についてきてもらえばよかった……。
いや、そっちの方が怖い。今は特に。
また、気配がする。
今度は早さを重視してバッ、と振り向く。
いなぁ…いな。ほっ、白い息をはき、胸をなで降ろす。
……しまった。これはホラー映画でいえばフラグじゃないのか?
今ここで振り向けばいるんじゃないのか!?すぐにフラグを折る必要がある!
俺は駆け出す。もと来た道をひた走る。雪を蹴散らし急ぐ!早く!早く!超怖い!
角を曲がり、正門を通り過ぎようとした時だった。
「おかえ……」
なんか声がした!
なんかいる!
振り切れないというのか?フラグは折れないということか!?
とりあえず角を曲がるしかない!霧雪に逃げ込むなど悪手!愚の骨頂!
この逃走がいつまで続くというのか。
そうだ、がきんちょ!がきんちょ探してんだ!
「がきんちょぉや~い!」
俺は錯乱した精神のまま、ひた走る。
ライトを掲げ走り、とうとう角を曲がろうとしたとき!
俺は盛大にこけた。雪で足場が悪いのもあったが。
なでらかに見えた雪面を踏み向き、石かなんかに躓いてしまった
魔が時に霧雪立ち込めるなか走ればそりゃ、こけるよ。
いつもの、凶運かもしれないが。
てか、夕暮れ時を魔が時って例えちゃった。こわっ。
膝をさする。白無垢に見られなかったのだけが、幸いだろう。
コート越しに雪面を膝蹴り、肘打ちしたので打撲くらいで済んでいる。
手袋もどきの靴下が、湿ってしっとりする。
はぁ……。散々だな。
手から飛び出したライトを見やる・・・・・・。
ぼんやりと広がる光の先に黒い影がさえぎる。
それは、地肌が真っ黒の両足だった。
・・・・・・。
いや、見間違いだろう。そう、見間違いだ。
幽霊の正体みたり、なんとやらだ。
頭を振り。目を擦る。
「冷たッ!」
しっとりした手袋もどきを振り払う。
あわてて、視線を戻すが、そこにはすでに何もいなかった。
ただ、先の無い霧雪に視線がさえぎられるだけ。
恐怖と一緒に押し寄せる集中力と緊張。
張り詰めたまま気配を探る。
幾分、じっとしていたが黒い影は二度と現れなった。
ビビって動けなかったわけではない。
ライトを拾い上げ、雪を急ぎ払いのける。びくびくしながら再度、がきんちょを呼び、
早歩き気味に垣を一周する。
けっきょく、がきんちょ達から反応はなかった。
周回してる間にも日がかたむき、雪が降り積もる。
まだ正門にいた白無垢に断りをいれ、もう一回だけ周回するも変化はなかった。
ここが、幽世で、俺がいたという場所が現世?
そして、どういうわけか、がきんちょは現地点の幽世におらず、現世にいる。
真実かわからないが、現にがきんちょの楽し気な声がしなくなっている。
幽世うんぬん、のファンタジーは横に置いておいて。
現実に即して行動するなら、がきんちょの捜索が常道。
懸念は不意に日が陰ったこと。
時間通りに太陽がうごいておらず、
季節を無視した極寒と降雪のなか、日が沈んでいく。
捜索はする時間も僅かばかり。がきんちょの安否確認は急務。
竹林内を捜索するにも、霧雪や降雪で行動に制限が掛かる。
白無垢も俺も地理にうとい。
方向を誤れば山林に足を踏み込むことになってしまう。
あとは、白無垢という存在。
冬着を着込む俺と対照的に、息も白くならず、凍えもしない。暫定的に人間?
いたって平然と俺の前にたたずんでいる。
こんなところだろうか?
「……理解が追いついて無いんですが、とりあえず日が沈むようです。白無垢さんの言葉を信用するにも情報がすくないですね……。一応心配なので二人を探してみようと思います。白無垢さんは玄関でまっていてください。縁側よりましでしょうからっ」
「おおきにありがとうどす。お前様は相変わらずのお心延えやすなぁ。うちの正体を訝しんではりますのにあの子達になんやあればいかんと心根がおくすぐられるんやっしゃろ?」
きょとんと、したあとそう言った白無垢は、くすくすと笑い始めた。
「ほんにお人好しやし難儀なお人どす」
馬鹿にされている? のではないようだ。
不快ではない。不快ではないのだが、なんだかこそばゆい。
「は、はぁ……では探してきますんで」
とりあえず、ライトを取り出すか。
アウトドア用のランタン型のライトがあったはず。
夜釣りでお世話になっている便利アイテム。
さっそく段ボールの山に向き直り、軽く積もった雪を払ってやる。
段ボールの山をせっせと崩し見覚えのある「俺」と書かれた段ボールを取りそろえていく。
これだけでけっこうな重労働だ。幾分、体が暖まる。
たしか…この箱だ。かじかむ指先で無理やりガムテープを引っぺがし、中を漁るとすぐに見つけられた。
問題なく点灯するし、灯台代わりになるだろう。
習慣でスマフォを確認する。
午前15時半を過ぎるくらいだった。
期待していたわけじゃないが、スマホのアンテナがまったく立っていない。
電波を探して電気消費するので、機内モードにして電源を切っておく。
充電できない以上、すぐ使えなくなるだろうけど……。
うーん。
どうみても、日が陰ってるんだけどなぁ。おまけに、しんしんと粉雪が舞いおりてくる。
霧雪も立ち込めて視界は絶不調。いつも通りなら、正門の先は石畳の林道が続いてる。それすら見えない。
白無垢の言葉を加味しても、無理な行軍は怪我のもと、はたまた異界で二重遭難になる。
信じているわけではないが、白無垢の言葉も無視できない不安がある。
垣を周回しながら、がきんちょどもに呼びかければ、霧雪で迷っていても声を頼りに戻ってこれるだろう。
二人とも動けない状態でも、声を上げられるはず。
がきんちょ達が外に出ていったとしても、この霧雪の中。
そう遠くにはいってないはずだ。異変からそう時間はたっていない。
呼びかけに答えてくれればいいんだけどなぁ……。
捜索範囲を限定したのは先の二重遭難を回避する意味があっての事。
けっして、俺がビビッているわけだはない。そこは協調しておく。
そして、ふと、何気なく家屋が当たり前にある事に気づく。
白無垢曰く、違う異界に居るのに……?
考えてもわからない無いことが一度に頻発しすぎだ。
その辺りの事も白無垢に聞くしか無いようだ。
電波発言の白無垢に頼らざる得ないとは、心配でならない。
信じて行動したら、全部妄想でした。なんて事態もありうるのだ。
てか、白無垢の妄想が現実に……?
いやいや。妄想が飛躍しすぎだ。荒唐無稽だし。
落ちつけ。落ち着けぇ……。
よし!憂うより、まず、がきんちょだ。
「では…行ってきます。そう遠くへいってない、でしょうから…呼びかければこ、ここまで来れるでしょう」
「ほな、正門までお送りしやす」
声を震わせながら白無垢にいう。
「おきぃつけよしやす」そういって頭を下げ、俺を送り出す。
相変わらず平然としている白無垢。かくいう、俺はガクブルだというのに。
もう下顎が上顎を打って仕方ないのだ
正門から敷地外へ踏み出す。
ズボッ!
ん?
踏み出した足が足首より上くらいまで沈み込む。
こんなに積もってたかな?
正門へ振り返り、敷地内をのぞきこむと、薄く雪化粧が見える。
敷地の外と内で、積もった嵩がちがう。
粉雪がここまでふり積もるのに大分かかるよな?
降り始めてしばらくして、敷地内にも雪がふり始めた。
そういうことなんだろか?
黒漆喰りの垣沿いを確かめるように進み、幾分過ぎてから振り返る。ニコニコ白無垢が微笑んでいた。
気まずくなって頭を下げる。捜索に専念しよう。
雪を踏みしめながらがきんちょを呼ぼうと叫ぶ。
「……」
…、そういえば、名前聞きおそびれたな。
会って間もないうえに、さっきのことだ。
俺の声くらい覚えているだろう。
仕方ないので、そのままんま呼ぼう。
「お~い、がきんちょぉ~」
霧雪に向かって呼びかける。
ランタン型のライトを掲る。
周囲を見回すが駆け寄ってくるがきんちょの人影は確認できない。
てか、がきんちょ以外が来たらどうしよ……。
来たところでどうしよもないけど。
霧のおくに余計な影など捉えたくない。
ちょう怖い。怖いけどがきんちょを放置できない。
呼びかける事に集中、集中。
「ここだぞぉ、がきんちょや~い」
返答もなし。
いちいち魑魅魍魎の類がいるんじゃないかとびびってしまう。
疑心暗鬼ってやつだろう。
猜疑心から注意深くなった俺は一つ気づいた。
この家屋は外から見た限り周囲を竹林に囲まれている。
垣沿いに歩いているとはいえ、霧雪越しに竹の一本、枝葉の影の一つでも見えるはずだ。
それがない。どゆこと?
霧雪で先を見とおせない。
故にさきに何があるのか気なってしまう。
こういう、人の好奇心をくすぐって誘うきか?このやろう。
とくに変化もなくの角を曲がる。
静寂ほど心をざわつかせるものはないな。
自分の足音に集中しながら歩く。
自分以外の足音を聞くためだ。
聞きたくないが、がきんちょかもしれないし。
ジレンマにさいなまれながら歩き続ける。
どうしても人間は何もないと情報を欲しがるのか、
些細なことがきにさわるらしい。
ほんの数分で人間神秘を学びとりながら、ふと思う。
いわく、気配するよね?
そっと、疑惑のするほうへランタンを掲げる。
垣の屋根部分を照らすがとくになし。
積もった雪が崩れたりもしていないし。逆に怖い。
白無垢についてきてもらえばよかった……。
いや、そっちの方が怖い。今は特に。
また、気配がする。
今度は早さを重視してバッ、と振り向く。
いなぁ…いな。ほっ、白い息をはき、胸をなで降ろす。
……しまった。これはホラー映画でいえばフラグじゃないのか?
今ここで振り向けばいるんじゃないのか!?すぐにフラグを折る必要がある!
俺は駆け出す。もと来た道をひた走る。雪を蹴散らし急ぐ!早く!早く!超怖い!
角を曲がり、正門を通り過ぎようとした時だった。
「おかえ……」
なんか声がした!
なんかいる!
振り切れないというのか?フラグは折れないということか!?
とりあえず角を曲がるしかない!霧雪に逃げ込むなど悪手!愚の骨頂!
この逃走がいつまで続くというのか。
そうだ、がきんちょ!がきんちょ探してんだ!
「がきんちょぉや~い!」
俺は錯乱した精神のまま、ひた走る。
ライトを掲げ走り、とうとう角を曲がろうとしたとき!
俺は盛大にこけた。雪で足場が悪いのもあったが。
なでらかに見えた雪面を踏み向き、石かなんかに躓いてしまった
魔が時に霧雪立ち込めるなか走ればそりゃ、こけるよ。
いつもの、凶運かもしれないが。
てか、夕暮れ時を魔が時って例えちゃった。こわっ。
膝をさする。白無垢に見られなかったのだけが、幸いだろう。
コート越しに雪面を膝蹴り、肘打ちしたので打撲くらいで済んでいる。
手袋もどきの靴下が、湿ってしっとりする。
はぁ……。散々だな。
手から飛び出したライトを見やる・・・・・・。
ぼんやりと広がる光の先に黒い影がさえぎる。
それは、地肌が真っ黒の両足だった。
・・・・・・。
いや、見間違いだろう。そう、見間違いだ。
幽霊の正体みたり、なんとやらだ。
頭を振り。目を擦る。
「冷たッ!」
しっとりした手袋もどきを振り払う。
あわてて、視線を戻すが、そこにはすでに何もいなかった。
ただ、先の無い霧雪に視線がさえぎられるだけ。
恐怖と一緒に押し寄せる集中力と緊張。
張り詰めたまま気配を探る。
幾分、じっとしていたが黒い影は二度と現れなった。
ビビって動けなかったわけではない。
ライトを拾い上げ、雪を急ぎ払いのける。びくびくしながら再度、がきんちょを呼び、
早歩き気味に垣を一周する。
けっきょく、がきんちょ達から反応はなかった。
周回してる間にも日がかたむき、雪が降り積もる。
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