6 / 37
異世界へ
がきんちょの行方
しおりを挟む
白無垢に荒唐無稽な事を言われて、混乱する頭を整理しよう。
ここが、幽世で、俺がいたという場所が現世?
そして、どういうわけか、がきんちょは現地点の幽世におらず、現世にいる。
真実かわからないが、現にがきんちょの楽し気な声がしなくなっている。
幽世うんぬん、のファンタジーは横に置いておいて。
現実に即して行動するなら、がきんちょの捜索が常道。
懸念は不意に日が陰ったこと。
時間通りに太陽がうごいておらず、
季節を無視した極寒と降雪のなか、日が沈んでいく。
捜索はする時間も僅かばかり。がきんちょの安否確認は急務。
竹林内を捜索するにも、霧雪や降雪で行動に制限が掛かる。
白無垢も俺も地理にうとい。
方向を誤れば山林に足を踏み込むことになってしまう。
あとは、白無垢という存在。
冬着を着込む俺と対照的に、息も白くならず、凍えもしない。暫定的に人間?
いたって平然と俺の前にたたずんでいる。
こんなところだろうか?
「……理解が追いついて無いんですが、とりあえず日が沈むようです。白無垢さんの言葉を信用するにも情報がすくないですね……。一応心配なので二人を探してみようと思います。白無垢さんは玄関でまっていてください。縁側よりましでしょうからっ」
「おおきにありがとうどす。お前様は相変わらずのお心延えやすなぁ。うちの正体を訝しんではりますのにあの子達になんやあればいかんと心根がおくすぐられるんやっしゃろ?」
きょとんと、したあとそう言った白無垢は、くすくすと笑い始めた。
「ほんにお人好しやし難儀なお人どす」
馬鹿にされている? のではないようだ。
不快ではない。不快ではないのだが、なんだかこそばゆい。
「は、はぁ……では探してきますんで」
とりあえず、ライトを取り出すか。
アウトドア用のランタン型のライトがあったはず。
夜釣りでお世話になっている便利アイテム。
さっそく段ボールの山に向き直り、軽く積もった雪を払ってやる。
段ボールの山をせっせと崩し見覚えのある「俺」と書かれた段ボールを取りそろえていく。
これだけでけっこうな重労働だ。幾分、体が暖まる。
たしか…この箱だ。かじかむ指先で無理やりガムテープを引っぺがし、中を漁るとすぐに見つけられた。
問題なく点灯するし、灯台代わりになるだろう。
習慣でスマフォを確認する。
午前15時半を過ぎるくらいだった。
期待していたわけじゃないが、スマホのアンテナがまったく立っていない。
電波を探して電気消費するので、機内モードにして電源を切っておく。
充電できない以上、すぐ使えなくなるだろうけど……。
うーん。
どうみても、日が陰ってるんだけどなぁ。おまけに、しんしんと粉雪が舞いおりてくる。
霧雪も立ち込めて視界は絶不調。いつも通りなら、正門の先は石畳の林道が続いてる。それすら見えない。
白無垢の言葉を加味しても、無理な行軍は怪我のもと、はたまた異界で二重遭難になる。
信じているわけではないが、白無垢の言葉も無視できない不安がある。
垣を周回しながら、がきんちょどもに呼びかければ、霧雪で迷っていても声を頼りに戻ってこれるだろう。
二人とも動けない状態でも、声を上げられるはず。
がきんちょ達が外に出ていったとしても、この霧雪の中。
そう遠くにはいってないはずだ。異変からそう時間はたっていない。
呼びかけに答えてくれればいいんだけどなぁ……。
捜索範囲を限定したのは先の二重遭難を回避する意味があっての事。
けっして、俺がビビッているわけだはない。そこは協調しておく。
そして、ふと、何気なく家屋が当たり前にある事に気づく。
白無垢曰く、違う異界に居るのに……?
考えてもわからない無いことが一度に頻発しすぎだ。
その辺りの事も白無垢に聞くしか無いようだ。
電波発言の白無垢に頼らざる得ないとは、心配でならない。
信じて行動したら、全部妄想でした。なんて事態もありうるのだ。
てか、白無垢の妄想が現実に……?
いやいや。妄想が飛躍しすぎだ。荒唐無稽だし。
落ちつけ。落ち着けぇ……。
よし!憂うより、まず、がきんちょだ。
「では…行ってきます。そう遠くへいってない、でしょうから…呼びかければこ、ここまで来れるでしょう」
「ほな、正門までお送りしやす」
声を震わせながら白無垢にいう。
「おきぃつけよしやす」そういって頭を下げ、俺を送り出す。
相変わらず平然としている白無垢。かくいう、俺はガクブルだというのに。
もう下顎が上顎を打って仕方ないのだ
正門から敷地外へ踏み出す。
ズボッ!
ん?
踏み出した足が足首より上くらいまで沈み込む。
こんなに積もってたかな?
正門へ振り返り、敷地内をのぞきこむと、薄く雪化粧が見える。
敷地の外と内で、積もった嵩がちがう。
粉雪がここまでふり積もるのに大分かかるよな?
降り始めてしばらくして、敷地内にも雪がふり始めた。
そういうことなんだろか?
黒漆喰りの垣沿いを確かめるように進み、幾分過ぎてから振り返る。ニコニコ白無垢が微笑んでいた。
気まずくなって頭を下げる。捜索に専念しよう。
雪を踏みしめながらがきんちょを呼ぼうと叫ぶ。
「……」
…、そういえば、名前聞きおそびれたな。
会って間もないうえに、さっきのことだ。
俺の声くらい覚えているだろう。
仕方ないので、そのままんま呼ぼう。
「お~い、がきんちょぉ~」
霧雪に向かって呼びかける。
ランタン型のライトを掲る。
周囲を見回すが駆け寄ってくるがきんちょの人影は確認できない。
てか、がきんちょ以外が来たらどうしよ……。
来たところでどうしよもないけど。
霧のおくに余計な影など捉えたくない。
ちょう怖い。怖いけどがきんちょを放置できない。
呼びかける事に集中、集中。
「ここだぞぉ、がきんちょや~い」
返答もなし。
いちいち魑魅魍魎の類がいるんじゃないかとびびってしまう。
疑心暗鬼ってやつだろう。
猜疑心から注意深くなった俺は一つ気づいた。
この家屋は外から見た限り周囲を竹林に囲まれている。
垣沿いに歩いているとはいえ、霧雪越しに竹の一本、枝葉の影の一つでも見えるはずだ。
それがない。どゆこと?
霧雪で先を見とおせない。
故にさきに何があるのか気なってしまう。
こういう、人の好奇心をくすぐって誘うきか?このやろう。
とくに変化もなくの角を曲がる。
静寂ほど心をざわつかせるものはないな。
自分の足音に集中しながら歩く。
自分以外の足音を聞くためだ。
聞きたくないが、がきんちょかもしれないし。
ジレンマにさいなまれながら歩き続ける。
どうしても人間は何もないと情報を欲しがるのか、
些細なことがきにさわるらしい。
ほんの数分で人間神秘を学びとりながら、ふと思う。
いわく、気配するよね?
そっと、疑惑のするほうへランタンを掲げる。
垣の屋根部分を照らすがとくになし。
積もった雪が崩れたりもしていないし。逆に怖い。
白無垢についてきてもらえばよかった……。
いや、そっちの方が怖い。今は特に。
また、気配がする。
今度は早さを重視してバッ、と振り向く。
いなぁ…いな。ほっ、白い息をはき、胸をなで降ろす。
……しまった。これはホラー映画でいえばフラグじゃないのか?
今ここで振り向けばいるんじゃないのか!?すぐにフラグを折る必要がある!
俺は駆け出す。もと来た道をひた走る。雪を蹴散らし急ぐ!早く!早く!超怖い!
角を曲がり、正門を通り過ぎようとした時だった。
「おかえ……」
なんか声がした!
なんかいる!
振り切れないというのか?フラグは折れないということか!?
とりあえず角を曲がるしかない!霧雪に逃げ込むなど悪手!愚の骨頂!
この逃走がいつまで続くというのか。
そうだ、がきんちょ!がきんちょ探してんだ!
「がきんちょぉや~い!」
俺は錯乱した精神のまま、ひた走る。
ライトを掲げ走り、とうとう角を曲がろうとしたとき!
俺は盛大にこけた。雪で足場が悪いのもあったが。
なでらかに見えた雪面を踏み向き、石かなんかに躓いてしまった
魔が時に霧雪立ち込めるなか走ればそりゃ、こけるよ。
いつもの、凶運かもしれないが。
てか、夕暮れ時を魔が時って例えちゃった。こわっ。
膝をさする。白無垢に見られなかったのだけが、幸いだろう。
コート越しに雪面を膝蹴り、肘打ちしたので打撲くらいで済んでいる。
手袋もどきの靴下が、湿ってしっとりする。
はぁ……。散々だな。
手から飛び出したライトを見やる・・・・・・。
ぼんやりと広がる光の先に黒い影がさえぎる。
それは、地肌が真っ黒の両足だった。
・・・・・・。
いや、見間違いだろう。そう、見間違いだ。
幽霊の正体みたり、なんとやらだ。
頭を振り。目を擦る。
「冷たッ!」
しっとりした手袋もどきを振り払う。
あわてて、視線を戻すが、そこにはすでに何もいなかった。
ただ、先の無い霧雪に視線がさえぎられるだけ。
恐怖と一緒に押し寄せる集中力と緊張。
張り詰めたまま気配を探る。
幾分、じっとしていたが黒い影は二度と現れなった。
ビビって動けなかったわけではない。
ライトを拾い上げ、雪を急ぎ払いのける。びくびくしながら再度、がきんちょを呼び、
早歩き気味に垣を一周する。
けっきょく、がきんちょ達から反応はなかった。
周回してる間にも日がかたむき、雪が降り積もる。
まだ正門にいた白無垢に断りをいれ、もう一回だけ周回するも変化はなかった。
ここが、幽世で、俺がいたという場所が現世?
そして、どういうわけか、がきんちょは現地点の幽世におらず、現世にいる。
真実かわからないが、現にがきんちょの楽し気な声がしなくなっている。
幽世うんぬん、のファンタジーは横に置いておいて。
現実に即して行動するなら、がきんちょの捜索が常道。
懸念は不意に日が陰ったこと。
時間通りに太陽がうごいておらず、
季節を無視した極寒と降雪のなか、日が沈んでいく。
捜索はする時間も僅かばかり。がきんちょの安否確認は急務。
竹林内を捜索するにも、霧雪や降雪で行動に制限が掛かる。
白無垢も俺も地理にうとい。
方向を誤れば山林に足を踏み込むことになってしまう。
あとは、白無垢という存在。
冬着を着込む俺と対照的に、息も白くならず、凍えもしない。暫定的に人間?
いたって平然と俺の前にたたずんでいる。
こんなところだろうか?
「……理解が追いついて無いんですが、とりあえず日が沈むようです。白無垢さんの言葉を信用するにも情報がすくないですね……。一応心配なので二人を探してみようと思います。白無垢さんは玄関でまっていてください。縁側よりましでしょうからっ」
「おおきにありがとうどす。お前様は相変わらずのお心延えやすなぁ。うちの正体を訝しんではりますのにあの子達になんやあればいかんと心根がおくすぐられるんやっしゃろ?」
きょとんと、したあとそう言った白無垢は、くすくすと笑い始めた。
「ほんにお人好しやし難儀なお人どす」
馬鹿にされている? のではないようだ。
不快ではない。不快ではないのだが、なんだかこそばゆい。
「は、はぁ……では探してきますんで」
とりあえず、ライトを取り出すか。
アウトドア用のランタン型のライトがあったはず。
夜釣りでお世話になっている便利アイテム。
さっそく段ボールの山に向き直り、軽く積もった雪を払ってやる。
段ボールの山をせっせと崩し見覚えのある「俺」と書かれた段ボールを取りそろえていく。
これだけでけっこうな重労働だ。幾分、体が暖まる。
たしか…この箱だ。かじかむ指先で無理やりガムテープを引っぺがし、中を漁るとすぐに見つけられた。
問題なく点灯するし、灯台代わりになるだろう。
習慣でスマフォを確認する。
午前15時半を過ぎるくらいだった。
期待していたわけじゃないが、スマホのアンテナがまったく立っていない。
電波を探して電気消費するので、機内モードにして電源を切っておく。
充電できない以上、すぐ使えなくなるだろうけど……。
うーん。
どうみても、日が陰ってるんだけどなぁ。おまけに、しんしんと粉雪が舞いおりてくる。
霧雪も立ち込めて視界は絶不調。いつも通りなら、正門の先は石畳の林道が続いてる。それすら見えない。
白無垢の言葉を加味しても、無理な行軍は怪我のもと、はたまた異界で二重遭難になる。
信じているわけではないが、白無垢の言葉も無視できない不安がある。
垣を周回しながら、がきんちょどもに呼びかければ、霧雪で迷っていても声を頼りに戻ってこれるだろう。
二人とも動けない状態でも、声を上げられるはず。
がきんちょ達が外に出ていったとしても、この霧雪の中。
そう遠くにはいってないはずだ。異変からそう時間はたっていない。
呼びかけに答えてくれればいいんだけどなぁ……。
捜索範囲を限定したのは先の二重遭難を回避する意味があっての事。
けっして、俺がビビッているわけだはない。そこは協調しておく。
そして、ふと、何気なく家屋が当たり前にある事に気づく。
白無垢曰く、違う異界に居るのに……?
考えてもわからない無いことが一度に頻発しすぎだ。
その辺りの事も白無垢に聞くしか無いようだ。
電波発言の白無垢に頼らざる得ないとは、心配でならない。
信じて行動したら、全部妄想でした。なんて事態もありうるのだ。
てか、白無垢の妄想が現実に……?
いやいや。妄想が飛躍しすぎだ。荒唐無稽だし。
落ちつけ。落ち着けぇ……。
よし!憂うより、まず、がきんちょだ。
「では…行ってきます。そう遠くへいってない、でしょうから…呼びかければこ、ここまで来れるでしょう」
「ほな、正門までお送りしやす」
声を震わせながら白無垢にいう。
「おきぃつけよしやす」そういって頭を下げ、俺を送り出す。
相変わらず平然としている白無垢。かくいう、俺はガクブルだというのに。
もう下顎が上顎を打って仕方ないのだ
正門から敷地外へ踏み出す。
ズボッ!
ん?
踏み出した足が足首より上くらいまで沈み込む。
こんなに積もってたかな?
正門へ振り返り、敷地内をのぞきこむと、薄く雪化粧が見える。
敷地の外と内で、積もった嵩がちがう。
粉雪がここまでふり積もるのに大分かかるよな?
降り始めてしばらくして、敷地内にも雪がふり始めた。
そういうことなんだろか?
黒漆喰りの垣沿いを確かめるように進み、幾分過ぎてから振り返る。ニコニコ白無垢が微笑んでいた。
気まずくなって頭を下げる。捜索に専念しよう。
雪を踏みしめながらがきんちょを呼ぼうと叫ぶ。
「……」
…、そういえば、名前聞きおそびれたな。
会って間もないうえに、さっきのことだ。
俺の声くらい覚えているだろう。
仕方ないので、そのままんま呼ぼう。
「お~い、がきんちょぉ~」
霧雪に向かって呼びかける。
ランタン型のライトを掲る。
周囲を見回すが駆け寄ってくるがきんちょの人影は確認できない。
てか、がきんちょ以外が来たらどうしよ……。
来たところでどうしよもないけど。
霧のおくに余計な影など捉えたくない。
ちょう怖い。怖いけどがきんちょを放置できない。
呼びかける事に集中、集中。
「ここだぞぉ、がきんちょや~い」
返答もなし。
いちいち魑魅魍魎の類がいるんじゃないかとびびってしまう。
疑心暗鬼ってやつだろう。
猜疑心から注意深くなった俺は一つ気づいた。
この家屋は外から見た限り周囲を竹林に囲まれている。
垣沿いに歩いているとはいえ、霧雪越しに竹の一本、枝葉の影の一つでも見えるはずだ。
それがない。どゆこと?
霧雪で先を見とおせない。
故にさきに何があるのか気なってしまう。
こういう、人の好奇心をくすぐって誘うきか?このやろう。
とくに変化もなくの角を曲がる。
静寂ほど心をざわつかせるものはないな。
自分の足音に集中しながら歩く。
自分以外の足音を聞くためだ。
聞きたくないが、がきんちょかもしれないし。
ジレンマにさいなまれながら歩き続ける。
どうしても人間は何もないと情報を欲しがるのか、
些細なことがきにさわるらしい。
ほんの数分で人間神秘を学びとりながら、ふと思う。
いわく、気配するよね?
そっと、疑惑のするほうへランタンを掲げる。
垣の屋根部分を照らすがとくになし。
積もった雪が崩れたりもしていないし。逆に怖い。
白無垢についてきてもらえばよかった……。
いや、そっちの方が怖い。今は特に。
また、気配がする。
今度は早さを重視してバッ、と振り向く。
いなぁ…いな。ほっ、白い息をはき、胸をなで降ろす。
……しまった。これはホラー映画でいえばフラグじゃないのか?
今ここで振り向けばいるんじゃないのか!?すぐにフラグを折る必要がある!
俺は駆け出す。もと来た道をひた走る。雪を蹴散らし急ぐ!早く!早く!超怖い!
角を曲がり、正門を通り過ぎようとした時だった。
「おかえ……」
なんか声がした!
なんかいる!
振り切れないというのか?フラグは折れないということか!?
とりあえず角を曲がるしかない!霧雪に逃げ込むなど悪手!愚の骨頂!
この逃走がいつまで続くというのか。
そうだ、がきんちょ!がきんちょ探してんだ!
「がきんちょぉや~い!」
俺は錯乱した精神のまま、ひた走る。
ライトを掲げ走り、とうとう角を曲がろうとしたとき!
俺は盛大にこけた。雪で足場が悪いのもあったが。
なでらかに見えた雪面を踏み向き、石かなんかに躓いてしまった
魔が時に霧雪立ち込めるなか走ればそりゃ、こけるよ。
いつもの、凶運かもしれないが。
てか、夕暮れ時を魔が時って例えちゃった。こわっ。
膝をさする。白無垢に見られなかったのだけが、幸いだろう。
コート越しに雪面を膝蹴り、肘打ちしたので打撲くらいで済んでいる。
手袋もどきの靴下が、湿ってしっとりする。
はぁ……。散々だな。
手から飛び出したライトを見やる・・・・・・。
ぼんやりと広がる光の先に黒い影がさえぎる。
それは、地肌が真っ黒の両足だった。
・・・・・・。
いや、見間違いだろう。そう、見間違いだ。
幽霊の正体みたり、なんとやらだ。
頭を振り。目を擦る。
「冷たッ!」
しっとりした手袋もどきを振り払う。
あわてて、視線を戻すが、そこにはすでに何もいなかった。
ただ、先の無い霧雪に視線がさえぎられるだけ。
恐怖と一緒に押し寄せる集中力と緊張。
張り詰めたまま気配を探る。
幾分、じっとしていたが黒い影は二度と現れなった。
ビビって動けなかったわけではない。
ライトを拾い上げ、雪を急ぎ払いのける。びくびくしながら再度、がきんちょを呼び、
早歩き気味に垣を一周する。
けっきょく、がきんちょ達から反応はなかった。
周回してる間にも日がかたむき、雪が降り積もる。
まだ正門にいた白無垢に断りをいれ、もう一回だけ周回するも変化はなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる