獣の国

真鉄

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獣の国

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「……ありがとうございます」

  特に嬉しそうな素振りも見せず、コクブと呼ばれた黒犬は無表情のまま蓮の腕を掴んで固定した。ヤシロが楽しげに蓮に言う。

「こいつは俺と違って同じ種類のメスにしか反応しねえ堅物なんだ。でもまあ、お前のこのたまんねえ匂いならコクブもがっついてくると思うぜ」

  匂い、匂いと言うが、蓮にはそんな自覚はない。歩き回ったこともあり多少汗臭さはあるだろうが、そんなものは彼らの獣臭さに比べれば掻き消されてしまう程度のものだ。ヤシロの鋭い爪が腕に引っかかっていたTシャツの残骸を引き裂きボロ布に変えていく。

「変な所に毛が生えてんだなぁ。何でだ?」

  脇に生え揃った毛をしげしげと観察され、妙な羞恥心が湧き上がってくる。なあオイ、と詰め寄られたが、脇に毛が生える生物的な理由など蓮が知る由もない。必死で首を振ると、ヤシロはフンと鼻を鳴らし、脇の窪みに鼻先を突っ込んで長い舌で舐め上げた。

「うああっ! や、め! くすぐったい……!」

  ぞりぞりと音を立て、強い力で脇を舐め続ける。その金の瞳はうっとりと細められ、夢中になって舐めている。腕を押さえつけていたコクブも恍惚としたヤシロの様子に心惹かれたのか、拘束はとかぬまま身を屈め、脇に鼻を寄せた。一つ嗅ぐと、魅入られたようにぴちゃぴちゃと脇を舐め始める。

「やめろって! やっ、ああ! も、やだぁ……!」

  不随意に身体をびくびくと跳ねさせ、強烈なくすぐったさに蓮はわめく。そうでもしないと頭がおかしくなりそうだった。ヤシロの舌が脇から二の腕に移動し、柔らかな内側の皮膚にかすかに牙を立てた。ぞくぞくと悪寒に似た何かが背筋を這う。濡れた鼻先と短い毛に覆われた口元が何度も押し付けられ、滑らかな皮膚を舐めながら柔らかな肉を甘噛みされた。

「……人間の皮膚は気持ちがいいな。さらさらと滑らかで、それでいてしっとりしていて」

――噛みちぎりたくなる。

  耳元で囁き、ヤシロは意地悪くくつくつと笑った。帰りたい。戻りたい。夢であって欲しい。こんなの嘘だ。恐怖の涙を湛える蓮の目元を舐め取り、狼の長い舌が頰から顎、首筋へと移動していく。唾液で濡れた首筋にヤシロの息がすうすうと当たり、根源的な恐怖に寒気がする。ヤシロの大きな掌が蓮の引き締まった脇腹をなぞり上げ、びくりと身体を引きつらせた。

「我々のような毛皮がない分、皮膚がかなり敏感だと聞いているぞ。まったく、生まれついてのいやらしい身体ってこったな」

「違……っ! くすぐったいだけだっ!」

  身を引きつらせ、頰に血を昇らせながらも必死に言い募る蓮に面白そうに金の瞳を細め、ヤシロは喉で笑う。そして再び蓮のなめらかな肌を舐めることに没頭し始めた。長いベルベットのような舌が蓮の発達した胸筋を舐め、時に牙で甘噛みされた。筋肉の弾力が気に入ったのか、何度も鼻先が押し付けられ、濡れた鼻が胸の頂に当たった。

「……っ」

  ピリっとした電流じみた刺激が走り、腹部がひくりとわなないた。ヤシロは蓮にかすかな反応を敏感に察知し、その小さな肉の粒に鼻先をぐりぐりと擦り付け始めた。最近部活でのランニング中に服と乳首が擦れて痛みを感じることがあった。だが、これは痛みではない。

「……っ、う」

  腹の奥に熱がわだかまる。ヤシロの舌先が胸の尖りを素早く上下に弾き、蓮は全身をびくびくと跳ねさせて快感に耐えた。自分の口から漏れる鼻にかかった甘い声は聞くに忍びない。ヤシロが執拗に脇を舐め続けていたコクブに言う。

「おい、そっちの乳首も可愛がってやれ。お前はその声を殺すな。もっと泣け」

  ヤシロはニヤリと笑うと胸の頂にかじりついた。母乳を吸う子どものように、牙を立てずに乳輪ごとちゅっちゅと吸い上げる。コクブも反対側の頂に舌を這わせ、肉の粒を転がす感触が気に入ったのか、ぴちゃぴちゃと音を立てて執拗に乳首を舐め始めた。巨大な獣たちが群がって胸を愛でるという現実味のない光景が眼前で繰り広げられていたが、そこからあふれる快感はまぎれもない現実だ。

「……ンンっ……ふ、あ……っ」

  今までに感じたことのない婉曲的な甘い快感に蓮の意識は徐々に侵蝕されていく。舌先が頂をくじり、強く吸われる度に腰を震わせ、甘い声を上げた。しつこいほど散々にいたぶられた両乳首は薄い皮膚を赤く充血させ、ぷっくりと腫れあがっていた。

  ヤシロが不意に顔を上げた。鼻をひくひくと蠢かす。

「……いい匂いがするな?」

  そう呟き、下肢へと頭を巡らせる。蓮が気づいた時にはもう遅く、股間は完全に勃ち上がり、窮屈そうにズボンの布を押し上げていた。それに恐らくこの感触は、中はもう先走りの汁でぐしょぐしょに濡れていることだろう。こんな状況で勃起する自分の性根に呆れ、羞恥し、絶望した。嘘だ。元の世界へ帰りたい……。

  いかにも不器用そうな指で皮ベルトが外された。だがホックとファスナーは無理だと判断したのか、ただ面倒になったのか、ズボンは爪でズタズタにされてしまった。真っ二つになったズボンを足先に押しやり、ヤシロは待っていたとばかりに濡れたボクサーパンツに鼻を押し付け、恍惚とした表情で匂いを嗅ぎ始めた。コクブも鼻を鳴らし、ヤシロとともに股間に鼻をうずめた。

  二匹の獣の荒い鼻息を濡れた布越しに感じ、蓮は羞恥に身をよじった。幾らいい匂いだの何だの言われても、臭うと言われて喜ぶ者などいない。ヤシロの指が下着のゴムにかかり、中から濡れた屹立がぶるんと飛び出した。そこそこ大きめだが皮をかぶっており、先端から綺麗なピンク色の亀頭が少しだけ頭を覗かせている。二人は珍しい物のようにしげしげと眺めた。蓮はいつの間にか自由になっていた腕で、あまりの羞恥から顔を覆い隠した。

「見、るなよぉ……やだぁ……」
「……変わった形ですね」
「こんなところにも毛が生えてやがる」

  指先がじょりじょりと陰毛をくすぐり、二人の息が濡れた屹立にかかる。他人に見られたことも触られたこともない敏感な皮膚は、それだけで背筋に甘い戦慄を走らせた。

「こっからすげえいい匂いする……」

  ヤシロは恍惚とした声で呟くと、屹立の先端に舌を這わせた。薄い舌が亀頭と皮の隙間に入り込み、円周に沿ってくるりと這わせ、器用に薄い粘膜を剥き出しにする。ひどく敏感で、自分でもあまり直接は触らない部分だ。ヤシロの舌先がところどころに溜まっていた恥垢を器用にこそげ落とし、ぺちゃぺちゃと飲み込んでいく。ひどい羞恥と初めて他人に触れられた容赦のない快感に、びくびくと身体を震わせながら蓮は思わずヤシロの頭を掴んだ。

「あーっ! ンああああっ! だめ、そこだめぇ!」

  引き締まった腹の上で快楽の涎をとろとろとこぼすピンク色の亀頭をヤシロの長い舌が巻きつくように舐めあげる。コクブは屹立の根元と陰嚢の境の蒸れた匂いが気に入ったのか、その辺り一帯を舐め続けている。初めての他人から与えられた直接的な快感は蓮には強すぎた。玉がせり上がり、あっ、と思った時にはもう遅い。

「だめっ! だ、あ、んうううっ……!」

  びゅるびゅるっ! と濃い精液が勢いよく噴き出し、蓮の胸や顔に白濁が散った。二人は驚いたように耳を立て、目を丸くして射精の様子を眺めていた。荒い息をついて上下する胸元に散った精液をコクブが、顔まで飛んだのをヤシロがそれぞれ舐め取る。獣に舐められて暴発してしまったという不名誉さに蓮は情けなさでいっぱいになった。もう嫌だ。

「人間の精液はやたら濃いんだな。ほれ、もっと出せ。我慢してんなよ」
「え、ちょ……」

  再び二人は股間に陣取り、達したばかりの肉茎をぴちゃぴちゃと舐め始めた。更に敏感になった亀頭や陰嚢をぐりぐりと舌先でくじられ、びりびりと痺れるような痛みに近い強烈な快感に、蓮は半泣きでヤシロとコクブの毛皮を掴んだ。

「イッたばっかだから触んなぁっ! やだ、やだ、すぐとか無理だからぁっ!」

  しかし彼らは蓮の抵抗ごときではびくともせず、夢中になって蓮の肉茎にむしゃぶりついていた。びりびりと神経を掻き毟るような強烈な刺激に蓮は悶え、泣き叫ぶ。ヤシロの舌が亀頭の裏側をくりくりと舌先でくじる。何かが尿道を駆け上がり、こみ上げてくる感覚があった。射精とはまた違う何かがぽたりと腹に漏れた。

「えっ、やっ、やだ嘘だぁっ……! 違っ……!」

  ぷしゃっ、と鈴口から透明な液体がほとばしる。二人が驚いて顔を上げた。小便を漏らしてしまった……? あまりの情けなさに血の気が引き、蓮はただ呆然とすることしかできなかった。何の匂いもしない飛び散った体液に顔を寄せ、二人が興味深そうに嗅ぎ始める。ゆっくりと舐め取り、陶然と目を細めた。

「……すげえいやらしい味ですね」
「天然の回春剤とはよく言ったもんだ。おい、もっとこれを出せ」

  無茶苦茶な言い分に蓮は首を振る。どうやら尿ではないことは何となく分かったが、ではこれが何かと言われると蓮にも分からないし、何故出たのか、どうやって出たのかも分からなかった。

「……知らない……無理……もうやだ……」

  ヤシロはチッと舌打ちし、今度は掌で亀頭を引き締まった腹に押し付けてぐりぐりと捏ねた。蓮は過度の快感に悲鳴をあげ、身体をビクつかせた。二人の期待の目は先端に向けられている。くちゅくちゅと滑らかな掌に転がされ、鈴口がひくひくと蠢いた。

「……あーっ! や、や、またっ……!」

  ぴゅるっ、ぴゅるっ、と間歇的に体液が噴き出し、蓮の胸や腹を濡らしていく。身体に力が入らず、自分では止めることもままならず、ただ噴き出すに任せるしかないのが悔しかった。びしょびしょに濡れた肌を二人の舌が隅々まで這い回り、美味そうに舐めとっていく。

「も、やだ……痛い……」

  散々いじられてじんじんと熱を持つ亀頭が疼痛を訴えていた。これ以上は触られたくない。蓮の泣き言にヤシロが顔を上げ、目を細めた。
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