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「んっ……、ん、ふ……」
ざあざあとシャワーから迸る流水音に紛れ、鼻にかかった自分の気持ち悪い声が浴室に響くのはいい気分ではない。目を開けると、じっとこちらを観察する長い睫毛に縁取られた城沢のあの瞳と視線が絡み、すぐさま目を閉じた。髭の剃り跡でざらざらする頬を長い指が逆撫でしていく。舌と舌が絡み合い、頭の中にぐちゅぐちゅといやらしい音がこだました。
二人して全裸になり、湯で軽く汚れを落とした後からずっと、城沢に口づけられていた。城沢の手がしきりに後頭部や首、頬を撫でる。俺は冷たい壁に背を預け、熱烈な口づけをただ受け続けていた。引き出された舌を吸われ、背筋が甘く震える。俺もそれなりの経験はあるが完全に受け身なのは初めてで、キスだけで息が上がるのも初めてだった。頭が酸欠でくらくらする。
「ずっと、こうしたかったんですよ」
粘度の高い唾液で濡れた唇同士を触れ合わせながら、城沢が熱っぽく囁いた。腹に固く熱いものが擦りつけられ、俺は薄く目を開く。城沢は俺が思っていたとおり、まるでギリシャ彫刻のような、しなやかで均整の取れた身体つきをしていた。ただ一つ彫刻と異なるのは、グロテスクなまでにエラの張り出した巨大な屹立だった。その先端が俺の腹筋をぬるぬると汚している。ほとんど同じ身長なのに腰の位置が違うのが丸分かりなのが悔しい。
「じゃあそろそろ、身体を洗いましょうか」
名残惜しそうにもう一度口づけ、ようやく城沢が身体を離した。シャワーを一旦止めたが、浴室の中は蒸し暑い。ボディソープを手にした城沢が、壁に向かって立つように俺に指示した。素直に従った俺の身体を後ろから抱え込み、脇から出した手が、俺の胸の前でにちゃにちゃと音を立ててボディソープを泡立てる。
「っ……」
ぬめる掌が固く締まった腹筋の凹凸を確かめるようにゆっくりとなぞっていく。城沢の熱い息が首筋を掠め、うなじの毛がぞわりと逆立った。掌が脇腹から這い上り、盛り上がった大胸筋を鷲掴む。
「先生のおっぱい、やっぱすっごい……」
「う、……」
手に余る肉を左右交互に揺すり、下から掬い上げるように揉みしだいた。指が肉を縊り出すように掴み、揺する。鍛えた筋肉も力を抜けばただの弾力のある肉の塊でしかなく、力の象徴であるはずの盛り上がった胸板が、まるで女性の乳房のように城沢の手の中でむにむにと形を変える。それが自分の眼下で、自分の身体で行われているのがひどく倒錯的で、俺はその光景から目を離せないまませわしなく浅い息を吐いた。
「前から思ってたんですけど、先生って乳首大きいですよね」
「う、うるさいな」
「Tシャツの上からもぽつっと浮いてて、部活のときにずっと気になってたんですよ。見ないようにするのが大変だった」
可笑しげに囁く声に頬に血がのぼる。指摘のとおり、確かに男にしては少し大きくて自分でもちょっと気にしてはいたのだ。だが、まさかそんな目で見られていたなんて夢にも思っていなかった。それが今まで当然のことだったのに、急に気恥ずかしくなる。胸の肉を縊り出したまま人差し指が持ち上がり、胸の先の尖りの辺りをうろうろと彷徨う。
「ねえ、やっぱり大きいと感度も良くなっちゃうんですか?」
「……知るか」
実際、性感帯どころか、器官として意識したことさえない。乳首なんて女性しか感じないものだとばかり思い込んでいた。先端に触れるか触れないかのところを指が引っ掻くような仕草を繰り返す。……あれがもし触れたら、どうなるのだろう。掴まれたままの胸が緊張に上下した。
「じゃあ、試しましょう」
乳頭にぴたりと指先が置かれた。――特に何も感じなかった。触れているのかいないのかすらもよく分からない有様だ。良かった、助かった。そう思った時だった。
「んっ、ん……!?」
胸の先から甘い疼きが広がり、俺は思わず口元を手で覆った。城沢の指先が円を描くように乳首を捏ね始めたのだ。くにくにと押し込むように捏ね回し、人差し指と親指で抓んでぬめりに任せてぷるりと押し出す。それだけで、今までに感じたことのない甘さのある快感が胸から腹にかけて広がっていき、腹筋がひくひくと戦慄いた。
「どうですか、先生?」
「……っ、う……、は……」
分かっている癖に――。刺激に固くしこり出した乳首は余計に感度を増していた。指先で抓んだまますり潰すように擦られるのがたまらない。こんなに敏感な器官なのに今まで気づかなかったのが不思議なほどに、城沢の指先に翻弄されていた。口元を手で覆っても、荒い息は隠せない。
「ここはいっぱい弄れば弄るほど感度が上がっていくそうですよ」
耳の中に吹き込まれるように艶のある声で囁かれ、ぞくぞくと背筋に甘い戦慄が走っていった。思わず目の前の壁に腕を突く。腰が砕けかけたのだ。首筋を舐められ、甘噛みされる。同時に胸を揉まれ、尖りを指先でぴんぴんと弾かれた。喉の奥で唸る声を、震える身体を止められない。
「いつか、乳首だけでもイケるようになりましょうね」
「んんっ……!」
無理に決まっている。だが、それはきっと、城沢の中で決められた未来なのだろう。この身体が城沢の手でいやらしく開花するまで、俺は城沢の好いようにされるのか。そう思うと――身体が甘く震えた。
城沢の身体が唐突に離れていく。弄られ続けた乳首はツンと尖り、胸の端で甘く疼き続けていた。背中から熱いシャワーをかけられ、泡が流れ落ちていく。流水が止まった。胸をふいごのように上下させながら背後を一瞥すると、ボディソープを手にした城沢がバスタブを指差した。
「縁に手をついて四つん這いになってください」
俺は諦めの表情で身体ごと振り向き、自分が痛いほどに勃起していることに気づいた。キスと乳首への愛撫だけで完全に昂ってしまったのだ。思わず手で隠し、恐る恐る城沢を見る。城沢はただ愛しげに目を細めてこちらを見つめていた。余計に恥ずかしくなり、黙ってウレタンマットに膝をつき、縁に手をかけた。
「お尻を上げて」
息が上がる。さすがにここまでくると、城沢が俺を抱く気だということは薄々分かってきていた。ここに城沢のあの巨大な雄が入るのだ。きっと痛いだろう。だが、尻なんかで気持ちよくされてしまうよりはずっといい。俺は重い腰を上げた。誰にも見せたことのない排泄器官が城沢の前に曝け出されているのかと思うと更に頭に血がのぼる。
「先生、お尻の肉付きも良いですね。ウエストが締まっててお尻が張り出してるから女の子みたいですよ」
ぬめった掌が尻肉を鷲掴んだ。こんなおっさんをつかまえて、何が女の子だ。まるで見たことがあるようなことを――そこで俺はようやく城沢に彼女がいることを思い出した。華奢で可愛らしい、二人で並ぶ姿が絵になる誰もが羨むカップルだった。俺は少し背後を振り返りながら、軋る声で問うた。
「……お前、彼女はどうした」
「――ああ、あの子。いい実験体になってくれましたよ。僕のキス、上手かったでしょう」
城沢は尻を撫でながらこともなげに言った。指が尻の谷間を滑り、背筋が震えた。親指が窄まりをぐるぐると揉む。自分以外に医者すらも触れたことのない場所を、皺を伸ばすように熱い指が撫で回す。
「ここの拡張の仕方も彼女で予習済みですから安心してくださいね」
「なっ、お前……」
「ああ、それに卒業のときにちゃんと別れてますから、それも大丈夫です」
俺はバスタブの縁を掴んだ手に顔を埋めた。城沢に今の表情を――このゆるんだ頬を見せるわけにはいかない。
俺の胸は異常な喜びに昂っていた。
学生の不純異性交遊は許されないという教師としての建前と、いたいけな少女が好きな男からまともに抱かれもしなかったことに憐憫の情を抱く一方で、あんなに可愛らしい子が俺の踏み台になったのだ、あの子ですら俺には敵わなかったのだ、という歪んだ喜悦が胸の中で荒れ狂っていた。
城沢は俺のことを思いながら、あの子を愛撫したのだろう。ずっと、俺だけのことを思いながら――。
「ああ……」
思わず深い溜め息が漏れた。強張っていた身体から力が抜ける。どうしてこんなに嬉しいのだろう。尻を撫でられているだけなのに、猛った屹立がひくひくと上下し、腹を打った。じわりと目が欲情に潤んだのが自分でも分かった。
城沢の手が尻から丸太のような太腿を滑り、毛だらけの脛から足の指の間まで丁寧に手で洗っていく。まるで壊れ物を扱うような繊細な指先に俺はうっとりと身を任せていた。暖かなシャワーが下半身の泡を洗い流していく。
「じゃあ、今度は中を綺麗にしましょうね」
そう言うや否や、菊門に細い何かが突き立てられた。止める暇すらないままに、苦もなく中に入り込んだそれから、大量のぬるい液体が勢いよく注がれていく。引きつった尻を城沢の手が宥めるように撫でた。
「城、沢……っ!?」
「そんな声を出しても駄目です。ちゃんと綺麗にしないとお互い楽しめないでしょう?」
浣腸なんて子供の頃以来で、腹の中を逆流するぬるま湯に早くもぎりぎりと痛み始めた腹に、縁を握る手が震えた。すぐさま捩じ込まれるものだとばかり思っていたが、ここまでしなくちゃいけないのか? 額にびっしりと汗をかき、俺は唇を噛み締めた。だが、城沢の元彼女もきっとこれに耐えたのだろう。そう思うと変な対抗心が湧き立ち、細い管を抜かれた窄まりに力を込めた。
「少し我慢してくださいね」
燃える耳元にそう囁かれ、脚の隙間から手を捻じ込まれた。城沢の手がついに俺の震える屹立を握り込んだ。腹の痛みにもかかわらず、一向に萎えていない肉竿が陰嚢ごと脚の間から引き出される。無理に押さえ込まれた根元がかすかに痛んだ。
「先生のちんぽ、おっきいなぁ……」
うっとりとした城沢の声が浴室に響く。まるで乳搾りのような手つきで竿が上下にしごかれ、俺はその直接的な雄の快感に呻いた。両手で掴まれ、マッサージするかのように裏筋を親指で揉み上げられる。痛みと快感が混ざり合い、俺はいつしか声を漏らし、喘いでいた。
「あっ、あ……、はぁっ……」
城沢の指が亀頭から伸びる筋を容赦なく擦り、腰がびくびくと戦慄いた。一番弱いところだ。そこを擦られるとたまらない。思わず腹に力が篭り、肛門から一筋水が漏れた。羞恥が頬を焼く。焦って尻に力を込めながら俺は喚いた。
「も、無理だ、城沢っ……! トイレにっ……!」
「そうですね、そろそろいいでしょう。出してください」
そう言うと、城沢は屹立から手を離し、尻に何かが当てられた。跳ね戻った肉竿が腹を打つ衝撃に呻きながら背後に目をやる。尻に当てられたのはプラスチックの洗面器だった。
ここで、目の前で、出せと言うのか?
信じられない思いで城沢を見つめたが、彼は促すように目を瞬かせるだけだった。ぐるぐると腹が不吉な音を立てる。
「なあ……頼むよ……。トイレに、行かせてくれよ……っ!」
「駄目です。そう言って逃げられても困りますからね」
「逃げない……っ! だからっ……!」
がくがくと巨体を震わせ、俺は泣きながら中の湯を押し出そうと戦慄く後肛を懸命に締めつけた。かと言って、今更トイレに行ってもいいと許されたところで動ける気もしなかった。途中で漏らしてしまうかもしれない。痛むほどに血が上った額を手の甲に押しつけ、俺は唸った。
――葛藤は諦めに軍配が上がった。
「あ、あぐぅっ……!」
ぴゅる、と一筋漏れ、後はもう一気に決壊するだけだった。びだびだと勢いよくプラスチックを打ちつける音と、俺の苦痛の呻きが浴室に響き渡る。みるみるうちに苦痛が和らぎ、俺は解放感に咽び泣きながら何度も空気を貪った。
「よくできました、先生」
そう言って城沢が俺の耳に口づけし、立ち上がる。俺はその場にぐったりと腰を落とし、かっかと火照る額をバスタブの縁に打ちつけたまま、壁で隔てられた遠くの流水音を聞くともなしに聞いていた。異臭は漂ってはいないが、問題はそこではない。城沢が戻ってきても、あまりの羞恥に顔を上げることができなかった。
「ごめんね、我慢する先生があまりにもかわいいから……」
いい歳して両の強制排泄を見られるなんて、人としてのプライドをへし折るには充分すぎた。冷えた背中に熱い城沢の身体が抱きつき、首筋や耳に何度も優しい口づけを落とした。がちがちに固く勃起した巨大な屹立が背骨にぬるぬると擦りつけられる。その熱さ。
こんなにも情けない姿にすらお前は欲情するのか。失禁した中年を前に何が「かわいい」だ。美的感覚が狂っているんじゃないか。冷静に自虐を伴う批判する一方で、俺の胸は再び熱く昂まり出していた。
自分でも、もう自分が分からなかった。
「――ベッドに行きましょう」
甘い囁きに、俺はこくりと頷いた。
ざあざあとシャワーから迸る流水音に紛れ、鼻にかかった自分の気持ち悪い声が浴室に響くのはいい気分ではない。目を開けると、じっとこちらを観察する長い睫毛に縁取られた城沢のあの瞳と視線が絡み、すぐさま目を閉じた。髭の剃り跡でざらざらする頬を長い指が逆撫でしていく。舌と舌が絡み合い、頭の中にぐちゅぐちゅといやらしい音がこだました。
二人して全裸になり、湯で軽く汚れを落とした後からずっと、城沢に口づけられていた。城沢の手がしきりに後頭部や首、頬を撫でる。俺は冷たい壁に背を預け、熱烈な口づけをただ受け続けていた。引き出された舌を吸われ、背筋が甘く震える。俺もそれなりの経験はあるが完全に受け身なのは初めてで、キスだけで息が上がるのも初めてだった。頭が酸欠でくらくらする。
「ずっと、こうしたかったんですよ」
粘度の高い唾液で濡れた唇同士を触れ合わせながら、城沢が熱っぽく囁いた。腹に固く熱いものが擦りつけられ、俺は薄く目を開く。城沢は俺が思っていたとおり、まるでギリシャ彫刻のような、しなやかで均整の取れた身体つきをしていた。ただ一つ彫刻と異なるのは、グロテスクなまでにエラの張り出した巨大な屹立だった。その先端が俺の腹筋をぬるぬると汚している。ほとんど同じ身長なのに腰の位置が違うのが丸分かりなのが悔しい。
「じゃあそろそろ、身体を洗いましょうか」
名残惜しそうにもう一度口づけ、ようやく城沢が身体を離した。シャワーを一旦止めたが、浴室の中は蒸し暑い。ボディソープを手にした城沢が、壁に向かって立つように俺に指示した。素直に従った俺の身体を後ろから抱え込み、脇から出した手が、俺の胸の前でにちゃにちゃと音を立ててボディソープを泡立てる。
「っ……」
ぬめる掌が固く締まった腹筋の凹凸を確かめるようにゆっくりとなぞっていく。城沢の熱い息が首筋を掠め、うなじの毛がぞわりと逆立った。掌が脇腹から這い上り、盛り上がった大胸筋を鷲掴む。
「先生のおっぱい、やっぱすっごい……」
「う、……」
手に余る肉を左右交互に揺すり、下から掬い上げるように揉みしだいた。指が肉を縊り出すように掴み、揺する。鍛えた筋肉も力を抜けばただの弾力のある肉の塊でしかなく、力の象徴であるはずの盛り上がった胸板が、まるで女性の乳房のように城沢の手の中でむにむにと形を変える。それが自分の眼下で、自分の身体で行われているのがひどく倒錯的で、俺はその光景から目を離せないまませわしなく浅い息を吐いた。
「前から思ってたんですけど、先生って乳首大きいですよね」
「う、うるさいな」
「Tシャツの上からもぽつっと浮いてて、部活のときにずっと気になってたんですよ。見ないようにするのが大変だった」
可笑しげに囁く声に頬に血がのぼる。指摘のとおり、確かに男にしては少し大きくて自分でもちょっと気にしてはいたのだ。だが、まさかそんな目で見られていたなんて夢にも思っていなかった。それが今まで当然のことだったのに、急に気恥ずかしくなる。胸の肉を縊り出したまま人差し指が持ち上がり、胸の先の尖りの辺りをうろうろと彷徨う。
「ねえ、やっぱり大きいと感度も良くなっちゃうんですか?」
「……知るか」
実際、性感帯どころか、器官として意識したことさえない。乳首なんて女性しか感じないものだとばかり思い込んでいた。先端に触れるか触れないかのところを指が引っ掻くような仕草を繰り返す。……あれがもし触れたら、どうなるのだろう。掴まれたままの胸が緊張に上下した。
「じゃあ、試しましょう」
乳頭にぴたりと指先が置かれた。――特に何も感じなかった。触れているのかいないのかすらもよく分からない有様だ。良かった、助かった。そう思った時だった。
「んっ、ん……!?」
胸の先から甘い疼きが広がり、俺は思わず口元を手で覆った。城沢の指先が円を描くように乳首を捏ね始めたのだ。くにくにと押し込むように捏ね回し、人差し指と親指で抓んでぬめりに任せてぷるりと押し出す。それだけで、今までに感じたことのない甘さのある快感が胸から腹にかけて広がっていき、腹筋がひくひくと戦慄いた。
「どうですか、先生?」
「……っ、う……、は……」
分かっている癖に――。刺激に固くしこり出した乳首は余計に感度を増していた。指先で抓んだまますり潰すように擦られるのがたまらない。こんなに敏感な器官なのに今まで気づかなかったのが不思議なほどに、城沢の指先に翻弄されていた。口元を手で覆っても、荒い息は隠せない。
「ここはいっぱい弄れば弄るほど感度が上がっていくそうですよ」
耳の中に吹き込まれるように艶のある声で囁かれ、ぞくぞくと背筋に甘い戦慄が走っていった。思わず目の前の壁に腕を突く。腰が砕けかけたのだ。首筋を舐められ、甘噛みされる。同時に胸を揉まれ、尖りを指先でぴんぴんと弾かれた。喉の奥で唸る声を、震える身体を止められない。
「いつか、乳首だけでもイケるようになりましょうね」
「んんっ……!」
無理に決まっている。だが、それはきっと、城沢の中で決められた未来なのだろう。この身体が城沢の手でいやらしく開花するまで、俺は城沢の好いようにされるのか。そう思うと――身体が甘く震えた。
城沢の身体が唐突に離れていく。弄られ続けた乳首はツンと尖り、胸の端で甘く疼き続けていた。背中から熱いシャワーをかけられ、泡が流れ落ちていく。流水が止まった。胸をふいごのように上下させながら背後を一瞥すると、ボディソープを手にした城沢がバスタブを指差した。
「縁に手をついて四つん這いになってください」
俺は諦めの表情で身体ごと振り向き、自分が痛いほどに勃起していることに気づいた。キスと乳首への愛撫だけで完全に昂ってしまったのだ。思わず手で隠し、恐る恐る城沢を見る。城沢はただ愛しげに目を細めてこちらを見つめていた。余計に恥ずかしくなり、黙ってウレタンマットに膝をつき、縁に手をかけた。
「お尻を上げて」
息が上がる。さすがにここまでくると、城沢が俺を抱く気だということは薄々分かってきていた。ここに城沢のあの巨大な雄が入るのだ。きっと痛いだろう。だが、尻なんかで気持ちよくされてしまうよりはずっといい。俺は重い腰を上げた。誰にも見せたことのない排泄器官が城沢の前に曝け出されているのかと思うと更に頭に血がのぼる。
「先生、お尻の肉付きも良いですね。ウエストが締まっててお尻が張り出してるから女の子みたいですよ」
ぬめった掌が尻肉を鷲掴んだ。こんなおっさんをつかまえて、何が女の子だ。まるで見たことがあるようなことを――そこで俺はようやく城沢に彼女がいることを思い出した。華奢で可愛らしい、二人で並ぶ姿が絵になる誰もが羨むカップルだった。俺は少し背後を振り返りながら、軋る声で問うた。
「……お前、彼女はどうした」
「――ああ、あの子。いい実験体になってくれましたよ。僕のキス、上手かったでしょう」
城沢は尻を撫でながらこともなげに言った。指が尻の谷間を滑り、背筋が震えた。親指が窄まりをぐるぐると揉む。自分以外に医者すらも触れたことのない場所を、皺を伸ばすように熱い指が撫で回す。
「ここの拡張の仕方も彼女で予習済みですから安心してくださいね」
「なっ、お前……」
「ああ、それに卒業のときにちゃんと別れてますから、それも大丈夫です」
俺はバスタブの縁を掴んだ手に顔を埋めた。城沢に今の表情を――このゆるんだ頬を見せるわけにはいかない。
俺の胸は異常な喜びに昂っていた。
学生の不純異性交遊は許されないという教師としての建前と、いたいけな少女が好きな男からまともに抱かれもしなかったことに憐憫の情を抱く一方で、あんなに可愛らしい子が俺の踏み台になったのだ、あの子ですら俺には敵わなかったのだ、という歪んだ喜悦が胸の中で荒れ狂っていた。
城沢は俺のことを思いながら、あの子を愛撫したのだろう。ずっと、俺だけのことを思いながら――。
「ああ……」
思わず深い溜め息が漏れた。強張っていた身体から力が抜ける。どうしてこんなに嬉しいのだろう。尻を撫でられているだけなのに、猛った屹立がひくひくと上下し、腹を打った。じわりと目が欲情に潤んだのが自分でも分かった。
城沢の手が尻から丸太のような太腿を滑り、毛だらけの脛から足の指の間まで丁寧に手で洗っていく。まるで壊れ物を扱うような繊細な指先に俺はうっとりと身を任せていた。暖かなシャワーが下半身の泡を洗い流していく。
「じゃあ、今度は中を綺麗にしましょうね」
そう言うや否や、菊門に細い何かが突き立てられた。止める暇すらないままに、苦もなく中に入り込んだそれから、大量のぬるい液体が勢いよく注がれていく。引きつった尻を城沢の手が宥めるように撫でた。
「城、沢……っ!?」
「そんな声を出しても駄目です。ちゃんと綺麗にしないとお互い楽しめないでしょう?」
浣腸なんて子供の頃以来で、腹の中を逆流するぬるま湯に早くもぎりぎりと痛み始めた腹に、縁を握る手が震えた。すぐさま捩じ込まれるものだとばかり思っていたが、ここまでしなくちゃいけないのか? 額にびっしりと汗をかき、俺は唇を噛み締めた。だが、城沢の元彼女もきっとこれに耐えたのだろう。そう思うと変な対抗心が湧き立ち、細い管を抜かれた窄まりに力を込めた。
「少し我慢してくださいね」
燃える耳元にそう囁かれ、脚の隙間から手を捻じ込まれた。城沢の手がついに俺の震える屹立を握り込んだ。腹の痛みにもかかわらず、一向に萎えていない肉竿が陰嚢ごと脚の間から引き出される。無理に押さえ込まれた根元がかすかに痛んだ。
「先生のちんぽ、おっきいなぁ……」
うっとりとした城沢の声が浴室に響く。まるで乳搾りのような手つきで竿が上下にしごかれ、俺はその直接的な雄の快感に呻いた。両手で掴まれ、マッサージするかのように裏筋を親指で揉み上げられる。痛みと快感が混ざり合い、俺はいつしか声を漏らし、喘いでいた。
「あっ、あ……、はぁっ……」
城沢の指が亀頭から伸びる筋を容赦なく擦り、腰がびくびくと戦慄いた。一番弱いところだ。そこを擦られるとたまらない。思わず腹に力が篭り、肛門から一筋水が漏れた。羞恥が頬を焼く。焦って尻に力を込めながら俺は喚いた。
「も、無理だ、城沢っ……! トイレにっ……!」
「そうですね、そろそろいいでしょう。出してください」
そう言うと、城沢は屹立から手を離し、尻に何かが当てられた。跳ね戻った肉竿が腹を打つ衝撃に呻きながら背後に目をやる。尻に当てられたのはプラスチックの洗面器だった。
ここで、目の前で、出せと言うのか?
信じられない思いで城沢を見つめたが、彼は促すように目を瞬かせるだけだった。ぐるぐると腹が不吉な音を立てる。
「なあ……頼むよ……。トイレに、行かせてくれよ……っ!」
「駄目です。そう言って逃げられても困りますからね」
「逃げない……っ! だからっ……!」
がくがくと巨体を震わせ、俺は泣きながら中の湯を押し出そうと戦慄く後肛を懸命に締めつけた。かと言って、今更トイレに行ってもいいと許されたところで動ける気もしなかった。途中で漏らしてしまうかもしれない。痛むほどに血が上った額を手の甲に押しつけ、俺は唸った。
――葛藤は諦めに軍配が上がった。
「あ、あぐぅっ……!」
ぴゅる、と一筋漏れ、後はもう一気に決壊するだけだった。びだびだと勢いよくプラスチックを打ちつける音と、俺の苦痛の呻きが浴室に響き渡る。みるみるうちに苦痛が和らぎ、俺は解放感に咽び泣きながら何度も空気を貪った。
「よくできました、先生」
そう言って城沢が俺の耳に口づけし、立ち上がる。俺はその場にぐったりと腰を落とし、かっかと火照る額をバスタブの縁に打ちつけたまま、壁で隔てられた遠くの流水音を聞くともなしに聞いていた。異臭は漂ってはいないが、問題はそこではない。城沢が戻ってきても、あまりの羞恥に顔を上げることができなかった。
「ごめんね、我慢する先生があまりにもかわいいから……」
いい歳して両の強制排泄を見られるなんて、人としてのプライドをへし折るには充分すぎた。冷えた背中に熱い城沢の身体が抱きつき、首筋や耳に何度も優しい口づけを落とした。がちがちに固く勃起した巨大な屹立が背骨にぬるぬると擦りつけられる。その熱さ。
こんなにも情けない姿にすらお前は欲情するのか。失禁した中年を前に何が「かわいい」だ。美的感覚が狂っているんじゃないか。冷静に自虐を伴う批判する一方で、俺の胸は再び熱く昂まり出していた。
自分でも、もう自分が分からなかった。
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甘い囁きに、俺はこくりと頷いた。
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