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第3章 城下町のモフモフの宿
沙世、絶叫する
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教えてもらった公園は歩いて数分だったので、サンサローネはそこのベンチに座って食べることにした。女の子が言ったとおりここは有名な夜景スポットらしく、そこそこ人は多かったのだけれど、運よく空いたベンチに座ることができた。
「ルリ見て!すごく綺麗よ」
ガス灯の灯がまたたく城下町を見下ろして、私は思わず歓声をあげた。その灯はとても明るく、こうして見ると国がかなり栄えていることが分かる。これまでは自然の美しい素朴な島だと思っていたけれど、ルリの言ったように物質的にも豊かな国なのだ。
「そうですか?」
ルリは夜景にはまったく関心がないらしく、熱心に両手に持ったサンサローネをほうばっている。まあ知ってたけど。
「1個もらうわよ」
せっかく並んで買ったのだから、私だってひとつくらい食べたい。夕飯をたらふく食べたけど、いろいろあったので別腹の分くらいは胃袋にすき間ができたようだ。
紙袋からひとつ摘まんだそれは、ドーナツくらいの大きさで全体に粉砂糖がまぶしてあった。砂糖はフゥベからつくったものらしく、うっすらピンク色だ。一口かじると、なかには甘さ控えめのクリームがたっぷり入っていた。桃のような味の果物も入っていて、クリームと混ざるとちょうどいい甘みになる。
「沙世さま」
食べながらルリが話しかけてくる。粉砂糖まみれのお菓子にゴーカイにかぶりついているのに、口の周りが少しも汚れていないのが凄い。
「あのイランコトシーナ3世とかいう女には近づいてはいけません」
「なんで?」
言われなくても近づく気はないが、なぜ彼女がそんなことを言うのかが気になる。
「あの女は何か禍々しものを身にまとっています」
「禍々しいものって?」
「あの女が過去に犯した悪行が原因の黒いオーラです。それがあの者の身にこびりついているのです。あのオーラは近くにいる人に悪い影響を与えかねません」
黒いオーラ。
私の脳裏に、さっき出会ったイランコトシーナ3世の姿が浮かぶ。明るく派手な服装をしていたけど、周囲に少しも明るい印象を与えていなかった。ルリの言うように、「禍々しい」とか「黒い」というイメージの方がピッタリくる。
「もしかして、それで彼女が貴族なのか気にしてたの?」
「はい。王族に近い貴族なら、より多くの人に悪い影響を与える可能性があるので。万が一にも本当ならいけないと思ったのですが、やはりニセ貴族だったので安心しました」
容赦のないその言いように、私は笑った。
「でも、そんな黒いオーラがこびりついてるなんて、あの人はいったい何をしたのかな?」
「何をしたのかまでは分かりません。恐らくは人を呪ったのでしょう」
ルリは固い顔でそう言った。
そう言えば、以前にもタコパーマが呪いの指輪を落としていったことがあった。この世界には魔法はないとのことだったが、呪いは存在するのだろうか?私はルリに尋ねる。
「ねえ、呪いって本当にあるものなの?」
「あります。呪いはもともと神力ですから」
「え、神さまが呪うの!?」
私は驚いてベンチから立ち上がりそうになった。神さまって、人間を見守ったり、願い事を叶えてくれたりする存在じゃないの?
「いえ、神が呪うのではなく、人間が神の力を借りて呪うのです」
ルリは首を横に振って続ける。
「この世界にはたくさんの神々がいて、人間と同じようにそれぞれ個性があります。なかには差し出された代償と引き換えに、人間の愚かな願いを叶えてしまう神もいるのです」
「それが悪いことでも?」
「そういう神は人間の願いが善か悪かなどと、いちいち考えません。求められたものを与えるだけです」
「そんなぁ」
私は考える。あの「つけた人が壁の花になる指輪」をつくった人は、どんな神にどんな代償を差し出してあの呪いを手に入れたのだろう。そして、あのイランコトシーナ3世は?
「あの人はどんな呪いをかけたんだろうね」
「たぶん、人の生き死にに関わるような、強い呪いだと思います」
「怖っ!」
全身に鳥肌が立って、私は寒いときにするように腕をさすった。今後は彼女には絶対に関わらないようにしようと心に決める。
ちょうどルリがサンサローネを食べ終えたので、私たちはマッチョスの木まで移動することにした。
「わあ、ずいぶん大きなマッチョスの木だね!」
公園の一角に植えられたマッチョスの木は、かなり大きなものだった。手をつないで幹の周りを囲むとしたら、たぶん大人が5人くらい必要だろう。周囲に伸びた枝も長く、二人乗りのブランコが10個くらい下がっている。そのひとつにルリと乗り込んだ。
「さあ、安全ベルトをしっかりつけてください」
ルリが私のベルトを締めながら言う。さらに肩のうえから、上半身を支えるための安全バーを降ろした。遊園地のジェットコースターなんかによくついているヤツだ。体の前には手でつかまるためのバーもある。
あれ?前回乗ったのよりもかなり重装備じゃない?
なんだかヤバイぞという予感がして、ルリの顔を見た。
「ねえ、これ」
「さあ動きますよ!しっかりつかまってください!」
その言葉どおり、ブランコがグラリと揺れた。私はあわててバーにつかまる。
ぶぅううううううううん!
ブランコはあっと言う間にスピードをあげ、マッチョスはものすごい勢いで回転を始めた。
「うぇええええええ!?」
耳元では風がびゅうびゅうとうなりをあげ、体にはGがかかる。そう、このマッチョスはとっても大きいから、パワーも尋常じゃなく大きいのだ。いま気づいたところで遅いけど。
ブランコが上空高く舞い上がると、スピードはさらにあがった。遠くの夜景がビュンビュンと流れていく。
「ひょぇえええええええ!!」
もはや夜景を楽しむどころではなく、私は悲鳴をあげ続けた。
いや、遊園地のジェットコースターなんかはそこまで苦手じゃないよ?
だけど想像して欲しい。
ゆっくりと景色を眺めるつもりで乗った観覧車が、実は絶叫マシンだったときの衝撃を。
「ルリ見て!すごく綺麗よ」
ガス灯の灯がまたたく城下町を見下ろして、私は思わず歓声をあげた。その灯はとても明るく、こうして見ると国がかなり栄えていることが分かる。これまでは自然の美しい素朴な島だと思っていたけれど、ルリの言ったように物質的にも豊かな国なのだ。
「そうですか?」
ルリは夜景にはまったく関心がないらしく、熱心に両手に持ったサンサローネをほうばっている。まあ知ってたけど。
「1個もらうわよ」
せっかく並んで買ったのだから、私だってひとつくらい食べたい。夕飯をたらふく食べたけど、いろいろあったので別腹の分くらいは胃袋にすき間ができたようだ。
紙袋からひとつ摘まんだそれは、ドーナツくらいの大きさで全体に粉砂糖がまぶしてあった。砂糖はフゥベからつくったものらしく、うっすらピンク色だ。一口かじると、なかには甘さ控えめのクリームがたっぷり入っていた。桃のような味の果物も入っていて、クリームと混ざるとちょうどいい甘みになる。
「沙世さま」
食べながらルリが話しかけてくる。粉砂糖まみれのお菓子にゴーカイにかぶりついているのに、口の周りが少しも汚れていないのが凄い。
「あのイランコトシーナ3世とかいう女には近づいてはいけません」
「なんで?」
言われなくても近づく気はないが、なぜ彼女がそんなことを言うのかが気になる。
「あの女は何か禍々しものを身にまとっています」
「禍々しいものって?」
「あの女が過去に犯した悪行が原因の黒いオーラです。それがあの者の身にこびりついているのです。あのオーラは近くにいる人に悪い影響を与えかねません」
黒いオーラ。
私の脳裏に、さっき出会ったイランコトシーナ3世の姿が浮かぶ。明るく派手な服装をしていたけど、周囲に少しも明るい印象を与えていなかった。ルリの言うように、「禍々しい」とか「黒い」というイメージの方がピッタリくる。
「もしかして、それで彼女が貴族なのか気にしてたの?」
「はい。王族に近い貴族なら、より多くの人に悪い影響を与える可能性があるので。万が一にも本当ならいけないと思ったのですが、やはりニセ貴族だったので安心しました」
容赦のないその言いように、私は笑った。
「でも、そんな黒いオーラがこびりついてるなんて、あの人はいったい何をしたのかな?」
「何をしたのかまでは分かりません。恐らくは人を呪ったのでしょう」
ルリは固い顔でそう言った。
そう言えば、以前にもタコパーマが呪いの指輪を落としていったことがあった。この世界には魔法はないとのことだったが、呪いは存在するのだろうか?私はルリに尋ねる。
「ねえ、呪いって本当にあるものなの?」
「あります。呪いはもともと神力ですから」
「え、神さまが呪うの!?」
私は驚いてベンチから立ち上がりそうになった。神さまって、人間を見守ったり、願い事を叶えてくれたりする存在じゃないの?
「いえ、神が呪うのではなく、人間が神の力を借りて呪うのです」
ルリは首を横に振って続ける。
「この世界にはたくさんの神々がいて、人間と同じようにそれぞれ個性があります。なかには差し出された代償と引き換えに、人間の愚かな願いを叶えてしまう神もいるのです」
「それが悪いことでも?」
「そういう神は人間の願いが善か悪かなどと、いちいち考えません。求められたものを与えるだけです」
「そんなぁ」
私は考える。あの「つけた人が壁の花になる指輪」をつくった人は、どんな神にどんな代償を差し出してあの呪いを手に入れたのだろう。そして、あのイランコトシーナ3世は?
「あの人はどんな呪いをかけたんだろうね」
「たぶん、人の生き死にに関わるような、強い呪いだと思います」
「怖っ!」
全身に鳥肌が立って、私は寒いときにするように腕をさすった。今後は彼女には絶対に関わらないようにしようと心に決める。
ちょうどルリがサンサローネを食べ終えたので、私たちはマッチョスの木まで移動することにした。
「わあ、ずいぶん大きなマッチョスの木だね!」
公園の一角に植えられたマッチョスの木は、かなり大きなものだった。手をつないで幹の周りを囲むとしたら、たぶん大人が5人くらい必要だろう。周囲に伸びた枝も長く、二人乗りのブランコが10個くらい下がっている。そのひとつにルリと乗り込んだ。
「さあ、安全ベルトをしっかりつけてください」
ルリが私のベルトを締めながら言う。さらに肩のうえから、上半身を支えるための安全バーを降ろした。遊園地のジェットコースターなんかによくついているヤツだ。体の前には手でつかまるためのバーもある。
あれ?前回乗ったのよりもかなり重装備じゃない?
なんだかヤバイぞという予感がして、ルリの顔を見た。
「ねえ、これ」
「さあ動きますよ!しっかりつかまってください!」
その言葉どおり、ブランコがグラリと揺れた。私はあわててバーにつかまる。
ぶぅううううううううん!
ブランコはあっと言う間にスピードをあげ、マッチョスはものすごい勢いで回転を始めた。
「うぇええええええ!?」
耳元では風がびゅうびゅうとうなりをあげ、体にはGがかかる。そう、このマッチョスはとっても大きいから、パワーも尋常じゃなく大きいのだ。いま気づいたところで遅いけど。
ブランコが上空高く舞い上がると、スピードはさらにあがった。遠くの夜景がビュンビュンと流れていく。
「ひょぇえええええええ!!」
もはや夜景を楽しむどころではなく、私は悲鳴をあげ続けた。
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