9 / 245
第一章『初陣へ』
伊達政宗、暗号解読は伊達じゃない その弐
しおりを挟む
「暗号の記法といっても色々ある。寓意、媒介、挿入、置換、代用とかだな。まずは一から説明する。寓意とは他の物事にかこつけ、ほのめかして表すということだ。つまり、『ある特定のものを非常にややこしく説明する』というもの。例えば『夏至の正午』を『太陽が一番高い時』と表す、とかだな」
「寓意」小十郎は暗号文を持ちあげた。「そもそも、意味不明な文字列で読めないから、ややこしく言う必要もありません。つまり、違うでしょうね」
「次に、媒介する方法だ。本を媒介にするとしたら、『ある文字が書かれている』本のページ数と行数、その行の何文字目かを数字を並べて示すというものだ。十二ページの二行目の十五文字目だったら『15,2,15』と表せるというわけだ」
「数字はないから、これも違いますね」
「挿入とは、規則的に文字を飛ばして読むことだ。一文字飛ばす、とか二文字飛ばすとかだ。これは昨日のうちに俺が確かめたが、違った。
置換は、あいうえお順でひとつずらすことだ。『あ』を『い』にしたりする奴だ。他にも、行の頭の文字だけ読んだり、斜めに読み進めたりすることだ。
また、意味のある単語を無意味な単語に置き換えたりするのも、置換だな。『畳』を『アカサタナ』に置き換えるとか」
「違うっぽいですね」
「代用は、文字を数字や記号に代用するってことだ」
「違いますね」
「ちなみに、俺が一番怪しいと考えているのは媒介だ」
「え、でも数字はありませんよ?」
「本じゃなくても文字列を利用して媒介するやり方でも、暗号は出来る」
小十郎は納得したように床に暗号文を置いた。
景頼も暗号文を、腕を組みながら眺めた。「若様。この暗号文は仲間の忍者にしか読めないようになっている可能性はないのでしょうか?」
「いいところに気づいたな、景頼。もしかしたら、仲間の忍者がこの暗号文の鍵を持っている可能性もある。鍵ってのは、媒介で例えると媒介にする文字列とかだ」
「なら、解読する手立てがないのでは?」
「そうなのかもしれない」
暗号解読は秘伝の古文書を読む上で非常に重要だ。俺も長期休みの際に古文書探しの旅をして、暗号化された文章はやりがいがあった。ただ、暗号化された古文書の場合、鍵はその古文書にあることが多かった。今回も、鍵があることを願いたい。
それと、忍者の暗号といっても単純で代用法が使われることが多いはずだ。だが、この暗号文には重複する文字が二つしかないことから、代用法でないことはわかる。
で、矢文でこっそりと暗号文を投げ入れたことからも、鍵は暗号文の中に紛れ込ませている可能性が高い。鍵が暗号文に隠されていないなら、もう少し堂々と渡しても解読される心配はないからだ。
「面白いくらい難しいな。さすが忍者の暗号だ。前世でも、まだ忍者の暗号を解読したことはほとんどない」
「若様、前世でございますか?」
「景頼! 何でもない......」
この暗号は、10行で表されていることに意味がある気がする。1行が5文字だから、合計で50文字。まだあんまり理解出来ていないな。
「若様! この小十郎、暗号を解読しなくても良いかと思います!」
「何故だ?」
「この暗号文がフェイクということは、本当にないのですか?」
「では、この暗号文に気を取らせる目的があると言いたいのか?」
「さようで」
「それはないだろう。混乱させるための暗号文なら、もとより解読は不可能。つまり、矢文で投げ入れるより堂々と我が伊達氏の居城に投げ入れた方が良いからだ」
「そういうことですか! 無駄口を叩き、誠に申し訳ございません」
「いや、大丈夫だ」
片倉小十郎は伊達政宗より先に子を授かってしまった、という理由から我が子を殺そうとしたくらい政宗に忠実な側近だ。大げさな部分が多すぎる。以後、俺が注意する点でもあるな。
「暗号をどうやって解読するか」
何か俺の記憶に引っかかることがある。確か、暗号を解読云々よりもっと簡単な忍者の使う暗号的なものがあった気がする。だけど、まったく思い出せないな。前に言ったことをもう一度言うが、歴史の書物を読んでいたのは前世の時だ。すでに10年も読んでいない。つまり、忘れていても当然だということである。
「若様。私の意見を述べてよろしいでしょうか?」
「景頼。意見を許す。話してみろ」
「......前に伝聞した話しなので、定かではないことを先に言っておきます。水に浸してみたりしてはいかがでしょうか?」
「それだ! それだぞ、景頼!」
水に溶かしたミョウバンを筆に浸して、その筆で紙に文字を書いて乾かす。その乾かした紙を水にぶち込むと、書いた文字が浮き出してくる。確か、その手法を忍者が使用していたはずだ。
「よし。小十郎! 水を持ってこい!」
「承知いたしました!」
小十郎はドタバタと走って、バケツに水を入れて運んできた。
「よし。では、紙を水に入れるぞ」
暗号文の紙をつかんで、バケツに突っ込んだ。入れた瞬間、端の方に何かが浮き出てきた。それは確かに、文字だったのだ。
「寓意」小十郎は暗号文を持ちあげた。「そもそも、意味不明な文字列で読めないから、ややこしく言う必要もありません。つまり、違うでしょうね」
「次に、媒介する方法だ。本を媒介にするとしたら、『ある文字が書かれている』本のページ数と行数、その行の何文字目かを数字を並べて示すというものだ。十二ページの二行目の十五文字目だったら『15,2,15』と表せるというわけだ」
「数字はないから、これも違いますね」
「挿入とは、規則的に文字を飛ばして読むことだ。一文字飛ばす、とか二文字飛ばすとかだ。これは昨日のうちに俺が確かめたが、違った。
置換は、あいうえお順でひとつずらすことだ。『あ』を『い』にしたりする奴だ。他にも、行の頭の文字だけ読んだり、斜めに読み進めたりすることだ。
また、意味のある単語を無意味な単語に置き換えたりするのも、置換だな。『畳』を『アカサタナ』に置き換えるとか」
「違うっぽいですね」
「代用は、文字を数字や記号に代用するってことだ」
「違いますね」
「ちなみに、俺が一番怪しいと考えているのは媒介だ」
「え、でも数字はありませんよ?」
「本じゃなくても文字列を利用して媒介するやり方でも、暗号は出来る」
小十郎は納得したように床に暗号文を置いた。
景頼も暗号文を、腕を組みながら眺めた。「若様。この暗号文は仲間の忍者にしか読めないようになっている可能性はないのでしょうか?」
「いいところに気づいたな、景頼。もしかしたら、仲間の忍者がこの暗号文の鍵を持っている可能性もある。鍵ってのは、媒介で例えると媒介にする文字列とかだ」
「なら、解読する手立てがないのでは?」
「そうなのかもしれない」
暗号解読は秘伝の古文書を読む上で非常に重要だ。俺も長期休みの際に古文書探しの旅をして、暗号化された文章はやりがいがあった。ただ、暗号化された古文書の場合、鍵はその古文書にあることが多かった。今回も、鍵があることを願いたい。
それと、忍者の暗号といっても単純で代用法が使われることが多いはずだ。だが、この暗号文には重複する文字が二つしかないことから、代用法でないことはわかる。
で、矢文でこっそりと暗号文を投げ入れたことからも、鍵は暗号文の中に紛れ込ませている可能性が高い。鍵が暗号文に隠されていないなら、もう少し堂々と渡しても解読される心配はないからだ。
「面白いくらい難しいな。さすが忍者の暗号だ。前世でも、まだ忍者の暗号を解読したことはほとんどない」
「若様、前世でございますか?」
「景頼! 何でもない......」
この暗号は、10行で表されていることに意味がある気がする。1行が5文字だから、合計で50文字。まだあんまり理解出来ていないな。
「若様! この小十郎、暗号を解読しなくても良いかと思います!」
「何故だ?」
「この暗号文がフェイクということは、本当にないのですか?」
「では、この暗号文に気を取らせる目的があると言いたいのか?」
「さようで」
「それはないだろう。混乱させるための暗号文なら、もとより解読は不可能。つまり、矢文で投げ入れるより堂々と我が伊達氏の居城に投げ入れた方が良いからだ」
「そういうことですか! 無駄口を叩き、誠に申し訳ございません」
「いや、大丈夫だ」
片倉小十郎は伊達政宗より先に子を授かってしまった、という理由から我が子を殺そうとしたくらい政宗に忠実な側近だ。大げさな部分が多すぎる。以後、俺が注意する点でもあるな。
「暗号をどうやって解読するか」
何か俺の記憶に引っかかることがある。確か、暗号を解読云々よりもっと簡単な忍者の使う暗号的なものがあった気がする。だけど、まったく思い出せないな。前に言ったことをもう一度言うが、歴史の書物を読んでいたのは前世の時だ。すでに10年も読んでいない。つまり、忘れていても当然だということである。
「若様。私の意見を述べてよろしいでしょうか?」
「景頼。意見を許す。話してみろ」
「......前に伝聞した話しなので、定かではないことを先に言っておきます。水に浸してみたりしてはいかがでしょうか?」
「それだ! それだぞ、景頼!」
水に溶かしたミョウバンを筆に浸して、その筆で紙に文字を書いて乾かす。その乾かした紙を水にぶち込むと、書いた文字が浮き出してくる。確か、その手法を忍者が使用していたはずだ。
「よし。小十郎! 水を持ってこい!」
「承知いたしました!」
小十郎はドタバタと走って、バケツに水を入れて運んできた。
「よし。では、紙を水に入れるぞ」
暗号文の紙をつかんで、バケツに突っ込んだ。入れた瞬間、端の方に何かが浮き出てきた。それは確かに、文字だったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる