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第一章『初陣へ』
伊達政宗、側近の看病は伊達じゃない その肆
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書物をそれぞれ照らし合わせて、未来人の疑いのある人物を探すという作業は一年半続けた。その間に江渡弥平と接触したことは数回あったのだが、結局逃げられてばかりだった。これ以上調べても意味が無いことを知った俺は、小十郎と景頼に話しの旨を伝えて作業を終わらせた。それからは平穏な日々が繰り返された。毎日小十郎と景頼と将棋をしたり鷹狩りをしたり、火縄銃で遊びに出掛けたり談笑した。前世より楽しい日だ。何より、この伊達政宗という人生には壮大なスケールの目標がある。日本を手中に収める、すなわち天下統一だ。充実した生活を過ごしている。
嫌なことも多少はあるが、昔だから仕方がないと割り切れば案外戦国時代の方が現代よりやることもたくさんあるし、それだけ笑うことも出来る。嫌なこと、とはトイレだ。昔のトイレは特に酷い。醜い。便も尿も流れない。入るたびに不快になる。
話しは少し脱線した気もするが、ざっくり説明すると戦国時代もいい生活が送れるということだ。
でも、最近よく思うことがある。このままで良いのだろうか、と。なぜだか、毎日の生活が少し虚しく感じられる。その理由を考えてみれば、実に簡単なことだ。人間は遊んでいるだけでは満足出来ないのだ。辛いことをやりたくないのは誰しもが思うことだけど、辛いことをやると達成感や壁を乗り越えられたことによって白黒の世界に色が入る。狭い世界には楽しみを感じ、広い世界にはやる気を感じる。まあ、そんなところだ。
つまるところ、そろそろまた始動してみようと思うのだ。
そんなことを無意味な文章として読者に説明したところで、俺は布団から這い上がった。朝の心地よい風がはかなく感じられた。万物に終わりはつきものだ。それに本当の意味で気づけたら、何気ないこと全てがはかなく感じられるのだろう。そして、失うことにより、その大切さを理解する。人間は実にめでたい思考だ。
部屋に誰か入ってきた。景頼だ。彼の顔はいつにもまして焦っている。
「どうしたのだ、景頼」
「大変なのです、若様!」
「どうした?」
「小十郎殿が倒れたのです」
「小十郎が!? 誠か!」
「はい、誠です......」
「小十郎は今は何処に?」
「案内いたします」
景頼に案内されて向かった先には、布団で寝ていた小十郎がいた。
「看病は我がする。それより、小十郎が倒れた原因は?」
「不明です。なぜ倒れたか現在のところ、まだわかっていません」
「江渡弥平の工作という可能性もある、ということか?」
「可能性としては捨てきれないでしょう。はっきりとは言えませんが、毒の可能性も考慮した方が良さそうですね」
「毒か。江渡弥平の仕業かもしれないのか......」
少し心配になった。江渡弥平ならやりかねない。それに、小十郎は大切な側近だ。死なれては生涯友がいなくなる。
小十郎の横で、じっと彼を見つめていた。すると、急に小十郎が体を震え出させた。痙攣だろうか。俺は呼吸を整えてから、小十郎に呼びかけた。
「大丈夫か? 小十郎! 小十郎! どこか苦しいところはあるか?」
「だ、大丈夫です......」
小十郎はそのまま喉を押さえた。
「苦しいのか? 小十郎!」
「苦しい......」
小十郎が苦しそうに暴れ出した。俺は背中を撫でることしか出来なかった。
「医者! おい、医者! 来い! 医者! ドクター! 医者! 医者を呼べ! おい! 大変だぞ!」
俺が何度も大声で叫んでいると、景頼が医者を連れてきた。小十郎は医者が来る少し前に嘔吐してしまった。幸いにも近くにあったバケツに吐いたから良かった。
「医者。小十郎を診てくれ」
「わかりました」
医者は小十郎の体をじっくりと観察した。
「どうなんだ?」
「この方は、毒を盛られた可能性がありますね。症状などからしても、何らかの中毒でしょう」
「治るのか?」
「はっきりとは言えません。ですが、毒といっても死なない程度の毒だとは思います」
「そうか。それなら良いのだが」
小十郎が死なないのなら一安心だ。自分の胸を撫で下ろした。今日一日、ずっと小十郎に着きっきりだった。数日もすれば症状も次第に回復していく、というのが医者の所見だ。数日なら看病をしても、たとえ飽き性の俺でも飽きないはずだ。夜は小十郎の隣りで寝た。
朝、目が覚めたら早速毒の混入ルートの推理を小十郎が眠っている横で開始した。そもそも、以前輝宗の食膳に毒を盛ろうとした忍者がいた。奴の依頼者が江渡弥平と考えれば筋は通る。今回も江渡弥平が忍者に依頼して、小十郎の体内に毒を混入させたのかもしれない。それなら、忍者が侵入した痕跡があるはずだ。探してみたい。だが、俺は小十郎の看病をしていた。どうしようか考えると、景頼に丸投げすれば良いという結論に辿り着いた。
「景頼! 景頼はいるか?」
景頼が急いで駆けつけてきた。「お呼びですが、若様」
「俺は小十郎の体内に毒を混入させた輩を探したい。だから、一度小十郎を看ていてくれないか?」
「わかりました。では、小十郎殿の看病は私に任せてくださいませ」
「助かるぞ」
俺はまず城内を見回って、忍者の痕跡を探すことにした。
嫌なことも多少はあるが、昔だから仕方がないと割り切れば案外戦国時代の方が現代よりやることもたくさんあるし、それだけ笑うことも出来る。嫌なこと、とはトイレだ。昔のトイレは特に酷い。醜い。便も尿も流れない。入るたびに不快になる。
話しは少し脱線した気もするが、ざっくり説明すると戦国時代もいい生活が送れるということだ。
でも、最近よく思うことがある。このままで良いのだろうか、と。なぜだか、毎日の生活が少し虚しく感じられる。その理由を考えてみれば、実に簡単なことだ。人間は遊んでいるだけでは満足出来ないのだ。辛いことをやりたくないのは誰しもが思うことだけど、辛いことをやると達成感や壁を乗り越えられたことによって白黒の世界に色が入る。狭い世界には楽しみを感じ、広い世界にはやる気を感じる。まあ、そんなところだ。
つまるところ、そろそろまた始動してみようと思うのだ。
そんなことを無意味な文章として読者に説明したところで、俺は布団から這い上がった。朝の心地よい風がはかなく感じられた。万物に終わりはつきものだ。それに本当の意味で気づけたら、何気ないこと全てがはかなく感じられるのだろう。そして、失うことにより、その大切さを理解する。人間は実にめでたい思考だ。
部屋に誰か入ってきた。景頼だ。彼の顔はいつにもまして焦っている。
「どうしたのだ、景頼」
「大変なのです、若様!」
「どうした?」
「小十郎殿が倒れたのです」
「小十郎が!? 誠か!」
「はい、誠です......」
「小十郎は今は何処に?」
「案内いたします」
景頼に案内されて向かった先には、布団で寝ていた小十郎がいた。
「看病は我がする。それより、小十郎が倒れた原因は?」
「不明です。なぜ倒れたか現在のところ、まだわかっていません」
「江渡弥平の工作という可能性もある、ということか?」
「可能性としては捨てきれないでしょう。はっきりとは言えませんが、毒の可能性も考慮した方が良さそうですね」
「毒か。江渡弥平の仕業かもしれないのか......」
少し心配になった。江渡弥平ならやりかねない。それに、小十郎は大切な側近だ。死なれては生涯友がいなくなる。
小十郎の横で、じっと彼を見つめていた。すると、急に小十郎が体を震え出させた。痙攣だろうか。俺は呼吸を整えてから、小十郎に呼びかけた。
「大丈夫か? 小十郎! 小十郎! どこか苦しいところはあるか?」
「だ、大丈夫です......」
小十郎はそのまま喉を押さえた。
「苦しいのか? 小十郎!」
「苦しい......」
小十郎が苦しそうに暴れ出した。俺は背中を撫でることしか出来なかった。
「医者! おい、医者! 来い! 医者! ドクター! 医者! 医者を呼べ! おい! 大変だぞ!」
俺が何度も大声で叫んでいると、景頼が医者を連れてきた。小十郎は医者が来る少し前に嘔吐してしまった。幸いにも近くにあったバケツに吐いたから良かった。
「医者。小十郎を診てくれ」
「わかりました」
医者は小十郎の体をじっくりと観察した。
「どうなんだ?」
「この方は、毒を盛られた可能性がありますね。症状などからしても、何らかの中毒でしょう」
「治るのか?」
「はっきりとは言えません。ですが、毒といっても死なない程度の毒だとは思います」
「そうか。それなら良いのだが」
小十郎が死なないのなら一安心だ。自分の胸を撫で下ろした。今日一日、ずっと小十郎に着きっきりだった。数日もすれば症状も次第に回復していく、というのが医者の所見だ。数日なら看病をしても、たとえ飽き性の俺でも飽きないはずだ。夜は小十郎の隣りで寝た。
朝、目が覚めたら早速毒の混入ルートの推理を小十郎が眠っている横で開始した。そもそも、以前輝宗の食膳に毒を盛ろうとした忍者がいた。奴の依頼者が江渡弥平と考えれば筋は通る。今回も江渡弥平が忍者に依頼して、小十郎の体内に毒を混入させたのかもしれない。それなら、忍者が侵入した痕跡があるはずだ。探してみたい。だが、俺は小十郎の看病をしていた。どうしようか考えると、景頼に丸投げすれば良いという結論に辿り着いた。
「景頼! 景頼はいるか?」
景頼が急いで駆けつけてきた。「お呼びですが、若様」
「俺は小十郎の体内に毒を混入させた輩を探したい。だから、一度小十郎を看ていてくれないか?」
「わかりました。では、小十郎殿の看病は私に任せてくださいませ」
「助かるぞ」
俺はまず城内を見回って、忍者の痕跡を探すことにした。
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