33 / 245
第一章『初陣へ』
伊達政宗、援軍要請は伊達じゃない その肆
しおりを挟む
輝宗が疑問に思うのも無理はない。読者も気になっていることだろうし、早速答えを発表しようと思う。
「最初に蘆名に送った援軍要請の最後の一行には『即火中(すぐに火の中へ)』と書きました。しかし、蘆名は書状の内容が伊達家に不利だからと思って『即火中』を守らずに書状を残して援軍要請を断りました。これはまずいと思い、忍者に忍び込ませて書状に細工させました」
「細工というのは?」
「あぶり出しです。熱すると文字が出るのがあぶり出しですが、忍者にあぶり出しを用いて書状に、謝罪文と再度の援軍要請を書かせました。墨で書かれた文面は、誰かに盗み見られても良いようにという配慮と偽りました。そして忍者が書状に細工すれば次に、新たな書状を書いて蘆名に送りました。その書状の内容は『あぶり出しだから前に送った書状をあぶれ。即火中を守っていないのか?』というものです。これで蘆名は、あぶり出しは最初からあったと勘違いして、即火中にしなかったと謝りましたよ。
まあ、すったもんだありましたが、即火中の三文字のお陰でこの作戦が成功出来ました」
「さすがは政宗だ。援軍要請を断られた際のことも考えて、『即火中』の文章を書き入れたのだな?」
「......はい」
実は、伊達政宗は直筆の書状が多く、その書状の中で『即火中』と書かれたものもかなりある。しかし、受取人は即火中を守らずに書状を後世まで伝えたのだ。そのことから着想を得て、念のために『即火中』の一文を書いたのだ。
たまたまのことが、思わぬ形で役に立った。歴史に精通した者ならば、戦国時代も楽々生き抜けるじゃないか!
戦国時代を舐めすぎた発言だとは思うが、実に簡単な初陣であったことは確かなのだ。景頼が伊達家に寝返った(?)お陰で、相馬氏側の動きと江渡弥平側の動きの両方を知れた。そのため、勝利も出来たわけで、しかも尚良いこともあった。景頼は『信長公記』他、かなりの史料を持っていた。これも俺の思った通りなのだが、さすが日本政府が派遣した者だ。一級史料がそろっている。その一級史料を題材とし、俺の正体を知っている俺を含めた四人は会議を始めた。
と、その前に江渡弥平の行く末について話しておこう。江渡弥平は景頼の裏切りを知り、相馬氏を捨ててタイムマシンに乗りこんで未来へと逃げ帰った。相馬氏は歯ぎしりをしながら、居城へ後退していった。ちなみに、江渡弥平も大いに役立った。江渡弥平は少数の未来人を捨てたわけだが、その未来人を景頼が説得し、伊達家に引き込むことが出来た。もちろん、俺と小十郎の正体を明かしたわけじゃないけど、少数の未来人が仲間に加わったことで江渡弥平率いる集団に対抗しうる部隊を作ることが可能だ。また、少数の未来人の中には副総司令官の牛丸も入っている。牛丸の本名は柳沢氏丸。名前の氏丸から濁音を取って『牛丸』にしただろう。
「若様。私のこの史料は若様が所有していた方がよろしいでしょう」
「景頼。その史料はお前が持っていた方がいい。それよりもまず、その史料に則って行動するかどうかだ。俺が転生し、歴史もかなり変わってきた。歴史通りに行動した場合、今は本来の歴史ではなくなってきているから死ぬ可能性も出てくる。そこが重要な部分だな」
「名坂。その史料は信用してもいいと思うぞ」
「なぜ、神辺はそう思うのだ?」
「それは、史料は良質なものだからだ。歴史は変わっているかもしれないけど、大筋はまだ変わっていないはずだろうからな。この史料もまだ、僕たちに貢献してくれるはずだよ」
「なるほどな。神辺も一理ある」
「失礼ながら」愛姫は口を開いた。「小十郎殿も一理ありますが、私は違うと思うのです」
「ふむ。言ってみろ、愛姫」
「わかりました、政宗様。歴史は変わりつつある、と政宗様及び小十郎殿が言いました。もう歴史は変わってきています。つまり、景頼殿の史料はすでにお飾りに過ぎません。史料の内容を真に受ければ、やがて命を落とすと進言いたします」
「どちらとも、甲乙付けがたいな」
会議は長時間続いた。結局、史料の使い方についての結論は出なかったが、史料は分散して全員が保管することとなった。俺は景頼が保管しても良いと思ったが、分散してそれぞれが保管した方が安全性が上がるから許可した。この意見は愛姫が述べたものだ。さすが、美人は頭もキレるんだな。
これから俺がすることはたった一つ。家督相続! 家督! 家督だ! 輝宗から家督を継いで、あとは小田原征伐に参戦して全国に伊達政宗の名を知れ渡らせるのだ!
それはともかく、ことはトントン拍子にうまく運んでいる。輝宗からの信頼度も着々と上がり、俺が家督を継ぐ確率は90%は超えていると確信している。思わず口元が緩んだ。いつか、天下を手の中に......。そうしたら、徳川家は取り壊す。あのジジイには切腹を言い渡すつもりだ。
「神辺」
「?」
「天下を自分のものにする。それが俺の望みだ。神辺の望みは何だ?」
「名坂の右目になることだ!」
俺は再度、口元を緩めた。「一緒に天下を臨もう」
「最初に蘆名に送った援軍要請の最後の一行には『即火中(すぐに火の中へ)』と書きました。しかし、蘆名は書状の内容が伊達家に不利だからと思って『即火中』を守らずに書状を残して援軍要請を断りました。これはまずいと思い、忍者に忍び込ませて書状に細工させました」
「細工というのは?」
「あぶり出しです。熱すると文字が出るのがあぶり出しですが、忍者にあぶり出しを用いて書状に、謝罪文と再度の援軍要請を書かせました。墨で書かれた文面は、誰かに盗み見られても良いようにという配慮と偽りました。そして忍者が書状に細工すれば次に、新たな書状を書いて蘆名に送りました。その書状の内容は『あぶり出しだから前に送った書状をあぶれ。即火中を守っていないのか?』というものです。これで蘆名は、あぶり出しは最初からあったと勘違いして、即火中にしなかったと謝りましたよ。
まあ、すったもんだありましたが、即火中の三文字のお陰でこの作戦が成功出来ました」
「さすがは政宗だ。援軍要請を断られた際のことも考えて、『即火中』の文章を書き入れたのだな?」
「......はい」
実は、伊達政宗は直筆の書状が多く、その書状の中で『即火中』と書かれたものもかなりある。しかし、受取人は即火中を守らずに書状を後世まで伝えたのだ。そのことから着想を得て、念のために『即火中』の一文を書いたのだ。
たまたまのことが、思わぬ形で役に立った。歴史に精通した者ならば、戦国時代も楽々生き抜けるじゃないか!
戦国時代を舐めすぎた発言だとは思うが、実に簡単な初陣であったことは確かなのだ。景頼が伊達家に寝返った(?)お陰で、相馬氏側の動きと江渡弥平側の動きの両方を知れた。そのため、勝利も出来たわけで、しかも尚良いこともあった。景頼は『信長公記』他、かなりの史料を持っていた。これも俺の思った通りなのだが、さすが日本政府が派遣した者だ。一級史料がそろっている。その一級史料を題材とし、俺の正体を知っている俺を含めた四人は会議を始めた。
と、その前に江渡弥平の行く末について話しておこう。江渡弥平は景頼の裏切りを知り、相馬氏を捨ててタイムマシンに乗りこんで未来へと逃げ帰った。相馬氏は歯ぎしりをしながら、居城へ後退していった。ちなみに、江渡弥平も大いに役立った。江渡弥平は少数の未来人を捨てたわけだが、その未来人を景頼が説得し、伊達家に引き込むことが出来た。もちろん、俺と小十郎の正体を明かしたわけじゃないけど、少数の未来人が仲間に加わったことで江渡弥平率いる集団に対抗しうる部隊を作ることが可能だ。また、少数の未来人の中には副総司令官の牛丸も入っている。牛丸の本名は柳沢氏丸。名前の氏丸から濁音を取って『牛丸』にしただろう。
「若様。私のこの史料は若様が所有していた方がよろしいでしょう」
「景頼。その史料はお前が持っていた方がいい。それよりもまず、その史料に則って行動するかどうかだ。俺が転生し、歴史もかなり変わってきた。歴史通りに行動した場合、今は本来の歴史ではなくなってきているから死ぬ可能性も出てくる。そこが重要な部分だな」
「名坂。その史料は信用してもいいと思うぞ」
「なぜ、神辺はそう思うのだ?」
「それは、史料は良質なものだからだ。歴史は変わっているかもしれないけど、大筋はまだ変わっていないはずだろうからな。この史料もまだ、僕たちに貢献してくれるはずだよ」
「なるほどな。神辺も一理ある」
「失礼ながら」愛姫は口を開いた。「小十郎殿も一理ありますが、私は違うと思うのです」
「ふむ。言ってみろ、愛姫」
「わかりました、政宗様。歴史は変わりつつある、と政宗様及び小十郎殿が言いました。もう歴史は変わってきています。つまり、景頼殿の史料はすでにお飾りに過ぎません。史料の内容を真に受ければ、やがて命を落とすと進言いたします」
「どちらとも、甲乙付けがたいな」
会議は長時間続いた。結局、史料の使い方についての結論は出なかったが、史料は分散して全員が保管することとなった。俺は景頼が保管しても良いと思ったが、分散してそれぞれが保管した方が安全性が上がるから許可した。この意見は愛姫が述べたものだ。さすが、美人は頭もキレるんだな。
これから俺がすることはたった一つ。家督相続! 家督! 家督だ! 輝宗から家督を継いで、あとは小田原征伐に参戦して全国に伊達政宗の名を知れ渡らせるのだ!
それはともかく、ことはトントン拍子にうまく運んでいる。輝宗からの信頼度も着々と上がり、俺が家督を継ぐ確率は90%は超えていると確信している。思わず口元が緩んだ。いつか、天下を手の中に......。そうしたら、徳川家は取り壊す。あのジジイには切腹を言い渡すつもりだ。
「神辺」
「?」
「天下を自分のものにする。それが俺の望みだ。神辺の望みは何だ?」
「名坂の右目になることだ!」
俺は再度、口元を緩めた。「一緒に天下を臨もう」
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる