50 / 245
第二章『祝福の病』
伊達政宗、予防薬を飲ませるのは伊達じゃない その弐
しおりを挟む
牛丸が指揮する未来人衆を加えた俺、小十郎、景頼、成実は何時間も費やして会議をした。なかなか進展はなかったが、俺には薄らと考えが浮かびかけていた。
壺。その考えは、壺をマジマジと眺めていて浮かんだ。話し合いが進むにつれて、壺をどのように使うかがはっきりとわかった。
「壺だ!」
会議中に、俺は叫んだ。皆は驚いて黙った。
小十郎は腕を組んだ。「どうしましたか、若様。何が壺なのでございましょう」
正確には壺ではない。壺に似たガラス瓶だ。
「壺ではない。ガラス瓶を大量に使用すれば、城下の奴らに予防薬を飲ませることが出来るのだ」
「ガラス瓶をどのように使えば予防薬を飲ませることが出来るのですか?」
「それは後々説明しよう。まずはガラス瓶を大量に持ってきてくれ」
小十郎はうなずき、全員はガラス瓶をそこかしこから掻き集めた。俺はそのガラス瓶一つ一つに細工を施し、水を張った。数刻程放置し、ガラス瓶の水の中を覗いた。
「静電気が集められているな」
小十郎は興味があるらしく、ガラス瓶を覗いて面白がっていた。「名坂。これはどういう原理なんだ?」
「ライデン瓶って聞いたことあるか?」
「ライデン瓶?」
「そう。ライデン瓶だ。エヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストっていう科学者が1700何年かにガラス瓶の内側に銀の薄い膜を貼って水を張り、その水に電気を溜めようとした。そしたら、銀の薄膜に電気が溜まったんだ。それをオランダ(?)の科学者ピーテル・フォン・ミュッセンブルークが改良した。改良したそれは、ガラス瓶の内側と外側に金属の膜を貼ったり金属鎖とか金属球を付けたりするから面倒だ。
今回はガラス瓶の内側だけに銀の膜を貼った。つまり、エヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストが作った方を採用した。そっちの方が簡単だからだ。ちなみに、ライデン瓶の由来は、ライデン瓶がオランダのライデン大学で発明されたからだ」
「でも、ライデン瓶をどうやって使うんだ?」
「平賀源内のエレキテルは知ってるだろ?」
「うん......」
「民間は電気に興味がある、ということだ。この『出来損ないライデン瓶(ライデン瓶の前進)』には電気があり、城下の奴らはこのライデン瓶の水を飲みたがる。だから、水に予防薬を溶かすんだ」
「それなら城下町の奴らも水を飲むな」
「だろ?」
俺達は水が張ってあるガラス瓶を、割れないように工夫しながら馬上に積み、城下町へとゆっくり移動を始めた。未来人衆がまたがった馬の運ぶガラス瓶から水が漏れていたので、そいつの頭を軽く叩いて注意した。
何とか水を漏らさずにガラス瓶を城下町まで運ぶことが出来た。ガラス瓶の中に張られた水には天然痘の予防薬を事前に溶かしておいた。少し苦くなっていたが、水に静電気が溜まっているわけだから皆は飲みたがる。苦いのは電気が通っているから仕方ない、とでも言っておけば予防薬が溶かされているとは気づかないはずだ。
まずはガラス瓶を一列に並べ、城下の奴らが集まってくるのを待った。十分経った。全然人が集まってこない。
「どうして集まらないんだ?」
その問いの答えに、小十郎はこう答えた。「僕達が伊達家の者で、見た目も若いからじゃないか?」
「そういうことか......」
俺は頭を抱えた。ここにきて、俺の年齢が壁になったのか。この時代にはシークレットシューズはあるのか?
どうしようか。年齢はどうにもならないし、まずは大衆が気になるものを催すしかない。これも事前に用意したものだ。『幻獣・火鼠』の毛を織って作られた『火浣布』という服だ。竹取物語ではかぐや姫が貴公子ら(結婚をせまる五人の変態)に出した結婚条件の一つに『火鼠の衣(燃えない服)』があった。それを実体化させた衣だ。燃やしても燃えないのだ。作るのに苦労はしたが、これで城下町の奴らは興味が湧くだろう。
小十郎に火を焚かせて、城下町の者に見えるように火浣布を持ち、火中に投げ込んだ。数分経ち、枝を使って火浣布を取り出した。火中に投げた服が燃えてない状態を見た城下町の奴らは、歓声を上げた。
エレキテル、平賀源内から着想を得たのが火浣布だ。平賀源内は石綿から取った繊維を使って、燃えない布・火浣布を作っていたのだ。エレキテルの方が認知度は高いが、エレキテルは平賀源内が発明したものではない。が、火浣布は平賀源内が発明した。火浣布の認知度が上がることを願う。
いらない補足をする。平賀源内は酔って商人を殺している。それで牢に入り、獄中で死んだ。エレキテルの偽物を作った弟子と同じ顛末である。あ、弟子が牢にぶち込んだのは平賀源内だ。因果応報というものだ。
さて。燃えていない服を見た大衆は、熱狂した。興奮した。目頭を熱くした(少し盛ったが許容範囲内だ)。俺の作戦は成功し、周りには城下町の商人が集まった。新しい商売に使える、とでも思ったのか? 何はともあれ、俺はライデン瓶を使って予防薬を飲ませるために動き出した。手始めに、ライデン瓶に溜まった静電気を見せつける。
壺。その考えは、壺をマジマジと眺めていて浮かんだ。話し合いが進むにつれて、壺をどのように使うかがはっきりとわかった。
「壺だ!」
会議中に、俺は叫んだ。皆は驚いて黙った。
小十郎は腕を組んだ。「どうしましたか、若様。何が壺なのでございましょう」
正確には壺ではない。壺に似たガラス瓶だ。
「壺ではない。ガラス瓶を大量に使用すれば、城下の奴らに予防薬を飲ませることが出来るのだ」
「ガラス瓶をどのように使えば予防薬を飲ませることが出来るのですか?」
「それは後々説明しよう。まずはガラス瓶を大量に持ってきてくれ」
小十郎はうなずき、全員はガラス瓶をそこかしこから掻き集めた。俺はそのガラス瓶一つ一つに細工を施し、水を張った。数刻程放置し、ガラス瓶の水の中を覗いた。
「静電気が集められているな」
小十郎は興味があるらしく、ガラス瓶を覗いて面白がっていた。「名坂。これはどういう原理なんだ?」
「ライデン瓶って聞いたことあるか?」
「ライデン瓶?」
「そう。ライデン瓶だ。エヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストっていう科学者が1700何年かにガラス瓶の内側に銀の薄い膜を貼って水を張り、その水に電気を溜めようとした。そしたら、銀の薄膜に電気が溜まったんだ。それをオランダ(?)の科学者ピーテル・フォン・ミュッセンブルークが改良した。改良したそれは、ガラス瓶の内側と外側に金属の膜を貼ったり金属鎖とか金属球を付けたりするから面倒だ。
今回はガラス瓶の内側だけに銀の膜を貼った。つまり、エヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストが作った方を採用した。そっちの方が簡単だからだ。ちなみに、ライデン瓶の由来は、ライデン瓶がオランダのライデン大学で発明されたからだ」
「でも、ライデン瓶をどうやって使うんだ?」
「平賀源内のエレキテルは知ってるだろ?」
「うん......」
「民間は電気に興味がある、ということだ。この『出来損ないライデン瓶(ライデン瓶の前進)』には電気があり、城下の奴らはこのライデン瓶の水を飲みたがる。だから、水に予防薬を溶かすんだ」
「それなら城下町の奴らも水を飲むな」
「だろ?」
俺達は水が張ってあるガラス瓶を、割れないように工夫しながら馬上に積み、城下町へとゆっくり移動を始めた。未来人衆がまたがった馬の運ぶガラス瓶から水が漏れていたので、そいつの頭を軽く叩いて注意した。
何とか水を漏らさずにガラス瓶を城下町まで運ぶことが出来た。ガラス瓶の中に張られた水には天然痘の予防薬を事前に溶かしておいた。少し苦くなっていたが、水に静電気が溜まっているわけだから皆は飲みたがる。苦いのは電気が通っているから仕方ない、とでも言っておけば予防薬が溶かされているとは気づかないはずだ。
まずはガラス瓶を一列に並べ、城下の奴らが集まってくるのを待った。十分経った。全然人が集まってこない。
「どうして集まらないんだ?」
その問いの答えに、小十郎はこう答えた。「僕達が伊達家の者で、見た目も若いからじゃないか?」
「そういうことか......」
俺は頭を抱えた。ここにきて、俺の年齢が壁になったのか。この時代にはシークレットシューズはあるのか?
どうしようか。年齢はどうにもならないし、まずは大衆が気になるものを催すしかない。これも事前に用意したものだ。『幻獣・火鼠』の毛を織って作られた『火浣布』という服だ。竹取物語ではかぐや姫が貴公子ら(結婚をせまる五人の変態)に出した結婚条件の一つに『火鼠の衣(燃えない服)』があった。それを実体化させた衣だ。燃やしても燃えないのだ。作るのに苦労はしたが、これで城下町の奴らは興味が湧くだろう。
小十郎に火を焚かせて、城下町の者に見えるように火浣布を持ち、火中に投げ込んだ。数分経ち、枝を使って火浣布を取り出した。火中に投げた服が燃えてない状態を見た城下町の奴らは、歓声を上げた。
エレキテル、平賀源内から着想を得たのが火浣布だ。平賀源内は石綿から取った繊維を使って、燃えない布・火浣布を作っていたのだ。エレキテルの方が認知度は高いが、エレキテルは平賀源内が発明したものではない。が、火浣布は平賀源内が発明した。火浣布の認知度が上がることを願う。
いらない補足をする。平賀源内は酔って商人を殺している。それで牢に入り、獄中で死んだ。エレキテルの偽物を作った弟子と同じ顛末である。あ、弟子が牢にぶち込んだのは平賀源内だ。因果応報というものだ。
さて。燃えていない服を見た大衆は、熱狂した。興奮した。目頭を熱くした(少し盛ったが許容範囲内だ)。俺の作戦は成功し、周りには城下町の商人が集まった。新しい商売に使える、とでも思ったのか? 何はともあれ、俺はライデン瓶を使って予防薬を飲ませるために動き出した。手始めに、ライデン瓶に溜まった静電気を見せつける。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる