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第三章『家督相続』
伊達政宗、幽霊退治は伊達じゃない その弐
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二人は熱烈に同意した。その二人というのも、皆さんがお察しの通り小十郎と愛姫だ。景頼と成実はと言うと、怖い怖いと言いながら二人で身を寄せ合っていた。で、景頼が、若様のためお供いたします、と歯切れが悪く言うと成実も仕方なく三の丸待機に同意を示した。
景頼と成実には、かわいそうだから後で何か礼に差し上げよう。成実には特注の日本刀を渡したばかりだから、次は何を用意すればいいんだ? それも後回しだ。
幽霊なんて枯れ尾花なんかがほとんどだ。前世でも視たことがないが、実在しているのか。実在してたら、腰抜かすかも。三の丸に行く前にコルセットを作っておこう。念には念だ。コルセットを準備して損はない。今日の昼間は、コルセット作りに勤(いそ)しんだ。材質は木材だけでも良いが、硬い。肌触りも悪い。少し厚めにゴム膜を張ってみよう。そうしよう。
───五時間経過。
「出来た!」
ゴム膜を張る前の状態のコルセットが完成すると、両手を天に向けて叫んだ。これで準備は万端というものだ。
三の丸に行くには、厚着で温石も持とう。くしゃみをしながら、そう思った。
昨晩の寝床での推理の続きをしよう。なぜ、幽霊が三の丸に現れるのか。三の丸から人気を遠ざけたいのだとは思うが、それなら城下町にでも向かうのか? 何のために? まさか、密会か? 伊達氏の反逆者同盟か?
話しが明後日の方向に飛んでいったところで、部屋に小十郎が入ってきた。
「名坂!」
「......何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「幽霊に決まってんじゃん!」
当たり前だと言うように、ドヤ顔になった。幽霊で興奮するとか、前世の彼女って幽霊だったのかな?
「でさぁ、神辺。昨日から聞きたかったんだけど、幽霊退治って楽しいか?」
「幽霊視てみたいって感じはないのか?」
「疑問を疑問で返してくるとは......幽霊は視たくないし、そもそも存在しない」
「ロマンがないな。形がないものに惹かれるのが人間だぞ?」
「形がないものって、幽霊以外には何がある?」
「雲とか水とか......空気もだ」
「で、その三つに神辺は惹かれたことはあるか?」
「ない」
「だろうな。あと、戦国時代ならではだが、臓器も形がないぞ」
「へ?」
「戦国時代の本では、内臓のほとんどが雲みたいなモヤモヤで覆われた挿絵なんだよ」
「確かに、この時代ならではだな」
神辺の言っていることにおかしな点は多々あるが、形がないものに惹かれるというのはわかる気がする。昔から幽霊の物語が絶えないのは、人間が少しでも惹かれる部分があるからだ。でも、存在はしない。死んだ奴が幽霊となってさまよっているならば、世界各地で幽霊を毎分視ることになる。
「僕は幽霊はいると思う」
俺が何回断っても、小十郎は幽霊がいないことを否定する。
「なんで言い切れるんだ? 幽霊を視たことがあるのか?」
「視たことはないけど、もしかしたら今日の夜に捕まえることが出来るかもしれない」
「三の丸の幽霊か?」
「それしかない」
前世を思い出す。よく高校の生徒が、幽霊の話しをしていた。教師だから生徒の話しに付き合うことが多いが、大体幽霊か彼氏彼女のことだった。今も昔もそんなに変わらないのか。
「今晩、幽霊がいたらお前に謝ってやるよ」
「OK。ところで」小十郎は言いにくそうにしながら、頑張って口を開いた。「名坂の横に置いてある木材の奴、何?」
「コルセットだ」
「コルセット?」
「幽霊がマジでいたら、腰を抜かす可能性があるだろ? だから、念のためにコルセットを作っていたんだ」
「ふーん。名坂も、幽霊がいるかもしれないって思ってんじゃん」
「だから、念のためだ」
「ふーん」
小十郎は、少なからずコルセットに興味を示していた。だから、作業の効率化も兼ねてゴム膜を木製のコルセットに張っていくのを手伝わせた。結果的に、予定していたより早くコルセットは最終形態に変身した。
「余った時間はどうする? 三の丸に待機するための集合時間まではあと一時間くらいあるぞ」
小十郎は腕を組んでから、コルセットを手に持った。「装着して違和感がないか確かめてみたい!」
「お、おう......」
小十郎がコルセットを装着し、何歩か歩いた。すると、腰に当たっている部分がまだ硬いと言ってきた。時間潰しにもなるから、小十郎が硬いと言ったところにゴム膜を何重にも貼っていった。集合時間ギリギリで小十郎が納得し、二人で集合場所まで向かった。
「遅れた!」
「若様」景頼は俺をじっと見た。「提灯は持ってきましたか?」
「あ、忘れた」
俺が取りに行こうとすると成実が、提灯を持つと幽霊に見つかりやすいから好都合だ、と言った。全員がうなずき、提灯を持たずに三の丸へと歩いていった。どこか隠れやすい場所が見つかるまで歩き回り、木陰にうまく隠れて幽霊を待つことにした。成実は目が良いから幽霊がいるか警戒する係りとなり、小十郎と景頼は小刀を持って幽霊を追い払う係りとなった。俺と愛姫は何もしなくていいと成実、小十郎、景頼に押し切られた。から、役割はない。
景頼と成実には、かわいそうだから後で何か礼に差し上げよう。成実には特注の日本刀を渡したばかりだから、次は何を用意すればいいんだ? それも後回しだ。
幽霊なんて枯れ尾花なんかがほとんどだ。前世でも視たことがないが、実在しているのか。実在してたら、腰抜かすかも。三の丸に行く前にコルセットを作っておこう。念には念だ。コルセットを準備して損はない。今日の昼間は、コルセット作りに勤(いそ)しんだ。材質は木材だけでも良いが、硬い。肌触りも悪い。少し厚めにゴム膜を張ってみよう。そうしよう。
───五時間経過。
「出来た!」
ゴム膜を張る前の状態のコルセットが完成すると、両手を天に向けて叫んだ。これで準備は万端というものだ。
三の丸に行くには、厚着で温石も持とう。くしゃみをしながら、そう思った。
昨晩の寝床での推理の続きをしよう。なぜ、幽霊が三の丸に現れるのか。三の丸から人気を遠ざけたいのだとは思うが、それなら城下町にでも向かうのか? 何のために? まさか、密会か? 伊達氏の反逆者同盟か?
話しが明後日の方向に飛んでいったところで、部屋に小十郎が入ってきた。
「名坂!」
「......何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「幽霊に決まってんじゃん!」
当たり前だと言うように、ドヤ顔になった。幽霊で興奮するとか、前世の彼女って幽霊だったのかな?
「でさぁ、神辺。昨日から聞きたかったんだけど、幽霊退治って楽しいか?」
「幽霊視てみたいって感じはないのか?」
「疑問を疑問で返してくるとは......幽霊は視たくないし、そもそも存在しない」
「ロマンがないな。形がないものに惹かれるのが人間だぞ?」
「形がないものって、幽霊以外には何がある?」
「雲とか水とか......空気もだ」
「で、その三つに神辺は惹かれたことはあるか?」
「ない」
「だろうな。あと、戦国時代ならではだが、臓器も形がないぞ」
「へ?」
「戦国時代の本では、内臓のほとんどが雲みたいなモヤモヤで覆われた挿絵なんだよ」
「確かに、この時代ならではだな」
神辺の言っていることにおかしな点は多々あるが、形がないものに惹かれるというのはわかる気がする。昔から幽霊の物語が絶えないのは、人間が少しでも惹かれる部分があるからだ。でも、存在はしない。死んだ奴が幽霊となってさまよっているならば、世界各地で幽霊を毎分視ることになる。
「僕は幽霊はいると思う」
俺が何回断っても、小十郎は幽霊がいないことを否定する。
「なんで言い切れるんだ? 幽霊を視たことがあるのか?」
「視たことはないけど、もしかしたら今日の夜に捕まえることが出来るかもしれない」
「三の丸の幽霊か?」
「それしかない」
前世を思い出す。よく高校の生徒が、幽霊の話しをしていた。教師だから生徒の話しに付き合うことが多いが、大体幽霊か彼氏彼女のことだった。今も昔もそんなに変わらないのか。
「今晩、幽霊がいたらお前に謝ってやるよ」
「OK。ところで」小十郎は言いにくそうにしながら、頑張って口を開いた。「名坂の横に置いてある木材の奴、何?」
「コルセットだ」
「コルセット?」
「幽霊がマジでいたら、腰を抜かす可能性があるだろ? だから、念のためにコルセットを作っていたんだ」
「ふーん。名坂も、幽霊がいるかもしれないって思ってんじゃん」
「だから、念のためだ」
「ふーん」
小十郎は、少なからずコルセットに興味を示していた。だから、作業の効率化も兼ねてゴム膜を木製のコルセットに張っていくのを手伝わせた。結果的に、予定していたより早くコルセットは最終形態に変身した。
「余った時間はどうする? 三の丸に待機するための集合時間まではあと一時間くらいあるぞ」
小十郎は腕を組んでから、コルセットを手に持った。「装着して違和感がないか確かめてみたい!」
「お、おう......」
小十郎がコルセットを装着し、何歩か歩いた。すると、腰に当たっている部分がまだ硬いと言ってきた。時間潰しにもなるから、小十郎が硬いと言ったところにゴム膜を何重にも貼っていった。集合時間ギリギリで小十郎が納得し、二人で集合場所まで向かった。
「遅れた!」
「若様」景頼は俺をじっと見た。「提灯は持ってきましたか?」
「あ、忘れた」
俺が取りに行こうとすると成実が、提灯を持つと幽霊に見つかりやすいから好都合だ、と言った。全員がうなずき、提灯を持たずに三の丸へと歩いていった。どこか隠れやすい場所が見つかるまで歩き回り、木陰にうまく隠れて幽霊を待つことにした。成実は目が良いから幽霊がいるか警戒する係りとなり、小十郎と景頼は小刀を持って幽霊を追い払う係りとなった。俺と愛姫は何もしなくていいと成実、小十郎、景頼に押し切られた。から、役割はない。
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