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第三章『家督相続』

伊達政宗、信長救出は伊達じゃない その拾漆

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 クロークの正体が尊氏と判明してからの俺は、威風堂々と振る舞った。少しでも格好付けたいからである。そうこうしている内に、予定より早く本能寺周辺まで到着してしまった。今日は旧暦の五月末。本能寺の近くで待ち構えていた方が良いな。
 待ち構えている、と言ってもこの人数が入れる宿屋を探すとなると骨折りだな......。どうすれば。
「政宗。俺に任せろ」
「尊氏さん、どうやって?」
「クロークでいい。俺はこの近くにある宿屋の常連なんだ。人数分の部屋を確保するように頼んでやる」
「良いんですか!?」
「もちろん」
 クロークの尽力と、俺のプライド無き土下座によって何とか人数分の部屋の確保に成功し、それぞれが部屋に入っていった。
 俺はクロークを自分の部屋に招いた。
「ここの眺めは良いですね」
「そうだな。二階だから、景色が良く見える」
「ヘルリャフカ、現れますかね」
「あいつは強者を求める。確実に来るはずだ」
「そしたら、連携攻撃で一気に片を付けましょう」
「だな」
 その日はゆっくりと寝て、体を休めた。それから数日が経って、新月の前日になると俺達の緊張度はMAXとなった。新月の前日の夜に、俺達は行動を開始した。今までの準備の集大成を見せつける。
 本能寺に突っ込んでからは一斉に転移。そこまで行くには命がけだ。しかし、やるしか道はない。そうして迎えた、新月当日。
「進め、本能寺!」
 頭に本能寺までの地図が入っている俺を先頭に、皆は続いた。俺の地図では本能寺になっている場所に到着したが、お寺がない。どういうことかと考えたら、戦国時代当時は本能寺は別の場所にあって、本能寺の変以後に移築したことを思い出した。俺が駆けつけた場所は、前日では本能寺が建てられていた場所だった。
 痛恨のミス。地団駄を踏んでから、一キロメートル程度離れた本能寺に向かおうと方向転換すると白銀白髪の髪の戦士が立っていた。牛丸に宿ったヘルリャフカだ。
「こんな時に現れやがって......。くそっ、標的ヘルリャフカを倒す! 急いで倒さないと本能寺の変に間に合わない!」
「「はっ! 了解」」
「クローク、共闘です!」
「よし、一気に倒すぞ!」
 仁和の作戦で俺はまず、ヘルリャフカの体を過冷却水で凍らせて動きを止めるんだ。過冷却水を生成すると、ヘルリャフカに向かって放った。ヘルリャフカの体に過冷却水が当たり、凍る。
「強キ者ヨ、ナカナカ良イ動キノ封ジ方ダナ。......ダガ、体温ヲ上ゲレバ造作モナイ!」
 ヘルリャフカは牛丸の体温を操作して上げることによって、氷を溶かして水にした。これも仁和の読み通りだ。さすが、仁和だ。これは参謀に引き立てるしかないか。いずれ右腕にしたい。
「水にしたのが間違いだったな!」
「ナニ?」
 俺は硫酸の入った小瓶を数個ほどヘルリャフカに投げつけた。小瓶は割れて、硫酸が流れ出る。すると、ヘルリャフカが苦しみだした。
「何ダト!? コレハ、オーバーヒート!?」
 ヘルリャフカが苗床とする牛丸の体温が急激に上昇し、心臓に負担が掛かってヘルリャフカもダメージを受けて、一時的なオーバーヒートによって早さも低下する。ここまで仁和は先を読むとは......。必殺技『超過熱オーバーヒート』!
 技名がそのまんまじゃんっ!
 それはおいておいて、超過熱オーバーヒートが起こった解説をしよう。ヘルリャフカは氷を溶かすために体温を上げた。すると氷は水になり、そこに俺は硫酸を掛けた。硫酸は水に反応して発熱するし、氷を溶かすために体温を上げたから二重で心臓に熱さという負荷が掛かる。ヘルリャフカが唯一ダメージを受ける心臓に負荷が掛かることによって、動きが鈍くなっていた。そこを狙って攻撃だ!
「おりゃ!」
 クロークはヘルリャフカとの間を詰めてから、気合いを込めて心臓目掛けて正拳突きをする。
「アッチ!」
 おそらく、正拳突きをした際に鎧に触れたから熱かったのだろう。ヘルリャフカのオーバーヒートの熱が鎧に伝わっているというわけだ。
「速攻部隊、遠距離射手部隊! 両部隊はそれぞれ二階堂、忠義を先頭にしてヘルリャフカに攻撃! 仁和は離れて援護! 成実と景頼は死ぬ気で兼三と権次を守り抜け!」
 指揮をしてから、真っ先にヘルリャフカに近づいた俺は、王水の入った小瓶と硫酸の入った小瓶を取り出して鎧に投げつけた。
「グアァアァ!」
 ヘルリャフカは叫び狂い、胸を押さえた。
「フハハハハ! モシカシタラ、今日! 我ノ望みが叶ウカモシレナイジャナイカッ! フハハハハハハハハハ!」
「叶えてやるよ、ヘルリャフカ。安らかに眠れ......」刀をつかんで、剣先をヘルリャフカの心臓部に向ける。「遺言は、あるか?」
「我ニハ遺言ナドナイ。我ハ、今マデ我ヲ倒セル強者ヲ探シタ。神界ノ頂点デスラ、我ヲ殺セナカッタ。サア! 我ヲ殺セ! ソシテ、我ガ友ヤ家族、妻ニ会ワセテクレ!」
「さらば、ヘルリャフカ」
 俺は絶縁体のシートを体に巻き付けて、雷を呼んだ。すぐに上空に集まった雷は、俺の周囲に落ちる。この攻撃ならヘルリャフカも立っていられない。ヘルリャフカ、貴様を持ち帰って小十郎の心臓と入れ替えさせてもらうよ。
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