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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その拾参
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「まずいなぁ」アマテラスは椅子に腰掛けながら腕を組んだ。「かなり危険な状況だ」
俗に言う人取橋の戦いの最中、伊達軍の大将である伊達政宗が倒れた。
アマテラスは、なぜ政宗が倒れたのか知っている。仁和が空気中に霧を撒き散らしたからだ。その霧には薬が混ぜられており、その作用で政宗は気を失ったのである。
と言いつつ、アマテラスは政宗を助ける気などないのだが。
「仁和凪......要注意をしておこう」
小説的には、主人公である政宗がピンチの方が面白い。アマテラスはあえて、今回は政宗を助けずに高みの見物をしていた。
倒れて気絶した俺の体を起こして椅子に座らせた仁和は、大声で周囲に指示を出した。
「政宗殿は気を失われた! 急いで毛布を用意してください!」
「「なんと若様がっ!」」
本陣は騒がしくなった。俺が気絶したんだから仕方がない。
仁和の指示によって運ばれてきた毛布が俺の体に掛けられ、体を横にして眠らせてくれた。
「それでは未来人衆!」仁和は声を張り上げる。「一応、私が数日前に用意したものを持ってきてください!」
仁和が数日前に用意したもの。それを説明するためには、話しを数日前に遡らせなくてはいけない。
まだ人取橋の戦いが起こっておらず、かつ輝宗が死んでいた時の話しだ。
米沢城にて、仁和は俺に頼み事をしてきた。「政宗殿、頼みたいことがあるのですが」
「頼み事か? 仁和にしては珍しいな」
「ええ、まあ」
「頼み事を聞いてやるから言ってみろよ」
「米沢城の周辺にいる類人猿が必要です」
「類人猿? ああ、お前は馬鹿猿が欲しいのかよ......」
「馬鹿猿と言っても、猿はそこまで馬鹿ではないですからね」
「まあ、人間様の祖先でもあるから侮れないけどな。わかった、急いで探してやる」
「ありがたき幸せ」
俺は忍者を雇い、猿を探させた。すると、生きたまま猿を一匹だけ連れてきた。この猿がどんな種類かは知らんが、仁和が欲しいのは類人猿だから種類は関係ない。
檻に入った猿を仁和の元へ持っていき、そのまま手渡した。
「こんなもんで良いか?」
「はい。これで良いのです」
「ほお、そんなに友達が欲しかったのか。友達が欲しかったのならば、猿じゃなくて面白い奴を連れてきてやったのに」
「別にこの猿を友達にしようとしていたわけではないのですが?」
「悪いな。ちょっとふざけてみたかったんだよ」
少々目が怖かったので、すぐに謝罪した。すると仁和はすぐに許してくれた。猿をどうやって利用するかは知らないが、仁和なんだから何か良いことに猿を使うはずだ。
まずは仁和の経過観察でもしようか。戦を起こすまでは暇だから、仁和を追って観察をしてみるのも悪くないであろう?
それから俺は、仁和が猿をどのように利用するのか見張ってみることにした。
まずは初日。仁和は再度俺の元へやってきた。
「政宗殿。少しばかり鼻の粘液を貰えないでしょうか?」
鼻の粘液......ってことは、鼻水か!? まさか鼻水をくれと言われることが人生で一度でもあるとは思っていなかった。
「鼻水をどうするってんだ?」
「今後必要になるのです」
「仁和がそう言うのならば、今後必要になるのは確実ということか」
「私に任せていただければ、悪いようにはしませんよ?」
鼻水を取るために綿棒とか使うのかな。でも綿棒はこの世界にはないが、どうすんだ?
「なあ、鼻水取るって言ったって、どうやって採取するんだよ」
「小枝の先に小さく千切った毛布をくくりつけたのです」
なるほど、自分で綿棒みたいなものを作ったのか。それなら鼻水を採取出来るから、案ずることはない。
仁和は急ごしらえの綿棒を俺の鼻の穴に突っ込んできた。
「痛っ! イタタタタ!! 奥に突っ込むなよ」
「すみません」
鼻孔の奥がすごく痛かったが、すぐに終わったので良しとしよう。俺は鼻の下を着衣で拭い、ため息をついた。
「どうしたのですか、政宗殿。そのため息は何ですか?」
「いや、ちょっと鼻が痛くてな」
「それでは、私はこれで失礼します」
「おう」
仁和を見送った後、後を付けて何をするのか見ていた。仁和は部屋で猿に何かをしていたが手元がまったく見えなかったので、結局何をしていたのかは不明のままだ。
次の日、動きはなかった。その翌日、檻に入れられた猿とともに仁和は米沢城を出た。俺もそれに着いていき、しばらく静かにしていた。そうしたら仁和は、猿を檻から出した。何をするのかと驚いたが、檻から出た猿は急いで走り出した。仁和はそれを追いかけるために走ったので、俺も後を追った。
猿は植物を吟味し、それらをパクパクと食べ始めた。仁和は猿が食べた植物を回収し、懐にしまった。その後、猿が逃げないように、仁和は猿を押さえつけて檻にぶち込んだ。
「それでは、城へ戻りましょうか」
「ウッキー!」
あ、猿って本当に『ウッキー』って叫ぶんだと思ったが、そこまで驚くことでもないと考え直した。そして俺は、自分の部屋へ仁和より先に戻った。
仁和は猿が食べた植物を回収していたが、その植物が仁和が用意した例のものである。
俗に言う人取橋の戦いの最中、伊達軍の大将である伊達政宗が倒れた。
アマテラスは、なぜ政宗が倒れたのか知っている。仁和が空気中に霧を撒き散らしたからだ。その霧には薬が混ぜられており、その作用で政宗は気を失ったのである。
と言いつつ、アマテラスは政宗を助ける気などないのだが。
「仁和凪......要注意をしておこう」
小説的には、主人公である政宗がピンチの方が面白い。アマテラスはあえて、今回は政宗を助けずに高みの見物をしていた。
倒れて気絶した俺の体を起こして椅子に座らせた仁和は、大声で周囲に指示を出した。
「政宗殿は気を失われた! 急いで毛布を用意してください!」
「「なんと若様がっ!」」
本陣は騒がしくなった。俺が気絶したんだから仕方がない。
仁和の指示によって運ばれてきた毛布が俺の体に掛けられ、体を横にして眠らせてくれた。
「それでは未来人衆!」仁和は声を張り上げる。「一応、私が数日前に用意したものを持ってきてください!」
仁和が数日前に用意したもの。それを説明するためには、話しを数日前に遡らせなくてはいけない。
まだ人取橋の戦いが起こっておらず、かつ輝宗が死んでいた時の話しだ。
米沢城にて、仁和は俺に頼み事をしてきた。「政宗殿、頼みたいことがあるのですが」
「頼み事か? 仁和にしては珍しいな」
「ええ、まあ」
「頼み事を聞いてやるから言ってみろよ」
「米沢城の周辺にいる類人猿が必要です」
「類人猿? ああ、お前は馬鹿猿が欲しいのかよ......」
「馬鹿猿と言っても、猿はそこまで馬鹿ではないですからね」
「まあ、人間様の祖先でもあるから侮れないけどな。わかった、急いで探してやる」
「ありがたき幸せ」
俺は忍者を雇い、猿を探させた。すると、生きたまま猿を一匹だけ連れてきた。この猿がどんな種類かは知らんが、仁和が欲しいのは類人猿だから種類は関係ない。
檻に入った猿を仁和の元へ持っていき、そのまま手渡した。
「こんなもんで良いか?」
「はい。これで良いのです」
「ほお、そんなに友達が欲しかったのか。友達が欲しかったのならば、猿じゃなくて面白い奴を連れてきてやったのに」
「別にこの猿を友達にしようとしていたわけではないのですが?」
「悪いな。ちょっとふざけてみたかったんだよ」
少々目が怖かったので、すぐに謝罪した。すると仁和はすぐに許してくれた。猿をどうやって利用するかは知らないが、仁和なんだから何か良いことに猿を使うはずだ。
まずは仁和の経過観察でもしようか。戦を起こすまでは暇だから、仁和を追って観察をしてみるのも悪くないであろう?
それから俺は、仁和が猿をどのように利用するのか見張ってみることにした。
まずは初日。仁和は再度俺の元へやってきた。
「政宗殿。少しばかり鼻の粘液を貰えないでしょうか?」
鼻の粘液......ってことは、鼻水か!? まさか鼻水をくれと言われることが人生で一度でもあるとは思っていなかった。
「鼻水をどうするってんだ?」
「今後必要になるのです」
「仁和がそう言うのならば、今後必要になるのは確実ということか」
「私に任せていただければ、悪いようにはしませんよ?」
鼻水を取るために綿棒とか使うのかな。でも綿棒はこの世界にはないが、どうすんだ?
「なあ、鼻水取るって言ったって、どうやって採取するんだよ」
「小枝の先に小さく千切った毛布をくくりつけたのです」
なるほど、自分で綿棒みたいなものを作ったのか。それなら鼻水を採取出来るから、案ずることはない。
仁和は急ごしらえの綿棒を俺の鼻の穴に突っ込んできた。
「痛っ! イタタタタ!! 奥に突っ込むなよ」
「すみません」
鼻孔の奥がすごく痛かったが、すぐに終わったので良しとしよう。俺は鼻の下を着衣で拭い、ため息をついた。
「どうしたのですか、政宗殿。そのため息は何ですか?」
「いや、ちょっと鼻が痛くてな」
「それでは、私はこれで失礼します」
「おう」
仁和を見送った後、後を付けて何をするのか見ていた。仁和は部屋で猿に何かをしていたが手元がまったく見えなかったので、結局何をしていたのかは不明のままだ。
次の日、動きはなかった。その翌日、檻に入れられた猿とともに仁和は米沢城を出た。俺もそれに着いていき、しばらく静かにしていた。そうしたら仁和は、猿を檻から出した。何をするのかと驚いたが、檻から出た猿は急いで走り出した。仁和はそれを追いかけるために走ったので、俺も後を追った。
猿は植物を吟味し、それらをパクパクと食べ始めた。仁和は猿が食べた植物を回収し、懐にしまった。その後、猿が逃げないように、仁和は猿を押さえつけて檻にぶち込んだ。
「それでは、城へ戻りましょうか」
「ウッキー!」
あ、猿って本当に『ウッキー』って叫ぶんだと思ったが、そこまで驚くことでもないと考え直した。そして俺は、自分の部屋へ仁和より先に戻った。
仁和は猿が食べた植物を回収していたが、その植物が仁和が用意した例のものである。
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