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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その弐壱
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俺にはちゃんとした勝機がある。勝つプランはあるのだ。こいつらはボクシングや空手、柔道などの体術に優れた奴らだろうということは身のこなしから容易に想像出来る。しかし、殺しに関してはまったくの素人だ。
どういうことなのか言葉にして説明するのは難しいが、こいつらファンキー集団は江渡弥平の回し者ではあるが殺しのプロではない。推測には過ぎないが、ファンキー集団らは闇金か何かの多重債務者なのではないか?
闇金関係の多重債務者の中で体術に秀でた者が、俺を捕らえるために狩り出されたと思われる。多重債務者はお金を返すためには狩り出されるしかないし、それが一度自己破産した人間ならば尚更だ。自己破産は二度も出来ないからな。
まあ、そんな推測はどうでも良い。重要なのは、俺が今から相手をする奴らは殺しに慣れていないということだ。ならば、勝てる自信はある。
「お前ら、一応は格闘技をかじっているだろ? 俺と武器無しでタイマンを張れや!」
格闘技をやっていて、なおかつ闇金などの裏の業界にいる人間は頭がイカれている。並びに、強い奴とのタイマンもやりたいはずだ。だからこそ、この誘いに乗るだろうと踏んだ。
「おい貴様。名は伊達政宗、だったか? 戦国武将と同姓同名だが、強いんだろ?」
「剣術、体術ともに自信がある」
「よっしゃ、じゃあ俺と体術だけでタイマン張ろうぜ」
「よしきた! 俺は浅く広く格闘技をかじっている。ボクシング、空手、柔道などを習っていた。剣術も数十個に及ぶ流派を学んでいる」
「なるほど、多岐に渡るな。俺はボクシング一本を極めただけだが、負ける気はねぇよ」
「どちらが先手かな?」
「そっちで構わない」
「では、遠慮なくやらせてもらおう」
俺が先手をやれとは言われたが、向こうから先に殴りかかってくる可能性もある。だからまずは相手の目線や息づかい、重心の位置などから次の動きを予測した。
そして俺は姿勢を崩さずに重心をずらし、懐に入ってノーモーションで顔面にパンチを食らわせて後退した。
「へー、良いパンチ持ってんな。動きも素晴らしい。案外やるな」
「......」
息を吸う際には体が無防備になっている確率が高い。息を止めているか吐いている時は行動を起こす場合がほとんどだから、俺は息を吸っている時に身構えておくことにする。
相手はボクシング経験者で、あの余裕から見ても有段者かもしれない。カウンターにも気をつけながら殴るしかないか。
「まあまあ、そんな身構えんな!」
「──ガハッ!」
相手が動いたかと思うと、正面を避けて横からの掌底打ちが炸裂した。俺は後方に倒れるが、受け身を取ってから立ち上がる。
「ちょ、お前......。ボクシングじゃ掌底打ちは反則技だろ! ボクシング極めたから反則技も極めたってか!?」
「およ、よくわかるね。ま、掌底打ちは喧嘩じゃ基本だろ?」
「まあな」
掌底打ちとは平手打ちにも似ているが、直接当てて攻撃する部分は手首に近いところだ。衝撃が手首の関節で緩和されないため、俺にも衝撃が通ってダメージを受けるものの相手へのダメージも大きい。食らった奴の骨が折れたりもする危険な技だ。
掌底打ちはボクシングでは反則技だったはずだから、おそらく相手はボクシングで反則とカウントされる技を掌底打ち以外にも使えるのだろう。気をつけよう。
俺は再度構えると、各種格闘技の動きを応用して近づいて心臓を殴りつけた。そして相手を真似るように掌底打ちを食らわせ、衝撃を心臓へと貫通させた。
「イタタタ! やるな、テメェ」
「掌底打ちのお返しだ」
ここからは慎重にしておいた方が最善だ。柳生師範から教わったことを全て活かしつつ、自分なりの応用を加えて戦おう。やはり金的へ攻撃しておく、という選択はどうだろうか。いや、こいつが去勢していないという確証はない。
金的を攻撃しないのなら、目潰しか心臓へのインパクト、後頭部を殴打することによる脳震盪狙い......などなど。後遺症は避けたいからなあ、攻撃の選択に困るな。
「神部、やめろ!」肩に掛かる程度の髪を持つキザな野郎は、無神経にも俺達の戦いを中断させた。「我々の目的は伊達政宗の無力化であって殺しではない!」
「チッ! 俺はこいつと戦いたかったんだがな」
神部と呼ばれたボクシング経験者は、ポケットからスプレー缶を取り出した。噴射口を俺の顔に向けると、スプレー缶の中身を吹きかけた。
「ぐああああぁぁぁーーーーーーっ!」
まずい、吹きかけるだけでこのダメージならば催涙剤を使われたか。 早く顔を洗わないと失明の恐れがあるが、目が開けないから身動きが出来ない。隻眼になってからは片目を死守したかったが、駄目かもしれん。
「さて、伊達政宗は無力化したから車に運び入れよう」
「ちゃんと戦いたかったが、仕方ねぇか」
俺は文字通りお先真っ暗のまま縄で縛られた上に、奴らの車へと運び込まれた。俺はこれからどうすれば良いのか、誰か助けてくれ!?
『プッ! 政宗、お前は何をしているのだ?』
こいつ、ゼッテェぶっ飛ばしてやるからな! おいコラ、アマテラス! 助けろ!
『土下座するなら良いが?』
この状況でどうやって土下座するんだよ!
『それもそうか。ハハハハハ』
アマテラスはどうやら助けてくれそうにない。ここは自分で切り抜けろ、ということか。セーブポイントまで戻りたいよ。おじさん、もう無理だ。
どういうことなのか言葉にして説明するのは難しいが、こいつらファンキー集団は江渡弥平の回し者ではあるが殺しのプロではない。推測には過ぎないが、ファンキー集団らは闇金か何かの多重債務者なのではないか?
闇金関係の多重債務者の中で体術に秀でた者が、俺を捕らえるために狩り出されたと思われる。多重債務者はお金を返すためには狩り出されるしかないし、それが一度自己破産した人間ならば尚更だ。自己破産は二度も出来ないからな。
まあ、そんな推測はどうでも良い。重要なのは、俺が今から相手をする奴らは殺しに慣れていないということだ。ならば、勝てる自信はある。
「お前ら、一応は格闘技をかじっているだろ? 俺と武器無しでタイマンを張れや!」
格闘技をやっていて、なおかつ闇金などの裏の業界にいる人間は頭がイカれている。並びに、強い奴とのタイマンもやりたいはずだ。だからこそ、この誘いに乗るだろうと踏んだ。
「おい貴様。名は伊達政宗、だったか? 戦国武将と同姓同名だが、強いんだろ?」
「剣術、体術ともに自信がある」
「よっしゃ、じゃあ俺と体術だけでタイマン張ろうぜ」
「よしきた! 俺は浅く広く格闘技をかじっている。ボクシング、空手、柔道などを習っていた。剣術も数十個に及ぶ流派を学んでいる」
「なるほど、多岐に渡るな。俺はボクシング一本を極めただけだが、負ける気はねぇよ」
「どちらが先手かな?」
「そっちで構わない」
「では、遠慮なくやらせてもらおう」
俺が先手をやれとは言われたが、向こうから先に殴りかかってくる可能性もある。だからまずは相手の目線や息づかい、重心の位置などから次の動きを予測した。
そして俺は姿勢を崩さずに重心をずらし、懐に入ってノーモーションで顔面にパンチを食らわせて後退した。
「へー、良いパンチ持ってんな。動きも素晴らしい。案外やるな」
「......」
息を吸う際には体が無防備になっている確率が高い。息を止めているか吐いている時は行動を起こす場合がほとんどだから、俺は息を吸っている時に身構えておくことにする。
相手はボクシング経験者で、あの余裕から見ても有段者かもしれない。カウンターにも気をつけながら殴るしかないか。
「まあまあ、そんな身構えんな!」
「──ガハッ!」
相手が動いたかと思うと、正面を避けて横からの掌底打ちが炸裂した。俺は後方に倒れるが、受け身を取ってから立ち上がる。
「ちょ、お前......。ボクシングじゃ掌底打ちは反則技だろ! ボクシング極めたから反則技も極めたってか!?」
「およ、よくわかるね。ま、掌底打ちは喧嘩じゃ基本だろ?」
「まあな」
掌底打ちとは平手打ちにも似ているが、直接当てて攻撃する部分は手首に近いところだ。衝撃が手首の関節で緩和されないため、俺にも衝撃が通ってダメージを受けるものの相手へのダメージも大きい。食らった奴の骨が折れたりもする危険な技だ。
掌底打ちはボクシングでは反則技だったはずだから、おそらく相手はボクシングで反則とカウントされる技を掌底打ち以外にも使えるのだろう。気をつけよう。
俺は再度構えると、各種格闘技の動きを応用して近づいて心臓を殴りつけた。そして相手を真似るように掌底打ちを食らわせ、衝撃を心臓へと貫通させた。
「イタタタ! やるな、テメェ」
「掌底打ちのお返しだ」
ここからは慎重にしておいた方が最善だ。柳生師範から教わったことを全て活かしつつ、自分なりの応用を加えて戦おう。やはり金的へ攻撃しておく、という選択はどうだろうか。いや、こいつが去勢していないという確証はない。
金的を攻撃しないのなら、目潰しか心臓へのインパクト、後頭部を殴打することによる脳震盪狙い......などなど。後遺症は避けたいからなあ、攻撃の選択に困るな。
「神部、やめろ!」肩に掛かる程度の髪を持つキザな野郎は、無神経にも俺達の戦いを中断させた。「我々の目的は伊達政宗の無力化であって殺しではない!」
「チッ! 俺はこいつと戦いたかったんだがな」
神部と呼ばれたボクシング経験者は、ポケットからスプレー缶を取り出した。噴射口を俺の顔に向けると、スプレー缶の中身を吹きかけた。
「ぐああああぁぁぁーーーーーーっ!」
まずい、吹きかけるだけでこのダメージならば催涙剤を使われたか。 早く顔を洗わないと失明の恐れがあるが、目が開けないから身動きが出来ない。隻眼になってからは片目を死守したかったが、駄目かもしれん。
「さて、伊達政宗は無力化したから車に運び入れよう」
「ちゃんと戦いたかったが、仕方ねぇか」
俺は文字通りお先真っ暗のまま縄で縛られた上に、奴らの車へと運び込まれた。俺はこれからどうすれば良いのか、誰か助けてくれ!?
『プッ! 政宗、お前は何をしているのだ?』
こいつ、ゼッテェぶっ飛ばしてやるからな! おいコラ、アマテラス! 助けろ!
『土下座するなら良いが?』
この状況でどうやって土下座するんだよ!
『それもそうか。ハハハハハ』
アマテラスはどうやら助けてくれそうにない。ここは自分で切り抜けろ、ということか。セーブポイントまで戻りたいよ。おじさん、もう無理だ。
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