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ホームズの概要
番外編 バリツの正体
【『バリツ=バーティツ』説】
ホームズと日本の関わりとしては、作中だと『バリツ』や『聖武天皇』などが思い出されます。
バリツは日本武術として短編『最後の事件』に登場し(バリツだと明記されたのは短編『空き家の冒険』)、ライヘンバッハの滝でモリアーティ教授を、バリツを使ったホームズが滝壺に落としたので、日本国民としては誇らしいことですね。
このバリツですが、日本にはない架空武術です。シャーロキアンの定説は『柔術』ですが、私はこれには納得していません。私的には『バーティツ』説を支持したいです(最近では『バリツ=バーティツ』とも言われますが、まだ柔術の方が優勢です)。
バーティツは日本の柔術とステッキ術を合わせた護身術らしく、『最後の事件』ではライヘンバッハの滝にホームズの登山杖が落ちていました。ホームズはモリアーティ教授と戦う際に登山杖を持っていたんです。
つまりホームズはライヘンバッハの滝でバリツ、もといバーティツをすることが出来たんですよ。バーティツ説、濃厚! しかもバリツとバーティツは名前も似ていますし、当時のイギリス紳士はステッキを持って出歩くのが常で、バーティツが定説になっても良いと思うんです。しかし、なぜバーティツが定説として扱われないのか。その理由を見つけました。『名探偵シャーロック・ホームズ事典』に、その理由になるのではないかという事実を発見したんです。
その『名探偵シャーロック・ホームズ事典』によると、バーティツが発表されたのは1899年、ホームズがバリツを使ったと明記された短編『空き家の冒険』が発表されたのは1903年です。つまり理論上はドイルはバリツを知り得ることが出来たのです。
しかし、短編『最後の事件』が起きた年は1891年。この時にバーティツは存在していなかったのです。しかしドイルがバーティツをバリツとして書いた可能性はあります。それでもシャーロキアンの間で定説とならないのは、シャーロキアンは正典での登場人物達や事件を実在していると考えているからでしょう。
ホームズがバリツを使ってモリアーティ教授を倒した1891年にバーティツはまだ存在しないので、『バリツ=バーティツ』とはならないのだと思います。
この説を裏付けるものとして、関東出身のシャーロキアンである遠藤尚彦さんは1901年8月23日付の『タイムズ紙』に載っている『Japanese Wrestling at the Tivoli』という記事に『バーティツ(Bartitru)』を『バリツ(Baritsu)』と誤記した個所を発見しています。
短編『空き家の冒険』より『Japanese Wrestling at the Tivoli』の記事は二年ほど先に公表されていて、ドイルがこの記事に影響された可能性はあります。
【『バリツ=柔術』説】
私はバーティツ説を支持しているのですが、他の説にも触れなくてはいけません。定説となっている『柔術』の説を触れましょう。
先ほども名前を出した『名探偵シャーロック・ホームズ事典』には、バーティツ説だけでなく柔術説も書かれています。ホームズが柔道を覚えている可能性についてです。それによると、スイスのライヘンバッハの滝でホームズとモリアーティ教授が戦う数年前にロンドン在住の日本人がつくる日本人会があったようで、柔道の講演会が開かれていたようです。やばいですよ! バーティツ説が劣勢! しかも、当時のロンドンに、『柔道の父』である嘉納治五郎が来ていたようです。つまりシャーロキアン的にも、ホームズが嘉納らから直接柔道を習っていた可能性があるんです。
これでバーティツ説も撃沈。『バリツ=柔道』が定説になる理由がわかりますね⤵。
そして、『名探偵シャーロック・ホームズ事典』にも書かれている通り、モリアーティ教授は運動はせずに研究ばかりしていました。ホームズがバリツを極めずとも、モリアーティ教授は倒せたということです。付け焼き刃でも十分にモリアーティ教授を谷底に叩き落とせます。
ただ、バリツ=柔術の説にも欠点はあります⤴。関東のシャーロキアンである飯島章さんは柔術の技だと組み手にもよりますが、取っ組み合ったままホームズもモリアーティ教授と一緒に滝壺に落ちる可能性があると言っています。
柔術は基本的に一本勝ちの技が決まった時も両者の体が離れていない場合が多いです。巴投げでない限り、二人は一緒に転落していました。
モリアーティ教授がホームズの片袖を掴んでいたら、ホームズもそこで死んでいました。果たして、ホームズがこんな危険な賭けをしたでしょうか?
【『バリツ=相撲』説】
バリツ=相撲とする説があります。前述の飯島さんが『シャーロック・ホームズ紀要』第1巻第2号に掲載された『バリツ考』に、バリツ=柔術説を否定することが書かれていて、その『バリツ考』には『バリツ=相撲』とする説が発表されました。その『バリツ考』ではホームズに相撲を教えたのは建築家の辰野金吾とされています。
相撲のいなし技だと、モリアーティ教授とともにホームズが滝壺に落ちる危険性はないそうです。
紀伊国屋渡舟さんは、『相撲もジャパニーズスタイルのレスリングであるから、ホームズを救った技は日本の武術、そのなかでも近代格闘術であることは間違いない。』と言っています。
新潮文庫の延原謙訳の正典ですが、『空き家の冒険』の新版だと『バリツ』は『ジュウジュツ』に書き換えられています。旧版では『バリツ』のままですが、延原謙の嗣子である延原展が改版にあたって『ジュウジュツ』に修正されました。夢がないです......。
しかし、私はバリツの正体など突き止めなくても良いと思うんです。シャーロキアンは納得しないかもしれませんが、フィクションはフィクションです。バリツはホームズの世界では実際に存在する日本武術、ということにしましょう。謎は謎のままが一番の場合もあります!
ホームズと日本の関わりとしては、作中だと『バリツ』や『聖武天皇』などが思い出されます。
バリツは日本武術として短編『最後の事件』に登場し(バリツだと明記されたのは短編『空き家の冒険』)、ライヘンバッハの滝でモリアーティ教授を、バリツを使ったホームズが滝壺に落としたので、日本国民としては誇らしいことですね。
このバリツですが、日本にはない架空武術です。シャーロキアンの定説は『柔術』ですが、私はこれには納得していません。私的には『バーティツ』説を支持したいです(最近では『バリツ=バーティツ』とも言われますが、まだ柔術の方が優勢です)。
バーティツは日本の柔術とステッキ術を合わせた護身術らしく、『最後の事件』ではライヘンバッハの滝にホームズの登山杖が落ちていました。ホームズはモリアーティ教授と戦う際に登山杖を持っていたんです。
つまりホームズはライヘンバッハの滝でバリツ、もといバーティツをすることが出来たんですよ。バーティツ説、濃厚! しかもバリツとバーティツは名前も似ていますし、当時のイギリス紳士はステッキを持って出歩くのが常で、バーティツが定説になっても良いと思うんです。しかし、なぜバーティツが定説として扱われないのか。その理由を見つけました。『名探偵シャーロック・ホームズ事典』に、その理由になるのではないかという事実を発見したんです。
その『名探偵シャーロック・ホームズ事典』によると、バーティツが発表されたのは1899年、ホームズがバリツを使ったと明記された短編『空き家の冒険』が発表されたのは1903年です。つまり理論上はドイルはバリツを知り得ることが出来たのです。
しかし、短編『最後の事件』が起きた年は1891年。この時にバーティツは存在していなかったのです。しかしドイルがバーティツをバリツとして書いた可能性はあります。それでもシャーロキアンの間で定説とならないのは、シャーロキアンは正典での登場人物達や事件を実在していると考えているからでしょう。
ホームズがバリツを使ってモリアーティ教授を倒した1891年にバーティツはまだ存在しないので、『バリツ=バーティツ』とはならないのだと思います。
この説を裏付けるものとして、関東出身のシャーロキアンである遠藤尚彦さんは1901年8月23日付の『タイムズ紙』に載っている『Japanese Wrestling at the Tivoli』という記事に『バーティツ(Bartitru)』を『バリツ(Baritsu)』と誤記した個所を発見しています。
短編『空き家の冒険』より『Japanese Wrestling at the Tivoli』の記事は二年ほど先に公表されていて、ドイルがこの記事に影響された可能性はあります。
【『バリツ=柔術』説】
私はバーティツ説を支持しているのですが、他の説にも触れなくてはいけません。定説となっている『柔術』の説を触れましょう。
先ほども名前を出した『名探偵シャーロック・ホームズ事典』には、バーティツ説だけでなく柔術説も書かれています。ホームズが柔道を覚えている可能性についてです。それによると、スイスのライヘンバッハの滝でホームズとモリアーティ教授が戦う数年前にロンドン在住の日本人がつくる日本人会があったようで、柔道の講演会が開かれていたようです。やばいですよ! バーティツ説が劣勢! しかも、当時のロンドンに、『柔道の父』である嘉納治五郎が来ていたようです。つまりシャーロキアン的にも、ホームズが嘉納らから直接柔道を習っていた可能性があるんです。
これでバーティツ説も撃沈。『バリツ=柔道』が定説になる理由がわかりますね⤵。
そして、『名探偵シャーロック・ホームズ事典』にも書かれている通り、モリアーティ教授は運動はせずに研究ばかりしていました。ホームズがバリツを極めずとも、モリアーティ教授は倒せたということです。付け焼き刃でも十分にモリアーティ教授を谷底に叩き落とせます。
ただ、バリツ=柔術の説にも欠点はあります⤴。関東のシャーロキアンである飯島章さんは柔術の技だと組み手にもよりますが、取っ組み合ったままホームズもモリアーティ教授と一緒に滝壺に落ちる可能性があると言っています。
柔術は基本的に一本勝ちの技が決まった時も両者の体が離れていない場合が多いです。巴投げでない限り、二人は一緒に転落していました。
モリアーティ教授がホームズの片袖を掴んでいたら、ホームズもそこで死んでいました。果たして、ホームズがこんな危険な賭けをしたでしょうか?
【『バリツ=相撲』説】
バリツ=相撲とする説があります。前述の飯島さんが『シャーロック・ホームズ紀要』第1巻第2号に掲載された『バリツ考』に、バリツ=柔術説を否定することが書かれていて、その『バリツ考』には『バリツ=相撲』とする説が発表されました。その『バリツ考』ではホームズに相撲を教えたのは建築家の辰野金吾とされています。
相撲のいなし技だと、モリアーティ教授とともにホームズが滝壺に落ちる危険性はないそうです。
紀伊国屋渡舟さんは、『相撲もジャパニーズスタイルのレスリングであるから、ホームズを救った技は日本の武術、そのなかでも近代格闘術であることは間違いない。』と言っています。
新潮文庫の延原謙訳の正典ですが、『空き家の冒険』の新版だと『バリツ』は『ジュウジュツ』に書き換えられています。旧版では『バリツ』のままですが、延原謙の嗣子である延原展が改版にあたって『ジュウジュツ』に修正されました。夢がないです......。
しかし、私はバリツの正体など突き止めなくても良いと思うんです。シャーロキアンは納得しないかもしれませんが、フィクションはフィクションです。バリツはホームズの世界では実際に存在する日本武術、ということにしましょう。謎は謎のままが一番の場合もあります!
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