暗号の作り方

髙橋朔也

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 推理小説というジャンル内では、今日まで数々の暗号解読小説が執筆され続けてきた。
 知らない者はいない大怪盗アルセーヌ・ルパン。モーリス・ルブランの作品で、ルパンシリーズでは『813』も暗号解読の要素が含まれる。タイトルの『813』が暗号のようなものだ。
 かの江戸川乱歩のデビュー作『二銭銅貨』も、暗号解読小説だ。この『二銭銅貨』の暗号は、『南無阿弥陀仏』を点字の六点に置き換えている。
 例題をあげると、点字の『ア』は左上の一点で表せる。この『ア』を暗号化すると『南』、『イ』は『南無』となる。


────────────────────
【暗号表】

      南弥           ・・
      無陀           ・・
      阿仏           ・・

『点を漢字に置き換えた暗号』   『六点点字』
────────────────────


 暗号解読小説といえばポーの『黄金虫』もはずせない。世界で初めて書かれた暗号解読小説だ。アルファベットを他の数字と記号などに置き換えるだけの暗号で、解読は登場回数からわかる。
 英文だと『e』がアルファベットの一文字の中で圧倒的に多く文章の中に登場する。『黄金虫』だと『e』は『8』だったと思う。次は単語で圧倒的に多く登場する『the』を探せばいいが、『e』はわかっているので大体見当はつく。
 アーサー・コナン・ドイルの『踊る人形』もざっくりと言えば、『黄金虫』と同じだ。『踊る人形』の場合はアルファベットを人形の絵に置き換えている。旗を持った人形は句読点だ。北村薫の短編『遠い唇』もこれに習った暗号が登場していた。
 ドイルといえば、『恐怖の谷』というホームズシリーズの長編がある。その冒頭らへんに暗号が登場する。本のページとそのページにある行、その行にある文字を順々に数字で指定していく。本が解読の鍵だとわからなければただの数字の列だが、わかりさえすれば数字を当てはめていき、文章が読み取れるのだ。この暗号の記法は坂口安吾の『アンゴウ』とも同じ。
 その『恐怖の谷』や『アンゴウ』の暗号記法を少し改良すると、また面白くなってくる。これは私が数年前に考えたのだが、本棚の段に数字を付ける。そして、本棚に隅々まで本を並べる。あとは数字で本棚の段を指定し、左から何番目の本の、タイトルの何文字目かを数字で表せば文字を伝えることは出来る。
 ドイルによるホームズシリーズの短編『マスグレーヴ家の儀式』に登場する暗号は寓意法というものだ。簡単に説明すると特定の場所を、文章でややこしく書いているのだ。『黄金虫』も、最後の方は寓意法と言っていいだろう。
 作るのが非常に簡単な暗号もある。それは、スキュタレー暗号だ。筒に細長い紙を巻き付けていく。その巻き付けた紙に、横書きで文字を書いていくとスキュタレー暗号の完成である。同じ太さの筒を持っていれば、紙を巻き付けるだけで暗号が解読できる。筒に巻き付けない状態の紙は、文字がぐちゃぐちゃで読み取ることは不可能。
 他にも簡単な暗号は存在する。同じ大きさの紙をピッタリと二枚重ねて、上に重ねられた一枚の紙に小さい穴を数十個程度開ける。その穴から二枚目の紙に文字を書いて、書いた字と字の間にはめちゃくちゃにまた文字を書く。相手が一枚目の穴の開いているを持っていれば、二枚目の紙を渡しただけで目的の文字が伝えられる。一枚目の穴の開いた、鍵の役割を担う紙を持っていない人物は理解することができない。

 簡単な暗号の記法を短い文で紹介したが、暗号解読小説を書くならこの程度の暗号でも十分に執筆が可能だ。『マスグレーヴ家の儀式』同様の暗号を使えば、読者に先に解読される心配もない。絶対とは言わないが、是非紹介した暗号の作り方を利用して、書きたい方は暗号解読小説を書いてみるといいだろう。
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