オネェ騎士はドレスがお好き

しろねこ。

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対立する意見

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「兄上、ルアネド様。お忙しい中お呼び立てしまい、申し訳ございません」

「……」

「気にするな。それよりも詳しく聞こうか」
ルアネドは無言で、エリックは手短に返事をした。

ルアネドは紫混じりの黒髪と、濃い紫の瞳をしていた。

表情はとても冷めている。

真紅のマントと黒色の服を纏って、細身の祭礼用みたいな剣を腰に差している。

傍らにはふわっとした髪の王妃がいる。

可愛らしいまだあどけなさが残る顔立ちだ、事態が飲み込めずキョトンとしている。

エリックの隣にも王太子妃のレナンがそっと寄り添っている。

王族とその護衛や従者、一気に場の空気が重くなった。

その中で一歩、オスカーが前に出る。

真面目な表情と引き締めた口元、騎士としてのこんな真剣なオスカーをメィリィはあまり見たことがない。

こういう状況にも関わらず、迂闊にも惚れ直しそうだった。



「ティタン様、何やら私の不始末にて多大なるご迷惑をおかけしたようですね。ライカより話は聞きました。誠に申し訳ございません」
オスカーはティタンに向かい、頭を下げる。

「いや、メィリィ嬢への言葉は看過できるものではなかったし、我が公爵家への侮辱もあった。オスカーのせいではない」
ティタンは後ろに下がり、オスカーに場を任せる。

「そちらのアシッド=マルクス伯爵が以前のトラブルについて、きちんと決着をつけたいそうだ。当事者達の話が聞きたい。公平な裁判の場ではないが、この場で白黒つけたいとはマルクス伯爵からたっての希望だ。メィリィ嬢とオスカー、二人に一任する」
オスカーはメィリィに目を向けると、安心させるような笑みを見せた。

メィリィは振るえる身体を奮い立たせ、彼の隣に立つ。



周囲の注目が、視線が、怖い。

自分の証言を皆は信じてくれるだろうか?

「まず、私は、私の店は、不良品のドレスなど売りつけていません。偽証もしていません…」
改めて否定の言葉を述べる。

メィリィの小さくなった声を拾うため、場は益々静かになる。

緊張感で喉が張り付く感覚、メィリィは二の句がなかなか告げなくなった。

オスカーがメィリィの肩に手を回す。

「彼女の店で扱っていたドレスをマルクス伯が購入した。それは事実だ」
ゆっくりと、オスカーが経緯を説明していく。

堂に入った態度と声。

オスカーの声が会場に浸透していく。

「私はレナン王太子妃のドレスを、普段より見立てさせて頂いている。そのためその日はメィリィ嬢の店へと訪れていた。貴族専用のドレスを扱う店と聞いていたからだ。マルクス伯と会ったのは偶々だ」
初めからの経緯をかんたんに話していく。

「彼は以前に購入していたドレスを持ち込み、店側へと文句を言い募った。ドレスに残っていた針が奥方を傷つけ、消えない傷を残したと。しかし、それは全くの出鱈目だ」
反論しようとしたアシッドをオスカーは手で制す。

「こちらの言い分から言わせてもらおう。そしてマルクス伯と奥方は、そのことを裁判などせぬ代わりに、代金の返却、並びに同等のドレスをを数着渡せとメィリィ嬢に迫った。これは恐喝行為に等しいものだ」
メィリィの肩に置く手に力が入り、つい彼女を抱き寄せてしまった。

あの時を思い出すとどうしても感情が昂ぶる。

「メィリィ嬢は否定した。そもそも店で扱う針は特別で、全てにナンバーが彫り込んである。マルクス伯が持ってきたのは一般の針だ。メィリィ嬢の店のものではないということは、マルクス伯の話が出鱈目だという事だ」
あの時まだオスカーは話に入ってきてはいなかったはずだ。

凄い記憶力だとメィリィは感心する。

「それを指摘したメィリィ嬢は、代金をマルクス伯へ返却し、ドレスを引き取った。それが真相だ。大切なドレスをメィリィ嬢は下衆な輩に渡したくなかったのだ。それなのに、不備のあると言ったドレスも渡したくない、と引き渡しを拒否した。なので、その時に私がマルクス伯を諌めさせて頂いた。経緯については、今の説明で納得頂けますか?」
オスカーは真っ向からアシッドと視線を交わす。

「とんだ出鱈目だ! 針はメィリィ嬢の店のもの、私達は言いくるめられ、店を追い出された! 再度の抗議も店に入ることも出来ず、追い返される始末……!」

強盗が入った後、オスカーは警備の人を雇い、店長のリザに頼んで出禁者のリストも作成させた。

マルクス伯もその一人だ。

「では、裁判の場で話せばよかったのでは?」
いつまでも己が否を認めないアシッドに、ティタンは呆れていた。

「そこのオスカー殿に追い返され、証拠のドレスもなく、泣き寝入りとなってしまったのだ。妻はあれ以来塞ぎ込んでいる。これ以上波風を立てれば妻の体にも良くない……!」

我慢するしかなかったと、アシッドは語る。

だが世間から聞こえてくるメィリィへの賛辞は、あれから増えていた。

王太子妃という強大な顧客も増え、店の商品も貴族令嬢達が手を出しやすい値段に下げた。

様々なカラーを取り揃え、種類を増やし、幅を広げた。

オスカーの手出しや出資者も増えたことから、軌道に乗ったのは目に見えて明らかだった。

「今日この場で私と話したのはぁ、どうしてですかぁ?」
話せば波風が立つのはわかっていたはずだ。

いいも悪いもこのようなパーティで騒ぎを起こせば、立場はどんどん悪くなる。

大事な来賓がいる中で話すことは、愚策でしかないと思う。 

「もう言い逃れさせないためだ」
店での話し合いはオスカーに止められた。

言いたいことも言えず、賠償を求める事も出来ず、もやもやとした思いが燻っていた。

この場であればこんなに多くの目がある。

いくらメィリィの顧客が王族であっても、間違いは間違いだ。

正しいのは自分と、妻だ。

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