猛獣のお世話係

しろねこ。

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番外編:猛獣になった第二王子⑩

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「改めてよろしくお願い致します!」
屋敷の警護の為にマオに呼ばれた双子の護衛騎士、ルドとライカは嬉しそうに元気に挨拶をした。

燃えるような赤毛が特徴的だ。

落ち着いた雰囲気の兄とやんちゃそうな雰囲気の弟。

再びティタンの側にいられる喜びを隠しきれず、そわそわとしている。

ティタンが城にいる時、彼らがティタン付きの護衛騎士であった。

屋敷としても男手が増えるのは有り難い。

「何なりとご命令を申し付けてください」
二人はティタンとミューズに頭を下げた。

(二人が来ると頼もしいな)
マオも強いし、自分もいるとは言え、守りに特化した二人が来れば余計な心配は減るというものだ。

「二人共よろしくお願いしますね」
ミューズが少しだけ照れ臭そうに笑顔を向けた。

その珍しい反応にティタンは小首を傾げる。

「すみません、男性に慣れてなくて……」
赤くなった頬に触れ、申し訳無さそうに言っている。

その言葉にピクリとティタンの耳が立った。

(そう言えば、ミューズと年の近い男性は居なかったな……)
料理長や庭師はもっと上だし、既婚だ。

未婚の若い男性、ミューズがもしも好意を持ったら?

自然と唸り声が出てしまった。

「ちょっ、何でティ様怒ってるんですか?!」
ライカが焦ったように後ずさっている。

何故だかわからないが、急に主が不機嫌になった。

「落ち着いて下さい、ティ様。俺達何かしましたか?!」
ルドも理由が分からず慌ててしまう。


マオはミューズの様子を見て、察したもののニヤリと笑った。

「二人共、ミューズ様に色目を使ってはいけないですよ」
その言葉にティタンはますます迫力を増し、毛が逆立って来ている。

「そんな事するわけないじゃないですか!」

の怒りをどう宥めたらいいのか、ルドもライカも後ろに下がるくらいしか出来ない。

マオの言葉に、ミューズは自分がティタンを誤解をさせたのだと気づいた。

「違います、ティ様。あの、他意があったわけではありませんわ」
ミューズの言葉がしっかりと耳に入るも、
(そうは言っても、やはりこの二人の方がいいんじゃないかなぁ…)
ティタンの唸り声は小さくなるものの、ささくれだった心は中々戻らない。

不機嫌そうに動く尻尾を見て、ミューズはティタンを撫でる。

「ティ様は特別ですよ、心配なさらないでください」

(特別!)
特別と言われ、ティタンの心は舞い上がってしまう。

目を細め、ミューズに撫でられるがままになった。

ようやくティタンが唸り声を止めて落ち着いたのを見て、ルドとライカは息を吐いた。

「マオ、覚えていろよ」
ティタンをたきつけたマオをライカは睨みつける。

余計な一言を入れやがってと斬りつけんばかりに怒っていた。

「生きててよかったですね」
特に気にした様子もなく、マオには悪びれた素振りもない。

ティタンにあらぬ誤解を与えぬよう、二人はミューズとの距離感に気をつけながら、過ごすようになった。

皆がティタンの為に屋敷を住みやすい環境にするというので、その手伝いをしていく。

「皆様はティタン様の為に動いてくれてるのですね」
獣になっても慕われる主が、誇らしい。

「暫く距離を置かれてしまったからな。俺達も主のより良い生活の為に頑張ろう」
ライカも気合いを入れる。

あの日、二人は別の賓客の護衛をする事となり、近くにいることが叶わず、不覚を取ってしまった。

そして落ち込んでいた二人は更にティタンとも距離を置かれてしまった。

ティタンも二人に気を遣ったようだ。

そんな状態では側に居たいなどと、強く訴える事もかなわなかった二人は、ティタンに再び声をかけられるのを体を鍛えつつ、じっと待っていた。

今度こそ望まれたからには何でもこなすつもりだ。

「しかし、こんなデレデレなティタン様を見るとは思わなかった……」
小声で二人は呟き合う。

皆に刺繍をしてもらったスカーフを試着しているのだが、ミューズからのスカーフをつけた時のティタンはとても嬉しそうだ。

「とても似合っていますわ、ティ様」
皆に褒められ、満更でもない様子だ。

ティタンから少し離れた所にいる二人にも聞こえるほど、ぐるぐると喉を鳴らしている。

あからさまなミューズへの惚れっぷりにこちらが恥ずかしくなるくらいだ。

「見てはいけない気がしますね……」
ルドとライカはそっと部屋を後にした。





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