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第1話 悪役騎士のプロポーズ
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「リューフェ、結婚してくれ!」
修道院の外から声高らかにプロポーズを行うのは、一人の若い騎士だ。
修道女たちはざわざわとしているが、辺境伯の騎士である彼に表立って抗議は言えない。
皆に追い立てられるかのように外に出されたリューフェは、困った表情をして頭を下げる。
「ごめんなさい。出来ません」
毎朝の日課であった。
「そうか、残念だ。心変わりしたら言ってくれ」
慣れたもので、土産に大量の焼き菓子を渡しながら帰っていった。
辺境伯には内緒にしてほしいという賄賂だ。
「めげないものね」
「えぇ……」
他の修道女達は呆れたような、羨ましいような、そんな目でリューフェを見る。
薄桜色の髪は今はただ一つに結わえられ、美人であるが幸薄そうな顔をしている。
常に疲れているような表情をしており、自身のなさそうなおどおどとした態度をしていた。
もう少し立ち居振る舞いを治せばもっとモテるだろうに、という感想だ。
カラムがここに来るようになったのは最近だ。
狐色の髪に緑の目。すらりとした鼻筋をしており、美形の部類だが、何かを企んでいるような笑みをよく浮かべていた。
カラムは空が飛べる貴重な兵士だ。
魔法が使えるものが少ないこの世界で、魔石によって似たような力を使える者は重宝されていた。
扱うのにも適性が必要であり、カラムのように自在に力を使えるものは珍しい。
風を操り高速飛行を可能にしているが、この機動力は情報伝達や見張りにうってつけである。
そんな凄い力を持っているのに何故王都ではなく辺境伯領にて働いているのか。
彼はここに左遷されてきたのだ。
カラムには悪い話がある。
元は王城に務める騎士であったが、義姉に手を出したとされ、この地へと飛ばされた。
魔石を扱えるもの、という事で給与はいい。
空を飛び辺境伯領を巡視していたカラムは、偶々森に薪を拾いに来ていたリューフェを見初めた。それをきっかけに修道院に顔を出すようになった。
修道院の経営はそこまで余裕があるわけではないので、カラムの手土産は正直有難いのもある。
だが、カラムの悪い評判のせいで、未だ警戒は解かれていない。
リューフェが目的だという事は皆が知っているので、来たらすぐさま人身御供のように前に出される。
(悪い人ではなさそうだけど)
リューフェ自体はカラムに対して悪い気はしない。
宝石をジャラジャラ付けていて見た目はチャラいが、無理矢理リューフェを連れて行こうとはしない。
皆に渡す分とは違うお菓子をこっそりとくれたり、簡単な手紙もつけてくれる。マメで優しい人だ。
しかもあのような大体的なプロポーズをする割に、善行は内緒にしてほしいそうだ。
この修道院は森から近く、よく魔獣の姿が目撃されていたのに最近は少ない。
カラムが巡視を始めた頃から少なくなっているのだが、気づくものは居ないようだ。
一度それをみんなに伝えてもいいかと言うと、カラムは首を横に振った。
「だってそうしたら俺が悪人じゃないってバレるだろ? 良い人だってわかって、俺がモテ始めたらリューフェは嫌じゃない?」
などと自意識過剰な事を言われ、苦笑した。
時には町の人からの差し入れと称して、貴重な薬もくれたりする。
「もっと食べてもっと太ったほうがいい。健康が心配だ」
リューフェの顔色を見てそんな心配をしてくれ、食料も頻繁に寄こされた。
大事にされているのは切に感じていた。
だが、リューフェは修道女だ。それも訳ありの。
修道院の外から声高らかにプロポーズを行うのは、一人の若い騎士だ。
修道女たちはざわざわとしているが、辺境伯の騎士である彼に表立って抗議は言えない。
皆に追い立てられるかのように外に出されたリューフェは、困った表情をして頭を下げる。
「ごめんなさい。出来ません」
毎朝の日課であった。
「そうか、残念だ。心変わりしたら言ってくれ」
慣れたもので、土産に大量の焼き菓子を渡しながら帰っていった。
辺境伯には内緒にしてほしいという賄賂だ。
「めげないものね」
「えぇ……」
他の修道女達は呆れたような、羨ましいような、そんな目でリューフェを見る。
薄桜色の髪は今はただ一つに結わえられ、美人であるが幸薄そうな顔をしている。
常に疲れているような表情をしており、自身のなさそうなおどおどとした態度をしていた。
もう少し立ち居振る舞いを治せばもっとモテるだろうに、という感想だ。
カラムがここに来るようになったのは最近だ。
狐色の髪に緑の目。すらりとした鼻筋をしており、美形の部類だが、何かを企んでいるような笑みをよく浮かべていた。
カラムは空が飛べる貴重な兵士だ。
魔法が使えるものが少ないこの世界で、魔石によって似たような力を使える者は重宝されていた。
扱うのにも適性が必要であり、カラムのように自在に力を使えるものは珍しい。
風を操り高速飛行を可能にしているが、この機動力は情報伝達や見張りにうってつけである。
そんな凄い力を持っているのに何故王都ではなく辺境伯領にて働いているのか。
彼はここに左遷されてきたのだ。
カラムには悪い話がある。
元は王城に務める騎士であったが、義姉に手を出したとされ、この地へと飛ばされた。
魔石を扱えるもの、という事で給与はいい。
空を飛び辺境伯領を巡視していたカラムは、偶々森に薪を拾いに来ていたリューフェを見初めた。それをきっかけに修道院に顔を出すようになった。
修道院の経営はそこまで余裕があるわけではないので、カラムの手土産は正直有難いのもある。
だが、カラムの悪い評判のせいで、未だ警戒は解かれていない。
リューフェが目的だという事は皆が知っているので、来たらすぐさま人身御供のように前に出される。
(悪い人ではなさそうだけど)
リューフェ自体はカラムに対して悪い気はしない。
宝石をジャラジャラ付けていて見た目はチャラいが、無理矢理リューフェを連れて行こうとはしない。
皆に渡す分とは違うお菓子をこっそりとくれたり、簡単な手紙もつけてくれる。マメで優しい人だ。
しかもあのような大体的なプロポーズをする割に、善行は内緒にしてほしいそうだ。
この修道院は森から近く、よく魔獣の姿が目撃されていたのに最近は少ない。
カラムが巡視を始めた頃から少なくなっているのだが、気づくものは居ないようだ。
一度それをみんなに伝えてもいいかと言うと、カラムは首を横に振った。
「だってそうしたら俺が悪人じゃないってバレるだろ? 良い人だってわかって、俺がモテ始めたらリューフェは嫌じゃない?」
などと自意識過剰な事を言われ、苦笑した。
時には町の人からの差し入れと称して、貴重な薬もくれたりする。
「もっと食べてもっと太ったほうがいい。健康が心配だ」
リューフェの顔色を見てそんな心配をしてくれ、食料も頻繁に寄こされた。
大事にされているのは切に感じていた。
だが、リューフェは修道女だ。それも訳ありの。
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