7 / 7
第7話 共に生きる
しおりを挟む
新しい爵位、新しい領地を得て、カラムはまた王城の騎士団へと戻る。
カラムの領地はクライム伯爵のすぐ隣であった。
「お父様の近くなんて嬉しいわ」
母のいないリューフェにとって父は唯一の家族である。そんな家族の側に住めるなんて嬉しい。
全ては王家とカラムの配慮であった。
「なぜリューフェ夫人を娶ろうと思ったんだ?」
カルロスの言葉にカラムはただ微笑む。
「好きになったから、ですね」
いっぱいあるが、伝えきれる気はしないし、そもそもカルロスにわざわざ言う事はない。
カラムがリューフェを知ったのはいつかのパーティだ。
どこか頼りなさげで真面目な彼女は遠めから見ても危うかった。
すぐに人に騙されそうな雰囲気を隠しもしないで出していたし、婚約者というオルフも、リューフェの友人であったミラージュと何やら悪そうな顔をしていた。
ずっと気にして見ていたが、リューフェを想う気持ちは段々と強まり、守ってあげたいという気持ちが愛に変わるのはけして不思議なことではなかった。
オルフ達が何かをする前に止めようと思ったが、その前に自分がまさか嵌められるとは。
リューフェの事に気を取られていたのもあるが、まさか自分が切り捨てられるとは思っていなかった。
真面目にコツコツ働いてきたのにと、愛情が憎悪に変わるのは早かった。
そして程なくして友人のルアンから連絡が入る。リューフェが断罪され、辺境地へと飛ばされた事を。
偶然とはいえ自分の側に来てくれたのは丁度良かった。そして修道院という場所も丁度いい。自分も近づけないが、他の男も近づけない。
機動力を生かしj辺境伯には自ら見張りをすると志願した。
万が一にもリューフェを騎士団の者達に見せたくなかったのもある。
おっとりとして優しく、そして美人なリューフェを見初める者はいくらでもいると思ったのだ。
偶然にも会う事が叶い、話をすることが出来た。その後は求婚の為に訪れているという強引な手を使い、日々元気でいるかを確認に向かっていた。
戸惑い恥ずかしがる様は可愛かったが、元婚約者がリューフェを愛人にしようという話を聞いて、沸騰する思いだった。
表向きはメイドになる事で罪を許して修道院から出してあげて、裏ではミラージュに内緒で妾にするつもりだったと聞いて、カラムはオルフをすぐさま殺しに行こうかと思った。
だが、普通であればミラージュが許さない。メイドとしてこき使うならともかく、妾になんて絶対にさせないだろう。
ならばとリューフェを陥れる策として最低男に言い寄られている情報を流す。
カラムの評判は最低だし、そんな男がリューフェを強引に妻にしようとしていると聞けば二人は興味を持つと考えたのだ。
そうして何とか妻となってもらい、今度は堂々と守れるようになった。
二人きりの生活は幸せだった。
平民なのだから自分達で家事を分担し、話し合い、楽しく暮らす。
そんな幸せな生活を送るうちにカラムとリューフェの冤罪の証拠が上がったと王太子より連絡をくれた。
これで悪評を覆すことが出来ると意気揚々と王都へと戻る。
リューフェの為に二人の悪評を覆しておく必要があった。心優しいリューフェが虐げられていていいわけがない。
だって彼女は自らの食い扶持がないと知るや否や、自分で森に出て食料を探したり、薪を拾いに出ていた。カラムからの差し入れも独り占めすることなくみんなと分け合って食べている、とても優しい女性だ。
そんな彼女から搾取していたオルフとミラージュはもう表世界に出られないようにした。奪い取られたクライム家の財産も領地を切り売りさせて返却させる。
カラムの実家にも同様に領地の切り売りをさせ、慰謝料を払ってもらった。
これからの事を考えれば資産はいくらあっても足りない。
「カルロス様のお陰で、ようやく好きな人と穏やかに暮らせそうです。ありがとうございます」
カラムは改めて王太子に頭を下げた。そこに打算があっても力を貸してくれたのは事実だ。
「お礼なら働いて返してくれ。お前の力はとても貴重だ、そしてその忠義心もな」
真面目で有能なカラムを王太子は手放すのを惜しんでいた。
何とか連れ戻そうと画策していた中で、リューフェという女性と結婚したと聞いた時は驚いた。
(最初は修道院出たさに誑かしただけと思ったが、なかなかお似合いの二人だな)
カラムも真面目だが、リューフェもとても真面目だ。そして優しい。
「俺の力を買ってくれてありがとうございます。ですが今日は早く帰らせてもらいますよ、リューフェが料理をして、待ってくれていますからね」
伯爵夫人となったリューフェだが、今も時折料理をする。
カラムに頼まれた時などの特別な時だけしかしないので、とても貴重だ。
豪華なものではなく素朴な料理ばかりだが、カラムはリューフェの作ったものなら何でも好きだった。
それくらい惚れている。
カラムはあっという間に空を飛んで帰っていった。
馬車や馬での移動と違って遮るものが何もない空の移動はとても早い。
「ただいま!」
「おかえりなさい、カラム様」
恭しく礼をするリューフェを抱き上げ、キスをする。
「今日も可愛らしいな。結婚してくれ」
「もうしてますよ」
くすりと笑うリューフェが可愛くてまたキスをした。
徐々にだが、リューフェは心を許してくれて可愛らしい笑顔を頻繁に見せてくれるようになっている。
恥ずかしがるような顔も、はにかむような笑顔も全てが愛おしい。
「それでも何回だって言いたいんだ。愛している」
真剣な声音でそう言われ、突然のギャップに顔を真っ赤にしてしまった。
「わ、私も愛してます……」
か細い声で言われ、ますますカラムも上機嫌になった。
「可愛い!」
玄関先でいつまでもいちゃつく二人は執事に声をかけられるまで愛を伝えあっていた。
とても幸せそうな二人はとても悪役とは思えなかった。
カラムの領地はクライム伯爵のすぐ隣であった。
「お父様の近くなんて嬉しいわ」
母のいないリューフェにとって父は唯一の家族である。そんな家族の側に住めるなんて嬉しい。
全ては王家とカラムの配慮であった。
「なぜリューフェ夫人を娶ろうと思ったんだ?」
カルロスの言葉にカラムはただ微笑む。
「好きになったから、ですね」
いっぱいあるが、伝えきれる気はしないし、そもそもカルロスにわざわざ言う事はない。
カラムがリューフェを知ったのはいつかのパーティだ。
どこか頼りなさげで真面目な彼女は遠めから見ても危うかった。
すぐに人に騙されそうな雰囲気を隠しもしないで出していたし、婚約者というオルフも、リューフェの友人であったミラージュと何やら悪そうな顔をしていた。
ずっと気にして見ていたが、リューフェを想う気持ちは段々と強まり、守ってあげたいという気持ちが愛に変わるのはけして不思議なことではなかった。
オルフ達が何かをする前に止めようと思ったが、その前に自分がまさか嵌められるとは。
リューフェの事に気を取られていたのもあるが、まさか自分が切り捨てられるとは思っていなかった。
真面目にコツコツ働いてきたのにと、愛情が憎悪に変わるのは早かった。
そして程なくして友人のルアンから連絡が入る。リューフェが断罪され、辺境地へと飛ばされた事を。
偶然とはいえ自分の側に来てくれたのは丁度良かった。そして修道院という場所も丁度いい。自分も近づけないが、他の男も近づけない。
機動力を生かしj辺境伯には自ら見張りをすると志願した。
万が一にもリューフェを騎士団の者達に見せたくなかったのもある。
おっとりとして優しく、そして美人なリューフェを見初める者はいくらでもいると思ったのだ。
偶然にも会う事が叶い、話をすることが出来た。その後は求婚の為に訪れているという強引な手を使い、日々元気でいるかを確認に向かっていた。
戸惑い恥ずかしがる様は可愛かったが、元婚約者がリューフェを愛人にしようという話を聞いて、沸騰する思いだった。
表向きはメイドになる事で罪を許して修道院から出してあげて、裏ではミラージュに内緒で妾にするつもりだったと聞いて、カラムはオルフをすぐさま殺しに行こうかと思った。
だが、普通であればミラージュが許さない。メイドとしてこき使うならともかく、妾になんて絶対にさせないだろう。
ならばとリューフェを陥れる策として最低男に言い寄られている情報を流す。
カラムの評判は最低だし、そんな男がリューフェを強引に妻にしようとしていると聞けば二人は興味を持つと考えたのだ。
そうして何とか妻となってもらい、今度は堂々と守れるようになった。
二人きりの生活は幸せだった。
平民なのだから自分達で家事を分担し、話し合い、楽しく暮らす。
そんな幸せな生活を送るうちにカラムとリューフェの冤罪の証拠が上がったと王太子より連絡をくれた。
これで悪評を覆すことが出来ると意気揚々と王都へと戻る。
リューフェの為に二人の悪評を覆しておく必要があった。心優しいリューフェが虐げられていていいわけがない。
だって彼女は自らの食い扶持がないと知るや否や、自分で森に出て食料を探したり、薪を拾いに出ていた。カラムからの差し入れも独り占めすることなくみんなと分け合って食べている、とても優しい女性だ。
そんな彼女から搾取していたオルフとミラージュはもう表世界に出られないようにした。奪い取られたクライム家の財産も領地を切り売りさせて返却させる。
カラムの実家にも同様に領地の切り売りをさせ、慰謝料を払ってもらった。
これからの事を考えれば資産はいくらあっても足りない。
「カルロス様のお陰で、ようやく好きな人と穏やかに暮らせそうです。ありがとうございます」
カラムは改めて王太子に頭を下げた。そこに打算があっても力を貸してくれたのは事実だ。
「お礼なら働いて返してくれ。お前の力はとても貴重だ、そしてその忠義心もな」
真面目で有能なカラムを王太子は手放すのを惜しんでいた。
何とか連れ戻そうと画策していた中で、リューフェという女性と結婚したと聞いた時は驚いた。
(最初は修道院出たさに誑かしただけと思ったが、なかなかお似合いの二人だな)
カラムも真面目だが、リューフェもとても真面目だ。そして優しい。
「俺の力を買ってくれてありがとうございます。ですが今日は早く帰らせてもらいますよ、リューフェが料理をして、待ってくれていますからね」
伯爵夫人となったリューフェだが、今も時折料理をする。
カラムに頼まれた時などの特別な時だけしかしないので、とても貴重だ。
豪華なものではなく素朴な料理ばかりだが、カラムはリューフェの作ったものなら何でも好きだった。
それくらい惚れている。
カラムはあっという間に空を飛んで帰っていった。
馬車や馬での移動と違って遮るものが何もない空の移動はとても早い。
「ただいま!」
「おかえりなさい、カラム様」
恭しく礼をするリューフェを抱き上げ、キスをする。
「今日も可愛らしいな。結婚してくれ」
「もうしてますよ」
くすりと笑うリューフェが可愛くてまたキスをした。
徐々にだが、リューフェは心を許してくれて可愛らしい笑顔を頻繁に見せてくれるようになっている。
恥ずかしがるような顔も、はにかむような笑顔も全てが愛おしい。
「それでも何回だって言いたいんだ。愛している」
真剣な声音でそう言われ、突然のギャップに顔を真っ赤にしてしまった。
「わ、私も愛してます……」
か細い声で言われ、ますますカラムも上機嫌になった。
「可愛い!」
玄関先でいつまでもいちゃつく二人は執事に声をかけられるまで愛を伝えあっていた。
とても幸せそうな二人はとても悪役とは思えなかった。
35
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い
雲乃琳雨
恋愛
バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。
ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?
元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。
婚約破棄された途端、隣国の冷酷王子に溺愛されました
ほーみ
恋愛
「――本日をもって、レイラ・アストレッドとの婚約を破棄する!」
玉座の間に響き渡る鋭い声。
それは私の元婚約者である王太子・ユリウスの宣告だった。
広い空間にざわめきが広がる。
私はゆっくり顔を上げ、冷たい笑みを浮かべた。
「あら、そう。ようやく?」
「……なに?」
役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜
腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。
絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。
しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身!
「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」
シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。
婚約破棄から始まる、ジャガイモ令嬢の優雅な畑生活
松本雀
恋愛
王太子から一方的な婚約破棄の書状を受け取ったその日、エリザベートは呟いた。
「婚約解消ですって?ありがたや~~!」
◆◆◆
殿下、覚えていらっしゃいますか?
あなたが選んだ隣国の姫のことではなく、
――私、侯爵令嬢エリザベートのことを。
あなたに婚約を破棄されて以来、私の人生は見違えるほど実り多くなりましたの。
優雅な所作で鍬を振り、ジャガイモを育て、恋をして。
私のことはご心配なく。土と恋の温もりは、宮廷の冷たい風よりずっと上等ですわ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる