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第2話 亀裂とすれ違い
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そして数日後、ティタンとユーリ王女の婚約が解消されたという話を聞いた。
「これで一緒になれるな」
キラキラした目で見られるものの、ミューズは返答など出来ない。
「お待ちください。本当に王女の代わりを私が務められると思いますか?」
嬉しいと言うよりも、荷が重い。
ミューズの家は一応公爵家ではあるが、筆頭ではなくむしろ末席。
祖母が王妹であったため公爵家であるが、特に役職にもついてないし、実権もない。
収入も領地経営くらいだから裕福ではないが、このままほのぼのとした両親の下で静かに暮らしていたかった。
しかし、ティタンと出会ってからはずっと調子が狂わされている。
「無論だ。君なら王子妃としてやっていける」
「ご冗談を。ティタン様、少し頭を冷やしてくださいな」
何でも思い通りになると思われては困る。
無礼を承知でそう言って立ち去ろうとしたが、腕を掴まれた。
大きくて硬い手に、これが男性の手なのだと改めて認識する。
そんなに力を入れてるようには見えないのに、振り切れない。
「冗談ではない。君と一緒になりたいからと考えていたことだ。ぜひ求婚を受けて欲しい」
「このような大事な話は私の一存では決められません。まず父を通してください」
掴まれた手はまだ離されない。
「君の気持ちが聞きたいんだ、俺と一緒になる気は全くないのか?」
「……今、私たちが周囲にどう思われているかを知っていますか?」
返答を避け、そのように聞けば、ティタンはぐっと言葉に詰まる。
「ティタン様を誑かした悪女と言われています。その噂を払拭せずにこのまま求婚を受ける事は、出来ません。ですから今はお受けすることは出来ません」
ティタンが取った行動は悪手だ。
いくらなんでも婚約者がいる状態でのプロポーズはしてはいけなかった。
せめて周囲の理解をもう少し得られないと、王家も公爵家もいい顔はされないだろう。
「ですので、少し距離を置き、お互いの評価がもう少し改善した頃に改めて考えます」
本当はすぐにでも自分も好きだと伝えて、喜んで婚約をしたいと言いたい。
でもこの針の筵のような雰囲気の中で、幸せになれるのかというと難しい。
それに森での件もあるし、断罪されたくはない。
(本当に私のための婚約解消だったのかしら)
ティタンに瑕疵をつけた事を心苦しく思うが、やはり信用はまだ出来ない。
「わかった。それならば待つ。ただしそれまで婚約者を持たないでくれよ」
「善処します」
優雅にミューズは微笑んだ。
ティタンの思いが本当だとわかれば、いつか結ばれるだろう。
それまでは、これ以上評判が悪くならないように頑張り、本心を探らなくてはならない。
決意はしたが、やはり彼が他の女性と話すのを見るのは辛い。
彼の声や話題を聞くだけでそわそわしたり、ドキドキしたり。
婚約解消について国から公表もされ、理由としては政治的な理由とだと発表された。
婚約破棄ではなく解消という事で、ティタンもミューズも悪い事をしていないという事になった。
少しだけ周囲の雰囲気は緩和されたが、フリーになりミューズと距離を置いたことで話しかけるものが増えた。
もともと人当たりもよく、身分の差に拘らないティタンは色々な者と交流するようになった。
時折ミューズとも話すが、約束したように必要以上に話さず、近づかない。
王族を誑かした悪女と言われないよう、適切な距離を保とうとしているようだ。
他の女生徒とも似たような距離感をとるようにはしてくれている。
特別扱いはなくなり、ミューズの望んだように距離は開けた。
これで平穏な日々になるはずだったのに、距離が開いたことで寂しさが去来してしまい、結局落ち着いた日々なんて送れていない。
自分の我儘に嫌気が差す。
「自分から離れようと言ったのに」
本当は自分だけを大事にしてほしい。
都合のいい事ばかりを思う醜い自分の内面に、嫌気が差す。
影のある表情を帯びることが段々と多くなってきた。
「ミューズ」
ふと人気のない廊下でティタンに声を掛けられた。
ぼんやりとしていたら皆次の教室へ移動したようで周囲には誰もいない。
立ち止まり外を見ていたのでミューズは全く気付いていなかった。
「疲れているのか? 最近元気がないように見えるが」
「大丈夫です、寝不足なだけですよ」
そう言って誤魔化すが、ティタンの心配そうな表情は消えない。
「顔色が悪い。今から医務室へ行こう」
「えっ?」
抱き上げられたかと思うと医務室まで抱っこで運ばれる。
「いえ、あのダメです。こんなの」
人が少ないとはいえ、こんなところを誰かにみつかったら恥ずかしい。
「大人しくしていて」
(誰のせいだと思ってるのかしら)
完全に八つ当たりではあったが、そんなことも言えず、ミューズは目を閉じ、プルプルと震えて耐える。
(怖がらせてしまったか……)
あれからずっと距離を感じていたから、何とか理由をつけて触れたかった。
無理矢理過ぎたが、ようやく感じた温もりに今更下ろすことは出来ない。
距離も近く良い匂いがする。
早く場を整えたい。
そしてもう一度プロポーズするんだ。
それまで何とか耐えるつもりだったのに、あんなに倒れそうな真っ青な顔をしていたのならば見過ごせない。
早く安心できる環境を用意してあげたいものだ。
「これで一緒になれるな」
キラキラした目で見られるものの、ミューズは返答など出来ない。
「お待ちください。本当に王女の代わりを私が務められると思いますか?」
嬉しいと言うよりも、荷が重い。
ミューズの家は一応公爵家ではあるが、筆頭ではなくむしろ末席。
祖母が王妹であったため公爵家であるが、特に役職にもついてないし、実権もない。
収入も領地経営くらいだから裕福ではないが、このままほのぼのとした両親の下で静かに暮らしていたかった。
しかし、ティタンと出会ってからはずっと調子が狂わされている。
「無論だ。君なら王子妃としてやっていける」
「ご冗談を。ティタン様、少し頭を冷やしてくださいな」
何でも思い通りになると思われては困る。
無礼を承知でそう言って立ち去ろうとしたが、腕を掴まれた。
大きくて硬い手に、これが男性の手なのだと改めて認識する。
そんなに力を入れてるようには見えないのに、振り切れない。
「冗談ではない。君と一緒になりたいからと考えていたことだ。ぜひ求婚を受けて欲しい」
「このような大事な話は私の一存では決められません。まず父を通してください」
掴まれた手はまだ離されない。
「君の気持ちが聞きたいんだ、俺と一緒になる気は全くないのか?」
「……今、私たちが周囲にどう思われているかを知っていますか?」
返答を避け、そのように聞けば、ティタンはぐっと言葉に詰まる。
「ティタン様を誑かした悪女と言われています。その噂を払拭せずにこのまま求婚を受ける事は、出来ません。ですから今はお受けすることは出来ません」
ティタンが取った行動は悪手だ。
いくらなんでも婚約者がいる状態でのプロポーズはしてはいけなかった。
せめて周囲の理解をもう少し得られないと、王家も公爵家もいい顔はされないだろう。
「ですので、少し距離を置き、お互いの評価がもう少し改善した頃に改めて考えます」
本当はすぐにでも自分も好きだと伝えて、喜んで婚約をしたいと言いたい。
でもこの針の筵のような雰囲気の中で、幸せになれるのかというと難しい。
それに森での件もあるし、断罪されたくはない。
(本当に私のための婚約解消だったのかしら)
ティタンに瑕疵をつけた事を心苦しく思うが、やはり信用はまだ出来ない。
「わかった。それならば待つ。ただしそれまで婚約者を持たないでくれよ」
「善処します」
優雅にミューズは微笑んだ。
ティタンの思いが本当だとわかれば、いつか結ばれるだろう。
それまでは、これ以上評判が悪くならないように頑張り、本心を探らなくてはならない。
決意はしたが、やはり彼が他の女性と話すのを見るのは辛い。
彼の声や話題を聞くだけでそわそわしたり、ドキドキしたり。
婚約解消について国から公表もされ、理由としては政治的な理由とだと発表された。
婚約破棄ではなく解消という事で、ティタンもミューズも悪い事をしていないという事になった。
少しだけ周囲の雰囲気は緩和されたが、フリーになりミューズと距離を置いたことで話しかけるものが増えた。
もともと人当たりもよく、身分の差に拘らないティタンは色々な者と交流するようになった。
時折ミューズとも話すが、約束したように必要以上に話さず、近づかない。
王族を誑かした悪女と言われないよう、適切な距離を保とうとしているようだ。
他の女生徒とも似たような距離感をとるようにはしてくれている。
特別扱いはなくなり、ミューズの望んだように距離は開けた。
これで平穏な日々になるはずだったのに、距離が開いたことで寂しさが去来してしまい、結局落ち着いた日々なんて送れていない。
自分の我儘に嫌気が差す。
「自分から離れようと言ったのに」
本当は自分だけを大事にしてほしい。
都合のいい事ばかりを思う醜い自分の内面に、嫌気が差す。
影のある表情を帯びることが段々と多くなってきた。
「ミューズ」
ふと人気のない廊下でティタンに声を掛けられた。
ぼんやりとしていたら皆次の教室へ移動したようで周囲には誰もいない。
立ち止まり外を見ていたのでミューズは全く気付いていなかった。
「疲れているのか? 最近元気がないように見えるが」
「大丈夫です、寝不足なだけですよ」
そう言って誤魔化すが、ティタンの心配そうな表情は消えない。
「顔色が悪い。今から医務室へ行こう」
「えっ?」
抱き上げられたかと思うと医務室まで抱っこで運ばれる。
「いえ、あのダメです。こんなの」
人が少ないとはいえ、こんなところを誰かにみつかったら恥ずかしい。
「大人しくしていて」
(誰のせいだと思ってるのかしら)
完全に八つ当たりではあったが、そんなことも言えず、ミューズは目を閉じ、プルプルと震えて耐える。
(怖がらせてしまったか……)
あれからずっと距離を感じていたから、何とか理由をつけて触れたかった。
無理矢理過ぎたが、ようやく感じた温もりに今更下ろすことは出来ない。
距離も近く良い匂いがする。
早く場を整えたい。
そしてもう一度プロポーズするんだ。
それまで何とか耐えるつもりだったのに、あんなに倒れそうな真っ青な顔をしていたのならば見過ごせない。
早く安心できる環境を用意してあげたいものだ。
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