義務から始まる恋心、好きと素直に言えなくて

しろねこ。

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第3話 約束

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「このままでは亡くなった二人も浮かばれない。うちが後見人となります。四人のこれからを見させてもらいますよ」

 赤の他人である事や、この家の資産を奪いたいだけではと言われるが、なかばさんは穏やかな口調で諭していく。

「ではここに居る皆さんはこの子達をバラバラにする事なくしっかりと進学させ、家の維持費も生活費も全て出してくれるという事ですね? 勿論亡くなった二人の保険金も全てこの子達の為に使うと約束してくれると」

 央さんが言った今聞けばこれは真っ当な言葉であったと思う。

 しかし親戚連中はそんなの約束できないとごねた。

「納得できない、決めかねると言うならば、後は裁判所でお話ししましょう。公平な目で見て貰わないと決まりそうにないですしね。深春ちゃんもそれでいいかな?」

「あ、ありがとうございます」

 私はお礼の言葉を述べて、頭を下げた。

(央さんに言ってもらわなかったら、流されるばかりだったわ)

 きっと私達だけでは親戚に押し切られ、バラバラに過ごすか、学校に通う事無く家事手伝いを行わされていただろう。

 新たな選択肢を提示してくれた事に、本当に感謝している。

 その後央さんは私達が離れ離れにならないように尽力し、未成年後見人になり、私達を近くで見守ってくれた。

 おかげで私は学校を辞める事なく、そして妹達も志望した学校に通う事が出来た。

 生活が落ち着いてきた頃に私は再び央さんとお話をする。

 十八歳になれば私が妹達の後見人になれるので、その了承を得ようと思ったのだ。

「本当に大学に行かずに働くのかい?」

「はい。小父様にいつまでも頼りっきりでは申し訳ないですもの」

 央さんは考え込むように俯いている。

「その、こう言っては悪いけれど、しっかりと大学を出てからの方がいいと思う。正直高卒で女の子一人だけの給料で学費も生活費も賄うのは相当大変だよ」

 それを言われると確かにそう。

 バイトをしたり、奨学生制度を用いても望む収入までは届かない。

 ましてや大した資格も経験もない私が妹達を養っていくというのは難しいとわかっている。

「でも、あまり小父さん達の迷惑になりたくなくて」

「そう言うのは気にしなくていいんだよ。だからせめて大学は卒業なさい。このまま放り出しては俺ものぞむ達に顔向けできない」

 父の名を出され、私は俯いてしまう。

「でもそんなお金はありませんし……」

 ただでさえ多額の援助をしてもらっているのに、これ以上甘えるわけにはいかないと葛藤する。

「先行投資だよ。将来俺の会社に来てもらえればそれでいい」

「え?」

 それはだいぶこちらにとって都合の良い話では?

 お金も出してもらえて就職先まで保証してくれるなんて。

「さっきも言ったけれど、望の気持ちを考えると下手な会社に君を行かせたくはない。見た目ではわからないブラック企業も多いし、目の届かない所にやるのは正直怖いんだ。小さい頃から君達を見ているからかな、俺も君達の父親のような気分なんだ」

(父の気持ち……)

 央さんの言葉にますます亡き父を思い出す。

 優しくて少しおっちょこちょいな父親だった。けれど確かに子に無理を言うような父ではなく、どちらかというと自分を犠牲に私達を見てくれるような人。

(私もそうなりたいと思ったのに)

 だから早く独り立ちしたかったのだけど、でも確かに央さんの言うように、このまま働きに出ても寧ろ妹達に迷惑と苦労をかけさせてしまう。

「うちの会社で将来働いてもらうように勉強してもらって、そして将来は息子と共に会社を支えて欲しいんだ」

 央さんの会社の為に働くのなんて願ってもない事だ。今までの恩を返せると、この時は単純にそう思っていた。

「わかりました。すみません、もう少しだけ甘えさせてもらいます」

「そんな畏まらなくていいよ。深春ちゃんの為ならおじさん何でも出来るから。それにそんなにすぐに了承してもらえると思わなかった」

 私が頭を下げた事で慌てたおじさんの声がするが、少しだけ嬉しそうな感じもある。

 気のせいかしら。




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