根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。

文字の大きさ
10 / 19

婚約の顔合わせ②

しおりを挟む
一つ咳払いをし、ディエスは話を続ける。

「ティタン様はわが領地に来るおつもりはあるのでしょうか?住み慣れた王宮を離れ、いち領主となる覚悟が」
「あります。いずれは臣籍降下する予定でしたし、大好きなミューズ嬢の側なら死ぬ気で頑張るつもりです」

背筋を伸ばし真っ直ぐに言うティタンは真っ向からディエスの視線を受け止める。

「あまり勉学は得意ではないと聞きますが」
「はい。兄に比べたら俺は不出来なものです。しかしそんな事は言ってられません、彼女のような素敵な人と巡り会えるなど、この生涯でもう二度とはないと思っております。それならば惚れた女性の為に死ぬつもりで頑張ることが男だと思います」

兄と違い、殊更生真面目に返してくる。

「死なれては困ります、ティタン様。そんな事おっしゃられては悲しいです」
「わかった、死なないくらいに頑張る!」

単純明快な男なのだろうなと、何だか親近感がわく。

「これからの働きに期待したいと思いますが、何よりミューズが良いと言うならば私としてはもう言うことはありません」
ディエスは一応了承した。
ミューズがここに残ってくれるならばとの考えもある。

ティタンであればスフォリア家を乗っ取ろうという事もなさそうだ。


それに数々の噂で疲弊していたミューズがこんなにも嬉しそうなのだから、応援してあげたい。

「シグルド公も俺をミューズの婿として認めて貰えますか?」
ティタンが声をかけたのは護衛の中の一人、シグルドだ。

兜を被って顔を隠していたがティタンにはバレていたようだ。

「久しぶりだな、ティタン王子。しかしよく、わかったな」
「歩き方と気配が似ておりました。ミューズ嬢の祖父ですし、今日はいらっしゃると思ってたのです」

ティタンはシグルドに騎士としての教えを請うた事があり、幾度か鍛錬も行なっていた。
シグルドもティタンを気に入っていて、王宮に出向く際は教えるように時間を作っていた。

「俺を負かせるようになればな」
「わかりました」
ある意味とても大きな難題だ。
シグルドは自ら魔獣狩りをするほどの手練で、バリバリの現役だ。

生半で倒せる相手ではない。


「ディエス、無事に皆の意思確認が出来ただろう。他に質問はあるか?」

領の事や娘達の気持ちは聞いた。

細かい摺合せや決定事項は後になるだろう。

そこにスッとエリックが手をあげる。

「もしディエス殿からなければ、俺から一つ。もしかしたら不快にさせるかもしれませんが…」
ティタンと目配せをした。
ティタンは決意し、こくりと頷く。

「ミューズ嬢の醜聞についてです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される

琴葉悠
恋愛
 エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。  そんな彼女に婚約者がいた。  彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。  エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。  冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──

旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!

恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。 誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、 三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。 「キャ...ス...といっしょ?」 キャス……? その名を知るはずのない我が子が、どうして? 胸騒ぎはやがて確信へと変わる。 夫が隠し続けていた“女の影”が、 じわりと家族の中に染み出していた。 だがそれは、いま目の前の裏切りではない。 学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。 その一夜の結果は、静かに、確実に、 フローレンスの家族を壊しはじめていた。 愛しているのに疑ってしまう。 信じたいのに、信じられない。 夫は嘘をつき続け、女は影のように フローレンスの生活に忍び寄る。 ──私は、この結婚を守れるの? ──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの? 秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。 真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!

恋を再び

Rj
恋愛
政略結婚した妻のヘザーから恋人と一緒になりたいからと離婚を切りだされたリオ。妻に政略結婚の相手以外の感情はもっていないが離婚するのは面倒くさい。幼馴染みに妻へのあてつけにと押しつけられた偽の恋人役のカレンと出会い、リオは二度と人を好きにならないと捨てた心をとりもどしていく。 本編十二話+番外編三話。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

【完結】旦那様、離縁後は侍女として雇って下さい!

ひかり芽衣
恋愛
男爵令嬢のマリーは、バツイチで気難しいと有名のタングール伯爵と結婚させられた。 数年後、マリーは結婚生活に不満を募らせていた。 子供達と離れたくないために我慢して結婚生活を続けていたマリーは、更に、男児が誕生せずに義母に嫌味を言われる日々。 そんなある日、ある出来事がきっかけでマリーは離縁することとなる。 離婚を迫られるマリーは、子供達と離れたくないと侍女として雇って貰うことを伯爵に頼むのだった…… 侍女として働く中で見えてくる伯爵の本来の姿。そしてマリーの心は変化していく…… そんな矢先、伯爵の新たな婚約者が屋敷へやって来た。 そして、伯爵はマリーへ意外な提案をして……!? ※毎日投稿&完結を目指します ※毎朝6時投稿 ※2023.6.22完結

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

処理中です...