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第1話 呪いの力
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ティタンとミューズは幼き頃に既に婚約を交わしていた。
お互いを一生をかけて愛することを誓い、その思いは大きくなってからも変わらない。
文通やデートを重ね、日々愛を育んで来た。
ティタンは薄紫の髪をした、体格の良い男性だ。
顔立ちはけしてかっこいとは言い難いが、実直で真面目な性格をしている。
対するミューズはふわふわとした金髪の小柄で可愛らしい令嬢であった。
金色と青色の珍しいオッドアイの瞳をしており、その美貌は王族に匹敵すると言われている。
伯爵令息と公爵令嬢という身分差はあるものの、二人の中はとても良かった。
学校を卒業し、ティタンは王宮の騎士になり鍛錬に明け暮れ、ミューズは文官として日々勉学に励む。
合う頻度は減ってしまったが、二十になる頃には婚姻を結ぼうと思って二人は頑張っていた。
しかしこんな転機が起こるとは思ってもいなかった。
「ミューズ!」
ノックも忘れ、ティタンはミューズの部屋のドアを荒々しく開ける。
その様子は切羽詰まっており、顔色も悪い。
「ティタン様、落ち着いて下さい」
「少々お待ち下さい、ようやく休まれたところなのです」
侍女や医師がティタンを落ち着かせようと声を出す。
ティタンは自分の非礼にはたと気づいた。
「すまない、ミューズの事を知らされてつい……容態はどうなのだ?」
ミューズのベッドには天蓋があり周囲にも人がいるため、ここからでは見えない。
医師の顔色を伺う。
「ミューズ様は今は落ち着かれております。ただ原因がいまだ不明なため予断を許さない状況です」
令嬢たちとのお茶会で急に倒れたとの報がティタンのところに届いたのだ。
急いで仕事の引き継ぎをし、早く着くために馬車ではなく馬にて駆けつけた。
「ミューズの側に行きたいが、大丈夫か?」
弱っている姿や寝姿を見られたくないかもと今更ながら思い、声をかける。
医師は首を横にふった。
「今はこのまま休ませて上げてください。まだ流行り病などの可能性もありますので、しばらく静養をと思います」
ぐっと会いたい気持ちを抑え、
「わかった」
と出直そうとし、扉の方に体を向ける。
「ティタン……?」
か細い声が聞こえて、駆け寄りたい気持ちを抑え振り向いた。
ミューズの声だ。
「ミューズ、具合はどうだ? 倒れたと聞き急いで駆けつけたのだが、大丈夫か?」
「私、倒れたのね……体が思うように動かないのも、そのせいなの?」
身じろぐ音はするが、ミューズのそばには許可がないといけない。
女性に対して失礼だからだ。
「痛っ!」
体を起こそうとしたミューズが痛みを訴える。
「ミューズ大丈夫か?!」
婚約者の苦鳴の声に、思わず駆け寄り、天蓋を捲くってしまった。
ティタンは後悔した。
ミューズの全身は包帯が巻かれており、ところどころ見える肌は赤くなったり黒くなったりと変色している。
顔も腫れ上がり、今までのミューズとは全く違う容姿だ。
「お下がりくださいティタン様!」
周囲の使用人や医師に止められ、ティタンは呆然としながら力なく下がる。
「ミューズ、その姿は……」
そう言われ、ミューズは自分の体をようやく見下ろした。
自分の姿に驚きながら、おずおずと腫れた手で顔を触る。
巻かれた包帯、腫れた頬にミューズは震えた。
「誰か鏡を……」
震える声で言うものの、誰も持ってきてくれない。
「ミューズ」
ティタンはゆっくりミューズに近づき、彼女の手に自分の手を重ねる。
「きっと大丈夫、今はゆっくりお休み」
優しい眼差しを向け、ミューズを横にした。
発熱と痛みにうとうとし眠りにつくと、ティタンの体からは殺気が溢れる。
「ミューズをこのようにしたのは誰だ……絶対に許さない」
お互いを一生をかけて愛することを誓い、その思いは大きくなってからも変わらない。
文通やデートを重ね、日々愛を育んで来た。
ティタンは薄紫の髪をした、体格の良い男性だ。
顔立ちはけしてかっこいとは言い難いが、実直で真面目な性格をしている。
対するミューズはふわふわとした金髪の小柄で可愛らしい令嬢であった。
金色と青色の珍しいオッドアイの瞳をしており、その美貌は王族に匹敵すると言われている。
伯爵令息と公爵令嬢という身分差はあるものの、二人の中はとても良かった。
学校を卒業し、ティタンは王宮の騎士になり鍛錬に明け暮れ、ミューズは文官として日々勉学に励む。
合う頻度は減ってしまったが、二十になる頃には婚姻を結ぼうと思って二人は頑張っていた。
しかしこんな転機が起こるとは思ってもいなかった。
「ミューズ!」
ノックも忘れ、ティタンはミューズの部屋のドアを荒々しく開ける。
その様子は切羽詰まっており、顔色も悪い。
「ティタン様、落ち着いて下さい」
「少々お待ち下さい、ようやく休まれたところなのです」
侍女や医師がティタンを落ち着かせようと声を出す。
ティタンは自分の非礼にはたと気づいた。
「すまない、ミューズの事を知らされてつい……容態はどうなのだ?」
ミューズのベッドには天蓋があり周囲にも人がいるため、ここからでは見えない。
医師の顔色を伺う。
「ミューズ様は今は落ち着かれております。ただ原因がいまだ不明なため予断を許さない状況です」
令嬢たちとのお茶会で急に倒れたとの報がティタンのところに届いたのだ。
急いで仕事の引き継ぎをし、早く着くために馬車ではなく馬にて駆けつけた。
「ミューズの側に行きたいが、大丈夫か?」
弱っている姿や寝姿を見られたくないかもと今更ながら思い、声をかける。
医師は首を横にふった。
「今はこのまま休ませて上げてください。まだ流行り病などの可能性もありますので、しばらく静養をと思います」
ぐっと会いたい気持ちを抑え、
「わかった」
と出直そうとし、扉の方に体を向ける。
「ティタン……?」
か細い声が聞こえて、駆け寄りたい気持ちを抑え振り向いた。
ミューズの声だ。
「ミューズ、具合はどうだ? 倒れたと聞き急いで駆けつけたのだが、大丈夫か?」
「私、倒れたのね……体が思うように動かないのも、そのせいなの?」
身じろぐ音はするが、ミューズのそばには許可がないといけない。
女性に対して失礼だからだ。
「痛っ!」
体を起こそうとしたミューズが痛みを訴える。
「ミューズ大丈夫か?!」
婚約者の苦鳴の声に、思わず駆け寄り、天蓋を捲くってしまった。
ティタンは後悔した。
ミューズの全身は包帯が巻かれており、ところどころ見える肌は赤くなったり黒くなったりと変色している。
顔も腫れ上がり、今までのミューズとは全く違う容姿だ。
「お下がりくださいティタン様!」
周囲の使用人や医師に止められ、ティタンは呆然としながら力なく下がる。
「ミューズ、その姿は……」
そう言われ、ミューズは自分の体をようやく見下ろした。
自分の姿に驚きながら、おずおずと腫れた手で顔を触る。
巻かれた包帯、腫れた頬にミューズは震えた。
「誰か鏡を……」
震える声で言うものの、誰も持ってきてくれない。
「ミューズ」
ティタンはゆっくりミューズに近づき、彼女の手に自分の手を重ねる。
「きっと大丈夫、今はゆっくりお休み」
優しい眼差しを向け、ミューズを横にした。
発熱と痛みにうとうとし眠りにつくと、ティタンの体からは殺気が溢れる。
「ミューズをこのようにしたのは誰だ……絶対に許さない」
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