呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。

文字の大きさ
7 / 8

第7話 思惑

「呪いの力は生まれた時より私の側にありました。この力が呪力というものだとわかったのは魔法学校へ入った時です。誰も知らなかったのに、一人のとある先生が教えてくれましたわ」
否定することもなくミューズは話し始めた。

怯えていた表情など影も形もない。

「まさか自分がかけられる側になるとは思ってませんでしたが、私にとってはとても都合が良かったのです」
煩わしい縁談の回避も出来たし、複雑な人間関係も整理出来た。

呪いが功を奏したのだ。


「ティタンからの愛情もしっかり受け取る事が出来ました」
頬を染め瞳を潤ませるミューズは、まさに恋する乙女であった。


容姿が変わろうとも、もしかしたら自分も感染ってしまう可能性がある中でも、変わらぬ愛を注いでくれる。

一途な愛情にミューズの心は満たされた。

出世したティタンに言い寄る女性も増えたが、ミューズが回復した今はその数も減っている。

公爵家であるスフォリア家と表立った対立は出来ないし、今回の件でティタンの行動は純愛として世の女性方に好意的に受け取られている。

そこに割って入る者など0に等しい。

「エリック様とサリー様には感謝しております。呪術師が居ない中、私が解呪しては皆不思議に思ってしまいますもの」
死ぬつもりはなかったので呪いの進行を遅らせていたが、なかなか身体を張った計画だった。

「呪いの力を悪用されるのは困りますので、サリー様に協力させてもらって呪詛返しに転換しました。加減がわからず思ったよりも影響が強くなりすぎてしまいましたが、呪いをかけた者たちを根絶やしに出来て安心しましたわ」
この王都に呪いの力はいらないとミューズは思う。

強い力は害にしかならないのだ。

知っている者が皆消えてしまうのは望ましかった。






人を呪い殺したと同義であるにも関わらず、ミューズは心を痛めている素振りもない。

「それにしても貴方が呪術師とは知りませんでしたわ、薬師サミュエル様」

「!!」
明らかに動揺するサリーと、顔には出さないが狼狽えるエリック。




「結構情報通なのですよ、私」
ころころと笑うミューズからは、嫌味や含みなど一切感じられない。

エリックの専属薬師として登用されているサリーことサミュエルは滅多に人前に出ない。

顔どころか存在すらも知らないものが多いのだ。

「そうですわ、サリー様にはこのお礼をさせてもらいます」

すっとサリーの方に近寄ると手から温かな光が放たれる。

「うっ!」
眩しさにサリーは目を細め、顔に熱い力が感じられた。

「何をした……」
サリーは顔を抑え、ミューズから距離を取る。

「もうフードを被らなくて良いですよ、あなたの傷はなくなりました」
サリーは自らの顔を触り、滑らかな感触に驚いた。

急いで窓に映る自分の顔を見る。

フードを外すとあれだけ忌み嫌っていた、大きな傷が消えていたのだ。

「こんな強力な治癒魔法を詠唱なしにどうやって?」
普通の人であれば、魔力も呪力も治癒力も少しは鍛えられる。

しかし、高等なものだと適性が必要だ。

その適性も殆どの者が1つだけだと決まっている。

呪詛返しもできるほど呪術を極めているものが、治癒魔法も極めているなど、あり得ないのだ。

「私はただの一般人です。本業の魔術師様達のようにはなれませんわ。ですので、呪術の力はここだけの話にしてもらえませんか?特にティタンには」
恥じらうミューズだが、エリックは脅しとしか受け取れない。

「断ったら恐ろしいことになりそうだな」

「何をおっしゃいます、私はか弱い乙女なのですよ。ティタンが大事にしているこの国の繁栄しか願っていませんし、彼がいる限り恐ろしい事など起こるはずもありませんわ」
言外にティタンがいるうちは何もしないと言われているようだ。

彼がこの国を去ったらと考えると……ゾッとする。

「あぁ、もうすぐティタンがこちらに着きますね」
そっとソファに戻り、座り直す。

「今後ともティタンの事をよろしくお願いします。彼は真っすぐで不器用ですけれど、とても優しい人です。きっとこの国の為になるでしょう」
優雅に礼をした後に、コンコンとノックの音が響いてきた。
感想 2

あなたにおすすめの小説

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?

奏音 美都
恋愛
 それは、ソフィアお姉様のご婚約を交わす席でのことでした。 「エミリー、こちらが私のご婚約者となるバロン侯爵卿のご令息、オリバー様ですわ」 「よろしく、エミリー」  オリバー様が私に向かって微笑まれました。  美しい金色の巻髪、オリーブのような美しい碧色の瞳、高い鼻に少し散らしたそばかす、大きくて魅力的なお口、人懐っこい笑顔……彼に見つめられた途端に私の世界が一気に彩られ、パーッと花が咲いたように思えました。 「オリバー様、私……オリバー様を好きになってしまいました。私を恋人にしてくださいませ!!」  私、お姉様からご婚約者を奪うために、頑張りますわ!

姉の夫を誘惑?冤罪追放されました。好きなのは一人だけ。冷酷な第一王子に拾われ極上甘々に溺愛されています〜初恋の彼は私以上に執着していました〜

唯崎りいち
恋愛
「あの子は私を引き立てるための『人形』なの」 美しき姉に利用され、意思を持たぬ人形として生きてきた転生者の私。姉の夫である第三王子から横恋慕され、冤罪を着せられて追放されてしまう。 行き場を失い、血を流して倒れる私を拾い上げたのは、国中で最も恐れられる第一王子だった。 「やっと捕まえた。もう二度と逃がさない」 冷酷なはずの彼の瞳に宿る、狂おしいほどの情熱。私を「人形」ではなく「一人の女性」として愛してくれる彼の手を取り、私は初めて自分の意思で「誘惑」を開始する――。

【完結】私のことが大好きな婚約者さま

咲雪
恋愛
 私は、リアーナ・ムスカ侯爵子女。第二王子アレンディオ・ルーデンス殿下の婚約者です。アレンディオ殿下の5歳上の第一王子が病に倒れて3年経ちました。アレンディオ殿下を王太子にと推す声が大きくなってきました。王子妃として嫁ぐつもりで婚約したのに、王太子妃なんて聞いてません。悩ましく、鬱鬱した日々。私は一体どうなるの? ・sideリアーナは、王太子妃なんて聞いてない!と悩むところから始まります。 ・sideアレンディオは、とにかくアレンディオが頑張る話です。 ※番外編含め全28話完結、予約投稿済みです。 ※ご都合展開ありです。

草を刈っただけで、精霊王に溺愛されていたらしい

卯崎瑛珠
恋愛
卒業パーティで王太子が「貴女との婚約を、破棄する!」と叫ぶところからはじめてみようと、 書いてみましたよ。 真実の愛ってなんでしょうね ----------------------------- サクッと読める、ざまぁと溺愛です

姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました

碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。 学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。 昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。

わたしと婚約破棄? では、一族の力を使って復讐させていただきますね

ともボン
恋愛
 伯爵令嬢カスミ・リンドバーグは、第二王太子シグマとの婚約お披露目パーティーで衝撃的な告白をされる。 「カスミ・リンドバーグ! やはりお前とは結婚できない! なのでこの場において、この僕――ガルディア王国の第二王太子であるシグマ・ガルディアによって婚約を破棄する!」  理由は、カスミが東方の血を引く“蛮族女”だから。  さらにシグマは侯爵令嬢シルビアを抱き寄せ、彼女と新たに婚約すると貴族諸侯たちに宣言した。  屈辱に染まる大広間――だが、カスミの黒瞳は涙ではなく、冷ややかな光を宿していた。 「承知しました……それではただいまより伯爵令嬢カスミ・リンドバーグではなく、ガルディア王国お庭番衆の統領の娘――カスミ・クレナイとして応対させていただきます」  カスミが指を鳴らした瞬間、ホール内に潜んでいたカスミの隠密護衛衆が一斉に動き出す。  気がつけばシグマは王城地下牢の中だった。  そこに現れたのは、国王バラモンと第一王太子キース――。  二人はカスミこそ隣国との戦争で王国を勝利へ導いたクレナイ一族の姫であり、シグマの暴挙は王家にとっても許されぬ大罪だとしてシグマとの縁を切った。  それだけではなく、シグマには想像を絶する処罰が下される。  これは婚約破棄から生まれる痛快な逆転劇と新たなラブストーリー。

神の愛し子と呼ばれていますが、婚約者は聖女がお好きなようです

天宮花音
恋愛
ミュンバル公爵家の令嬢ローゼリカは神の愛子とされ、幼い頃よりアモーナ王国第一王子リュシアールの婚約者だった。 16歳になったローゼリカは王立学園に入学することとなった。 同じ学年には、第2王子で聖騎士に任命されたマリオンと 聖女となった元平民でメイナー子爵家の養女となった令嬢ナナリーも入学していた。 ローゼリカとナナリーは仲良くなり、リュシアール、マリオン含め4人で過ごすようになったのだが、 ある日からナナリーの様子がおかしくなり、それに続きリュシアールもローゼリカと距離を取るようになった。 なろうでも連載中です。