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1章
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「茉莉(まつり)ちゃん」
先輩はいつも優しく私の名前を呼んだ。
いつから先輩を「祐さん」って呼ぶようになっただろう。
大学に進学して仲良くなった友達に誘われて入ったサークルに先輩はいた。頼れる優しい先輩。
先輩の友達のことを好きになっちゃった、1人じゃ心細いから4人で遊びに行きたい!友達のそんな願いを聞いて、4人で会うことが増えて。
気付いたら先輩といつも一緒にいた。
ねぇ、どうして連絡ないの?
一言で良かったのに。
「おいっ!起きろ!!」
耳元で聞こえた大きな声に目を開けるとそこは砂漠だった。
いや、違う。砂漠のままだったけど、違っていた。
私達の回りには獣が居た。若林くんが獣の前にいて辻くんが、私の肩を掴んでいた。
低い唸り声と口から見えるキバ。
「それ、貸せ」
同時にここまで連れてきたスーツケースが持ち上げられる。
言葉なんて出なかった。リアクションも出来なかった。
スーツケースを掴んだまま辻くんは若林くんの前に出ていって、スーツケースを振り上げた。
怖くて目を瞑っていた。
唸り声と大きな音。そしてうめき声。
「龍!!」
焦ったような声に目を開くと、赤い色。
左の肩を押さえて、座り込む辻くん。
まだ唸る獣。
「隼人、長谷川連れて逃げろ」
若林くんの身体を押しやりながら、肩から血が垂れたまま辻くんが立ち上がろうとしている。
身体が震える。自分の身体じゃないみたいにガタガタしてる。
「……あっ……」
悲鳴にもならない音が喉から出て、口の中が乾いた感じがした。
たぶん、ほんの一瞬の出来事だったんだろうけど、目の前の光景はスローモーションだった。
立ち上がりかけた辻くんに、獣は勢いを付けて飛びかかって………
先輩はいつも優しく私の名前を呼んだ。
いつから先輩を「祐さん」って呼ぶようになっただろう。
大学に進学して仲良くなった友達に誘われて入ったサークルに先輩はいた。頼れる優しい先輩。
先輩の友達のことを好きになっちゃった、1人じゃ心細いから4人で遊びに行きたい!友達のそんな願いを聞いて、4人で会うことが増えて。
気付いたら先輩といつも一緒にいた。
ねぇ、どうして連絡ないの?
一言で良かったのに。
「おいっ!起きろ!!」
耳元で聞こえた大きな声に目を開けるとそこは砂漠だった。
いや、違う。砂漠のままだったけど、違っていた。
私達の回りには獣が居た。若林くんが獣の前にいて辻くんが、私の肩を掴んでいた。
低い唸り声と口から見えるキバ。
「それ、貸せ」
同時にここまで連れてきたスーツケースが持ち上げられる。
言葉なんて出なかった。リアクションも出来なかった。
スーツケースを掴んだまま辻くんは若林くんの前に出ていって、スーツケースを振り上げた。
怖くて目を瞑っていた。
唸り声と大きな音。そしてうめき声。
「龍!!」
焦ったような声に目を開くと、赤い色。
左の肩を押さえて、座り込む辻くん。
まだ唸る獣。
「隼人、長谷川連れて逃げろ」
若林くんの身体を押しやりながら、肩から血が垂れたまま辻くんが立ち上がろうとしている。
身体が震える。自分の身体じゃないみたいにガタガタしてる。
「……あっ……」
悲鳴にもならない音が喉から出て、口の中が乾いた感じがした。
たぶん、ほんの一瞬の出来事だったんだろうけど、目の前の光景はスローモーションだった。
立ち上がりかけた辻くんに、獣は勢いを付けて飛びかかって………
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