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XXXⅣ.魔窟捜査
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「これがメアちゃんの学校かぁー。そういえば初めて入るね! 何だかワクワクする!」
「可愛い娘いるかなぁ。うへへぇ……」
「ちょっと時緒、燐華! 余計なことしゃべらないでよ! いい? あくまでもあんたたちはこの学校の一生徒、バレたらただじゃおかないから! 極刑だからね!」
「「はーい」」
四人が立つのは先程までメアとユウリが授業を受けていたK中学校の正門前。だが、メアには通い慣れた筈の眼前の建物が、いつもとは違う只ならぬ異様な雰囲気を醸し出しているように感じてならなかった。最早それは普段通りの校舎ではなく、醜悪なる魔物の巣喰う暗黒世界への入口にすら思えた。
「それにしてもメアちゃん、この制服ちょっとキツイかも……」
メアとユウリは普段の制服のままだが、時緒と燐華は自身の通うN学園の制服からメアと同じK中学校のものへと着替えていた。二人へはメアとユウリがそれぞれスペアの制服を貸すことになった。
ユウリよりもメアの方が少しばかりサイズが上であった為、四人の中で一番身体の大きい時緒へはメアが貸し出すことになったのだが、それでも時緒にはややサイズが足りないようである。
「特にこの、おっぱいの辺りが……」
時緒が特に大きくせり出した胸元を押さえて苦しそうな声を上げるの見て、メアは舌打ちをした。そして校門から出て来る男子生徒が皆、時緒のはち切れんばかりの胸元にいちいち視線を送っているのを確認し、メアはまた、ひと際大きく舌打ちをした。
「そうそう、おっぱいと言えばですね、メアさん」
「嫌っ! そのワードの連想であんたの口から出て来る話なんて聞きたくない! ほら、無駄口叩いてないでとっとと行くわよ!」
メアは話を無理矢理切り上げ、先を行く。余計なことに気を取られている場合ではない。ここからは決して予断を許さない。三人の言動に注意を払いつつ、校内に残る生徒たちの視線に気を配らなければならないのだ。まさに驚異的な集中力と機械のように緻密で繊細な察知能力を要する仕事である。
極度の緊張状態の中でメアは、どうか無事に校門を出るまで体力が続くことを願うばかりであった。
一行はすんなりと昇降口まで辿り着くと上履きに履き替える。燐華と時緒はK中学指定の上履きを持っていないので仕方なく靴下のまま、二人の靴はメアとユウリの下駄箱に分けて無理矢理詰め込んだ。
放課後ということもあって一階の廊下にはほとんど人気がなかった。それでもたまに通りかかる人影を察知するなり、メアはすっと顔を背け、気配を殺す。目的地の美術室は一階の廊下を奥に進み、その最深部、突き当りに位置している。とても骨の折れる作業であった。
静かな校内には外で練習に励む運動部の掛け声と、その合間を縫うように吹奏楽部の演奏する音がまばらに入る。そんな中、廊下を踏む四人分の足音が嫌に大きく感じられた。
「ササッ!」
「ササササッ!」
そんなふざけた擬音と共に、燐華と時緒が屋敷に忍び込んだスパイのような挙動で廊下の壁に背を付けるようにして進む。
「ちょっとぉ! 余計なことしないで!」
ほとんど直線である廊下でのそのような所作は無意味どころかかえって滑稽である。通り過ぎた他学年の女子生徒二人が燐華と時緒の様子を横目に顔を見合わせ、クスクスと笑っていた。
案の定この連中を連れて校内を彷徨うのは危険だ。これ見よがしに髑髏の看板が立つ地雷原の中をでんぐり返しで突き進むに等しい愚行である。いつ、メアのことを見知った生徒と鉢合わせる羽目になるか、わかったものではない。メアのこめかみに一筋、嫌な汗が流れた。
「えーマジぃ? ちょーウケんだけどー」
「でしょぉ? ふゆもそう思うでしょー」
微かにだが、背後から女子生徒数人の話し声が聞こえ、メアは動きを止めた。
「マジキモイんだけどー」
「ねー、あり得ないよねー」
間違いなくそれはメアのクラスメイト、御崎冬美とその取り巻きたちの話し声であった。
今見つかりたくない人物ナンバーワンその人が、まさに階段を下りて一階へ辿り着こうとしている。今から急いで廊下を奥に走ってもしばらくは直線が続く為、まるわかりだ。下駄箱に戻るわけにもいかない。万事休す。進退窮まったとはまさにこのことである。
異常なまでの焦りの中でメアの感覚からは音が失せ、走馬燈にも似た圧縮された情景の中で咄嗟に傍らに位置していた視聴覚室の戸を右手で開け、残る左手でユウリの首筋を掴むと室内へ放り込み、返すその左手で時緒の腕を掴み、バランスを取りながら左足で燐華の身体を引っかけるようにすると、そのまま自身の身体ごとほとんどなだれ込むように視聴覚室の薄暗い部屋の中へ押し入れた。そして息を吐く暇もなく、戸に残しておいた右手を引き、戸を閉める。
直後、御崎一行が一階へ辿り着き、靴を履き替えて外へ出たのが物音で確認できた。その間際、取り巻きの一人が「何か変な音しなかったー?」と話しているのがわかった。
「メアさんすごいです……。控えめに見積もっても、動きがおよそ人間の限界を逸していました」
「はぁっはぁっ、そいつは……どうも……」
メアは息を切らせながら、称賛を送るユウリに力のこもらない言葉を返す。視聴覚室は幸いにも人がいなかった。
「えーん! いたいよー!」
上履きを履いたユウリと運動神経の良い燐華は咄嗟のことにも態勢を持ち直し無事であったが、靴下のままの時緒は勢い余って足を滑らせ、室内に置かれた机の脚に額をぶつけてしまっていたようだ。
「あーごめんごめん、時緒」
緊急避難であったとはいえ、メアは素直に謝罪した。
「うぇーん……」
「だから悪かったって、しょうがないでしょ? 急なことだったんだから。まさかいきなり『今見つかりたくない人物ナンバーワン』に出くわすなんて……、ねぇ、お願いだから静かにして」
「うぇーん。ユウリちゃんがぎゅってして、おでこいいこいいこして、最後にちゅーしてくれないと治らないー」
「あんた、被害者であることに乗じてあらん限りの欲望と劣情を吐露したわね……。はぁ……いいわ、めんどくさい。ほら、〝いいこいいこだけ〟やってあげなさい」
こんな所で延々と駄々をこねられては困ると、メアはユウリに視線を送り合図する。
「大丈夫ですか? 時緒さん。保健室行きますか?」
それを受けてユウリは時緒の額をさすりながら優しく声を掛けた。
「ううん……、大丈夫………………ふへっ……ふへへぇ……でゅふふふふ……」
ユウリに額を撫でられた時緒は徐々に笑顔を取り戻し、やがてその顔は酷く下卑た表情へと変貌を遂げた。それを確認するなりユウリは熱湯か何かに触れてしまったかのようにサッと手を引いた。
「大丈夫ですか? 時緒さん。びょ……保健室行きますか?」
「あー! ユウリちゃん! 今絶対『病院』って言いかけたでしょぉ!」
「あたま大丈夫ですか? 時緒さん。病院行きますか?」
「今度はハッキリ言ったぁ! でもアレだよね? ぶつけたおでこの心配してくれてるんだよね?」
「大丈夫ですか? 時緒さん。あたまの病院行きますか?」
「言い直したことによりさらに疑惑が深まったぁぁ! うわぁーん! メアちゃーん! ユウリちゃんがイジメるよぉ!」
「だから静かにって、時緒! 痛いの治まったならもう行くわよ」
「まだだもん! まだぎゅーとちゅーして貰ってないもん!」
「あっそ、いいわよ、そんなにしつこいなら代わりにデコピンしてあげる。燐華が」
それを聞くなり、燐華がシュッシュッと空気を切る音を鳴らしながら〝シャドーデコピン〟を開始する。
「そ、そんな! ケガ人に〝凶器〟使うなんてメアちゃん酷い!」
共通認識の中で燐華は最早凶器と評価するに相応しい存在らしい。
メアは視聴覚室からにゅっと首だけ出すと、危険がないことを確かめ、次いで三人に合図をし、再び廊下を進む。直線の廊下がコの字型の校舎の形に合わせ途中一度だけ直角に折れる。その角で一度立ち止まり、先程燐華と時緒がやっていたように壁に背を付け、角を折れた先に人影がないのを確認してから一気に突き当りの部屋まで辿り着いた。
美術室と表記されたその部屋からは物音が聞こえない。事前調査もなしに辿り着いてしまったが、本日は美術部の活動日ではないようだ。だが、安堵するのも束の間、大切なことを失念していたことにメアは気付く。
「あ、そういえばカギ、開いてないかも……。はぁ……しまった……」
扉の前で動きを止めたメアに他の三人は訝し気な視線を送る。
「でもまあ、元々不用心に中に入るわけにもいかないし……」
ここまで何とか辿り着くことができたものの、もし仮に美術部の活動中であった場合、メアのクラスメイトがいないとも限らない。他者に微塵も興味を持たないメアは自身のクラスの中に美術部がいるのかを把握していなかった。
「でも開いてるよ? ほら」
メアの心中を知らない時緒は何の躊躇いもなく美術室の扉を開く。そしてメアの予想に反してその扉は難なく開いた。
「ちょっ!?」
心の準備ができていなかったメアは焦って時緒の突発的な行動を制しようとするが、時既に遅く、美術室の扉は大きく開け放たれてしまっている。
そしてすぐにメアの懸念は最悪を伴って現実のものになる。
室内の椅子の一つに腰掛けるのは一人女子生徒。ガラガラと扉の引かれる音に気付き、こちらを見据えるのは、あろうことかメアのクラスメイト、クラス委員の円子瞳であった。
面を上げる際に顔に掛かったふんわりとした髪をかき上げながら、先程まで机に開いていたノートをパタリと閉じて四人の姿を順々に眺める。そして可愛らしく小首を傾げた。
「ああ……もう一人の今見つかりたくない人物ナンバーワン(御崎と同列一位)が目の前に……」
「可愛い娘いるかなぁ。うへへぇ……」
「ちょっと時緒、燐華! 余計なことしゃべらないでよ! いい? あくまでもあんたたちはこの学校の一生徒、バレたらただじゃおかないから! 極刑だからね!」
「「はーい」」
四人が立つのは先程までメアとユウリが授業を受けていたK中学校の正門前。だが、メアには通い慣れた筈の眼前の建物が、いつもとは違う只ならぬ異様な雰囲気を醸し出しているように感じてならなかった。最早それは普段通りの校舎ではなく、醜悪なる魔物の巣喰う暗黒世界への入口にすら思えた。
「それにしてもメアちゃん、この制服ちょっとキツイかも……」
メアとユウリは普段の制服のままだが、時緒と燐華は自身の通うN学園の制服からメアと同じK中学校のものへと着替えていた。二人へはメアとユウリがそれぞれスペアの制服を貸すことになった。
ユウリよりもメアの方が少しばかりサイズが上であった為、四人の中で一番身体の大きい時緒へはメアが貸し出すことになったのだが、それでも時緒にはややサイズが足りないようである。
「特にこの、おっぱいの辺りが……」
時緒が特に大きくせり出した胸元を押さえて苦しそうな声を上げるの見て、メアは舌打ちをした。そして校門から出て来る男子生徒が皆、時緒のはち切れんばかりの胸元にいちいち視線を送っているのを確認し、メアはまた、ひと際大きく舌打ちをした。
「そうそう、おっぱいと言えばですね、メアさん」
「嫌っ! そのワードの連想であんたの口から出て来る話なんて聞きたくない! ほら、無駄口叩いてないでとっとと行くわよ!」
メアは話を無理矢理切り上げ、先を行く。余計なことに気を取られている場合ではない。ここからは決して予断を許さない。三人の言動に注意を払いつつ、校内に残る生徒たちの視線に気を配らなければならないのだ。まさに驚異的な集中力と機械のように緻密で繊細な察知能力を要する仕事である。
極度の緊張状態の中でメアは、どうか無事に校門を出るまで体力が続くことを願うばかりであった。
一行はすんなりと昇降口まで辿り着くと上履きに履き替える。燐華と時緒はK中学指定の上履きを持っていないので仕方なく靴下のまま、二人の靴はメアとユウリの下駄箱に分けて無理矢理詰め込んだ。
放課後ということもあって一階の廊下にはほとんど人気がなかった。それでもたまに通りかかる人影を察知するなり、メアはすっと顔を背け、気配を殺す。目的地の美術室は一階の廊下を奥に進み、その最深部、突き当りに位置している。とても骨の折れる作業であった。
静かな校内には外で練習に励む運動部の掛け声と、その合間を縫うように吹奏楽部の演奏する音がまばらに入る。そんな中、廊下を踏む四人分の足音が嫌に大きく感じられた。
「ササッ!」
「ササササッ!」
そんなふざけた擬音と共に、燐華と時緒が屋敷に忍び込んだスパイのような挙動で廊下の壁に背を付けるようにして進む。
「ちょっとぉ! 余計なことしないで!」
ほとんど直線である廊下でのそのような所作は無意味どころかかえって滑稽である。通り過ぎた他学年の女子生徒二人が燐華と時緒の様子を横目に顔を見合わせ、クスクスと笑っていた。
案の定この連中を連れて校内を彷徨うのは危険だ。これ見よがしに髑髏の看板が立つ地雷原の中をでんぐり返しで突き進むに等しい愚行である。いつ、メアのことを見知った生徒と鉢合わせる羽目になるか、わかったものではない。メアのこめかみに一筋、嫌な汗が流れた。
「えーマジぃ? ちょーウケんだけどー」
「でしょぉ? ふゆもそう思うでしょー」
微かにだが、背後から女子生徒数人の話し声が聞こえ、メアは動きを止めた。
「マジキモイんだけどー」
「ねー、あり得ないよねー」
間違いなくそれはメアのクラスメイト、御崎冬美とその取り巻きたちの話し声であった。
今見つかりたくない人物ナンバーワンその人が、まさに階段を下りて一階へ辿り着こうとしている。今から急いで廊下を奥に走ってもしばらくは直線が続く為、まるわかりだ。下駄箱に戻るわけにもいかない。万事休す。進退窮まったとはまさにこのことである。
異常なまでの焦りの中でメアの感覚からは音が失せ、走馬燈にも似た圧縮された情景の中で咄嗟に傍らに位置していた視聴覚室の戸を右手で開け、残る左手でユウリの首筋を掴むと室内へ放り込み、返すその左手で時緒の腕を掴み、バランスを取りながら左足で燐華の身体を引っかけるようにすると、そのまま自身の身体ごとほとんどなだれ込むように視聴覚室の薄暗い部屋の中へ押し入れた。そして息を吐く暇もなく、戸に残しておいた右手を引き、戸を閉める。
直後、御崎一行が一階へ辿り着き、靴を履き替えて外へ出たのが物音で確認できた。その間際、取り巻きの一人が「何か変な音しなかったー?」と話しているのがわかった。
「メアさんすごいです……。控えめに見積もっても、動きがおよそ人間の限界を逸していました」
「はぁっはぁっ、そいつは……どうも……」
メアは息を切らせながら、称賛を送るユウリに力のこもらない言葉を返す。視聴覚室は幸いにも人がいなかった。
「えーん! いたいよー!」
上履きを履いたユウリと運動神経の良い燐華は咄嗟のことにも態勢を持ち直し無事であったが、靴下のままの時緒は勢い余って足を滑らせ、室内に置かれた机の脚に額をぶつけてしまっていたようだ。
「あーごめんごめん、時緒」
緊急避難であったとはいえ、メアは素直に謝罪した。
「うぇーん……」
「だから悪かったって、しょうがないでしょ? 急なことだったんだから。まさかいきなり『今見つかりたくない人物ナンバーワン』に出くわすなんて……、ねぇ、お願いだから静かにして」
「うぇーん。ユウリちゃんがぎゅってして、おでこいいこいいこして、最後にちゅーしてくれないと治らないー」
「あんた、被害者であることに乗じてあらん限りの欲望と劣情を吐露したわね……。はぁ……いいわ、めんどくさい。ほら、〝いいこいいこだけ〟やってあげなさい」
こんな所で延々と駄々をこねられては困ると、メアはユウリに視線を送り合図する。
「大丈夫ですか? 時緒さん。保健室行きますか?」
それを受けてユウリは時緒の額をさすりながら優しく声を掛けた。
「ううん……、大丈夫………………ふへっ……ふへへぇ……でゅふふふふ……」
ユウリに額を撫でられた時緒は徐々に笑顔を取り戻し、やがてその顔は酷く下卑た表情へと変貌を遂げた。それを確認するなりユウリは熱湯か何かに触れてしまったかのようにサッと手を引いた。
「大丈夫ですか? 時緒さん。びょ……保健室行きますか?」
「あー! ユウリちゃん! 今絶対『病院』って言いかけたでしょぉ!」
「あたま大丈夫ですか? 時緒さん。病院行きますか?」
「今度はハッキリ言ったぁ! でもアレだよね? ぶつけたおでこの心配してくれてるんだよね?」
「大丈夫ですか? 時緒さん。あたまの病院行きますか?」
「言い直したことによりさらに疑惑が深まったぁぁ! うわぁーん! メアちゃーん! ユウリちゃんがイジメるよぉ!」
「だから静かにって、時緒! 痛いの治まったならもう行くわよ」
「まだだもん! まだぎゅーとちゅーして貰ってないもん!」
「あっそ、いいわよ、そんなにしつこいなら代わりにデコピンしてあげる。燐華が」
それを聞くなり、燐華がシュッシュッと空気を切る音を鳴らしながら〝シャドーデコピン〟を開始する。
「そ、そんな! ケガ人に〝凶器〟使うなんてメアちゃん酷い!」
共通認識の中で燐華は最早凶器と評価するに相応しい存在らしい。
メアは視聴覚室からにゅっと首だけ出すと、危険がないことを確かめ、次いで三人に合図をし、再び廊下を進む。直線の廊下がコの字型の校舎の形に合わせ途中一度だけ直角に折れる。その角で一度立ち止まり、先程燐華と時緒がやっていたように壁に背を付け、角を折れた先に人影がないのを確認してから一気に突き当りの部屋まで辿り着いた。
美術室と表記されたその部屋からは物音が聞こえない。事前調査もなしに辿り着いてしまったが、本日は美術部の活動日ではないようだ。だが、安堵するのも束の間、大切なことを失念していたことにメアは気付く。
「あ、そういえばカギ、開いてないかも……。はぁ……しまった……」
扉の前で動きを止めたメアに他の三人は訝し気な視線を送る。
「でもまあ、元々不用心に中に入るわけにもいかないし……」
ここまで何とか辿り着くことができたものの、もし仮に美術部の活動中であった場合、メアのクラスメイトがいないとも限らない。他者に微塵も興味を持たないメアは自身のクラスの中に美術部がいるのかを把握していなかった。
「でも開いてるよ? ほら」
メアの心中を知らない時緒は何の躊躇いもなく美術室の扉を開く。そしてメアの予想に反してその扉は難なく開いた。
「ちょっ!?」
心の準備ができていなかったメアは焦って時緒の突発的な行動を制しようとするが、時既に遅く、美術室の扉は大きく開け放たれてしまっている。
そしてすぐにメアの懸念は最悪を伴って現実のものになる。
室内の椅子の一つに腰掛けるのは一人女子生徒。ガラガラと扉の引かれる音に気付き、こちらを見据えるのは、あろうことかメアのクラスメイト、クラス委員の円子瞳であった。
面を上げる際に顔に掛かったふんわりとした髪をかき上げながら、先程まで机に開いていたノートをパタリと閉じて四人の姿を順々に眺める。そして可愛らしく小首を傾げた。
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