魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第四章 喫茶店の看板娘、渋々と教官をする

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「見た目はただの女なのにね……あれが俺と」
《人のこと言えるんですか》
「やだな~、俺は特例だろ?」
 あたかも気鬱そうにアイナは話を続ける。
《不朽の栄光は『属性の使い』で編成されています。ノンナ様の他に炎、水、風の使いがそれぞれいまして、どの方もマスターと対等に交えることができる猛者です。そして、不朽の栄光のリーダーこそが勇者。対立属性の『光』を完全に操ることから『光の使い』として名を広めています》
「不朽の栄光には六属性のうち五属性を操る人がいるのか……。冷静に考えると凄いな」
《はい。ノンナ様は相当凄いメンバーの一人だと分かると思います。なんせ、この世界の人間で一つの属性を完全に操れる人は『不朽の栄光』と他数名しかいませんから》
 土の使い、ノンナは深く黙礼し、静かに台から降りた。優雅さと強者たる風格を兼ね備え、ひときわ異彩を放つノンナは、常に不敵な笑みを浮かべていた。
 未だに重苦しい空気だが、声を張り上げていた騎士が気を取り直して喋り始める。
「コホン、え~本日は冒険者昇格試験の前日だ。翌日から一ヶ月間に渡る試験期間に入る。詳しくは騎士道の覇者、団長様から説明を受ける。しっかり聞くように」
 騎士も一礼すると、台からゆっくり降りた。
 次に台へと上ったのは、先ほどからツルカも気になっていた男である。
「皆の衆、今回は遥々グランディール国へよく来なさった。私は騎士団長、アルベルだ」
「へえ、あれが……。もう分かるよ。めっちゃ強そう……」
 引きつった頬がピクピクと震え、どこからともなくツルカは寒気がする。
《彼は冒険者ではありませんが、ランクで表すと紛れもなくSランク。彼が振るう一太刀で斬れぬものは無いとのことです。『両断の剣王』と呼ばれているとか》
 世界が変わったかのような荘厳とした空気。中央広場に集まる冒険者達は、先ほどのような放埒もなく、前に立つ騎士団長アルベルへとひたむきな眼差しを向けていた。
「明日より、君らは冒険者昇格試験を受けることとなる。その説明をなるべく端的に話そうと思う。まず、冒険者昇格試験は個々での試験ではない。同じランク同士で『試験用ギルド』を一時的に組んでもらい、団体として評価する。つまり四人組の試験用ギルドがいるとしたら、そのギルドを一つの試験者とする。尚、試験用ギルドには一人の教官が付き、君らを評価してくれる。後に試験用ギルドは組んでもらう、何故、試験用ギルドを組み団体で評価するのか、と疑問はあるだろう。教官にも限りあるともいえるが、第一に冒険者は団体で協力しながら動くことが多い。仲間との連携は最大の戦術だ。絆を深め、互いを助け合い、修羅場を乗り越える。それが冒険者に必要なものだ。分かるな?」
 冒険者らは返事の代わりに、懸命な目顔で騎士団長へと視線を送る。
「試験用ギルドは最大七人まで組めるが、Cランク冒険者ならばCランク冒険者とでしか組めない。評価基準が違ってくる為、決して違うランク同士で組まないように。仮にそのようなギルドがあれば評価対象外とする。Cランクなら共にBランクを目指せ、BランクならAランクを、Aランクなら最難関Sランクを!」
「ひぇ……いつになったらここから解放されるんだ……」
 ツルカは押しつぶされそうなほど厳かな空気に、平静さを失いつつあった。
《こら、堅苦しい空気が苦手なのかもしれませんが、一応マスターは教官なのですから話は聞かないと》
「冒険者昇格試験の醍醐味は試験期間の下旬に行われるギルド対抗試験だ。参加は自由なのだが、評価の対象でもあり、高得点獲得のチャンスでもある。この試験は全ランク対象で、CランクがAランクと交えることもある、まさに弱肉強食の試験だ。ギルド対抗試験に関しては低いランクほど不利になる。ましてやCランクなど最後まで残れる可能性すらない。ところがな、Cランクギルドのみ教官を戦闘に使用しても良い規則がある。これはギルド対抗試験以外でもだ。Cランクのみ、教官を戦闘に加えても良い。教官もつくべき試験用ギルドのランクを伝えてある。ランクに見合った実力者のはずだ」
「……なるほど。だから、資料の片隅にCランク担当教官と書いてくれてんのか」
《絶対に向いてませんけどねー。ははー》
「ギルド対抗試験に関しては当日に詳しく説明する。ひとまず、試験期間は一ヶ月。対抗試験まで教官とともにクエストなどで貢献しポイントを得ろ。具体的には仲間との連携、クエストや戦闘の質が評価される。教官が思わず高得点にしてしまいそうな事をやってみせよ。さすれば自然と評価され、昇格チャンスを掴めるだろう。話は以上、早速君らには試験用ギルドを組んでもらう。但し、最低三人以上で組むように。ギルドを組み次第、こちらへ来たまえ。受付からランクに見合った教官を試験用ギルドに配属させる」
 すると冒険者達は軍隊アリのように動き始め、試験用ギルドを次々と組み出した。もうすでに組んでいる者らもいれば、縁もゆかりもない他人を誘っている者も多くいる。
 まもなく、ギルドを組み終えた人達が受付に顔を出す。
「組み終わりました!」
「はい、冒険者カードを各自確認しますね……。皆様はBランクで人数は五人。はい、オッケーです。 ではBランク担当の教官を配属させます」
 順番と教官が試験用ギルドへと配属されていく。
「なんかいざ担当することになると緊張するな。俺が先生みたいになるんだろ」
《まあ、軽くやったらいいですよ。資料に評価基準も、しっかり書かれてますしね》
「そうだけどな……」
 しばらくして、ある試験用ギルド一行が受付に来た。
「えーCランク冒険者ですね。人数は三人で良いですか?」
「は、はい。よろしくお願いします」
「分かりました。えっと、Cランク担当の者! 来てくれ」
 受付の騎士がCランク担当の教官を呼び出した。順番がまだだというのに呼び出しの声を耳にしたツルカは咄嗟に返事をすると、受付へと突っ走る。
「あれ……新人ちゃん、次は私だったのに……。ま、いっか」
 然程気にしていない様子で、ツルカの隣にいた教官は次の呼び出しを待った。
「はい~来ましたCランク担当です」
「よし、ではこちらの試験用ギルド一行を頼む」
「分かりましたー」
 ツルカは『女』として気品ある振る舞いを心掛け、まずはメンバー達に一礼し────
「ごきげんよう。わたくし、ツルカ=ハーランと申します。以後お見知りおき────」
「……あ、あの時の!」
「はぁ? なんだこいつ。騎士団だったのか」
 いざ、ツルカは担当することになった試験用ギルドメンバーの顔をしっかり凝視してみると、それは以前Bランク冒険者といざこざを繰り広げていたあの三人組だった。
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