魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第七章 待ちに待った少女、遂にギルド対抗試験が始まる

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「はあ────っ!」
 ダマユナセール森林のあちこちで剣戟や魔法による爆発が勃発。もはや森林全域は戦争区域へと変貌しつつあった。ギルド対抗試験が始まって数時間、すでに九組のギルドが敗
退したらしい。一週間の時間があるというのに、あまりにも脱落速度が早すぎる。
「やべえな。これは迂闊に戦闘するべきじゃねえ。初日はどっか隠れてやり過ごすか」
 ツルカ達はというと、隠密に森林を歩んでいた。
「なんだよガキ。ビビってんのか?」
「ちげえよ。安全策をとってんの! そんなこと言ってたらすぐ脱落すんぞ────おっと、こんな風にな」
 突然、茂みから飛び出してきた冒険者に旗を奪われそうになったが、ツルカはひらりと身をかわした。冒険者は体勢を崩し、地面に横転する。
「ま、こんな風に不意打ちされるかもしんないから、気を付けろって事。お、こいつ旗持ってんじゃん。もーらい」
 ツルカの手際良さに、思わずジン達は舌を巻いた。
「お、おう……。ガキの言いたいことは分かった。言う通りにしよう」
「そうだね。私達は教官の指示に従うであります!」
「ナユったら変な喋り方~」
 隠密行動に徹して数時間、ツルカ達は妙に開けた空間に出た。ちょうど一軒家がすっぽり入るくらいの広さだ。ツルカは旗を地面に突き刺し、付近を見渡す。
「おし、ここに決めた。敵も全然いないし、ここを俺達の陣地としよう」
「賛成~。なら焚き火を起こすために枝を集めなきゃね」
「食料は任せてっ。私、色々持ってきた。足りなくなったら何か狩るしかないけど」
 鮮明に青みを帯びていた壮大な空には、淡い緋色に飲まれた晩景が広がる。ギルド対抗試験の一日目は、あっけなく終わってしまいそうだ。
「食った~。こーいうとこで食う飯はうめえな! よいしょ~っと」
 ジンは満足そうに芝生へぐったり寝そべる。
「おいジン。寝るのは早いぞ。夜に敵襲を受けたらどうする」
「あ、そっか。夜でも旗を奪いに来る可能性があんのか」
「もしかして頭に無かったの……?」
 ジンはまるで危機感がなさそうにへらへらと笑い始める。
「ジンっていつもこうだもんねー、ははっ」
「冗談じゃないよ……。夜戦も頭に入れておいてくれなきゃ────」
「ちょっと話に水を差すようで申し訳ないんだけど」
「誰だっ」
 茂みから何やら怪しげな声が聞こえた。ジンは体を曲げるように立ち上がり剣を構える。やる時にはやるけど……とツルカは頭を抱えるばかりだった。
「あら怖い。なにあんたー」
 茂みを割って飄然と姿を現したのは、萌黄色の長髪と瞳が特徴的な女性だった。
「あ? 誰だてめえ。ひ弱な娘っ子一人で俺達の旗を取りに来たってか──うひゃあ⁉」
 突然、押し潰されるような強風が女性から放たれ、ジンは葉っぱのように吹っ飛んだ。
「この桁違いの風……あ、あなたは疾風の覇者、リゼット様⁉」
「な、なんだってええ⁉」
「あら、お嬢ちゃんは物知りねぇ。あの男とは大違い」
 リゼットはジンの吹き飛んだ姿を尻目にして、にっこりとマリナの頭を撫でる。あの反応だと、彼女は本当にSランク冒険者三位、疾風の覇者だろう。
 本題は一人で何をしにきたのかだ。仲間も連れず単体で攻め入るなど、Sランク冒険者であろう彼女がこれほど思慮に欠ける事をするものか。何か思惑があるに違いない。
「警戒しないで。別に旗を取りに来たわけじゃないわ。だって、面白くないもの」
 苦笑しながらリゼットは焚き火の近くで座り、ツルカ達のチームのように振舞う。
 彼女の様子を見る限り、旗を取りに来たわけでもなければ、ツルカらを欺瞞するわけでもなさそうだ。猜疑心を抱く余地もなく、まさにリゼットは『平常運転』な気がする。
「知りたいのよ。ツルカといったわね。どうして、Cランク冒険者のあなたが、危険種を討伐できたのか……」
 焚き火で丸焼きにしていた余りものの魚を口にしながら、リゼットはそう呟いた。
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